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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
「始まりの物語」
20/60

歴史は何を語るのか

もう、8月も終わります。まだまだ暑い日が続くのでしょうか……辛い。

 夜になり、雰囲気を変えたジャクリーヌにアルファとオメガがいた。廃棄体を追っていたタウとの連絡が途絶え、街の中を探して歩いている。


「……困ったわね。タウの気配がしないわ。まさか、廃棄体にやられてしまった……?」


 オメガは、キョロキョロと落ち着きなく辺りを見ていたが、何かに気が付くとアルファの服を引っ張り、こっちと誘導した。


「見つけたの?」

「うーん、多分死んでる」

「……そう」


 細い路地を進んで行くと、聖女教会の手前で右に曲がる。その先は行き止まりで、木箱やダンボールなどさまざまなゴミが散らばっている。その手前にタウであった灰とそれに埋もれた黒い石があった。

 アルファは溜息をつくと、黒い石を手にする。石から何があったのかの記憶を読み取ると役目を終えた石は粉々に砕け散った。


「……タウ、廃棄体に殺された?」

「……ええ。ここで、殺された。油断したわね。まったく、augが廃棄体に負けるなんて、考えられないわ」


 タウを殺したあと、どこに消えたのか。まだ近くにいるかもしれないと、辺りを捜索しようとしたアルファとオメガだったが、ゴミの中からファタモルガナが現れて通り過ぎていく。

 オメガがゴミに手を向けると、ゴミはすべて土に還っていく。現れたのはぽっかりと空いた穴。その穴を覗き込み、下りた。


「遺跡……そう。ここに失敗作が集まっているのね」

「廃棄体は、ここに隠れてる?」

「ええ、恐らく。行きましょう」


 2人は遺跡の中を歩き出した。途中ですれ違うファタモルガナは2人の事など気にしていなかった。


「ここに集まる理由は、やっぱり光翼人こうよくじんかしら?」

「うん……。この街がおかしい原因は、ここだよ」

「人に捕まった光の翼を持つ人。人という愚かな生物に捕えられ、何千もの剣や槍で貫かれた――」


 2人の目の前に突然現れた女性。気配がしなかったことに、警戒するが、すぐにこの世の者ではないと分かった。


『……帰りなさい』

「残念だけど、無理なお願いね」

「……廃棄体、回収すれば帰る……」

『――死んで』


 女性が呟いた瞬間、ファタモルガナ達が咆哮をあげて襲い掛かって来た。ありえないことに2人は驚く。

 そう。ファタモルガナが自分達を敵と判断することは、絶対にありえないことなのだ。


「なんで……、失敗作が襲ってくるの……!?」

「あの女性、何者……?」


 既に姿は消えていた。

 襲ってくるファタモルガナ達を対応していくが、ここはファタモルガナの巣のようなものだ。次から次へと湧いて出てくるファタモルガナ達に、2人は押されていく。

 

「……延々と鬱陶しいわね」


 アルファの身体を守るように現れた水の柱は、ファタモルガナ達を貫いていく。

 オメガはゴーレムを作りだし、ファタモルガナと戦わせていた。


「……アルファ、人がこっちに来る」

「仕方ない。撤退するわ」

「うん」


 新たに作り出した、大量のゴーレムにファタモルガナの相手を任せて、2人は来た道を戻ると、穴から外へと出ていった。

 程なくして、ゴーレムとの戦闘が繰り広げられる場所にヴァルキュリア達は到着した。


「なんだよ、これ。どうなってんだ……?」


 その光景に戸惑っていると、ファタモルガナは最後のゴーレムを倒し、ヴァルキュリア達へと敵意をむき出しにする。


「全員、戦闘準備じゃ!」


 モニカは契約武器を使い、いつものようにファタモルガナとの空間を切り取り重ねる。

 ゴーレムとの戦闘で生き残ったファタモルガナ達との戦闘が開始されるが、先程までとは違い、ファタモルガナは湧いてこなかった。


「……桜霞さくらがすみ?」


 懐にしまってある桜霞さくらがすみが熱を持ち、琴音に何かを伝えようとしている。


「……ねえ、マスター」

「ええ。いるわね、そこに」


 エクレールとエスメラルダも気が付いた。ファタモルガナ達の後方に、あの女性が立っていることに。他のメンバーも気が付き、「あ!」と叫んだ。

 そう、彼女は美術館の錆びたつるぎの前にいる幽霊だ。何故、こんなところにいるのだろうか。


「……何かを私達に伝えようとしている?」


 琴音の声が届いたのだろうか。女性は、通路の奥を指差すと、


『助けて』


 と、言い残して消え去った。

 キャラメルが、ファタモルガナを踏み台にして、女性がいたところに下り立つ。

 追いかけて来たファタモルガナを、振り向きざまに斬り裂いた。


「この奥は?」

「恐らく、行き止まりじゃ」

「……もしかして」


 エクレールは、遺跡で見た謎の人物のことを思い出す。エスメラルダは頷き、目の前にいたファタモルガナを作り出した炎の矢で貫いた。


「多分、そっちに人がいるわ!」

「は!?」


 こんなところに人がいるわけないだろと思いつつ、ダリアは最後の1体の胴を斬り落とした。

 遺跡の中に戻ると、急いで通路の奥へと向かう。そこには、1人の女性が倒れていた。


「おい、大丈夫か!?」


 駆け寄るダリアの隣に、キャラメルがしゃがみ込む。


「処置します!」


 こういったことの教育を受けているキャラメルは、女性の状態をチェックし始めた。


「……急いで連れて帰りましょう」

「ああ」


 ダリアが女性を抱きかかえると、来た道を引き返していく。


「モニカさん、お医者さんの手配をお願いします」

「ああ、もちろんじゃ!」


 再び、静寂が訪れた遺跡に、女性は現れた。ヴァルキュリア達が去っていった方向をジッと見つめているその瞳から、涙がこぼれ落ちた。


 ――――せめて、その子だけは

 

「aug」

アルファ、オメガ達の事を指す言葉。

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