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暗狩夜子の魔法録  作者: おおあし


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第6話 もう一人の魔導師①

 「あ〜、選択授業やだな〜」



真咲、夜子、渚、寧々の4人で教室を移動していると、真咲が涙を流しながらそう言い出す。


 

 「なんでよ。あんたが好きな美術じゃない」


 「だって〜、夜ちゃん音楽だから離れちゃうじゃ〜ん!」


 「そんなに言うならなんで音楽にしなかったのよ…」


 「だって!夜ちゃんと仲良くなったのは、選択した後だったもん!」


 「まあまあ真咲ちゃん、夜子ちゃんはおらんけど、寧々ちゃんで勘弁してな」


 「寧々ちゃんが居てくれるのは救いだよ〜」



真咲は寧々の胸に顔を埋めてグリグリとする。

そんなやり取りをしながら、真咲と寧々は美術室へと向かい、音楽を選択している夜子と渚は音楽室に向かう。



 「夜子はなんで音楽選んだの?中学の時吹奏楽やってたとか?」



お世辞にもまだ深い仲とは言えない2人だが、渚は気まずくならないように夜子に話題を振る。

自然と話しやすい空気を作れるのは渚の凄い所である。



 「いえ、特に決め手はありません。ただ楽しそうだなと思っただけです」



夜子は中学に通っていないため、渚の質問に在り来りな回答を言う。

音楽を選んだのも、当時は陰ながら守るという話だっため、真咲と被らないようにしていただけである。



 「そっか。まあ、部活動なんてやってる学校、今じゃ限られてるか」



そこでこの話題は終わり、渚は学校生活について話し始める。

初めての寮生活に戸惑いはないか、クラスには慣れたかなどの心配をしてくれている。

学校に通った経験のない夜子は、その事をおくびにも出さないようにしているが、近くで見ていると真咲達とはどこか違うのかもしれない。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



主に渚が話して夜子が相槌を打つやり取りを続けて、3分程で音楽室に到着する。

授業が始まるギリギリだったからか、ほとんどの席が埋まっていた。



 「うわー、全然空いてないじゃん」



渚がそう言いながらキョロキョロと周りを見渡していると、



 「あ、海筋さん!こっち!」


 「ん?あ、田中君!」


 「ここ!席取っておいたよ!」



田中と呼ばれた男の子が荷物を置いて2人分の席を取ってくれていたようで、夜子と渚は男子生徒の所に駆け寄る。



 「わざわざありがとう!にしても、よく私が2人で来るって分かったね」


 「この前も2人だったし、中々来ないから席が埋まって2人並んで座れないんじゃないかと思って。やっぱり、友達と受けたいだろうって」


 「本当にありがとう!田中君!」

 

 「いや〜、そんな…」



渚に感謝された田中は頬を染めて照れくさそうにしている。



 「樹もありがとね!」


 

そんな田中の隣に座っていた男子生徒にも渚は感謝していた。

もう一人の男子生徒は特に気にすることなく目を逸らした。



 「あ!ごめん夜子!紹介するね。こっちの席を取っててくれた優しい人が、田中 結太(たなか ゆいた)君、こっちの無愛想な奴が、木ノ下 樹(きのした いつき)、2人とも隣のクラスの子だよ」


 「……初めまして。暗狩 夜子です」



夜子は2人に対してお辞儀をして挨拶する。



 「こちらこそ、よろしくね暗狩さん」



結太は満面の笑みでそれに答えるが、樹は軽く会釈して終わる。

そんな樹をフォローするように渚が言う。



 「あいつ、人見知りなだけだからさ」


 「そうなんですか。別に私も気にしてません」


 (それよりも……)



夜子は2人を交互に見て、その気配の違和感の方が気になった。

殺気がある訳では無いが、どこか普通とは違う。

そんな違和感。



 「……何か、視線感じるね」



夜子が気配に気を取られていると、渚がボソリと呟く。

その言葉を聞いて、夜子もいつもより視線が多いことに気付く。



 「樹君と居るといつもこうだよ。ほら、この人イケメンだから」



結太が樹の方を親指で指さしながら言う。

結太が言うように、樹の容姿はアイドル並みに整っていて、まつ毛も長く、肌もツヤツヤ、伸びた髪がオシャレにセットされていてモテる事に頷ける。



 「イケメン?あんまり考えた事ないけど…」


 「そうなの?海筋さんは幼馴染って聞いたけど?」


 「だからこそかな。小さい頃から知ってるから、あんまり考えた事ない」


 「……そっか」



結太はあからさまに安堵した。

その態度を見て、結太が渚に他とは違う感情を抱いていると夜子も何となく察する。

それでも、結太と樹から感じる違和感から、2人を夜子の中のリストに入れておいた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 「今日も一日お疲れ様ー!」



放課後になり、真咲が渚に抱きつきながら言う。

そんな真咲の頭を渚は撫でながら、帰り支度をする夜子の元に歩いてくる。



 「夜子もおつかれ。今日はこのまま帰る?って校内から出れないし当然か」


 「そうですね。特に残る理由も─」



そこで、夜子は隣のクラスから嫌な気配を感じ取る。

先程あの二人から感じた違和感。

それが醜く増幅したような感覚。



 「夜子?どうかした?」


 「……いえ。やはり今日は図書室に寄って帰ります」


 「そう?なんなら私達もついて行こうか?」


 「お構いなく。すぐに終わりますので」



渚達にそう断りを入れて、夜子は一人図書室に向かった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



夜子の嫌な予感は当たった。

該当する生徒が一人、無人になった夜子達のクラスの教室へと向かっている。

わざわざ一度寮に戻ってから引き返して来て。



 (やはり……あの気配はそういうことですか)



生徒は教室に入るなり、他の所には目もくれず特定の席に歩いていく。

真咲が目的かと思った夜子だったが、生徒が足を止めたのは渚の席の前であった。

そして、渚の机に座り、顔をスリスリと擦り付け始める。

その行動を夜子が見ている事も知らず、生徒は続けようとしたその時、



 「─でさ〜」



委員会の仕事で残っていた生徒達の話し声が聞こえてくる。

生徒はすぐに席を立ち、足早に去って行った。

そのまま寮に戻っていく姿を確認した後、夜子はっと目を開ける。



 (……何とも気持ち悪い。ですが、目的は真咲さんではないようで。それなら、任務とは関係ないですし、放っておいても問題ないでしょう)



夜子の任務はあくまでも真咲の護衛。

相手の標的が渚であると言うならば、今は放っておいても問題ない。

そう考え、夜子は図書室を後にする。

胸の辺りに少しの違和感を残しながら。

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