時はすこしだけ巻き戻る 1
ココ・アクマー公爵令嬢とアフォーディス共に10歳の時のおはなしでございます。
「ココ、おまえに王家より王太子アフォーディス殿下との婚約の打診があった。 受ける受けないを判断する前に是非とも王太子殿下と会って欲しいと国王陛下よりお願いされたのだが構わないかい?」
父であるアクマー公爵に話があるからと呼ばれた執務室で、ココ・アクマー公爵令嬢はそう告げられた。
「王太子殿下と婚約でございますか?」
「あぁ、だがこの話はまだ正式に決定されたわけではないから断ってくれてもかまわない、だが断る前に一度だけでもいいから王太子とお茶会を開くから会ってはくれまいかと陛下は仰せになったんだよ」
そう言いながら困ったようにアクマー公爵は苦笑する。
「一度だけでいいというから、会ってみてくれないかいココ?」
そう父にお願いされては断れない。
「はい、分かりましたわお父様」
コクリと頷きながらココは父であるアクマー公爵へ笑いかけた。
「お会いして嫌な方だったらお父様がお断りしてくださるんでしょう?」
「当然じゃないか! アクマー公爵家側に大した旨味があるわけじゃない話だし、なによりココを大事にしてくれないやつの嫁になど断じてさせはしないから安心しなさい!」
と、どんどんエスカレートしていく公爵を少々呆れながら
「お父様……まだお会いもしておりませんのに……」
と窘めるココ、しかしアクマー公爵は
「いや、王太子の人となりに少々問題があるという話を城で聞いてしまってね……噂を鵜吞みにするわけではないが、何度か見かけた王太子殿下の様子を見るとどうもね……」
そういいながら渋い顔でアクマー公爵は腕を組む、その言葉に急に不安になったココは
「そのような事が……」
と下を向いてしまう、その様子にアクマー公爵は慌てて
「大丈夫だよココ、当日は父も母も一緒だ! なにかあったら即帰ると陛下にも約束させるからなんの心配もいらないよ」
と笑顔で語り掛ける、その慌てた様子に心配をかけてはいけないと
「承知いたしましたわお父様」
とココは笑顔で答えるのであった。
『でも、陛下に約束させるとか不敬じゃないのかしら……』
と内心思ったのは父には秘密である。
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時は少々過ぎ去って城での顔合わせの当日、緊張しながら茶会の席へついたココは喉の渇きを癒すために用意されたお茶を口にする。
ガチガチになっているココの様子を見て母のアクマー公爵夫人は、優しく微笑み
「心配いらないわよココ、この母もちゃんと横にいますからね」
とココの背中を撫でで落ち着かせようとしてくれていた。
「はい、お母さま……初めての王城だと思うと緊張してしまって……」
「ふふ……そうね、確かに初めての場所……しかも王城ですもの緊張するなという方が無理なのはよくわかるわ。でも貴女はアクマー公爵令嬢としてどこに出しても恥ずかしくない、わたくしの可愛い娘なのだから自信を持ちなさい」
とアクマー公爵夫人は笑顔で話しかけた、その言葉を受けて
「お母さま……」
と涙ぐんでしまう。
「あらあら大変! もうすぐ王妃殿下方がいらっしゃるのだからしっかりしましょうね」
と、急いでポーチからハンカチを取り出し涙がこぼれる前にポンポンと目が下に充ててふき取る。
「はい、お母さま申し訳ありません……」
一生懸命涙をこらえながらココは、もうすぐいらっしゃるであろう王妃殿下方をキチンとお迎えしようと、姿勢を正すのであった。




