48_【祭】最終日・『踊る阿呆、同じ阿呆』
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【祭】最終日
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――チャンカ、チャンカ♪ チャンカ、チャンカ♪
その音は、夢の淵からわたしをすくい上げるようにリズミカルに響いていた。
朝の静寂を破るような、でもどこか懐かしいような不思議な音色。
「……んん?」
わたしは重いまぶたを擦りながら、布団から上半身を起こした。
なんだろう、この音は。
いつものような張り詰めたような静けさじゃない。
なんだかとっても楽しげな音がする。
まだ眠気の残る頭で、わたしは習慣のように神棚を見上げた。
――『踊る阿呆、同じ阿呆』
「……は?」
わたしは目をパチクリさせた。
これが……本当に最後の【守り事】なの……?
いや、それよりも外だ。
窓の外から聞こえてくる音は、どんどん大きくなっていた。
「踊る阿呆に見る阿呆! 同じ阿呆なら踊らにゃそんそん!」
その奇妙で楽しげな音頭に誘われるように、わたしはフラフラと玄関を開けた。
外では村人たちが、全員踊っていた。
愉快に、思い思いの踊りを全力で踊っていた。
笠の代わりに帽子を被り、手を高く上げて阿波踊りを踊るおばあちゃん。
やぐらの周りを回るように、しっとりと盆踊りを踊るおじいちゃん。
中にはクワを担ぐような仕草で田植え踊りをしている人もいる。
バラバラだ。
地域も、リズムも、動きも、てんでバラバラだ。
なのに……不思議と一体感があった。
成功者も、失敗者も、村人全員が満面の笑みを浮かべて楽しそうに踊っている。
【祭】だ。これは、わたしが知っている【祭】だ。
わたしは、思わず喜んだ。
「あはっ……あははははは!」
口から勝手に笑い声が漏れた。
なんだか楽しくなって、わたしはその踊りの輪の中に飛び込んだ。
「エライヤッチャ! エライヤッチャ! ヨイヨイヨイヨイ!」
やり方なんて知らない。伝統なんて分からない。
でもそれでいい。
「エンヤートット! エンヤートット!」
周りの人をマネするのもいい。記憶を頼りに適当に踊るのもいい。
楽しければそれでいい。
「ハッ! ソレソレソレソレ!」
誰かの掛け声に合わせて、わたしも叫ぶ。
ノドが枯れても構わない。
足が痛くなっても構わない。
【祭】は【祭】らしく、もっと盛り上げないと。
もっともっと楽しまないと。
視界がぐるぐると回る。
思考が溶けていく。
楽しい。楽しい。楽しい!
「踊る阿呆に見る阿呆! 同じ阿呆なら踊らにゃそんそん!」
それは村人たちの声であり、わたしの声であり、そして――。
どこか遠くで、地面の底から響いてくるような低い低い笑い声のような気がした。
それでもわたしは踊るのを止めなかった。
日が暮れるまで。
この身体が動かなくなるまで。
「あはははははははははは!!!」
わたしは、この狂った輪の中でただひたすらに踊り続けた――。




