34_【祭】十四日目・【どろどろ様】の夢
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【祭】十四日目
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――夢を見た。それはとても奇妙な夢だった。
私の目の前に、【どろどろ様】が居る。
でも、どんな顔をしているのか、どんな姿をしているのか、モヤがかかっていてまるで分からない。
だけど、『分かる』のだ。それが【どろどろ様】だと。
【どろどろ様】は、わたしの頭に向かって手を伸ばす。
何をするんだろう? おっかなびっくりに、頭を差し出す。
すると、【どろどろ様】はわたしの頭を撫でてくれた。
まるで、よく頑張ったねとほめてくれるかのように。
それから【どろどろ様】は楽しそうに笑い、そして、そして――。
瞬間、世界がズルリと落ちた――。
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わたしは、ビクッとなって起きた。
ああ……なんだか気分が優れない。きっと変な夢を見たせいだ。
いや、気分が優れないだけじゃない。
なんというか……すごく表現し難いけど、『世界がズレている』という感じがする。
まるで度の合っていないメガネをかけさせられているような、そんな気持ちの悪い違和感。
頭ははっきりしている。昨日の記憶もある。
でも身体の感覚はバラバラで、五感の歯車が噛み合っていないみたいだ。
ベッドに横になっているはずなのに、自分が宙に浮いているのか、それとも泥の中に沈んでいるのかさえ分からない。
とにかく起きて今日の【守り事】を確認しないと。
わたしは目を開けて身体を起こす。
……え? なに、これ……?
わたしは今しがた、信じがたい体験をした。
身体が起き上がった感覚はあるのに、視界は微動だにしなかったのだ。
おかしい。おかしいと言えば、見えている景色もおかしい。
いつもなら枕元のシーツとか、天井とか、あるいはわたしの顔を覗き込んでくるスネコスリが見えるはずだ。
なのに今、私の視界いっぱいに広がっているのは――巨大な壁のような、わたしのスニーカーの側面だった。
わたし今、ちゃんと起き上がったハズだよね?
なのにどうして、スニーカーが見えているの?
まるで、地面から見上げているかのように。
これは夢の続きなの? それとも――。
あまりにも現実離れした光景に、頭が理解を拒否している。
わたしは目を強く閉じ、その場に寝転がる。
背中には高級羽毛布団のフカフカした感触がある。
シーツの滑らかな肌触りも感じる。
手足もちゃんと動く。温かい血が通っているのが分かる。
これは……夢じゃない。
わたしは目を開け、改めて立ち上がってみる。
夢じゃないなら、視界はいつも通りの高さに戻るハズ。
……戻らない。どうして? なぜ?
身体は起き上がっていて、布団の上に立っているハズなのに。
見えている景色は、相変わらずスニーカーの側面のままだった。
身体の動きと、目で見ている景色がまるで一致しない。
首が動く感覚はある。頭が回転する感覚もある。……でも、視界は微動だにしない。
視界が――完全に固定されている。
心臓が、ドクンと跳ねた。パニックの波が押し寄せてくる。
わたしはずっと、羽毛布団の上に居ると思い込んでいた。
だけど、わたしの視界は違うところにある。
じゃあ、じゃあわたしは今……本当はどこに居るの?
慎重にしゃがんで、手を伸ばしてみる。
ツルツルしたシルクの感触が伝わってくる。
間違いない。『ここ』は羽毛布団の上だ。
じゃあ、このリアルな映像は何?
誰かが見ている映像が、わたしに直接送信されているの?
SF映画みたいに、VRゴーグルでも括りつけられているの?
まさかと思いつつ、わたしは自分の顔に触れる。
何も、無かった。
何度触ろうとも、どこを触ろうとも、指先に伝わってくるのはツルツルしたゆで卵みたいな感触。
目も、鼻も、口も、耳も――。
あるハズのモノが、全て消えていた。




