27_【祭】七日目・初の失敗者1
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【祭】七日目
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この村に暮らし始めて、七日目の朝を迎えた。
正直に言えば、今日はどんな【守り事】が追加されるんだろうと、怖さ半分、楽しさ半分なところはあった。――しかしそれも、四日目ぐらいまでだった。
今では朝を迎える度に、憂鬱な気分になる。
今度はどんな厄介事が増えるのか、恐ろしさしかない。
わたしはふと、これまでの【守り事】を振り返ってみた。
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一日目、『家出る時、柏手三回』。
二日目、『歩く時、けんけんぱ』。
三日目、『無機物万歳、石は殿様』。
四日目、『見ざる、触れざる』。
五日目、『賛美賛美、新人賛美』。
六日目、『腹話術、大事で一番の口』。
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なんともまあ、カオスなラインナップだ。
規則性も何もあったもんじゃないな、と強く感じる。
一番大変だったのは、二日目かな。
転びそうになるし、何より肉体的に辛かった。
一番怖かったのは、文句無しで四日目だ。
あんな思い、もう二度としたくない……。
一番楽しかったのは、もちろん五日目だ。
あんなに笑ったのは本当に久しぶりだった。
それにしても、【どろどろ様】はいったいどういう基準で【守り事】を決めているんだろう?
時に簡単だったり、時に難しかったり。
時に滑稽だったり、時にシュールだったり。
平八郎さんは、これは【祭】であると同時に試練でもある、って言ってた。
【守り事】は毎年違っていて、予習も復習も出来ない。
人知を超えた力――不老を得る為の、困難で辛い試練だって。
本当に……そうなのかな?
なんていうか、言葉にはしづらいんだけど、試練というよりは……。
子どもが好き勝手に決めている、遊びのように感じていた――。
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そして昼過ぎ、ついに――初の失敗者が出た。
今日の【守り事】は、『毎時毎礼、七礼一拍四礼』。
つまり、一時間に一回七礼一拍四礼をしなさい、ということだ。
普通であれば『二礼二拍手一礼』だ。
この数字とテンポが、身体に刻み込んであると言っても過言ではないと思う。
正直、わたしも何度も失敗しそうになった。
七礼のところで一回足りなかったり、逆に四礼のところで一回多くやりそうになったり。
失敗した村人は、一拍手多くやってしまったそうだ。
分かる。よく分かるよ、その失敗。わたしも何回寸止めしたことか。
新しい【守り事】の恐ろしいところは、こういうところだ。
常にルールが更新されるから、常に適応していかなければならない。
練習も出来ない。法則性もない。
毎日が失敗の許されない本番だから、ずっと丸裸の自分で挑戦し続けているような気分になる。
失敗した村人――黒のベストを着たおじいさんは、拝むように手を合わせ、額をこすりつけるように土下座した。
「ああ……! 申し訳ねぇ! 申し訳ねぇ、【どろどろ様】!! せっかく自分を選んでもらえたってのによぉ!!」
あまりにも必死に謝る姿に、わたしはギョッとなった。
どうしてあんなに謝るの? それに……凄く怖がっているように見える。
もしかして……失敗したら何かあるの? そう、例えば――【どろどろ様】からの罰とか?
……え、待って。そ、そんなの聞いてない!
わたし、勝手に【祭】に参加することになっただけなのに……!?
「……そんな顔をすんなって。トーノさんの心配しているような事はねぇよ」
いつの間にか近くに来ていた平八郎さんが、わたしを励ますように言った。
ほ、本当に? どうしてわたしの心配事が分かったんだろう?
そんなに顔に出てたかな……?
平八郎さんは土下座したままのおじいさんに近づき、背中を優しくポンポンと叩く。
「今回は残念だったな。だが、次もきっと【どろどろ様】が選んでくれるさ」
「ああ……ああ、そうだな。ありがとうよ、平八郎さん」
平八郎さんに励まされ、おじいさんは笑顔で立ち上がった。
どうやら本当に罰は無いみたいだ。
そうだよね。【祭】に失敗して、ショックなだけだったんだよね。
おじいさんには悪いけど、わたしは心の底から安堵していた。
もし失敗したらどうなるのか――。
正直、ずっと心配だった。けど、これでもう安心だ。もし失敗しても、何の問題も――。
「じゃあ、『分かってる』よな?」
「ああ、頼むよ」
平八郎さんにうながされ、おじいさんは左の革手袋のボタンを外す。
そういえば……どうして村の人たちはずっと黒の革手袋を付けたままなんだろう?
思い出してみると、この村に初めてきた時からそうだった。
今になって、そう疑問に思った。
疑問に思うことが、他に多すぎたから。
その答えは――すぐに目の前に現れた。




