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一ニ三五村のどろどろ様~火車女教授の現代妖怪譚~  作者: 綺村 亮介


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15/17

15_【祭】二日目・【守り事】

 夜、布団に寝転がり、スネコスリを抱きしめながら天井を見上げる。

 永遠の若さ――不老。今になっても、心のどこかでは信じられない自分が居る。

 でも、村の秘密の一端と、平八郎さんの話を聞いた後なら『分かる』。



 妖怪が――この村には、【どろどろ様】が本当に居るんだって。



 【守り事】が書かれた巻物に視線を向ける。

――『家出る時、柏手三回』

 たったこれだけを守り通せばいいらしい。


 本当に……本当にこんな簡単なことで、不老をもらえるのかな……?

 なんだかとっても嫌な予感がする……。


 うつらうつらと、眠気が襲ってくる。

 疲れから……というより、満腹感からかな。


 ああ……夜ごはんも最高だった。

 生ハムの原木に、北京ダック。それにA5ランクのシャトーブリアンなんて初めて食べたよ。

 美味しすぎると泣いちゃうなんて言うけど、本当に涙が流れるとは思わなかった。


 ああ……明日のごはんも楽しみだなぁ……。



******************

【祭】二日目

******************


 何の前触れもなく、わたしはハッと起きた。

 朝は弱いはずなのに、眠気は一つも感じない。

 スマホで時間を確認するよりも先に、わたしは自然と巻物を見つめていた。


 再び墨が流し込まれるように、古い【守り事】が消え、新しい【守り事】が追加されていく。

 ああ……やっぱり。嫌な予感は当たった。たった一つで終わるわけがないなんて思った。


 なんとなく、今になって『分かった』。

 きっと毎朝、この時間に、新しい【守り事】が更新されていくのだと。

 そして更新された【守り事】は――。


「……へ? こ、これを守れっていうの……?」

 それを見て、わたしは呆然とした。



――『歩く時、けんけんぱ』



 『けんけんぱ』って……あの子どもの時にやった、あの遊び?

 片足、片足、両足で跳び跳ねるアレだよね?


 と、とにかくやってみよっか。

 わたしは家の中を、けん(片足)、けん(片足)、ぱ(両足)、と歩いてみる。

 ……うん、意外となんとかなるかも。それに、結構楽しいし。


 さーて、今日の朝ごはんは何かなー?

 不老よりも、ごはんの方が楽しみで仕方がない。

 わたしはけんけんぱをしながら玄関に向かう。


 けんけんぱ、けんけんぱ、けんけん――。

「あっ……! やばっ……!」

 片足に力を入れ、慌てて踏みとどまる。

 しまった! 玄関が狭いから、両足を広げられるスペースがない!


 え? ええ? ど、どうしたらいいんだろう?

 ぱっ、と両足を広げるには、玄関の向こうに行かないといけない。

 こ、こうなったらイチかばちか……!


「けん、けん……!」

 片足に力を入れ、思いっきり飛ぶ。

「ぱぁぁぁーーー!」

 玄関の扉が肩にかすりながらも、なんとか無事に着地できた。


 あ、危なかったー……。いきなり失敗するところだったよ……。

 タイミングを考えながら歩かないと、もっと大惨事になりそう……。


 辺りを見渡すと、村人全員がけんけんぱで歩いている。

 その姿はなんとも滑稽で、なんとも異様としか言いようがなかった。


 そして、ようやく実感した。いよいよ【祭】が始まったのだと。

 不老をもらう為の【祭】は、どうやら一筋縄ではいかないようだ――。


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