15_【祭】二日目・【守り事】
夜、布団に寝転がり、スネコスリを抱きしめながら天井を見上げる。
永遠の若さ――不老。今になっても、心のどこかでは信じられない自分が居る。
でも、村の秘密の一端と、平八郎さんの話を聞いた後なら『分かる』。
妖怪が――この村には、【どろどろ様】が本当に居るんだって。
【守り事】が書かれた巻物に視線を向ける。
――『家出る時、柏手三回』
たったこれだけを守り通せばいいらしい。
本当に……本当にこんな簡単なことで、不老をもらえるのかな……?
なんだかとっても嫌な予感がする……。
うつらうつらと、眠気が襲ってくる。
疲れから……というより、満腹感からかな。
ああ……夜ごはんも最高だった。
生ハムの原木に、北京ダック。それにA5ランクのシャトーブリアンなんて初めて食べたよ。
美味しすぎると泣いちゃうなんて言うけど、本当に涙が流れるとは思わなかった。
ああ……明日のごはんも楽しみだなぁ……。
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【祭】二日目
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何の前触れもなく、わたしはハッと起きた。
朝は弱いはずなのに、眠気は一つも感じない。
スマホで時間を確認するよりも先に、わたしは自然と巻物を見つめていた。
再び墨が流し込まれるように、古い【守り事】が消え、新しい【守り事】が追加されていく。
ああ……やっぱり。嫌な予感は当たった。たった一つで終わるわけがないなんて思った。
なんとなく、今になって『分かった』。
きっと毎朝、この時間に、新しい【守り事】が更新されていくのだと。
そして更新された【守り事】は――。
「……へ? こ、これを守れっていうの……?」
それを見て、わたしは呆然とした。
――『歩く時、けんけんぱ』
『けんけんぱ』って……あの子どもの時にやった、あの遊び?
片足、片足、両足で跳び跳ねるアレだよね?
と、とにかくやってみよっか。
わたしは家の中を、けん(片足)、けん(片足)、ぱ(両足)、と歩いてみる。
……うん、意外となんとかなるかも。それに、結構楽しいし。
さーて、今日の朝ごはんは何かなー?
不老よりも、ごはんの方が楽しみで仕方がない。
わたしはけんけんぱをしながら玄関に向かう。
けんけんぱ、けんけんぱ、けんけん――。
「あっ……! やばっ……!」
片足に力を入れ、慌てて踏みとどまる。
しまった! 玄関が狭いから、両足を広げられるスペースがない!
え? ええ? ど、どうしたらいいんだろう?
ぱっ、と両足を広げるには、玄関の向こうに行かないといけない。
こ、こうなったらイチかばちか……!
「けん、けん……!」
片足に力を入れ、思いっきり飛ぶ。
「ぱぁぁぁーーー!」
玄関の扉が肩にかすりながらも、なんとか無事に着地できた。
あ、危なかったー……。いきなり失敗するところだったよ……。
タイミングを考えながら歩かないと、もっと大惨事になりそう……。
辺りを見渡すと、村人全員がけんけんぱで歩いている。
その姿はなんとも滑稽で、なんとも異様としか言いようがなかった。
そして、ようやく実感した。いよいよ【祭】が始まったのだと。
不老をもらう為の【祭】は、どうやら一筋縄ではいかないようだ――。
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