14_【祭】一日目・一ニ三五村の秘密
【どろどろ様】。正体不明の妖怪……。
火車さんすらも知らない妖怪って、いったいどんな存在なんだろう……?
知りたい。どうしても知りたい。
助手として、火車さんに教えてあげたい。そして、火車さんの喜んだ顔が見てみたい。
「あのー……平八郎さん。是非とも教えて欲しいことがあるんですが……」
「トーノさん……いくらなんでもそいつはダメだ」
まだ何も聞いてないのに、いきなり断られてしまった。
「【どろどろ様】について聞きたいんだろう? 顔にそう書いてある。なんとまあ、分かりやすいこって」
むう、この村の警備員――大番をやっているだけあって、火車さん並に鋭い。
「そこをなんとか! 気になって夜も眠れないんですよ!」
本当は10時間近く寝たけど。
「いくら家族同然だろうと、【どろどろ様】については何も教えられねぇ。コイツは、村の掟だ」
平八郎さんは頑として言い放った。
村の掟と言われてしまったら、もうこれ以上は詮索出来そうにない。
ここは、アプローチを変えるべきだろう。
「じゃあ……【祭】を成功させると何があるの?」
「ソイツも、村の掟で何も言えねぇ」
ピシャリと言われてしまった。これは……思ってた以上にガードが硬いかも。
どうしよう? 秘密だらけの村なのに、分かったのはごはんが豪華なことぐらいだ。
助手として、何でもいいから情報を得ないと……!
「お願い、平八郎さん。これだけは教えて。この村は――ううん、一ニ三五村は、本当に不老不死の村なの?」
わたしは懇願するように質問する。
平八郎さんは大きく息を吸い、根負けした、とでも言うように乱暴に頭を掻く。
「ある意味この一ニ三五村は、公然の秘密となってるからな……。まあ、言っても問題は無いだろう」
「公然の秘密……?」
「財閥、政府高官、華族……。いわゆる上級国民は、この村を知っている者が多いってことだ。それでいてなお、存在は公にされていない。――意味は分かるだろう?」
その言葉を受けて、ようやく納得がいった。この村に、上級国民しか居ないことに。
つまりは、不老不死を独占しているということだ。
なんて……なんて分かりやすい、腐った権力なんだろう。
「それと、残念ながら不死ではねぇんだ。桂太郎さんの件を忘れたかい?」
そうだ、その通りだ。不死も与えられるのなら、心臓発作なんかで死ぬわけもない。
「だが既に知っての通り、不老については本当だ。昨日の小銃で分かったと思うが、おりゃあ戦争帰りの人間だ。アイツは当時からの相棒でな」
「第二次世界大戦経験者ってことは……その見た目で本当に百歳前後なんですか……!?」
そう、平八郎さんはどう見ても40代にしか見えない。
「ん? ああ……そういや昨日、あの赤髪の娘っ子も勘違いしてたな。あの小銃が、第二次世界大戦の主力小銃――三八式だって。見た目に違いがねぇから分かりゃあせんがな。おりゃあの相棒は、ソイツの前世代――三十式だ」
三十式? 聞いたことがないけど、いつ頃の銃なんだろう?
「おりゃあは、第一次世界大戦帰りだ。いろいろあって、第二次には参加してねぇ」
「え? 第一次世界大戦って、百年以上前の出来事よね……? じゃあ、平八郎さんの年齢って……?」
「ああ、おりゃあは130歳ちょっとになる。この村じゃ一番の若造だ」
「ひゃ、130歳で一番若いの……!?」
確かギネスでは、120歳ぐらいだったハズ。一番若い平八郎さんでさえギネス超えだなんて……。
この村の最高年齢は、いったい何歳なんだろう……?
「いいかい、トーノさん。不老を得られる条件はたった二つだけだ。【どろどろ様】に選ばれ、そして……【祭】の成功者となる」
……え? たったそれだけ? たったそれだけで……不老になれてしまうの?
「その、ずっと気になっていたんだけど……【どろどろ様】に選ばれる条件はあるの?」
「それは……分からねぇ。元総理だろうと、日本で一番の大金持ちだろうと、【どろどろ様】に選ばれず、この村を去っていった者は多くてな。村の歴史を読み漁っても――」
平八郎さんはハッとした表情になり、慌てて口をつぐむ。
「……どうやらとんだ聞き上手のようだな、トーノさんは。このおりゃあが話し過ぎちまうとは……」
「あ、あはは……光栄です……」
わたしが聞き上手だなんて思ったことは、一度もないんだけどな……。
「その、もっといろんなことを聞かせてくれたりとかは……?」
平八郎さんは黙ったまま首を横に振る。うう……明確に拒否されてしまった。
「これ以上を――いや、全てを知りたきゃ、【祭】を――【守り事】を全力で守り通してみるんだな」
読んでいただきありがとうございます!少しでも楽しんでいただけたら、下部の☆☆☆☆☆から評価をお願いできると嬉しいです!




