表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一ニ三五村のどろどろ様~火車女教授の現代妖怪譚~  作者: 綺村 亮介


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/15

13_【祭】一日目・一ニ三五村からの電話

 集会場の近くに、それはあった。

「……え? これが……電話なんですか?」

 四角い緑の物体に、数字が並んでいる。見た目はまるで、マインクラフトだ。


 右上の方に、自販機のようなコイン投入口がある。

「10円? 10円が必要なの?」

 ものは試しと、10円を入れてみる。


――チャリーン。


「あ、あれ? どうして入らないの?」

なぜか知らないけど、10円が戻ってきてしまった。


「ふふ、受話器を上げてからコインを入れるんだよ。まあ、コイツは『最新の公衆電話』だからな。使い方が分からんのも無理はねえ。おりゃあも赤電話に慣れてたから、苦戦したもんさ」

 さ、最新の公衆電話? それに、赤電話って何……?


 平八郎さんの指示通り、受話器を上げてからコインを入れる。そしてスマホを見ながら、火車さんの番号を入力する。……これで合ってるの?


 ピポパポ、という音の後に、プルルルという聞き慣れた音が鳴り響く。

今も昔も、この辺は変わらないってことかな。


「……もしもし? どちら様かしら?」

 やった! 本当に繋がった!

まだ一日しか経ってないのに、火車さんの声を聞くのがずいぶんと久しぶりな気がする。


「もしもし! わたしは――!」

 ブツ、という音の後に、プープーという音が鳴り響く。


「……あれ? もしもし? もしもーし?」

 電話が切れてる? え? なんで? どうして?


「あっはっはっ! トーノさん、続けて10円を入れないとダメだって」

 続けて10円を入れる? い、意味が分からない……。


「あっ、もう10円がない……」

「ありゃま。……仕方がない。おりゃあのコイツを貸してあげるかね」

 そう言って平八郎さんが手渡してくれたのは――。


「……カード?」

 それは、ペラペラのクレジットカードのようなモノだった。裏は灰色で、表にはなぜか水着の女性が印刷されている。

 まさか、クレジットカードを使って電話するの?


「なんだ、テレカも知らないのかい? ふふ、どうやらトーノさんはハイテクに弱いんだな」

 平八郎さんは楽しげにそう言った。……そもそも、『ハイテク』ってどういう意味だろう?


 楽しそうにしているだけに、聞き返すのもなんだか悪いな……。

わたしは黙ってテレカとやらを公衆電話に入れ、番号を入力する。


「もしもし? まさかとは思うけど……トーノなの?」

「そ、そうです! トーノです!」

 さすが火車さん! すぐにわたしだって気づいてくれた!


「驚いたわね……。どうやって連絡を取ろうかと悩んでいたけど、まさか直接電話をしてくるなんて……」

「ええ、正直わたしも驚いてます」


「体調は大丈夫? 変なことはされてない? 怪しげな薬を飲まされたり、謎の儀式が始まってたりは?」

「後半の質問、おかしくないですか……? まあ……幸いなことに、いろいろ良くしてもらってまして」

「そう、それは何よりだわ」


 電話の向こうから安堵のため息が聞こえた。

 心配してくれてたんだ。そう思うと、なんだか嬉しくなった。 


「それにしても、妖怪が居るかもしれない村に住めるなんて、うらやましい限りね」

「火車さんはそうでしょうけど、わたしとしては嬉しくないですよ……」

 普通のわたしにとって、異常なこの村に住むのは苦痛でしかない。……まあ、ごはんはとっても美味しかったけど。


「ところで……【どろどろ様】が何の妖怪か分かったんですか?」

「残念だけど、分からないままよ。地元の文献を漁ってみたけどサッパリね」

 まだ一日しか経っていないんだ。無理もない。


「そうね……トーノはダイダラボッチを知ってるかしら?」

「ダイダラボッチ……? ああ! ジブリで見ました!」

 なんだかよく分からないけど、とっても大きくて、とっても怖い妖怪だった気がする。


「ダイダラボッチには沢山の名前があるわ。ダイダラボウ、オオヒトヤゴロウ、ダイトウボウシ、レイラボッチ、ダダ星――」


ああ……始まってしまった。わたしは思わずため息をはいた。

火車さんは必要なこと以外あまり喋らないけど、妖怪話になると日が暮れるぐらいおしゃべりになるんだよねえ……。


 ふいに、平八郎さんがわたしの肩をトントンと叩き、公衆電話の左上を指差した。

……ん? これって何の数字だろう? なんだかドンドン減ってってる気が――。

 もしかして……残り時間?


「か、火車さん! その辺で! テレカの残り時間? とやらが無くなりそうなんです!」

「テレカを使ってるの? じゃあ公衆電話からだったのね。それなら仕方がないわ」

 火車さん、テレカを知ってるんだ。四歳しか違わないのに、なんで知ってるんだろう?


「つまり私が言いたいのは、地域によって呼び名が変わるということよ。おそらく、【どろどろ様】もその類でしょうね」

なるほど、通称と公称みたいなものかな?


「とにかく、【どろどろ様】の正体を探ってみるわ。トーノの方でも情報を集めてもらえると助かるわ」

「分かりました!」

「頑張ってね、トーノ。それから……」

 火車さんはシュンとした声で、


「厄介事に巻き込んでしまってごめんなさいね……」

そう言って、電話は切れた。


 火車さん……わたし、初めて本マグロの大トロを食べたんです。伊勢海老も、越前ガニも初めてでした。ごはんは三杯もおかわりしました。あんなに美味しい朝ごはんは初めてでした……。

 この村に来られてラッキー! だなんて思ってました。それなのに謝ってくれただなんて、なんだかごめんなさい……。



読んでいただきありがとうございます!少しでも楽しんでいただけたら、下部の☆☆☆☆☆から評価をお願いできると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ