12_【祭】一日目・一ニ三五村の住人
一ニ三五村のことがなんとなく分かってきた。
一度火車さんに報告を――って、しまった! ここ、ずっと圏外だったんだ!
これはマズイかも……。いったいどうやって連絡をとったらいいんだろう……?
「……トーノさん? どうかしたんですかい?」
村のことを嬉々として話していた平八郎さんが、心配そうな顔で覗き込んでくる。
火車さんには『秘密を漏らしたら処刑する』、って念を押すぐらいだ。
電話したいって言ったら、銃を突きつけられるぐらい怒られるかも……。
それでも……ええい、ままよ!
「あのー……つかぬことをお聞きしますが、この村に電話はありませんでしょうか? わたしのスマホは、ずっと圏外になってて……」
「……あの赤髪の娘っ子に電話するつもりかい?」
平八郎さんはジロリをわたしを睨む。
「ひえええぇぇぇ!? ご、ごめんなさい! や、やっぱり――!!」
「……この村には強力な電波妨害機器――つまり、ジャミングが設置されてあるから、外との手段は村唯一の公衆電話だけでな。案内してやるから、来なさい」
え? ええ? そ、それってつまり――。
「い、いいんですか……? わたし、余計なことを伝えちゃうかもしれませんよ……?」
てっきり怒鳴られるかと思ったが、意外や意外、OKをもらってしまった。
「無論、そいつは困る。だが……あの赤髪の娘っ子と話したいんだろう? 理由はどうであれ、だ。あの懐き具合を見てたら分かるんだよ」
そう……平八郎さんの言う通り、どちらかと言えば火車さんの声を聞きたい、という感情的な理由の方が大きかった。
だって……やっぱり寂しいから。
「後生だから、村のことはあんまり喋らんでくれよ?」
平八郎さんは困ったように笑う。まるで……娘をあやす父親のようだ。
「……ずっと疑問に思っていたんですが、どうしてそんなに親切なんですか? 昨日はあれだけ敵対していたのに、平八郎さんだけじゃなく、村人全員が急に優しくなるなんて……」
ずっとつきまとっていた違和感を一つを、やっと口に出来た。
わたしたちは、一ニ三五村の秘密を調査しに来た敵だ。
そして村人たちは、秘密を知ろうとする者は殺しても構わないという考えだ。にも関わらず、急にわたしだけを迎え入れてくれた。
【どろどろ様】に選ばれたとはいえ、この厚遇や態度は、招待客と言うより――。
「そりゃ決まってる。おりゃあたちは【どろどろ様】に選ばれ、【祭】を催す同胞だからだ。まあ……その……なんだ。家族に優しくするのは、普通のことだろう?」
普通。この村に最も合っていない単語が出てきた気がする。
超大金持ちだろうと、人殺しすら許される権力を持っていようと、ノーベル賞に選ばれるような偉人だろうと――。
【どろどろ様】に選ばれた人は、同じ地位となり、家族となる。
こんな、どこまでも普通なわたしでも――。
ああ……やっと分かった。この村にとって、【どろどろ様】が全ての基準なんだ。
【どろどろ様】に選ばれたか、そうじゃないか。
きっと……基準はその二つしかないんだ。
だからわたしは家族と認定されて、火車さんは敵と認定されたんだ。
つまり、この村では……神様も同然なんだ。
きっとみんな、不老が欲しいから。
でも、わたしは思ってしまう。
そんなに長生きすることが、本当に良いことなのかって――。
読んでいただきありがとうございます!少しでも楽しんでいただけたら、下部の☆☆☆☆☆から評価をお願いできると嬉しいです!




