11_【祭】一日目・一ニ三五村の案内
はー……美味しかった。まさかあんなに豪華絢爛な朝ごはんを食べられるなんて……。
お昼ごはんはどうなるんだろう? もしかしてもっと豪華になるのかな?
うーん、楽しみ! 早くお昼にならないかなー。
「いやー、いい食いっぷりでしたねえ、トーノさん」
「……はっ!? す、すみません……。新参者なのにガツガツ食べちゃって……」
「いやいや、若いもんはこうでないと。遠慮なんてしないでくださいな」
平八郎さんはこう言ってくれたが、ここは調査対象――敵陣の真っ只中だ。
いけない、気を引き締めていかないと。……でも、あの最高級霜降り肉は美味しかったなあ……。お肉が飲める、なんてウソっぱちだと思ってたけど、本当だったんだね……。
「そうだ、トーノさんはこの村の調査を行いたいんでしたよね?」
「は、はい。そうですけど……」
この村の秘密を探る。それが助手としての役目だ。でも、そう簡単には――。
「もし良ければ、おりゃあが村の案内をしましょうか? 他の人たちへのあいさつも兼ねて」
「……へ? い、いいんですか……?」
「ええ、もちろんでさ」
平八郎さんは笑顔で返事をしてくれた。こ、こんなに簡単に上手くいっていいのかな……?
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住民の数は約50人。家よりも畑の多い限界集落。――それが昨日までの印象だった。
よく見ると、外観は古いままなのに、ほとんどの家には最新式のエコキュートが備わっている。
玄関が開けっ放しの家には、最新のドラム型洗濯機と、信じられないぐらい大きなテレビが置いてあった。
加えて、『遊技場』と名付けられた大きな古民家に案内された時は、更に驚くべきものがいっぱいあった。
入ってすぐ目についたのは、まるでどこかの宮殿を思わせる調度品の数々。
ビリヤード台、卓球台、麻雀台といった普通のものが逆に浮いて見える。
極めつけが、絵画だ。わたしでも知っている超有名絵画が、何の防犯もされずにポンと置いてある。
いやいや、だってあれって去年に30億円で落札されたってニュースでやってたよ? さすがにコピー品だよね? ……逆にそうだと信じたい。
これではまるで、大金持ちの避暑地だ。思っていたことをそのまま口にすると、平八郎さんは笑って説明してくれた。
畑でクワを振り上げている、麦わら帽子のおじいさん。なんと、世界的に有名な五菱重工の元社長らしい。
汗をかきながら草取りをしている、ピンクの花がらを来たおばあさん。驚いたことに発明家らしく、特許をうなるほど持っているそうだ。
他にもすれ違う村人全員が、上級国民――いや、特級国民と呼べるほど偉い人たちばかりだ。
ルイヴィトンやシャネルといったハイブランドのハンカチを、ごく普通に農作業の汗拭きに使ってる。なんというか……次元が違いすぎる。
コンテナトラックが多いワケも、あの大きな道路がある理由も分かった。
ほぼ毎日、産地直送で高級食材を送られてくるからだそうだ。なんと、シェフも同伴らしい。
道路は、案の定というかなんというか……権力にものを言わせて整備したらしい。
この村を知れば知るほど、わたしの思い込みが――いや、価値観がボロボロと崩れていくのを感じる。
【どろどろ様】と呼ばれる怪しげな妖怪を信仰し、古い因習に取り憑かれた忌まわしき村。……そう思っていたんだけど……。
実際は、隠居した権力者たちの隠れ家、という感じだ。
それぞれ好きなことをしているから、みんな笑顔だし、みんな幸せそうだ。
ただ……どうしてだろう? 拭いきれない違和感があるのは……。
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