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一ニ三五村のどろどろ様~火車女教授の現代妖怪譚~  作者: 綺村 亮介


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11/14

11_【祭】一日目・一ニ三五村の案内

はー……美味しかった。まさかあんなに豪華絢爛な朝ごはんを食べられるなんて……。

 お昼ごはんはどうなるんだろう? もしかしてもっと豪華になるのかな?

 うーん、楽しみ! 早くお昼にならないかなー。


「いやー、いい食いっぷりでしたねえ、トーノさん」

「……はっ!? す、すみません……。新参者なのにガツガツ食べちゃって……」

「いやいや、若いもんはこうでないと。遠慮なんてしないでくださいな」


 平八郎さんはこう言ってくれたが、ここは調査対象――敵陣の真っ只中だ。

いけない、気を引き締めていかないと。……でも、あの最高級霜降り肉は美味しかったなあ……。お肉が飲める、なんてウソっぱちだと思ってたけど、本当だったんだね……。


「そうだ、トーノさんはこの村の調査を行いたいんでしたよね?」

「は、はい。そうですけど……」

 この村の秘密を探る。それが助手としての役目だ。でも、そう簡単には――。


「もし良ければ、おりゃあが村の案内をしましょうか? 他の人たちへのあいさつも兼ねて」

「……へ? い、いいんですか……?」

「ええ、もちろんでさ」

 平八郎さんは笑顔で返事をしてくれた。こ、こんなに簡単に上手くいっていいのかな……?



 ※----------※


 

 住民の数は約50人。家よりも畑の多い限界集落。――それが昨日までの印象だった。

 よく見ると、外観は古いままなのに、ほとんどの家には最新式のエコキュートが備わっている。

 玄関が開けっ放しの家には、最新のドラム型洗濯機と、信じられないぐらい大きなテレビが置いてあった。


 加えて、『遊技場』と名付けられた大きな古民家に案内された時は、更に驚くべきものがいっぱいあった。

入ってすぐ目についたのは、まるでどこかの宮殿を思わせる調度品の数々。

 ビリヤード台、卓球台、麻雀台といった普通のものが逆に浮いて見える。


 極めつけが、絵画だ。わたしでも知っている超有名絵画が、何の防犯もされずにポンと置いてある。

 いやいや、だってあれって去年に30億円で落札されたってニュースでやってたよ? さすがにコピー品だよね? ……逆にそうだと信じたい。


 これではまるで、大金持ちの避暑地だ。思っていたことをそのまま口にすると、平八郎さんは笑って説明してくれた。


 畑でクワを振り上げている、麦わら帽子のおじいさん。なんと、世界的に有名な五菱重工の元社長らしい。

 汗をかきながら草取りをしている、ピンクの花がらを来たおばあさん。驚いたことに発明家らしく、特許をうなるほど持っているそうだ。


 他にもすれ違う村人全員が、上級国民――いや、特級国民と呼べるほど偉い人たちばかりだ。

 ルイヴィトンやシャネルといったハイブランドのハンカチを、ごく普通に農作業の汗拭きに使ってる。なんというか……次元が違いすぎる。


 コンテナトラックが多いワケも、あの大きな道路がある理由も分かった。

 ほぼ毎日、産地直送で高級食材を送られてくるからだそうだ。なんと、シェフも同伴らしい。

 道路は、案の定というかなんというか……権力にものを言わせて整備したらしい。


 この村を知れば知るほど、わたしの思い込みが――いや、価値観がボロボロと崩れていくのを感じる。


 【どろどろ様】と呼ばれる怪しげな妖怪を信仰し、古い因習に取り憑かれた忌まわしき村。……そう思っていたんだけど……。

 実際は、隠居した権力者たちの隠れ家、という感じだ。

 それぞれ好きなことをしているから、みんな笑顔だし、みんな幸せそうだ。


 ただ……どうしてだろう? 拭いきれない違和感があるのは……。


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