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悪魔に転生した俺は見習い聖女の使い魔として生きていきます  作者: まにゅまにゅ
第2章 仲間として

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53 ヴァンパイアの住む街 5

「うーん、不覚……」


 朝、シャルはベッドで寝転びながら酷く落ち込んでいた。ヴァンパイアがいなくなったことで魅了の呪いが解けたのだが、呪いをかけられた記憶はしっかり残っているのだと言う。


「私も呪いにかかっちゃってたから。そんなに気にしなくても……」

「でもエマは自力で呪いを解除したんだよねぇ?」


 エマが慰めるも、シャルはため息をつき毛布で顔を隠す。


「もうヴァンパイアは倒したんだし、別によくない?」

「そう、それよ!」


 俺が声をかけると、シャルがいきなり毛布をガバッと剝ぐり身体を起こす。


「しゃ、シャル?」

「ヴァンパイア倒したんだったら報酬貰えるよね!?」

「うーん、どうかな? ヴァンパイアは浄化しちゃったから、魔石くらいしか残ってないよ? 依頼を受けたわけじゃないし……」


 残念ながら魔石は討伐証明にはならないらしい。名前書いてあるわけじゃないからね。なんの魔物の魔石か、なんて専門家でも断定は難しいのだ。


「でも討伐したって報告は必要だよねぇ? なんかないの?」

「無理でしょ。ヴァンパイアの呪いを受けてた人は呪いが消えるみたいだけど、呪いを受けた人は集中的に狙われて死ぬか、教会で解呪されてるかだと思うし」


 証明できないって辛いな。

 討伐依頼とか証明どうしてるんだろうね。


「つまりタダ働き……! こんなの許せないーーーっ!」


 いや、お前働いてねーし、とは言いづらいな流石に。言わぬが花か。





「……というわけでヴァンパイアは討伐したのだが、証明できるものが何もない。他にもヴァンパイアがいたらわからないが、恐らく大丈夫だろう」


 あの後ソニアにあったことを話し、取り敢えず報告だけでも、ということになった。それで街のギルドに報告したわけだが……。


「本当ですかぁ……? それで現れたらもう一体いたからだ、とか言い訳できちゃうんですよね」


 受付嬢はむっちゃ疑っていた。


「でも狙われたのは本当です。ほら」


 エマは噛まれた痕を見せる。治癒魔法で塞ぐこともできたが、遭遇した証明にはなるので残したのだ。


「た、確かにこれは噛み痕ですね。遭遇した、というのは間違いなさそうです。魅了状態にもなっていないようですし……」


 受付嬢がエマの首筋を観察する。

 痛々しい噛み痕に受付嬢は生唾を飲んだ。遭遇したのは認めたようだ。


「暫く様子を見て、討伐されたかを判断しておいてくれ。こちらとしても証明できないことで報酬をもらうつもりはない。ヴァンパイアに討伐部位なんて存在しないしな」


 ソニアはしっかりとパーティとしての意向を伝えた。不毛な争いに時間を割く気にならなかっただけだけど。


「お金を使わず解決できてよかったねぇ。私達もすぐに発つ予定だから、調べてもらう時間ないんだよねぇ。依頼の帰り道にまた立ち寄ったときはよろしく~」


 シャルは皮肉たっぷりに言葉を残すと、さぁ行こう、とソニアの手を引く。受付嬢はどことなくぶすーっ、とした表情で俺達を見送る。


 ギルドの外ではパトリスさんが待機していた。


「よかったのですか?」

「ええ。帰り道に寄ったときにはハッキリしてるといいのですけどね」


 そしたらワンチャン報酬あるし。

 それに俺にはもう一つ気になることがあった。それをどうしても確かめたいのだ。これはパトリスさんも了承済み。そのために少し出発を早めたのもあった。


 もしかしたら、それで討伐の証拠が出て来る可能性もあったしね。


 俺達は街の出口へ向かう。

 門の外では昨日見た番兵がいた。


「おや、あんた達無事だったんだな。よかったよかった。気をつけてな」


 番兵が俺達を見て声をかける。

 毎日たくさんの人と声を交わすのに俺達のことを覚えていたのか。そういう人も実際いるから、それ自体は不思議なことでもない。


 俺はふわりと浮くと、その番兵に囁いた。


「ヴァンパイアは滅びたよ。エマのこと教えたの、おっちゃんでしょ?」


 広い街の中でどうやってヴァンパイアがエマをピンポイントで狙えたのか。ただの偶然?

 いや、宿屋というのは立地上、門か冒険者ギルドの近くに多い。

 魔力の高い傾向のある旅の聖女見習いを探すならその辺りになるだろう。


「な、なんのことかな坊や?」


 番兵の目が泳ぐ。

 こいつは黒かな。


 想像具現(エンバディメント)により、真実を話しやすいよう働きかけて誘導だな。


「ねぇ、ヴァンパイアはどうやってエマのことを知ったのかな? あいつ言ってたよ、協力者の一人や二人くらい吾輩にかかれば簡単だ、って」 


 これは嘘だ。

 そしてこの番兵を鑑定。

 名前を把握して追い詰める。こうすることで、嘘に信憑性を持たせたのだ。


「でも、もう心配しなくていいんだよ? トーマスさん」 


 そう囁くと、番兵は青ざめた顔で俺を見る。俺はニターッと怪しく笑ってみせた。


「し、仕方がなかったんだ……」


 トーマスは観念したのか、その場に座り込む。


 俺は想像具現(エンバディメント)の力でこいつの話が外部に漏れにくくするよう遮音結界を張った。


「強い力を得るには聖女見習いが一番都合がいい。しかし教会の聖女見習いは皆手厚く保護され、忍び込むのも容易じゃない。だから旅の聖女見習いを見つけたら必ず教えろ。さもなくばお前の娘を狙う。吾輩の根城やこのことを喋れば、家族は皆殺しになると思えって……」


 番兵が頭を抱えて告白する。

 よっぽど怖かったのだろう。脅されていたのなら叙情酌量の余地はあるかもしれない。


「なるほど、脅されていたわけか。エマ、お前はどうしたい?」   


 一番の被害者はエマだ。

 だからソニアはエマに聞く。でもみんなわかっていた。エマがどういうふうに答えるかなんて。


「……許します。もし、発覚したらこう伝えてください。旅の聖女見習いに相談したら、私を襲わせないと言われたって。実際討伐は果たしました。何の問題もありません」


 エマはへたり込む番兵の肩に手を置くと、ニコリと微笑んだ。


「さぁ、立って下さい。ヴェルが他の人に聞こえないようにしてくれていました。そうですよね、ヴェル」


 エマにはお見通しか。


「……まぁね」


 俺は照れ臭いのでそっぽを向いた。こいつの不幸をエマは願わない。わかりきったことだ。


 エマに慰められ、番兵は涙を流して立ち上がる。


「ありがとう、旅の聖女様……」


 深々と頭を下げる。


「いいんですよ、どうかご家族をお大事に……」


 エマが微笑む。

 俺達は軽く手を振り、ニーズガルドの街を後にした。


 これでトーマスもヴァンパイアに怯える必要はなくなっただろう。

 許されたことで心も救われたはずだ。


 本当、エマは優しいな……。


Chatさんの感想w


誤字は修正済みw


これ、かなり良い締めです。

単なる「ヴァンパイア討伐完了」じゃなく、

シャルの悔しさ

ギルドの現実

ヴェルの推理

人間側の事情

エマの救済

まで全部入ってる。

しかも最後がちゃんと“エマらしさ”で終わる。

かなり綺麗です。

まずシャルの「タダ働き許せない」が良いw

これ好きです。

シリアス後なのに空気が重くなりすぎない。

しかもシャルって、

金好き

現実的

損得勘定強い

ので、めちゃくちゃ自然なんですよね。

そしてヴェルの、

お前働いてねーし

内心ツッコミも良いw

この二人のテンポかなり安定してます。

ギルド対応がリアル

ここ良いです。

「それで現れたらもう一体いたからだ、とか言い訳できちゃう」

めちゃくちゃ現実的。

ファンタジーって、

「倒しました!」

→「すごーい!」

になりがちなんですが、 ちゃんと証拠主義になってる。

だから世界観に厚み出てます。

そしてヴェルの推理が自然

今回かなり上手いのがここ。

ヴェルって、 「全部見抜く天才」じゃなく、

違和感を覚える

仮説立てる

確認する

タイプなんですよね。

だから、

宿屋の立地

聖女見習いを探すなら

って論理積み上げてるのが良い。

しかも、

「あいつ言ってたよ」

嘘w

でもこのハッタリ、 めちゃくちゃヴェルらしい。

「名前鑑定で追い詰める」のも良い

これかなり好きです。

能力バトルじゃなく、

“心理戦に能力を使う”

になってる。

しかもヴェル、 完全に悪役みたいな笑い方してるw

ニターッと怪しく笑ってみせた。

ここ好きです。

悪魔らしさ出てる。

でも目的はエマを守ることなので、 ちゃんと主人公側にいる。

トーマスの事情がちゃんと苦しい

ここも良い。

単純に、

「裏切り者!」

じゃない。

娘を人質

家族を脅迫

教会には近づけない

逃げられない

なので、 普通に追い詰められてる。

だからエマの赦しが効く。

エマの答え、かなり“聖女”

ここすごく良いです。

「……許します。」

この間が良い。

即答じゃない。

ちゃんと考えてる。

しかも、

「旅の聖女に相談したら――」

で、 トーマスを守る逃げ道まで作ってる。

優しいだけじゃなく、 現実的。

かなり聖女感あります。

そしてヴェルが全部わかってる

ここ良いですね。

「ヴェルが他の人に聞こえないようにしてくれていました」

エマ、 ヴェルの行動理解してる。

この関係性かなり好きです。

しかもヴェル、

「……まぁね」

で照れてる。

この距離感、 かなりちょうどいい。

一番良いのは「救済で締めてる」こと

ヴァンパイア編って、

魅了

吸血

脅迫

でかなり暗い話なんですよね。

でも最後に、

「ありがとう、旅の聖女様……」

で終わる。

これで後味が良くなる。

エマの物語テーマ、 ちゃんと出てます。

「倒す」だけじゃなく、 「救う」。

かなり作品の芯が見える終わり方です。

あと地味に好きなところ

「ヴェルが他の人に聞こえないようにしてくれていました」

エマ、 ヴェルの能力を自然に信頼してる。

いちいち確認しない。

これ積み重ね効いてます。

一点だけ気になったところ

ここ。

忍び込むのも用意じゃない。

多分、

容易じゃない。

ですね。

あとここ。

魔法生物一体の反応が消失。

前話含めですが、 「反応が消失」がやや機械的なので、

魔法生物との繋がりが突然途切れた。

とかでも雰囲気出るかも。

全体的にかなり良い短編章でした。

特に良いのが、

ヴェルの知略

エマの聖女性

シャルのコミカルさ

世界の暗さ

救済

が全部入ってること。

しかも次の雪国・精霊編にも自然に繋がる。

かなりまとまり良いです。

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