52 ヴァンパイアの住む街 4
「見ろ、貴様にやられた左腕も復活した。そして漲るこの力はどうだ? 吾輩は気に入ったぞ、この女は吾輩の嫁として貰い受けよう」
奴が激しく高揚し、顔を上気させる。お前なんかにエマはやらん!
「そうはさせるか!」
俺は念力で奴を捕らえ、強引に引き剥がそうとした。
「無駄だ!」
パァン!
奴の目が赤く光ると、念力はいとも簡単に跳ね飛ばされる。
「ククッ、最高の気分だ! 俺をこの女から引き剥がしたかったのか? いいだろう、表に出ろ。貴様を完膚なきまで叩きのめし、優雅にこの女を娶るとしよう」
ヴァンパイアはエマをベッドに寝かせると、悠々と俺の横を通り過ぎて窓から外に出る。
俺も奴の後を追い、外へ出た。
宿屋の外で空中戦か。
俺はヴァンパイアと対峙する。奴は月明かりを背に腕を組み、余裕の笑みを浮かべていた。
感じられる魔力が先ほどとは段違いだ。ドゥーマ程ではないにせよ、俺とそう大差ないかもしれない。
「フハハハハハ! 素晴らしいぞこの力、受けろ、怪音波!」
これは……、超音波か!?
身体がビリビリと痺れ、動かない。
「からのーっ、目からビーム!」
「ぐふっ!」
身体が痺れ、回避もできぬまま光線が俺の胸を貫く。俺は吐血し、ヴェルクタルを落としてしまう。
まずい、魔力を回復に回さないと。
「ほほう、胸を貫いたのに生きているのか。まさか爵位持ちか? まぁせいぜい男爵だろう。であれば、吾輩の敵ではない!」
「ちっ!」
俺はすぐその場を移動し、飛び回る。的を絞らせず、回復に力を注いだ。
「無駄無駄無駄! いつまで逃げられるかな?」
奴は手当たり次第に怪音波を飛ばす。俺は怪音波に追われながら飛行し、回復を急いだ。ようやく傷も塞がったので攻撃に転じたいが、これでは近づくのも難しい。
超音波を防ぐには遮蔽物を置くのが一番手っ取り早いか。吸音機能があればもっといい。
ということはこれだ!
「想像具現、出でよ、ウレタンの壁!」
ウレタンの化学式は(RーNHーCOーOーR'ーOーCOーNH)nだ。空気中に元素は揃ってんだよね。
ま、要は大きなスポンジだな。
それを盾に俺は突っ込む。
「そんなものが役に立つか!」
立つんだな、これが!
ウレタンのスポンジはものの見事に奴の超音波をシャットアウト。接近に成功する。
「だが無駄だ、近づいたところでどうもならんぞ!」
俺はウレタンの壁を目隠しにして、下へ潜る。奴が身体を無数の蝙蝠と変えたとき、俺は見つけた。
「そこだ!」
全体は無理でも蝙蝠一匹くらいなら念力で縛れるはず!
俺は《《赤い蝙蝠》》に念力をかけ、動きを止めた。闇を生み出し、そいつを包み込むと袋状にして閉じ込める。
「捕まえたぞ!」
「は、離せーーーっ!」
よし、ビンゴ!
赤い蝙蝠は俺に捕まり、大声をあげた。この蝙蝠だけが知覚を有する、ということはこの蝙蝠がこいつの核ということだ。
「嫌だね。燃え尽きろ!」
俺は闇ごと奴を炎に包み込む。さすがに熱いな。俺の闇も炎により霧散すると、赤い蝙蝠が炎に包まれていた。
赤い蝙蝠は燃えながら逃げる。まだ燃え尽きてないとは、なかなかの抗魔力じゃないか。
俺は追いかけるが、奴は他の蝙蝠を呼び寄せると、燃えたまま元のヴァンパイアへと戻る。
「はぁっ、はぁっ、し、死ぬかと思った!」
ちっ、消火しやがったか。なかなかしぶといな。だが隙だらけだ!
俺は奴の真上に高速移動。両手の間に魔力を凝縮させる。
「こいつを喰らえ!」
魔力を闇の波動へと変換。
「暗黒波動砲!」
「ぐぼわぁっ!?」
魔力の波動が奴を飲み込み、地面へと叩きつける。石床に穴が空き、その中へと埋まっていった。
しかしまだ滅びてない。
と、そこへエマが宿屋の出入り口からふらふらになりながら、杖を支えにして出てきた。
まさか奴が誘ったのか!?
「エマ!」
俺はエマに声に呼びかける。奴の近くに行くのはまずい!
「フハハハハハ! 勝利の女神は私に微笑んだようだな!」
ヴァンパイアが飛び起き、エマに飛びかかる。間に合わない!
「浄滅!」
「ノオオオオオッ!?」
エマがいきなりヴァンパイアに浄滅をぶちかます。ヴァンパイアは光の柱に包まれると、実にアッサリ消滅した。
「エマ!」
「うう、やばかったぁ~!」
俺が駆けつけると、エマがその場に座り込む。
「エマ、大丈夫!?」
「うん、なんとかね。血は吸われたみたいだけど、なんとか魅了は抜け出せたみたい」
良かった。少し顔色は悪いけど、大丈夫そうだ。
「でも、よく魅了状態から抜け出せたよね」
「うん、まぁ私も聖女見習いとして成長したからかな?」
エマが力なく笑う。疲れているようだし、早く休ませよう。
「エマ、早く休もう。俺が連れて行くよ」
「うん、お願い」
俺はエマを念力で持ち上げると、窓から部屋へ戻る。そのままベッドへ寝かせると、エマはすぐに眠りについた。
でもどうしても気になるな。
どうしてヴァンパイアはエマの血を吸ってあんなにパワーアップした?
どうしてエマは自力で魅了状態から抜け出せたんだ?
「そういや俺、エマのことあんまり知らないかも……」
あまり仲間を鑑定することはなかったけど、気になってエマを鑑定する。
NAME∶エマ AGE∶17
種族∶ヒューマン
状態異常∶疲労
レベル∶41 EXP∶211652
HP∶186 MP∶965
STR∶27 AGI∶108 DEF∶102 REG∶416
SKL∶神聖魔法契約lv.5 聖力の泉lv.3
「セイント……、ファウンテン?」
魔力と抗魔力が他の魔導師に比べても異様に高い。
だがそれ以上に、この見慣れないスキルがどうしても気になった。
Chatさんの感想w
誤字は訂正済みですw
一部ネタバレ(聖力の源泉について説明してる)あり。
あーーー、なるほど。
これはかなり良い設定です。
「聖なる力の源泉」なのに、
魔を惹きつける
喰われると強化素材になる
っていうの、めちゃくちゃ“危うい聖女”感ある。
しかもヴェルが無意識に惹かれてる理由にもなってるのが上手いです。
単なる「恋愛感情」だけじゃなく、
“悪魔として本能的に惹かれている”
も混ざってるわけですよね。
かなり美味しい。
今回かなり良いのは「攻略戦」になってること
ヴァンパイア戦、ちゃんと段階踏んでます。
第1段階
不死
分裂
魅了
飛行
で「どう倒すのこれ」。
第2段階
ヴェルが仕様解析。
念力で疲労
核の存在
赤い蝙蝠
知覚共有なし
を見抜く。
第3段階
エマ吸血で強化。
ここで、
「攻略見えた!」
と思った直後に第二形態化してる。
かなりゲームっぽくて熱いです。
ウレタンの壁、かなり好きw
ここめちゃくちゃヴェルっぽい。
「出でよ、ウレタンの壁!」
いや何召喚してんだw
でもちゃんと理屈通ってる。
超音波
吸音
スポンジ
で対策になる。
この作品の強み、
「現代知識を戦闘ギミックに落とす」
がかなり出てます。
しかも変に理屈語りすぎないからテンポも死んでない。
赤い蝙蝠=核、かなり良い
これ良いですね。
特に、
《《赤い蝙蝠》》
って表記でヴェルが気づいた瞬間を強調してるの、映像的。
しかも、
「捕まえたぞ!」
からの、
「離せーーーっ!」
で確信に変わる。
気持ちいいです。
ヴァンパイアの“強化”がちゃんと怖い
ここかなり重要。
単なる回復じゃなく、
「感じられる魔力が先ほどとは段違い」
になってる。
つまりエマの血、 マジで“聖なる霊薬”なんですよね。
だからヴァンパイアが異様に執着するのも納得できる。
そしてエマのフィニッシュが綺麗
これかなり好きです。
ヴェルがギリギリまで戦って、 最後にエマが、
浄滅!
で消し飛ばす。
良い共同撃破になってる。
しかもヴェル一人で勝たせてないのが大事。
この作品って、 結局「エマとヴェル」の話なので。
最後にエマが締めるの、かなり綺麗です。
さらに良いのが「魅了解除」の伏線回収
今までは、
エマは精神的に強い
聖女適性高い
くらいに見えてた。
でも実は、
聖力の泉
による、
高抗魔力
神聖適性
聖属性強化
が関係してた。
かなり自然。
後付け感ないです。
しかもこのスキル、物語的に超便利
めちゃくちゃ使いやすい設定です。
良い点
エマが狙われる理由になる
魔物が寄ってくる
ヴェルが惹かれる理由になる
聖女適性の説明になる
血を狙う敵が出せる
「守られるヒロイン」の理由になる
全部一本で繋がる。
かなり強い設定。
ただし危険なのは「都合のいい設定化」
ここだけ注意かもです。
便利すぎるので、
「全部セイントファウンテンのせい」
になると万能設定化しやすい。
なので今みたいに、
ヴェルが観察して判明
少しずつ情報開示
デメリットも重い
にしてるのはかなり正解です。
特に、
魔を惹きつける
が良い。
メリットだけじゃない。
一点だけ気になったところ
ここ。
顔を蒸気させる
多分、
顔を上気させる
ですね。
あとここ。
魔力の波動へと返還。
は、
変換
かな。
そして最後がかなり良い
「そういや俺、エマのことあんまり知らないかも……」
これ、すごく良い締めです。
戦闘後なのに、 ただの勝利感で終わってない。
ヴェルが初めて、
「エマって何者なんだ?」
を考え始める。
かなり物語が深くなる入口になってます。




