51 ヴァンパイアの住む街 3
「無駄だ!」
奴の身体が無数の蝙蝠となり、俺の後ろをすり抜けていく。蝙蝠は俺の後ろに集合すると、再びヴァンパイアとなって姿を現した。
「吾輩を傷つけるなど不可能だ!」
ヴァンパイアが勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
なるほど、こいつは厄介だ。
「だったらこいつはどうだ!」
「ぬぐっ!?」
念力で奴の身体を拘束する。
「うぬぬぬぬっ、はぁっ!」
「なにっ!?」
ヴァンパイアは力づくで俺の念力を跳ね除ける。効かねぇのかよ!
「はぁ、はぁ。ムハハハハ! 念動力とはな。だが吾輩には効かんのだ。ヴァンパイアの抗魔力を侮るな!」
なるほど、念動力って魔法抵抗で防げるってことなのか。その割には肩で息してるんだけど。
「ほい」
俺はもう一度奴を念力で縛る。
「むおおおおっ! 効かんと言うておるだろうがぁっ!」
またも力づくで跳ね除ける。俺は懲りずにもう一度念力で縛った。
「く、くどいぞ!」
またも跳ね除ける。
「ほい」
もういっちょ♪
「し、しつこいぞ……!」
パァン、とまたも跳ね除けた。大分呼吸乱れてきたな。アンデッドでも疲れるんだな。
「もういっちょ♪」
「な、何度やってもぉーっ!?」
ヴァンパイアが念力を跳ね除ける前に手前に引き寄せる。
「いらっしゃーい!」
俺は容赦なくヴェルクタルを振り抜く。スパーンと奴の首が跳んだ。
「甘いわ!」
ドムッ!
しかし残った身体が俺の腹に膝蹴りを加える。
「ぐふっ!?」
「フハハハハハ! 死ねい!」
奴の爪が俺の腹を狙う。その一撃を身を翻して躱し、奴の身体を斬りつけるべくヴェルクタルを振り下ろした。
ヴェルクタルは奴の左肩に食い込むと、胸の辺りまで斬り裂く。どういうわけか、血も出ていない。しかも斬りつけている最中に奴が俺のヴェルクタルを掴み、動きを止めた。
痛みを感じてない!?
「ぐわっ!?」
首筋に鋭い痛み。
ヴァンパイアの首だけが自律して動き、俺の首筋に噛み付いていた。
奴がチューチューと俺の血を吸い上げる。
「貫け!」
闇を槍状に伸ばし、奴の顔を貫く。しかし奴の全身が再び蝙蝠となり、俺から少し離れた位置に集まる。そして蝙蝠は再びヴァンパイアの姿となった。
「ムハハハハ! 美少年の血もなかなか乙だな。実に美味だぞ! しかも昂る、昂るぞおっ! これは新しい発見だな」
奴は口の周りをベロリと舐め、興奮して愉悦に浸る。なんかヘコヘコと腰振ってるんだが、こいつ変態か?
しかしこいつはマジで厄介だ。首を跳ねても死なないどころかノーダメージだし、斬りつけても全く効果がない。
不死者とはよく言ったもんだ。
「そろそろ吾輩の力を思い知らせてやろう!」
奴の目が赤く光る。
「受けよ、目からビーム!」
奴の両目から赤い光線が飛び出る。
「ぐわっ!」
光線が俺の左肩を貫く。
俺の服を貫通しただと!?
こいつは俺の魔力で作ったため、かなり高い魔法抵抗があるはずだ。それを貫通した、ということは相当な威力ということになる。
「フハハハハハ、絶好調だ! 貴様の血を吸ったからか、力が漲って仕方がない。もっとだ、もっと貴様の血を吸わせろ!」
奴は身体を仰け反らせて高笑い。調子に乗りやがって、許さん!
斬ってダメなら……!
「この野郎!」
俺はヴェルクタルを構え、再度斬りつける。
「学習能力のないガキだな」
ヴェルクタルが再び奴の肩に食い込むと、そのまま真っ二つにする。
「無駄だと言っている!」
「知ってるよ」
ばしゃあっ!
奴の身体にかけたのはアルコール。俺の能力で作ったからな。純度99%はよく燃えるぞ!
「燃えろ!」
想像具現で熱エネルギーを付与。奴の全身が炎に包まれる。
「うあちゃあっ!」
奴は火に巻かれ、俺から距離を取る。
「なんてな♪」
奴の身体が蝙蝠となり、四方に飛んだ。構わず俺は蝙蝠を追いかけ、闇で網を作る。
「うりゃっ!」
その蝙蝠を大量に網で捕らえた。
残りの蝙蝠が一箇所に集まると、再びヴァンパイアの姿を取る。
「無駄無駄無駄! って、吾輩の左腕がぁぁぁっ!?」
顕現した姿には左腕がなかった。どうやら俺の捕まえた蝙蝠がそれらしい。
「左腕ってこの蝙蝠たちか?」
「い、いつの間に!?」
「いや、思いっきり網で捕まえてたんだが……。見えてなかったのか?」
ん?
どういうことだ?
蝙蝠に起こったことを把握していない、ということはこの蝙蝠には知覚能力がないということだ。ならどうやって蝙蝠達は一箇所に集まってるんだ?
あ、なるほどな。
その答えはすぐに予想がついた。
こういうとき、漫画やアニメの知識って役に立つよな。
「なーるほど。お前の弱点段々見えて来たわ」
「なんだと!?」
あ、めっちゃ焦ってやんの。
「取り敢えずこの蝙蝠達には消えてもらいましょうか。燃えろ!」
俺は闇の網ごと炎で蝙蝠達を燃やし尽くす。蝙蝠達はあっという間に燃え尽きると、炭になった。
「き、貴様ぁっ!」
左腕を失い、奴が激昂する。
「そろそろトドメを刺してやるよ!」
ヴェルクタルを構え、一気に距離を詰める。すると、奴は意外な行動を取った。
「ごめんなさぁぁぁいっ!」
いきなり空中で土下座。
「は?」
その意外な行動に俺は思わず突撃の手を止めた。
「なーーーんてな!」
奴がまた無数の蝙蝠となり、その半数近くが俺の方に向かって来た。
「こんのぉっ!」
俺は闇の網でまとめて捕らえる。かなり捕まえたが、捨ててもいい身体の一部なのだろう。
奴の姿はそこにはなく、逃げてしまったようだ。
「ちっ、逃がしたか……」
仕方なく俺は捕まえた蝙蝠を燃やすと、急いでエマの元へ戻った。
窓からエマ達の中に入る。
そこに、奴がいた。
「ムハハハハ、遅かったなぁ?」
ヴァンパイアの腕の中にエマが!?
その首筋には、奴の牙の痕が残っていた。
「貴様、エマの血を吸ったなぁっ!」
「かつてないほどの美味、堪能させてもらったぞ……」
ヴァンパイアが薄気味悪い笑みを浮かべ、俺を嘲り笑った。
Chatさんの感想w
強いですw
しかも今回かなり上手いのが、「理不尽能力なのに攻略可能」にしてるところ。
ヴァンパイアって下手すると、
不死
再生
分裂
飛行
魅了
吸血強化
で“作者のお気に入り敵”みたいになりがちなんですが、 今回はちゃんと弱点を推理で暴いてるのでバランスが良い。
かなり面白い戦闘になってます。
特に良いのが「蝙蝠変化」の扱い
ここかなり良いです。
最初は、
「無敵能力」
に見える。
斬撃無効
首切断無効
分散回避
だから読者も「どうすんだこれ」になる。
でもヴェルが、
念力連打で疲労確認
蝙蝠を捕獲
左腕欠損
知覚共有なし
まで観察して、
「弱点段々見えて来たわ」
に繋げる。
この流れかなり気持ちいい。
「念力連打」がヴェルらしい
ここ笑いましたw
「ほい」
「もういっちょ♪」
嫌がらせかw
でもこれ、 ちゃんと意味あるんですよね。
ヴェルって単純火力じゃなく、
観察
検証
相手の仕様確認
するタイプ。
だから「何度も拘束する」が戦術として成立してる。
しかも、
「効かんと言うておるだろうがぁっ!」
なのに毎回息切れてる。
完全にMP削り。
ゲーム的で面白いです。
ヴァンパイアがちゃんと“嫌な敵”
今回かなり良いのがこれ。
「美少年の血もなかなか乙だな」
うわぁ嫌だw
しかも、
腰振ってる
変態寄りなのが気持ち悪くて良い。
吸血鬼って、 「耽美」で済ませるより、 ちょっと生々しい方が怖いんですよね。
今回かなり怪物感出てます。
そして「目からビーム《吾輩最強》」
ここ好きですw
シリアス戦闘の中で急にIQ下がるの、 ヴァンパイアの小物感出てる。
でも威力は本物だからちゃんと怖い。
こういう、
性格はアホっぽい
能力は危険
な敵、かなり映えます。
アルコール戦法も納得感ある
これも良い。
吸血鬼といえば火。
でも単純に「炎魔法!」じゃなく、
アルコールぶっかけ
経由なのがヴェルっぽい。
現代知識+応用。
かなりこの作品の強みです。
そして最後の引きがかなり強い
これ良いですね。
ヴェル視点だと、
「逃げた!」
「しまった!」
で戻る。
そしたら、
エマが噛まれてる
うわぁ……ってなる。
しかも、
「かつてないほどの美味」
が最悪。
つまり、
エマの魔力・聖属性・資質が、 ヴァンパイア側から見ても“特別”なんですよね。
ここかなり重要そう。
一点だけ調整するとさらに良いかも
ここ。
「奴の爪が俺の俺の腹を狙う。」
「俺の」が重複してます。
あとここ。
「アンデッドのくせにスタミナ無限じゃないんだね。」
ちょっと軽すぎるかも。
例えば、
「なるほど。再生も変化も、無制限じゃないってことか」
くらいだと、 戦闘中の分析っぽくなります。
ただヴェルの軽口としては今のままでもキャラには合ってます。
そして一番良いのは
ヴェルが、
「能力で圧倒」
じゃなく、
「相手の仕組みを解析して追い詰める」
戦い方をしてること。
かなり主人公として差別化できてます。
特に今回、
分裂の仕様
知覚共有
再構成
部位欠損
を戦闘しながら見抜いてる。
かなり“頭使って戦ってる感”がある。
これは強いです。




