50 ヴァンパイアの住む街 2
「パトリスさん心配ないよ。みんな付いてるから」
「そ、そうですな」
俺がそう言うと、パトリスさんは少し安心して番兵に通行税を渡す。
「まぁ気を付けるんだな。そっちの子は聖女見習いかい?」
番兵は通行税を受け取ると、エマに視線を向けた。
「はい、そうです」
「そうか、護衛依頼を受けるくらいだからレベルは高いんだろうな。だが夜は出歩かないことをお勧めするぜ。よし、通っていいぞ」
ただの注意喚起か。
俺達は中へ通され、街へと入る。
「だが念のためギルドで情報は集めておきます。一泊の予定ですし、必ず遭うとも限りませんが」
「その方がいいねぇ」
「皆さんにお任せすることにしましょう。では行きましょうか」
パトリスさんはまだ少し動揺しているようだ。どこから来るかわからない以上、野宿するのもどうかと思う。
俺達は街へ入ると早速宿を探した。宿はすんなり見つかり、二人部屋を三つ取る。俺はそれなりの身長(といっても110センチだが)になったので人数に入っており、パトリスさんと同室だ。ヴァンパイアがパトリスさんを狙うかはわからんけど、その方がパトリスさんも安心だろう。
その後、俺達はヴァンパイアに関する情報を集めるため、冒険者ギルドに立ち寄った。
「Cランクパーティ月桂の冠のソニアだ。ヴァンパイアに関する情報を知りたい」
「アルザスブールの冒険者さんですか。わかりました、お話しましょう」
ソニアがギルド証を見せ、受付嬢に話しかける。受付嬢はギルド証を確認すると、快く話してくれた。
「事の発端は一カ月前に遡ります。最初に狙われたのは聖女見習いの子でした。その子は血を吸われましたが、教会で手当てを受け、呪いは解除されています」
「ヴァンパイアって呪うの?」
吸われ続けるとヴァンパイアになるなんて話もあるけど、あれって呪いなのだろうか。
「ええ。今街に蔓延るヴァンパイアは男ですね。ですので若い生娘ばかりを狙うのですが、そのとき必ず魅了の呪いをかけます。これにより血を吸われることに抵抗を失くし、何度も何度も吸われることとなるんです」
「なるほど、面倒だな」
受付嬢の話を聞き、ソニアがむぅ、と唸る。いつ襲って来るかわからないというのは厄介だからね。しかも先手で魅了をかけ、抵抗を奪う。
周りが気づかなかったら死ぬまで吸われ続けることになるわけか。
「血を吸われ続けた女性はやがて亡くなりますが、この場合必ず火葬することになります。そうしないと新たなヴァンパイアとなってしまいますから。こういった被害が続き、この街ではつい先日も女性が亡くなってます。ですのでもう直また新たな獲物を求めてヴァンパイアはやってくるでしょう。特に聖女見習いのように、魔力の高い女性は狙われやすいので注意してください」
うちだとエマとシャルだな。二人とも同室にして、俺がすぐに駆けつけられるようにすべきかもしれない。
「なるほど、わかりました。ありがとうございます」
一通り話を聞き、受け付けから離れる。そして空いたテーブルに集まり作戦会議を開いた。
「狙われる可能性が高いのはシャルとエマだと思う。パトリスさんが狙われる心配は無さそうだよね」
俺は真っ先に意見を述べる。
「うん、でも私達が狙われる可能性は低いと思うよぉ? だって、ヴァンパイアはどうやってエマや私の存在を知るって言うの?」
そういえばヴァンパイアはどうやって獲物を見つけるのだろう。街を飛び回って調べているのか、それとも何らかの魔導的な探知方法があるのか。実に気になるところだ。
「まぁ、それもそうだが、万が一ということもある。ヴェル、私たちに何かあったら直ぐに駆けつけることはできるか?」
「できるよ。見張り用に小さい魔法生物を置いておくから、何かあれば直ぐにわかると思う」
想像具現の力を使えば、蜂程度のサイズなら生み出すことが可能だ。偵察用にかなり重宝するんだよね。
「そっか、なら安心だね。ヴェル、何かあったらお願いね?」
「任せて。エマには指一本触れさせないから」
俺は自分の胸をドン、と叩く。一番危険なのはエマだ。エマは俺が守る!
「ヴェル君私は?」
「シャルの血を吸ったらヴァンパイアが中毒起こすでしょ」
あー、でも腹は黒くても血の味には影響ないのかな?
「ほっほう? ヴェル君も言うようになったねぇ~。はい、ブランシュ。好きにしていいよ」
いきなり抱き上げられ、ブランシュの前に差し出される。ブランシュは顔を真っ赤にすると、理性崩壊。
ガバッ、と両腕を広げると、おじぎ草が捕食するかの如く俺を抱きしめる。
ムギュッ。
「あーりーがーとー!」
胸当てが痛いんだってば。
「はーなーせー!」
ブランシュの馬鹿力マジで硬え。念力使って怪我させたらヤダから使わないけど、マジメに苦しいぞ。
* * *
その夜、俺は魔法生物をそれぞれの部屋の窓と中に待機させる。パトリスさんの部屋には俺がいるから、必要ないだろう。
夜も更け、月明かりの差し込む部屋の中。パトリスさんの寝息が部屋に静かに染み渡る。
「!?」
突如魔法生物一体の反応が消失。エマとシャルの部屋の方だ。俺はすぐに部屋を出て向かいの扉を開けた。
窓が開けられており、その窓枠には男のシルエットが赤い目を光らせている。エマとシャルは立ち上がっているが、様子がおかしい。
「はい、今行きますね……」
「イケメン……」
二人は誘われるようにふらふらと影に向かう。魅了にかかったのか!?
「ごめん二人とも!」
俺は念力で二人を引き寄せる。そのまま壁に張り付けにして俺はヴァンパイアに向かってダッシュした。
「貫け!」
闇の槍状にして飛ばす。
「ちっ!」
ヴァンパイアは窓枠を蹴って夜空へと逃げる。
「逃がすか!」
俺もヴァンパイアを追って夜空へ飛び出す。ヴァンパイアも逃げるが俺の方が速い。観念したのかヴァンパイアはくるりと俺に向き直った。
「よくも吾輩の食事を邪魔してくれたな。見たところ悪魔の子供のようだが、おいたが過ぎたな!」
ヴァンパイアの容貌は中年くらいの男性のようだ。目を赤く光らせ、口からは牙を覗かせている。
「ふん、俺から逃げておいてよく言うよ。エマを狙った報い、その身で贖え!」
俺はヴェルクタルを構えると、奴目がけて一直線に斬り掛かった。
Chatさんの感想w
かなり読みやすいです。
「街の怪談」から「実際に襲来」までのテンポが良い。
特に今回は、
情報収集
作戦会議
軽い掛け合い
夜襲発生
が綺麗に繋がってます。
「ヴァンパイアが本当にいるんだ……」までを1話で持っていけてるので、ストレスがない。
ヴァンパイアの“いやらしさ”がちゃんと出てる
ここ良いですね。
必ず魅了の呪いをかけます
単純な吸血鬼じゃなく、
女性狙い
魅了
繰り返し吸血
ヴァンパイア化
になってる。
かなりホラー寄り。
しかも、
「イケメン……」
でシャルすら魅了されてるの、 ちょっと笑えるけど普通に怖い。
エマまでフラフラ歩いてるので、 「魅了強っ!」感が出てる。
ヴェルの“保護者モード”がかなり良い
今回ずっとヴェルが、
警戒
作戦立案
見張り設置
即対応
してる。
かなり頼もしい。
特にここ。
「ごめん二人とも!」
この一言良いです。
壁に張り付けるって普通に乱暴なんですが、 ヴェルがちゃんと気遣ってるので印象が悪くならない。
魔法生物による監視、かなり便利
これ良い拡張ですね。
想像具現、便利すぎるw
でも、
蜂サイズ
偵察用
消されると反応消失
という使い方が上手い。
能力の応用感がちゃんと出てる。
ブランシュの捕食ネタ、かなり安定してきた
ここ笑いましたw
「はい、ブランシュ。好きにしていいよ」
シャル、お前w
その後の、
おじぎ草が捕食するかの如く
の例えも好きです。
ただ、ここだけ少し気になったのは、
ブレストプレートが痛いんだってば。
これはちょっと現代ラノベ感強めなので、
胸当て硬えんだってば!
くらいでもいいかも。
でもヴェルの軽いノリとしては全然アリ。
夜襲シーンへの入りが良い
ここかなり綺麗。
「!?」
突如魔法生物一体の反応が消失。
これだけで緊張感出る。
説明しすぎないのが良いです。
しかも、
窓が開いてる
月明かり
赤い目
魅了状態
の絵が浮かびやすい。
かなり映像的。
ヴァンパイアの“格”もちゃんとある
ここ大事。
ヴァンパイア、逃げるだけじゃなく、
「吾輩」
なの良いw
吸血鬼らしい気取った感じ出てる。
しかも、
夜空で対峙
飛行可能
魅了持ち
で、ちゃんとボス感ある。
一点だけ気になったところ
ここ。
「すぐに行きますね……」
このセリフ、魅了状態なんでしょうけど、 誰に向かって言ってるか少し分かりにくいです。
例えば、
「はい……すぐに行きます……」
くらいでも伝わるかも。
あるいは、
「はい……今行きます……」
だと催眠っぽさが増します。
あとここ。
「エマを狙った報い、その身で贖え!」
かなりヴェルらしいですが、 ここまでエマ特化だとシャルがちょっと可哀想なので、
「俺の仲間を狙った報い――」
とかでもいいかも。
ただ、ヴェルの優先順位がエマ最上位なのは一貫してるので、今のままでもキャラとしては自然です。
全体的にかなり良い「怪異遭遇回」です。
特に、
日常 ↓
不穏 ↓
調査 ↓
実害 ↓
夜空チェイス
の流れが綺麗。
テンポかなり良いです。




