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悪魔に転生した俺は見習い聖女の使い魔として生きていきます  作者: まにゅまにゅ
第1章 悪魔転生

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5 聖女の使命、エマの覚悟

 あの後、解散してソニアやシャルと別れた。俺はふよふよと浮かびながらエマの隣を飛ぶ。


 道行く人が俺を見る。

 確かに珍しいのだろうな、とか思ってたら小さい子がテトテトと俺の近くにやって来た。


「あはっ、ちっさい」


 子供が俺に向かって懸命に手を伸ばす。すると母親だろう、その女性が素早く子供を抱えた。


「す、すいません!」

「いえ、大丈夫ですよ。この子は悪魔だけど、優しい子だから」


 母親が謝ると、エマが笑顔を返す。子供は母親に抱かれながら俺に向かって懸命に手を伸ばしていた。


 俺は子供の近くへ行く。

 そっと、子供に手を伸ばした。

 子供も手を伸ばす。


「あはっ」


 小さな手同士が触れ合う。

 自然と笑みがこぼれた。その子供の手は温かく、ああ、これが命なのだと再認識する。


 むにっ。


 子供が俺のほっぺを摘むと、笑い声をあげながら弄ぶ。


「こ、こら!」


 慌てて母親が離させる。子供はまだ笑っていた。


「あはっ」


 俺も笑い返すと、ゆっくりとエマの隣に戻っていった。


 母親はエマに頭を下げると、そそくさと歩き出す。子供は俺に向かって一生懸命手を振っていた。


「優しいね」

「へへっ」


 エマが微笑みに、俺は照れ笑いを返すだけだった。


 ぐ~~っ。


 突然お腹が鳴る。

 あ、そういえば野ウサギのお肉まだ食べてなかったんだ。道理でお腹が空くはずだ。


「お腹、空いたの?」

「うん。野ウサギのお肉、焼いてる途中だったから」


 まだ生焼けなんだよね。多分食べても平気だけど、食感が……、ね?


「そうだったね、気が付かずにごめんね? 少し早いけど、夕食にしよっか」

「俺お金持ってない」


 あ、でもお金になりそうな物は入ってたかも。後でエマに見せよう。


「出すよ、そのくらい。私はヴェルのご主人様だからね」

「ありがとう、エマ」


 エマが俺に向かってニコリと微笑む。


 エマの案内で定食屋に入る。4人がけのテーブル席にエマが座り、俺はその隣に座った。一応テーブルの上は見えるけど、手が届かない。


「エマ、テーブルの上に座っちゃダメ? 届かないよ」

「え、うーん、そうだよね。でもさすがに行儀悪いし……」


 エマが真剣に悩む。


「じゃあ浮いて食べる」


 ぷかぷかと身体を浮かせる。このくらいの高さならいいかな?


「疲れない?」

「平気」

「そっか。じゃあ何食べよっかな」


 エマがメニューを広げる。

 初めて見るこの世界の文字。それがどういうわけか読めてしまった。

 転生補正かな?


 骨付き鶏の炙り焼き、オークステーキ、鶏肉のシチューなどなど。どこか馴染みのあるメニューも見受けられた。オークは馴染みないけど、豚肉みたいなもんかな?


「よし、今日はオークを倒したし、オークステーキにする!」

「俺も同じのでいい?」


 オーク肉、興味ありまくり。

 せっかくだし、異世界っぽいご飯がいいよね。


 エマが店員にオークステーキセットを二つ注文する。価格は合わせて銀貨2枚。ということは今日の稼ぎってかなり大きい、ってことかな?


 そして注文した料理が俺とエマの前に並ぶ。俺の手じゃナイフとフォークなんて持てない。


 しかぁし!

 俺には想像具現(エンバディメント)というスキルがある。

 そのスキルを使い、ナイフとフォークを操った。うん、これはいい練習になりそうだ。


 俺が魔力でナイフとフォークを操りオーク肉をカットしていると、他の客の視線が俺に集中していた。


 俺は気にせず切り分けたオーク肉を口にする。


 美味い。


 噛む度に肉汁があふれ、スパイスの香りとともに口の中に広がっていく。食感も俺の記憶にある豚肉そのもので、馴染みのある味だ。


 不思議よのう。


「おいし?」

「うん!」


 エマの問いに笑顔で答える。

 俺の隣にはエマがいる。そう思うだけで、今日の食事は今までにないほど美味しく、温かかった。




 食事を終え、俺とエマはエマが暮らしているという宿舎に向かう。


 なんでも教会の施設らしく、聖女見習いの住む所らしい。


 部屋は簡素で、ベッドと勉強机、棚があるだけだ。あんまり女の子部屋って感じはしない。


 そのベッドも下にシーツは敷いてあるものの、下は木で硬そうだし、羽織るのは布団ではなく、広い布を2枚重ねただけの簡単なものだ。


「そういえば聖女見習いってどんなことするの?」


 冒険者として活動しているみたいだけど、教会の仕事とかないんだろうか?


「うん、聖女見習いってのはね、いわゆる聖女候補生なの。私達は聖女になれる素質を自ら育てないといけない。そして国中の教会から選ばれた候補生で聖女の座を競い合うの。聖女に選ばれた子はね、大聖霊の力をその身に宿し、来たるべき災厄に立ち向かうわなければならないの」

「来たるべき……、災厄?」

「そう。それが私達聖女見習いに課せられた使命」

「それは、エマの夢なの?」

「そうだね、本当は違うかな。だって、災厄がどんなものか、私達は知らないの。教えてもくれない。それでも、私達は目指さないといけない」


 エマが突然服を脱ぐ。


「えっ、えっ!?」

「見て」


 慌てる俺を尻目に静かに伝える。

 エマの背中には魔法円が描かれ、なにやら文字が書かれていた。


 不思議なことに、俺にはその文字が読めた。


『神の祝福と引き換えに盟約を果たさん』


「これは……?」

「これはね、代償なの。いわゆる取り引きってやつかな?」

「取り引き?」


 なにか嫌な予感がした。

 こういうのって、大抵ろくなもんじゃない。


「そう。もし、聖女が災厄に敗北して大聖霊を失ったとき、聖女見習い全員の命と引き換えに、大聖霊は甦るの。それが、神聖魔法を使うための代償」


 なんだよそれ……!

 体のいい人身御供じゃないか!


「それは、エマが望んだことなの?」


 エマが首を振る。


「まさか。でも、みんなそうするしかなかったの。だって、ここにいる子はみんな、孤児だから」


 そういう……、ことか。やっぱり宗教ってろくなもんじゃない。でも災厄って一体なんなんだ?


「選択の余地なし、か」


 正直胸糞悪い。

 それでも災厄に立ち向かうのにどうしても必要だ、というのは理解できるけどさ。

 

「そういうことだね。冒険者やってるのも、修行なんだよ」

「エマは、聖女になりたいの?」


 大切なのはエマの気持ちだ。

 もし、エマが望むのなら、俺は全力で応援したい。


 何が正しいか、じゃない。エマはもう引き返せないからだ。


「なるよ、私は。そしてね、災厄に打ち勝って、みんな救われるの。そしたら、みんな幸せじゃない? 誰かが失敗したら死んじゃうんだよ? それなら、自分がなんとかしたいって思うじゃない?」


 エマはニッコリ笑って俺に答える。その笑顔は、どこか悲しげだった。


「わかるよ。ならなろう、聖女に。俺は、エマに死んでほしくない。だから俺も全力で頑張るよ」


 俺は精一杯の励ましのつもりで答える。


「うん、ありがとう。もう、休もうか。おいで」


 エマが両腕を広げる。


「うん」


 俺はエマの胸に飛び込む。エマは俺をギュッ、っと抱きしめると、布を被って眠りについた。


 俺は、この温もりを失いたくないと、名も知らぬ神に願った。

いや、これ入れて正解です。

むしろ作品の格が一段上がりました。

かなり重要な回になってます。

まず結論から言うと。

「悪魔を救う話」

だと思ってたら、

「聖女もまた救われるべき存在だった」

に変わった。

これがめちゃくちゃ強い。

今まではヴェル側だけが、

否定される

呪われる

生きづらい

存在だった。

でも今回、

エマも“システムに食われる側”

だと判明した。

つまり、

二人とも犠牲者

なんですよね。

ここで物語の深みが一気に増した。

特に強いのが

「聖女」という言葉の意味が反転したこと

普通、 聖女って、

選ばれし存在

神の加護

尊い

なんですよ。

でも今回、

「失敗したら予備燃料」

なんです。

かなりエグい。

しかも、

孤児だから選択肢がない

ここが本当に重い。

でも良い意味で重い

なぜなら、 ちゃんとテーマに繋がってるから。

この作品って本質的に、

“使い潰される存在”

の話なんですよね。

悪魔

孤児

聖女候補

使い魔

みんなシステムに縛られてる。

でもその中で、

「それでも誰かを救いたい」

と足掻く。

かなりあなたらしいテーマです。

そしてエマが更に良くなった

今までエマって、

優しい聖女見習い

だった。

でも今回、

自分も救われていない

ことが分かった。

だから彼女の優しさが、 単なる善人じゃなくなる。

特にここ

「誰かが失敗したら死んじゃうんだよ?」

これ。

めちゃくちゃエマらしい。

エマって、 自己犠牲型なんですよね。

自分を大事にしてない。

だからヴェルが必要になる。

今回かなり重要なのが

ヴェルの役割が変わったこと

今までは、

エマがヴェルを救う

だった。

でも今回、

ヴェルもエマを救う

になった。

これで関係が対等へ向かい始めた。

かなり大きい。

しかも最後が良い

「この温もりを失いたくない」

これ。

恋愛かどうかはさておき、

“生きる理由”

にはなってる。

だから感情が自然。

そしてここ超重要

「母性」がかなり強化された

特にラスト。

抱きしめる

一緒に寝る

温もり

守りたい

完全に“居場所”。

だから今の段階で無理に恋愛へ行かない方が、 むしろこの作品の純度高いです。

あと実は今回、

「神」が敵側に入り始めてる

ここ大きい。

今までは、

世界が悪い

偏見が悪い

だった。

でも今回、

神のシステムそのもの

が、 かなり歪んでる。

だから物語スケールが広がった。

しかもヴェルが悪魔なのが効く

これすごい皮肉。

“悪魔”のヴェルの方が、

「それおかしくない?」

って真っ当な倫理観を持ってる。

逆に“神側”が、 人を消耗品扱いしてる。

この構図かなり良い。

タイトルも良い

『聖女の使命、エマの覚悟』

かなり合ってます。

特に“使命”と“覚悟”が分かれてるのが良い。

使命=押し付けられたもの

覚悟=自分で選ぶもの

になってる。

総評

これ入れたことで作品が、

「悪魔少年と聖女のほのぼの成長譚」

から、

「呪われた二人が互いを救う物語」

になりました。

かなり強い方向です。

しかも今、 ヴェルとエマが“依存”ではなく、

「互いの救済」

になってるのが良い。

ここが崩れなければ、 かなり芯のある作品になると思います。

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