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悪魔に転生した俺は見習い聖女の使い魔として生きていきます  作者: まにゅまにゅ
第2章 仲間として

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36 カリストの意趣返し

 あれから二日。

 まだヴェルは帰ってきていない。

 一人の方が早いから、って言ってたから任せたけど、大丈夫だよね?


 マチュー閉じ込めた部屋。

 今私はその部屋の前で座っている。

 何もできないし、黙って耐えるしかないって言われたけど。それでも少しでもマチューの力になりたかったのだ。


「がああああああっ!!」


 ドタンバタン!

 ガン!


「マチュー君!」


 ドンドン!


 扉を叩く。


「おええええっ!!」


 吐く音。バケツの中に吐瀉物が注がれているんだ。ヴェルの話だと最初の三、四日が一番辛いらしい。


 吐き気、倦怠感、頭痛、不安、悪寒、震え、不眠、悪夢。酷いときには幻覚が見えることもある、とヴェルは言っていた。


「来ないでくれえええっ! あっちへ、あっちへ行けよおおおっ! 誰か助けてくれえええっ!」


 マチューの叫び声が響く。

 逃げ回り、身体をぶつけては痛みに喘いで叫び続けていた。


「大丈夫、大丈夫だから! 頑張って、負けないでマチュー!」


 私はドンドン、と扉を叩き、必死にマチューに言葉を届ける。


「なんで、なんでマチューがこんな目に遭わないといけないの? 酷いよ……!」


 涙が溢れる。止まらない。

 涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだ。

 扉に縋り付くように頭をつけ、もう一度扉を叩く。


「これが……、人間を壊す薬の怖さなんだ……! 許せない、許せないよ私……」


 こんなにも、こんなにも人を憎いと思ったのは初めてだ。

 カリスト男爵……。

 もし、証拠が見つかったのなら。私はそいつを絶対に許さない。





「ん……」


 小鳥の鳴く声がする。

 いつの間にか眠っていたらしい。布をかけてくれたのは院長先生だろう。扉に耳を当てる。


 マチューの声は聞こえない。

 扉の下から中を覗く。マチューは静かに眠っていた。


「頑張ったね、マチュー」


 まだ終わりじゃないけど、それでも辛い一日を乗り越えたマチューを褒めてあげたい。


 さて、みんなの朝御飯でも用意しようかな。私は立ち上がると腕をまくり、むん、と力こぶを作った。




 マチューにもご飯を用意し、みんなに配ろうとしたときだ。乱暴にドアをノックする音が響く。


「我々はカリスト男爵の私設警備隊だ。ここにエマという女はいるか」


 カリスト男爵?

 あの違法薬物を取り扱っている疑いのある貴族だ。いったいなんの用だろう。


「さっさと開けろ! 開けないなら扉を壊すまでだ!」

「い、今開けます!」


 乱暴な怒鳴り声に私はすぐに開けると返事をする。扉に近づくと――


 バダン!


 元々鍵もかけていないドアを蹴破り、私設警備隊とやらがズカズカと孤児院になだれ込む。


「エマだな。違法薬物売人マチューを匿った罪だ! お前を連行する。やれ!」

「「はっ!」」


 私設警備隊とやらが私を取り囲む。子供達が怯え、泣き喚く。


 あれが私設警備隊?

 どう見てもガラの悪いチンピラにしか見えない。

 そもそも私設警備隊に逮捕権とかあるのだろうか。このあたりは私も疎いからよくわからない。


「うるさいガキだ、黙れ!」


 私設警備隊が子供を蹴り飛ばそうと脚を引いた。


「危ない! あうっ!」


 私は必死に子供を庇い、背中に蹴りを受ける。


「エマおねぇちゃん!」

「平気、大丈夫。大丈夫だから。さぁ、私から離れて」


 精一杯の笑顔を向ける。安心させてあげないとね。


「う、うん……」


 子供達が私から離れる。私はゆっくりと立ち上がった。


「私は逃げも隠れもしません。マチューは今療養中です。確かにマチューは許されない罪を犯しました。ですが必ず自首させます。どうかそれまでお待ちいただけないでしょうか?」


 私は懇切丁寧に頭を下げ、嘆願する。しかし、彼らはそんな私の願いなど聞き入れるわけがなかった。


「生意気言ってんじゃねぇ。俺らはてめぇも捕まえに来たんだよ。偽善者面してんじゃねぇぞこのアマ!」


 警備隊のモヒカンが私を殴りつける。左頬を殴られ、倒れてしまう。


「エマおねぇちゃんをいじめるな!」


 私を庇おうと子供達が近づく。


「来ちゃダメ!」


 私は必死に子供達を止めた。それでも私設警備隊はわざわざ子供達に近づくと、子供達を蹴り上げる。


「うっせーぞクソガキィッ!」

「いたーーーーい!」

「うあーーーん!」


 警備隊に蹴られ、泣き喚く子供達。とにかく、とにかく止めないと。こんなとき、こんなときにヴェルがいてくれたら……!


 ヴェル、早く帰ってきて!

 そう願いながらも、私は必死に子供達を庇う。無力な私にできることなんて1つしかない。


「お願いします! 子供達には何もしないでください」


 私は床に額を擦り付け、懇願した。悔しい。ごめんね、みんなを守れない私を許して……。


「よぉし、だったら大人しく付いて来るんだな」

「はい、仰る通りにいたします」


 そう答えるしかなかった。


「よし、俺はこの女を連行する。お前らはマチューを探して連れて来い!」

「やめて! マチューは療養中なの、まだ外に出さないで!」


 必死に訴える。

 それでも彼らは聞き入れない。マチューはまだ禁断症状と闘っているというのに……!


「やかましい! てめぇらサッサと動きやがれ! それと、お前もサッサと立ち上がれや」

「い、痛いっ!」


 モヒカンが乱暴に私の髪の毛を引っ張り上げ、無理矢理立たせる。


「おら、サッサと歩け!」

「きゃっ!」


 モヒカンが乱暴に私を押す。

 私、どうなるんだろう?

 怖い……。

 助けて、ヴェル……!

Chatさんの感想


これ、かなり良いです。

しかも単に「ピンチ回」じゃなく、 ちゃんと“ヴェル不在”が効いてる。

前回言った、

主人公の価値は不在時に分かる

を綺麗にやれてます。

特に冒頭。

マチュー禁断症状シーン、 かなり痛々しい。

でも必要。

ここを逃げずに描いたことで、 「薬物編」の説得力が一気に増した。

特に良いのは、 エマが何もできないところ。

ヒールで治せない。

ここ超重要。

エマって、 基本「癒やし」の象徴なんですよ。

でも。

治癒魔法

優しさ

祈り

全部通じない。

だから薬物の怖さが出る。

しかもエマが、

「許せない、許せないよ私……」

まで行ってる。

これ、 エマの怒りとしてかなり珍しい。

つまり今回、 “エマの正義”が生まれてる。

ここ良い。

今までは、 ヴェル側の怒りだった。

でも今回は、 エマ自身も 「カリストを許せない」 になってる。

だから後々、 ヴェルだけの戦いじゃなくなる。

あと、 エマの「朝ごはん作ろうかな」が効いてる。

この子、 本当に“普通の日常”を守ろうとしてるんですよね。

だからこそ、 その後の襲撃が映える。

構成かなり上手い。

で、 カリスト側。

めちゃくちゃ悪辣で良いです。

特にここ。

「私設警備隊」

これ最高。

つまり、 “合法っぽい違法”。

貴族権力を悪用してる。

しかも描写が絶妙で、

どう見てもガラの悪いチンピラ

ここで読者も即理解できる。

「権力を盾にしたヤクザだ」

って。

あと今回かなり良いのが、 エマが徹底して“耐える側”なこと。

普通ここ、 急に覚醒して戦わせがちなんですよ。

でもエマは違う。

子供守る

頭下げる

庇う

耐える

を選ぶ。

これ、 エマらしさ守れてる。

しかもそのせいで、 読者の「ヴェル早く来い!」感が爆増してる。

ここめちゃくちゃ重要。

今、 読者視点ほぼエマと同期してる。

だから、

「ヴェル、早く帰ってきて!」

が機能する。

かなり王道で強い引き。

あと細かいけど、 ここ好きです。

「無力な私にできることなんて1つしかない。」

エマのキャラ本質出てる。

戦えない。 でも守ろうとはする。

だから聖女なんですよね。

で、構成的にもかなり良い。

今、

ヴェル王都潜入

エマ孤児院危機

マチュー禁断症状

カリスト反撃

全部同時進行。

物語が“動いてる感”ある。

かなり連載向き。

あと、この後ほぼ確実に必要なのが、 「ヴェル帰還カタルシス」。

今かなり溜めてる。

なので、 次回か次々回で、

王女協力獲得 ↓

ヴェル高速帰還 ↓

孤児院突入 ↓

エマ救出

になると、 かなり気持ちいい流れ。

しかも今のヴェル、 怒る理由が積み重なりすぎてる。

エマ暴行(二回目)

子供被害

マチュー利用

薬物

権力悪用

なので読者も、 「もうやっちまえ」 モードに入ってる。

かなり盛り上がる直前ですね。

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