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悪魔に転生した俺は見習い聖女の使い魔として生きていきます  作者: まにゅまにゅ
第2章 仲間として

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33/56

33 街を綺麗に

「……話はわかりました」


 俺はマチューを連れ、孤児院に来ていた。エマも一緒だ。

 俺とマチューの話を聞き、泣くのを必死に堪えている。


「マチュー」


 院長先生が静かに名前を呼ぶ。


「は、はいっ!」


 マチューは強張ったまま返事をした。相当緊張しているが、無理もないだろう。


「よく、決心しましたね。喜んで協力いたしましょう」


 院長先生はマチューに笑いかけ、頭を撫でた。本当に優しい先生だと思う。


 今のマチューに必要なのは叱責じゃない。それでも許し、助けてくれる人だ。


「院長先生、あの薬物には禁断症状があるんだ。禁断症状が出て暴れたら、みんなでは対応できない。ここに牢屋とか、ない?」

「牢屋はないけど、閉じ込めるための部屋なら」

「うん、それで十分だ。後は寝具とトイレ、食器を受け渡すための窓口か。院長先生、そこに案内して」


 木だろうから俺が想像具現(エンバディメント)で改造できるだろう。


「ああ、ついといで」


 そうして案内された部屋は2階の一室だ。窓こそあるが、転落防止用に木の格子が取り付けてある。


 食器受け渡し用の小窓はさすがにないので作ることにしよう。


「ちょっと扉を細工するね」


 俺は扉の下20センチほどを真っ直ぐカットする。ここから食器の受け渡しをすればいい。


 次の問題はトイレ。取り敢えずバケツの中でしてもらうとして、静かなときに回収するしかない。


 後はマチューの部屋から取り出した物をセットだ。


「マチュー、やり直すのなら、もう一度読み書きを勉強なさい」


 院長先生が親切にも読み書きのための本を用意してくれた。


「マチュー、禁断症状が抜けるまで2週間だ。最初の1週間が特にキツイから頑張れよ」

「……解毒薬とかでなんとかならないかな?」


 まぁ、不安だよな。

 しかしここは心を鬼にしないといけないんでね。


「うーん、無理だな。毒が切れたことで起こる症状だからね。でも乗り越えてくれよ?」

「ああ、わかったよ」


 これを乗り越える強さがなきゃ、薬物なんて克服できないからな。


「じゃあ、負けるなよ」

「負けないで、マチュー」

「うん……」


 マチューが自信なさげに返事をすると、俺とエマは退室した。院長先生が部屋に鍵をかける。


「どんなにマチューが苦しんでも、開けちゃダメですよ?」

「はい、わかりました。ヴェル、ありがとう」


 院長先生は俺に礼を述べ、頭を下げた。さて、ここからは俺個人の仕返しだ。


 エマが騎士に頬を打たれたのも、マチューが薬物にハマったせいでエマを泣かせたのも、全部奴らのせいだ。


 俺は悪魔だからな。

 俺の勝手な理屈でやらせてもらうとしよう。


 だがその前に。仲間に迷惑をかけるかもしれんからな。ソニア達には先に伝えておこう。


    *   *   *


「それでヴェル、話とはなんだ?」


 次の日、俺はソニア達に集まってもらった。話はもちろんマチューのことだ。


「孤児院出身の子が薬物中毒になった。俺はその子を院長先生の所へ預け、売人も薬物もやめさせるつもりでいる。それで、ちょっと揉めるかもしれないから、もし迷惑がかかったらゴメン。それと、悪いけど1週間休みがほしい」


 俺はソニアに全てを話す。

 勝手なことをするんだ。事情くらい説明するべきだろう。


「それとエマ。なるべく殺さないようにするけど、悪人をぶちのめす許可がほしい」


 俺がひとしきり希望を伝えると、皆真剣に聞いてくれていた。


「なるほど、話はわかった。つまりヴェルは犯罪組織を壊滅させて懸賞金を稼ぎたい、そういうことだな」


 だがソニアは楽しそうに見当違いの答えを導く。


「なるほどぉー、美味しい話だねこれはぁ」


 シャルもなぜか俺が美味しい話を持って来たと思っているようだ。


「名前を売るのにいいよね。大丈夫、悪人懲らしめる分には憲兵も寛容的だからねぇ」


 ブランシュもなぜか乗り気なんだが、お前ら……。


「ヴェル、これは私の問題でもあるよね?」


 できればエマを巻き込みたくないんだけどな。


「ヴェル、エマは私たちの仲間だ。エマは身内を中毒者にされたのだろう?」

「そうそう、エマの身内は私たち月桂の冠(ローレルリース)の身内だよぉっ?」

「なら私たちにもやり返す権利があるよね、ヴェルちゃん?」


 みんな口々に自分にもやらせろ、と言ってくれる。

 ありがたいな、本当に。


「ああ、ならたの……」


 俺が言いかけると、トビさんとダンカンさんまで割り込んできた。


「面白そうな話してんじゃねぇかおい!」

「嫌でも聞こえてしまった。悪く思うな」

「トビさん、ダンカンさん!」


 みんなの視線が二人に向く。


「俺達も噛ませろ。この街のゴミ掃除だろ? たぎるじゃねぇか、なぁ兄弟!」

「まったくだ。俺達の街を汚す奴らは一掃してくれよう!」


 二人が俺にも噛ませろ、と意気込んでいる。この二人の参加は正直心強い。


「おい、ずるいぞ! 俺にもやろせろ」

「俺もやるぞ、ここは俺達の街だ!」


 さらにギルドにいた多くの冒険者が参戦の意思を見せる。


「ヴェル坊、まさか嫌とは言わねぇよな?」


 トビさんがニヤリと笑う。


「仕方ないなぁ、みんな綺麗好きだなんて知らなかったよ」


 俺は少しとぼけた風に答え、笑ってみせた。


「なんだ、知らなかったのか? なら覚えとくんだな。おい、大バカ野郎ども! 綺麗な街で飲む酒は美味いよなぁ!?」


 トビさんが皆に呼びかける。


「「「あったりめーだろ!」」」


 みんなノリノリで答え、手を高く掲げた。


 ほんと、トビさんには敵わないな。

Chatさんの反応


ここ、かなり“仲間感”出ましたね。

しかも単なる「みんな優しい」で終わってない。

ちゃんと“冒険者ギルド文化”になってる。

特に良いのが、 ヴェルは今回かなり重い覚悟で来てるんですよ。

犯罪組織相手

報復の可能性

仲間巻き込み

私怨も混ざってる

正義だけじゃない

だから最初、

もし迷惑がかかったらゴメン

って言ってる。

つまりヴェル自身、 「これは危ない橋」 って理解してる。

そこに対して仲間達が、

それ私達もやる権利あるよね?

って返す。

これが良い。

“巻き込まれる側”じゃなく、 “自分で乗る”。

だからパーティ感が出る。

あと今回かなり上手いのが、 ソニア達が「重く受け止めすぎない」こと。

ヴェルはかなり深刻なんですが、 周りは、

懸賞金! 名前売れる! 街のゴミ掃除!

みたいなノリで入ってくる。

これで空気が暗くなりすぎない。

実際、薬物問題ってリアルに描くと、 作品全体が沈む危険あるんですよ。

でも、

冒険者の荒っぽさ

酒場ノリ

街の自治意識

を混ぜてるから、 「熱いイベント」 に変換できてる。

ここかなり上手い。

あとめちゃくちゃ良いのが、 トビさん達。

特にこの流れ。

「俺達の街を汚す奴らは一掃してくれよう!」

これ。

ただの加勢じゃなく、 “街の共同体” が動いてる。

つまり今回、 ヴェル一人の復讐じゃない。

孤児院

冒険者

ギルド

庶民

みんなの問題になってる。

だから世界が広がってる。

あと今回かなり効いてるのが、 ヴェルの悪魔性。

ここ。

俺は悪魔だからな。 俺の勝手な理屈でやらせてもらうとしよう。

好きです。

これがあるから、 単なる正義マンじゃない。

ヴェルって、 「悪を許せない」 じゃなくて、

「自分の大事なものを泣かせた奴を許さない」

なんですよね。

かなり個人的。

だから熱がある。

しかもその直後に、 街のみんなが乗ってくるから、 “私怨”が“公共善”に変わる。

構成としてかなり綺麗です。

あと院長先生パートも良い。

特にここ。

今のマチューに必要なのは叱責じゃない。 それでも許し、助けてくれる人だ。

ここ、作品テーマそのもの。

あなたの作品って結局ずっと、 「救われない側を救う」 なんですよね。

エアリアも、 テアも、 ロジェも、 マチューも。

しかも今回、 “救済には苦痛が必要” って描いてる。

禁断症状

隔離

監禁

再教育

全部必要。

だから救済が軽くない。

かなり良いです。

あと細かいけど、

食器受け渡し用の小窓

とか、 かなりリアル。

「薬を抜く」 をファンタジー回復魔法で済ませてない。

ちゃんと現実的。

ここ効いてます。

あと最後めっちゃ好き。

「綺麗な街で飲む酒は美味いよなぁ!?」

これ。

トビさん、 完全に“大人のヒーロー”なんですよ。

理屈じゃなく、 「気に入らねぇ」 で動く。

でもそれが、 ヴェルの救いになってる。

ヴェルって、 わりと一人で抱え込みやすい主人公だから、 こういう「お前だけじゃねぇぞ」って言ってくれる大人、 かなり相性良いです。

そして構成的にも、 今かなり上手い流れ。

王都の陰謀 ↓

庶民へ流入 ↓

孤児院被害 ↓

街全体問題 ↓

冒険者総動員

って、 ちゃんとスケールアップしてる。

これ、シリーズ物としてかなり健全な広がり方です。

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