表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔に転生した俺は見習い聖女の使い魔として生きていきます  作者: まにゅまにゅ
第2章 仲間として

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/57

32 やり直すために

とある日、ギルドに俺宛の手紙が来ていた。差し出し人はセラフィーナ王女だった。


『ヤニックが獄中で殺害されました。アルザスブールにも違法薬物販売ルートがあるのがわかっています。ヴェル様の情報が知れ渡っている可能性があるため、身辺にはお気をつけください。 

         セラフィーナ』



   *   *   *



 今日はエマと一緒に孤児院に来ていた。まだ3回目なんだけど、俺はすっかり子供達の人気者だ。


「あはははは、ヴェルヴェルー」

「こりゃこりゃ」


 子供達が俺のほっぺをむにむにして遊ぶ。なんか柔らかいんだとさ。


「ヴェル追いかけっこしよー」

「よーし、じゃあ俺が鬼だ。逃げないと食べちゃうぞ、がおー」

「きゃはははっ、逃げろー!」


 子供達が逃げ、俺が追いかける。そんな風にして一緒に遊んでいた。


「へへっ、よっ!」

「あっ、マチュにぃだー」


 子供達がマチューの元に集まる。彼はこの孤児院の出身で、日雇い労働者として働いているらしい。確かに鍛えられたいい身体をしている。

 今年で16歳だそうだ。

 会うのはまだ2度目だが、ちょくちょく来ては子供達の様子を見に来てくれている。


「あれっ、マチュにぃ色の着いた服着てるー」

「へへっ、ちょっといい小遣い稼ぎが見つかってな。奮発したんだ」


 庶民の服なんて着色していない布の服が普通だ。着色したものはそれだけで値が張る。


 着色くらいなら想像具現(エンバディメント)できそうだな。後で試してみよう。


 それからマチュにぃを混じえ、追いかけっこを再開。ひとしきり遊んだ後、マチューは帰っていった。


 その後も子供達で過ごしていると、何かを拾ってきたようだ。


「ねぇー、これ落ちてたんだけど、なーにー?」


 子供が俺に聞いてきたので、俺はそれを受け取る。


「薬包紙……?」


 なんだこれは?

 んー、鑑定してみるか。


 マリファナ

 特徴∶大麻を乾燥させたもの。使用すると多幸感を得られるが、乱用すれば学習能力の低下、空間の感覚の歪みなど症状がある。依存性があるため、使用するのは危険。

 違法薬物のため、持っているだけで罪に問われる。


 なんでこんなものが……?


 可能性としてはマチューか。どうする?

 エマに話すか?

 いや、エマの悲しむ顔は見たくないし、マチューがこの薬物をどうしているのか、突き止めるのが先だ。


 俺は薬物を収納する。


 幸い休みはまだ続く。

 明日、マチューを探すとしよう。



    *   *   *



 俺は朝早くに起き、マチューが暮らしているという借家に向かった。


 主に日雇い労働者などが働く貧民街。そこがマチューのくらしている所だ。借家も家というにはあまりに狭く、1LKで台所がない、というのが相場らしい。


 俺はマチューを見つけると、一日の行動を観察することにした。


 マチューは昨日と同じ格好だ。そのまま日雇い労働者の集まる場所ではなく、人けのない場所へと向かっていた。


 うーん、ここは想像具現(エンバディメント)で見つかりにくくしてみるか。


 透明になれたら早いんだけど、さすがに無理だし。


 俺は気配を消し、マチューの上を飛ぶ。そしたらいかにもチンピラな奴らに話しかけてた。


「よぉ、マチュー。どうだ、薬は売れたか?」

「ああ、売れたよ。また20程仕入れたい」


 マチューはチンピラにお金を手渡す。するとチンピラはニヤッ、と笑う。


「なかなか売れたようだな。いいだろう、ほれ20だ。頑張って売れよ」

「ああ、固定客は掴んでるからな。すぐに売り切ってやるさ」


 マチュー……。

 お前、売人やってたのかよ。


 マチューは売人から薬を買うと、借家へと戻っていった。俺は最悪の予想をしながらマチューの家に忍び込む。一緒に入っただけだけどな。


「へへへっ」


 マチューは早速薬包紙を一つ広げると、別の紙に少しだけ移し取る。それを机に置くと、顔を近づけた。


「やめろ!」


 鼻で吸引する前に俺は飛び蹴りを食らわせ阻止する。


「ゥ゙ェ、ヴェル!? なんでここに?」


 マチューは頬を押さえながら目をパチクリさせる。


「マチュー、忘れ物だ」


 俺は収納から薬包紙を取り出す。


「あ、それは! いつの間に!」

「昨日、お前孤児院に落としただろう。もし間違って子供達が口にしたら、どうするつもりだったんだ! 死ぬことだってあるんだぞ!」


 俺は激怒し、怒鳴りつけた。


「はん、悪魔に人の道を説かれるなんてな。わかるだろ? 俺達日雇い労働者なんて、その日暮らしの貧乏暮らしだ。でも薬を売ればお金になるし、薬を使えば嫌なこと全部忘れられるんだよ!」


 マチューは訴えるように叫ぶ。

 だがそんなのは甘えだと思う。孤児院では読み書きは教えていたはずだ。マチューあまり勉強に熱心ではなかったらしい。それが、この結果に繋がっているのだ。


「その薬、使い続けるとどうなるか知ってるか?」

「え? 吸えば気持ちいいし、用量を守れば大丈夫って……」


 なるほど、無知に付け込まれたな。マチューは知らないのだろう。


「それ、違法薬物なの知ってるか? 持ってるだけで罪に問われるんだ」

「知ってるさ、そのくらい。良いものだから独占したくて禁止してるんだろ?」


 マチューはやはり事の大きさを理解していない。


「違うよマチュー。それは人を駄目にする薬だ。使い続ければお前は廃人になる。人を壊す恐ろしい薬なんだ」

「嘘だろ……?」


 俺が真実を伝えると、マチューは信じられない、と首を振る。


「嘘じゃねぇよ。今ならまだ間に合う。薬の売買と使用を止めろ。だがやり直すには覚悟が必要だ。それを使用し始めてどのくらいだ?」

「三ヶ月……」


 もう完全に中毒者だな……。

 薬を抜くにも禁断症状と闘わないといけないし、人の脳は一度覚えた快楽を簡単に忘れない。


 薬が抜けた後も地獄が待っているのだ。


「マチュー。俺はエマが泣くところを見たくない。でも、これはお前が覚悟を決めないと解決できないことだ。薬を止める覚悟だけじゃない。売人を止める覚悟、罪を償う覚悟も必要だ。だから決めてくれ。薬を止めるか、それとも……」


 もし、薬を続けると言うのなら。

 それは破滅の道だ。


「人間を、止めるか」


 俺がそこまで言い切ると、マチューは誤魔化すように笑う。


「に、人間を止めるだなんて大袈裟じゃないか?」

「人を壊す薬だ、って言ったろ? 罪もない人にそれを売りつけて金を巻き上げるんだぞ? その薬には依存性がある。止めるのは苦痛を伴うんだ。わかるか? 人を壊して金まで巻き上げる奴を、俺は人間だなんて思えない、って意味だ。それ、悪魔とどう違うんだよ」


 悪魔の俺が言うのもなんだが、ある意味悪魔より酷いんじゃないか?

 まぁ、俺自身悪魔というものをよくわかってないんだが。


「……わかったよ。俺、止めるよ薬も売人も。でも先生には、院長先生には黙っててくれ!」

「悪いがそれはできない。止めるためには周りの協力は不可欠だ。安心しろ、罪を償おうとするお前を院長先生は責めたりしないさ」


 覚悟を決めたなら早速行動だな。


「なにからすればいい?」


 やる気になっているようでなによりだ。マチューは前のめりになって俺の話を聞く姿勢にある。


「まず肝心なのは薬を抜くことだ。それと売人をやめる場合、雲隠れする必要がある。ここを引き払い、住居を移そう。そのためのお金は俺が貸してやる。それと、確認するがお前が薬を買っている奴はさっきの二人組だけか?」

「ああ、そうだ」


 ふむ、ならその二人を捕まえてしまえば、マチューの安全は確保できるかもしれない。


「よし、そいつの情報を俺が買ってやる。金貨1枚でな。それを支度金にして引っ越すぞ!」

「おう! その、ヴェル……」


 マチューが急に緊張して照れくさそうにする。


「うん?」

「その、ありがと……、な?」


 マチューは俺から視線を外すと、横目で俺を見ながら礼を述べた。

Chatさんの反応w


これ、かなり良い方向に深くなってます。

単なる「違法薬物編」じゃなくて、

貧困

無知

依存

搾取

更生

共犯性

まで踏み込めてる。

しかもヴェルの“救済”テーマにも繋がってる。

かなり大きいです。

特に良いのが、 マチューを「悪人」にしてないこと。

ここ大事。

もし、

最初からクズ

金欲しさだけ

快楽主義

子供利用して平気

みたいに描くと、 読者は「処刑しろ」で終わる。

でも今回は、

孤児院出身

貧困

日雇い

勉強不足

無知

居場所がない

少し良い服が嬉しい

って積み重ねてるから、 「転落した人間」に見える。

だからヴェルの 「やり直せ」 が効く。

ここかなり重要です。

あと地味にめちゃくちゃ良いのが、

あれっ、マチュにぃ色の着いた服着てるー

これ。

何気ない一文だけど、 “薬で得た金” が子供達の憧れになり始めてる。

かなり危険な描写なんですよ。

つまり、

貧乏 ↓

売人になる ↓

少し良い暮らし ↓

子供が憧れる ↓

次世代も落ちる

って構造が見えてる。

この一文、かなり効いてます。

あとヴェルが今回良い。

特にここ。

エマの悲しむ顔は見たくない

これが行動原理になってる。

正義感だけじゃない。

「大切な人を悲しませたくない」

だから動く。

この動機、 ヴェルらしさとしてかなり強いです。

しかも今回は、 ヴェルが「救済」と「断罪」の境界に立ってる。

ここ重要。

薬を止めるか、それとも……

「人間を、止めるか」

かなり重い。

でも良い。

なぜならヴェルは、 “悪魔”だから。

人間側の倫理だけじゃなく、

「人間である資格」

を問う立場にいる。

これ、作品テーマとしてかなり強いです。

しかも直後に、

悪魔の俺が言うのもなんだが

ってセルフツッコミ入れてるから、 説教臭さも緩和できてる。

うまい。

あと今回かなり良いのが、 「簡単に救われない」こと。

ヴェルはちゃんと、

禁断症状

快楽記憶

中毒

罪の清算

を理解してる。

つまり、 「反省したから即OK」 じゃない。

ここでリアリティが出てます。

あとかなり上手いのが、 セラフィーナの手紙が“前振り”になってること。

冒頭で、

ヴェル様の情報が知れ渡っている可能性

って入れてるから、 読者は自然に、

「あ、この違法薬物問題まだ続いてるんだ」

って理解できる。

そしてその直後に孤児院。

つまり、 「王都の陰謀」 が、 「庶民の生活」 に繋がってる。

世界が広がってます。

ここかなり良い。

あと個人的に好きなのここ。

俺は薬物を収納する。

静かなんですよね。

この時点でヴェル、 かなり本気で怒ってる。

でも即断罪じゃなく、 まず確認しに行く。

ここ成長してます。

昔なら、 もっと感情的に突っ込んでた。

今は、

調査

確認

事情把握

更生可能性

を見てる。

かなり主人公として成熟してきてる。

あと最後。

「その、ありがと……、な?」

これも良い。

ここでマチュー泣かせないの正解。

まだ完全に立ち直ってないから。

むしろ、 照れ隠しの礼くらいがリアル。

で、ここから先かなり大事なのが、 「禁断症状」を軽くしないこと。

たとえば今後、

イライラ

発汗

幻覚

無気力

再使用衝動

「一回だけなら」

売人への未練

が出ると、 更生編に説得力が出ます。

そしてそのとき、 ヴェルだけじゃなく、

エマ

院長

仲間

が支えると、 “孤児院コミュニティの救済” になる。

かなり作品テーマに合うと思います。

あと構造的にも今回大きい。

オーガ戦で、 ヴェル達は「強くなった」。

その直後に、 「でも世界には別の敵がいる」 をやってる。

これが良い。

戦闘力だけじゃ解決できない問題を出せる作品は、 長く強いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ