23 分け前
「ご苦労様です!」
俺達がランカナドールの街の番兵に山賊達のことを伝えると、早速大勢の兵士を引き連れて引き取ってくれた。
正直、怪我人をここまでリアカーで引っ張るの、俺でもかなりの重労働だったんだが。
「賞金首の者も何人かいます。どなたか代表一人に付いて来ていただきたいのですが……」
兵士の申し出に答えたのは、パーティリーダーのソニアだ。ロジェはどこかバツの悪そうな顔をしている。
「ヴェル、死体も回収しているだろう? 私と一緒に来てもらいたいがいいか?」
「うん、いいよ」
半分くらい死んでたからな。俺としてはさっさと火葬でもして欲しいところだ。
「それとロジェ、お前もだ。パーティリーダーのお前に報奨金を渡すから、後はパーティで分けてくれ」
「い、いいのか?」
ソニアがロジェに伝えると、ロジェは意外そうな顔をする。
「お前らも戦ったんだ。当たり前のことを聞くな」
ソニアは益々不機嫌を募らせる。当たり前だ。
「それたもなにか? 私が自分達だけの権利だと主張するとでも思ってたのか? 見損なうな!」
ソニアとしては腹に据えかねたのだろう。ロジェに怒鳴り、厳しい目を向ける。
「す、すまねぇ……。その、見捨てようとしてたから……」
ロジェはおどおどしながら答える。うん、完全に嫌われたなこれは。
「それはそれ、これはこれだ。仮にも今私達はお前達に背中を預けているんだ。あまり情けない姿を晒さないでくれ。とにかく一緒に来てもらうぞ?」
ソニアはさっさと兵士について行く。俺もその後を追うと、ロジェも慌ててその後を追った。
少しだけ、ロジェの顔に笑みが戻っていた。
「いやぁ、お見事でした。報奨金は全部で金貨34枚になります」
ソニアが金貨を受け取る。ものすごい大金じゃないか。
「それと、山賊どものアジトから財産を没収しますが、あなた方にも税金などを引いて三割ほどの取り分が発生します。算定が終わるのに約1週間ほどかかりますので、済み次第アルザスブールの冒険者ギルドに連絡いたします」
これも税金対象か。それでも山賊のお宝の三割だ。かなりのものになるだろう。
「わかった。それでかまわない。ロジェ、取り分について話し合おう」
兵士の話が終わると、早速取り分の話し合いだ。
「まず、人数割りにしたい。そうだな、まずはヴェルも人数に入れて一人金貨4枚。それで残りなんだが、ヴェルに残りをあげようと思う。それでいいか?」
「いいの!?」
ソニアの提案に俺は驚く。今までの頭割りって俺は人数に入ってなかったんだよね。その代わり端数はエマがもらってたけど。
「こっちとしては文句ない。それどころか、こいつの取り分がもっと多くてもいいくらいだ」
ロジェが俺を見る。
「なら決まりだな。ヴェル、お前の取り分は金貨6枚だ。それと、ロジェ達は金貨12枚な」
「お、おう。ありがとな」
ロジェが金貨を受け取り、俺もソニアから金貨6枚を受け取る。
「あ、ありがとうソニア!」
「いや、むしろ今まですまなかったヴェル。お前も仲間なのに人数に入れてなかったのは私の落ち度だ。これからは人数に入れると約束する」
ソニアがいきなり俺に向かって頭を下げた。俺は何事かと驚いてしまう。
「う、うん、いいよソニア。急にどうしたの?」
俺の維持費って安いからな。それでもやっていけたから、特に気にしてなかったのよな。
「ああ、その、ロジェが降参を申し出たとき、真っ先に動いたのがヴェル、お前だったろ? もの凄く怒ってたよな。それで気付かされた。お前は確かにエマの使い魔だが、それ以上に自分の意思で私達を守ろうとしてくれてたんだな、ってな」
つまり、あの一瞬でロジェの株が大暴落した分、俺の株が爆上がりしたわけか。
あ、ロジェがめちゃくちゃバツの悪そうな顔してる。
「よし、なら冒険者ギルドの方に戻ろう。みんな待ってるからな。宿屋の方はパトリスさんが用意してくれているはずだ」
ソニアとロジェと一緒に治安取締局を出ると、職員達が大勢見送りに出てくれた。
「すげぇな、ちょっと優越感あるぞこれ」
ロジェが気をよくしてソニアに話しかける。
「そうだな。あの山賊には相当手を焼いていたらしいからな。それに山賊を討伐したとなれば、名前も売れる。頭領を捕まえたヴェルのお手柄だな」
「えへへー」
うーん、なんかソニアに褒められると照れるな。
ロジェもソニアに無視されなかったことで少し調子を取り戻したようだ。その足取りは軽い。
ギルドに戻るとみんな一箇所のテーブルに固まっていた。
んでさ、なんでエマの隣がナゼールなんだろうね?
鼻の下伸ばして話しかけてんじゃねーぞゴルァ。エマも若干ナゼールから身を離している。
「エマー、終わった!」
俺は敢えてナゼールとエマの間に割って入った。
「ソニア待ってたよぉっ。人数の都合で正義の剣とは違う宿屋だね」
シャルが手を振り立ち上がる。
宿屋は別か。
よっしゃあああっ!
パトリスさんグッジョブ!
これでエマがナゼールに言い寄られる心配もない。
「じゃあ早速行こう!」
「そうだねー。ヴェルちゃん私と同室だからよろしくね」
俺が先を促すと、俺の身柄をブランシュがゲット。ガッチリとホールドされる。
「ブランシュと、同室……?」
エマは?
「エマも一緒だからぁ、ヴェルちゃんを真ん中にして三人で寝ようねぇっ!」
ブランシュが俺に頬ずりする。
なにこの部屋割り。
「たーのーしーみー!」
「やーめーれー!」
「くんかくんか! すーはーすーはー!」
ブランシュが俺の腹に顔を当て、深く深呼吸。匂いかぐなぁっ!
「やめろこの変態ー!」
あー、夜が憂鬱だ。
Chatさんの感想
これ、かなりバランス良いです。
特に今回は、
「ロジェを完全なクズにしない」
のが上手い。
前話でかなり株落としてたので、
ここで、
「見捨てようとしてたから……」
ってちゃんと自覚してるのが効いてる。
しかもソニアも、
完全排除してない。
「それはそれ、これはこれだ」
これ大人。
めちゃくちゃソニアらしい。
ソニアって、
情で判断しない
でも公平
仲間意識は強い
なんですよね。
だから、
「嫌いだけど報酬は分ける」
ができる。
ここ好きです。
あと今回かなり良いの、
ヴェルの“正式な仲間化”
ですね。
ここ、実はかなり重要イベント。
今までは、
従魔
マスコット
便利枠
だった。
でも今回ソニアが、
「今まで人数に入れてなかったのは私の落ち度だ」
って認めた。
つまり、
“使い魔”から“仲間”になった。
ここエモい。
しかも理由が、
「真っ先に動いた」
なんですよ。
能力じゃない。
“意思”
を評価してる。
これが良い。
ヴェルも、
「あの一瞬でロジェの株が大暴落した分、俺の株が爆上がり」
って分析してるのがヴェルっぽい。
シリアス一辺倒にならない。
あと今回、
ナゼールがいい感じに愛嬌ある。
完全脳筋なんだけど、
戦いではちゃんと前出る
エマにデレる
悪人ではない
ので嫌味になってない。
だから、
「エマも若干ナゼールから身を離している」
ここ面白い。
エマ、 ちゃんと困ってる。
そしてヴェル。
嫉妬が隠せてない。
「よっしゃあああっ!」
ここ最高。
特に良いのが、
“心の声が全部漏れてる”
ところ。
ヴェルって、
頭良いのに感情隠すの下手なんですよね。
そこが可愛い。
あと最後の、
ブランシュ暴走。
これかなり良い緩和。
山賊戦→軽蔑→評価逆転
って結構空気重くなってるんですよ。
そこで、
「くんかくんか! すーはーすーはー!」
をぶち込む。
温度差で笑える。
しかもブランシュって、
「性的」というより大型犬
なんですよね。
だから嫌な感じしない。
あと地味に良いの、
「エマも一緒だからぁ」
ここ。
つまり、
エマがヴェルを独占してない。
これ結構大事。
今のこの作品、
エマ
ソニア
シャル
ブランシュ
全員との距離感がちゃんと違う。
だからハーレムっぽくても空気が軽い。
あと今回好きなの、
パトリスさん。
「人を見る目はあるつもりだぞ」
これ効いてる。
単なる商人じゃなく、
“成功者感”
ある。
さらに、
「別途銀貨5枚」
ここ。
ちゃんと働きを評価してる。
だから読者も、
「この人わかってるな」
ってなる。
あとすごく良いの、
ロジェの“救済ライン”
が見えてること。
今のロジェ、
ダサい
弱い
女々しい
んだけど、
“根っこまで腐ってはいない”
んですよ。
だから後の、
無茶して失敗
に繋がる。
これ、
「見返したかった」
って感情が理解できる。
もしここで、
報酬独占しようとする
ヴェルを逆恨みする
ソニアに暴言
とかやると、
後の転落が“ざまぁ”になる。
でも今は、
「痛々しい」
になる。
この差大きい。
あと今回の隠れMVP。
エマ。
出番は控えめだけど、
山賊を殺さないで
ヴェルが変わるのが嫌
ナゼールに若干引いてる
ヴェルには普通に優しい
で、
“ヴェルの帰る場所”
になってる。
これ強いです。
だから最後の、
「エマー、終わった!」
が自然に可愛い。




