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悪魔に転生した俺は見習い聖女の使い魔として生きていきます  作者: まにゅまにゅ
第1章 悪魔転生

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17/44

17 乾杯

 ギィィィッ!


 怒り狂ったグリフォンは身体を回転させつつ、巨大な羽根でダンカンさんを叩きつける。


「ダンカンさん!」


 ブランシュがバトルアクスを投げ捨て、カバーに走る。

 まずい、このままだとダンカンさんが墜落する!


「ぬおおっ!」


 俺は念力でダンカンさんの落下速度を必死に抑える。それでもブランシュは間に合わず、ダンカンさんは地面に叩きつけられた。


「ぐううっ!」


 グリフォンが羽ばたき、竜巻を生み出す。そして竜巻がダンカンさんを襲った。


 ブランシュがダンカンさんを抱える。竜巻はすぐそこだ!


「ヴェルちゃん!」


 ブランシュがダンカンさんを放り投げた。俺はそのまま念力でダンカンさんを持ち上げる。そしてエマの近くまで引き寄せた。


「あうっ!」


 ブランシュが竜巻に巻き込まれ、高く飛ばされる。


「ヴェル坊、俺を飛ばせ!」

「わかった!」


 トビさんが斧を手放し、身体を屈める。トビさんに運動エネルギーを与え、トビさんは高く飛んだ。


 トビさんは空中でブランシュを見事にキャッチ。抱きかかえる。後は俺が墜落の衝撃を和らげれば!


 しかし二人を狙ってグリフォンが爪を向ける。が、グリフォンは急に突撃を止めた。


氷結烈砲(アイスバースト)!」


 グリフォンの目の前を強大な冷気の束が通り抜ける。勘のいい奴だ。

 それでも、そのおかげで俺はトビさんの着地を和らげることができた。


「むん!」


 トビさんが着地する。


「あ、ありがとうございます!」

「なに、礼を言うのはこっちの方だ。しかしこいつぁ、かなり手強いな。以前戦ったグリフォンより強え」


 しかし、そんな中でもトビさんは笑っていた。


「たぎるじゃねぇか! なぁ兄弟! いけんだろ!?」

「当然だ……!」


 エマの治癒魔法を受け、ダンカンさんが立ち上がった。グリフォンは確実にダメージを受けている。だけどまだ一歩足りない。


 背中の傷はかなり深いはずだ。

 そうだ、この手を試してみるか。


「シャル、まだ氷結烈砲(アイスバースト)いける?」

「後1回なら!」 

 

 チャンスは1回、か。外せないな。


「じゃあ俺の掛け声であいつに食らわしてやって」

「わかった。考えがあるんだね、ヴェル君」

「まぁね」


 一か八かだが、それでも俺はニヤリと笑って見せた。


 グリフォンが高く羽ばたく。その眼光は俺に向いていた。奴め、俺がサポートしていることに気がついたというのか?


 急降下。


 狙いは俺か!


防壁(プロテクション)!」


 エマが魔法の壁を作る。先程と同じく横向きだ。しかしグリフォンは空中で旋回。魔法の壁に回し蹴りを食らわせ、叩き割る。


 嘘やろ!?


 だが、その動きで突進力は落ちた。


「これでも喰らえ!」


 俺はグリフォンにとある液体を大量にぶっかけてやった。


「シャル!」

「わかった! 氷結烈砲(アイスバースト)!」


 ピギイイィィィッッ!!


 突如グリフォンが痛みに悶える。そして、そこに隙が生まれた。


 シャルの氷結烈砲(アイスバースト)がグリフォンを呑み込む。グリフォンの羽根が、身体が少しずつ氷に覆われていった。


 俺が生み出したのは酢酸。

 酢酸の凝固点は約16.6℃。しかも傷口に染みるのだ。


 身体の一部が凍りつき、グリフォンの動きが鈍る。


「よくやった!」


 トビさんがグリフォンの喉に強烈な一撃を加える。喉元が開き、血が噴き出した。


「ヴェル、さっきのを頼む!」


 ダンカンさんが飛び上がる。


「よっしゃ!」


 俺はダンカンさんに運動エネルギーと回転を与え、飛ばす。ダンカンさんは爪を立て、グリフォンの開いた喉元目がけ突撃した。


 ピギイイィィィッッ!!


 ダンカンさんの爪が喉元を抉る。グリフォンは背中から倒れ、翼を広げた。


「おおおおおっ!!」


 そこからダンカンさんは馬乗りになり、何度もグリフォンの喉元に爪を立てた。


 爪を突き刺す度に鮮血が飛び、ダンカンさんの顔を血で汚す。それを何度も繰り返し、グリフォンはついに動かなくなった。


「凄い……!」


 誰ともなく呟く。


 ガオオオオン!


 ダンカンさんの、虎の咆哮が森林に響いた。


「お前ら手ぇ出せえっ!」


 トビさんが叫ぶ。


 皆が手を掲げると、トビさんが全員とハイタッチ。

 そして俺とも。


「ハッハァ! ヴェル坊やるじゃねぇか!」

「トビさんこそ!」


 バチィン、と荒々しいハイタッチを交わした。

 お互いニヤリ、と笑みを交わす。


「よぉしヴェル坊、収納を頼む」

「うん!」


 俺はグリフォンの遺体を収納した。


「馬はもうダメだな。このまま放っておけば、またヒポグリフが生まれちまう」


 馬は苦しそうにビクン、ビクンと身体を震わせていた。


「今、楽にしてやっからな」


 トビさんが斧を振り下ろす。


「……すまなかったな」


 トビさんが小さく呟いた。



 その後、集落に寄るとグリフォンの死体を見た長や人々は腰を抜かしていた。


 馬は、その死体を飼い主の元に返してあげた。

 ヒポグリフを産ませないため。そう伝えると、飼い主さんは涙を流しつつもわかってくれた。


    *   *   *


 アルザスブールに戻ると、解体場は大騒ぎだった。


 なにせヒポグリフとグリフォンが解体に回されたのだ。見物人も多く、トビさんとダンカンさんはすっかり英雄だった。


 そしてその夜、『乾杯』主催の大宴会が冒険者御用達の酒場、『今日の一杯』で行われていた。


「今日は俺達の奢りだ! みんな遠慮なく食って飲んでくれ!」


 トビさんが木のジョッキを掲げる。


「よーし、みんな乾杯だ! この勝利は俺ら『乾杯』だけの力じゃねえ、月桂の冠(ローレルリース)の力もあっての勝利だ!」


 トビさんが場を取り仕切る。そこ一言に皆がおおーっ、と感嘆した。


「我等の友、月桂の冠(ローレルリース)に!」


 ダンカンさんがジョッキを掲げる。

 なら俺も!


「ロマンを求める大バカ野郎に!」


 俺が叫ぶと、トビさんが「言うじゃねぇか」と言わんばかりに俺にニヤリと笑って見せた。


「そんな大バカ野郎になりたい我等冒険者に!」


 そう言ってジョッキを掲げたのはなんと、ソニアだった。


「かんぱーい!」


 俺達は乾杯を酌み交わす。

 皆で食べ、飲んで大いに歌った。


 オーオー!

 我等冒険者♪

 お宝求め西東♪

 富と名声欲しいけど♪

 自由なこころー、忘れるな♪


 強さを求め若人よ♪

 千里の道も一歩から♪

 弱きを助く者となれ♪


 オーオー!

 冒険者♪

 一人じゃ勝てぬ相手なら♪

 みんなで挑め、なっかまだろ♪

 共に生きよう、酌み交わそう♪


 ロマンを求め、西東♪

 危険なとっきもぉ、あるけれど♪

 いーきて帰りゃ、酒が美味い♪


 みんなで肩を組み、飲み、大いに盛り上がる。


 エマも、


「頑張ったから」


 と、エールを一杯だけ許してくれた。


 転生して初めて飲んだ酒は。

 転生前よりもずっと美味しかった気がした。

Chatさんの感想w


かなり良い締めでした。

今回、単純に「グリフォンを倒した」だけじゃなく、

“冒険者たちの物語”

としてまとまってる。

ここが強いです。

まず今回一番良かったの。

「乾杯」

というタイトル回収。

これ綺麗。

『乾杯』って、

最初はただの陽気なBランクパーティ名だった。

でも最後には、

“生きて帰れた者たちの祝福”

になってる。

しかも、

生きて帰りゃ、酒が美味い♪

この歌詞が、

グリフォン戦を経た後だと重みが変わる。

これが良い。

今回かなり好きなのは

「トビさん達が最後まで格好いい」

こと。

ここ重要。

普通こういう展開、

新主人公覚醒

主人公が全部持ってく

になりやすい。

でも今回は違う。

主役はちゃんとBランク

なんですよ。

ヴェルはあくまで、

支援

発想

補助

連携

を担当してる。

だから世界観の格が崩れない。

特に良いのが

「トビさんがちゃんと強い」

ところ。

ここ。

よくやった!

からの喉への一撃。

完全にベテラン。

さらに、

今、楽にしてやっからな

これ。

超良い。

ただ強いだけじゃなく、

“冒険者としての覚悟”

がある。

グリフォン倒して終わりじゃない。

ヒポグリフ問題を終わらせるために、 苦しむ馬にもケリをつける。

ここで一気にトビさんの格が上がった。

そして今回かなり良かったのが

「ヴェルの科学系発想」

酢酸w

めちゃくちゃ好き。

しかも理屈がちゃんとしてる。

酢酸の凝固点

傷口に染みる

動きを止める

全部繋がってる。

こういう、

“現代知識を悪用する”

のがヴェルの強みになってる。

しかもそれが、

仲間の攻撃へ繋がる

のが良い。

あとここ好き

嘘やろ!?

ここ。

この作品、

ヴェルのツッコミがあるから重くなり過ぎない。

これ大きい。

特に、

グリフォン

聖女制度

主従契約

災厄

って放っておくと相当重い世界なんですよ。

でもヴェルの反応で空気が柔らかくなる。

そして最後。

ここかなり良かった。

「頑張ったから」

エールを一杯だけ許してくれた。

これね。

めちゃくちゃ“ご褒美”感ある。

戦いを終えて、

仲間がいて

生き残って

笑って

飲んでる

これが幸せなんだ、 ってちゃんと伝わる。

しかもラスト一文

転生して初めて飲んだ酒は。 転生前よりもずっと美味しかった気がした。

これ綺麗。

単なる酒じゃない。

「人と生きる温かさ」

を飲んでる。

だからこの話、

実はずっと一貫してるんですよ。

最初の、

「もう1人は嫌だ」

から、

今回の、

「みんなで乾杯」

まで。

つまりテーマは、

“居場所”

なんですよね。

これかなり強いです。

あと細かい改善点を言うなら、

最後の歌。

ここだけ少し整理するとさらに締まるかも。

例えば、

一人じゃ勝てぬ相手なら♪ みんなで挑め、なっかまだろ♪

この「なっかまだろ」は、 ちょい砕けすぎて、

直前までの熱さより少し幼く見える。

なので例えば、

みんなで挑め、仲間だろ♪

背中を預け、戦えよ♪

共に笑って、生き抜こう♪

みたいにすると、 少し締まりが増す。

でも今の「酔っぱらいの大合唱感」も味なので、 これは好みです。

あと今回、

ソニアがかなり良い位置

にいる。

最初は警戒役だったのに、

最後は、

「そんな大バカ野郎になりたい我等冒険者に!」

これ言う側になってる。

つまり、

ヴェルを受け入れた

んですよ。

ここかなり大事。

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