11 ヒポグリフ討伐 1
「お話ってなんですか?」
俺たちはギルドに呼び出しを受け、応接室に通されていた。
長いソファに4人並び、俺はエマの膝の上だ。その対面に座っているのはギルドの受付嬢だね。
絵とか飾ってあって、レースのカーテンなんかもお洒落だ。冒険者ギルドって儲かってるんかな?
「はい、月桂の冠の最近の討伐状況などを踏まえますと、Dランクに昇格してもいいのでは、と思いまして」
「おおっ、遂に私達の時代が来るのかな?」
受付嬢の言葉にシャルが嬉しそうにはしゃぐ。
「それは是非。それで、昇格条件は確か……」
「はい、危険度D相当のモンスターの討伐ですね。そんなわけで三つほど依頼書を見繕いました」
受付嬢が三枚の依頼書を並べる。
「これは素材採取ですね。対象はフレイムリザード。状態にもよりますが、一体平均金貨1枚です」
「ここからだと往復1週間か」
ソニアが依頼内容を吟味する。1週間だと俺達なら金貨10枚は稼げるだろう。途中でどれだけ稼げるかだな。
「こちらは討伐依頼。討伐対象はヒポグリフですね。依頼料は金貨1枚ですが、ヒポグリフは珍しく、買い取り金額は素体まるまるなら金貨5枚はいけるでしょう。場所もここから片道一日ですね」
「なるほど、悪くなさそうだ」
2日で金貨6枚以上か。確かに悪くなさそうだ。
「もう一つはこれですね。ゴブリン討伐。場所はここから2日離れた洞窟。少なくとも20体以上いるため、上位種が最低一匹いるものと思ってください。報酬は銀貨60枚。それとは別に金貨2枚支給されます」
「……一番割に合わないな」
「ですよねぇ……。この中じゃ一番危険度も高いですし」
ゴブリンて雑魚ちゃうんかい。気になる。なので受付嬢さんに聞いてみた。
「ゴブリンって雑魚じゃないの?」
「一匹や二匹でしたらね。でも狭い洞窟では足場も悪いですし、剣やバトルアクスなんていつものようには振れません。それに暗いので地の利は完全にゴブリン側にあるんです。それが最低20体いるんですよ? 下手をしたら奇襲を受けて全滅することもあります。それにホブがいた場合は更に危険です。狭い場所では身体の大きい方が圧倒的に有利なんですよ」
なるほど、つまりホブは成人男性より大きいと。やっぱりゲームとは違うんだな。
「うーん、勉強になるな」
「でも、頼んだ方は困っているんですよね?」
エマらしい質問だ。
困ってる人を見捨てられない。
でも、綺麗事だけじゃ生き残れないんだろうな、やっぱり。
「そうですね。実際ゴブリン討伐って人気ないんですよ。規模想定外はあるし、予想外の上位種がいたり、変にずる賢いですからね。しかも塩漬け依頼になると、状況は益々悪化して誰も受けられない。そうしてる内に村が滅んでおしまい、なんてこともあるんです。そうなったら騎士団の出番ですね」
なるほど、時間との戦いか。
「いや、そうならないと騎士団動かないの? それならもっと早く動けばいいのに」
「わかります。制度が追いついていないんですよぉ。なんかいい方法ないですかね?」
制度が追いついてない、か。結構あるあるだよねそれ。現場と上役の見解不一致なんてよくある話だ。
「じゃあ規模別にDやCランク昇格条件に入れたら? しょっちゅうは無いかもだから、2パーティ合同でギルドから使命、みたいに。それかいっそゴブリン討伐は全部騎士団がやる」
「いいですね、それ。今度上に掛け合ってみましょう。それはそうとソニアさん、どれになさいますか?」
「悪いがゴブリン討伐は無しだな。洞窟慣れしてないと無理だ。ギルドとしてはどっちを受けてほしい?」
うん、エマには悪いけど無しだと思う。場慣れって大事だよね。
「うーん、ぶっちゃけるとヒポグリフですね。あの距離を浮遊やリアカーで運ぶのは大変ですからね。収納スキルのある月桂の冠に是非お願いしたいです」
確かにリアカーで往復二日引きっぱなしはしんどそうだ。
「わかりました。このヒポグリフ討伐をお受けします。みんなもそれでいいか?」
ソニアが確認すると、皆はコクリと頷いた。
「ではこちらの依頼を引き受けるということで。承認、と」
受付嬢が依頼書に判を押し、ソニアが受け取る。
片道一日か。そうなると夜営が必要になる。夜営って初めてだな。
うん、少し楽しみかも。
いや、これは「回り道」じゃなくて、
かなりちゃんとした“世界を生かす導入”になってます。
むしろこの回、
「異世界がちゃんと動いてる感」
かなり出てる。
特に良いのが、
ゴブリン討伐の扱い
です。
これかなりリアル。
普通のなろう系だと、
ゴブリン=雑魚
で終わる。
でも今回、
洞窟
数
奇襲
地形
上位種
長期化
をちゃんと説明してる。
これで、
「冒険者って仕事なんだな」
感が出る。
かなり良い。
しかもここ、
ヴェルの現代知識
も自然に使えてる。
「制度が追いついてない」
とか、
「規模別昇格条件」
とか。
これ、 転生者らしさがちゃんと出てる。
でも俺TUEEE知識マウントじゃない。
そこが良い。
あと受付嬢の反応も自然
「今度上に掛け合ってみましょう」
これ。
ちゃんと“現場感”ある。
つまり今回、
「ギルドがただの便利施設じゃない」
のが見える。
昇格管理
危険度
依頼滞留
騎士団との役割
ちゃんと組織してる。
世界観の厚みになってる。
そしてヒポグリフ選択も上手い
なぜなら、
「収納スキル」
が戦闘以外でも評価されてるから。
これかなり重要。
ヴェルって今まで、
妨害
補助
魔法
で活躍してた。
でも今回、
「物流」
にまで価値があるとわかった。
つまり、
“社会で必要とされる”
描写になってる。
これかなり大事。
あとここ良かった
「夜営って初めてだな。 うん、少し楽しみかも。」
これ。
めちゃくちゃ良い締め。
今までヴェルって、
生きるので必死
孤独
追われる
だった。
でも今、
「冒険を楽しめる」
ようになってる。
かなり成長感じる。
で、
回り道しすぎ?
について。
結論、
“今はギリギリ大丈夫”
です。
ただし。
注意点は一つ
「説明だけで終わらせない」
こと。
今回なら、
ゴブリン危険論
ギルド制度
ランク事情
かなり説明入ってる。
でも最後に、
「夜営楽しみ」
でヴェルの感情へ戻してる。
これがあるから読める。
かなり大事。
逆に危険なのは
例えば、
ゴブリン生態講座
ランク制度解説
ギルド政治
だけで終わる時。
これは止まる。
でも今回、
「依頼選び」
という目的がある。
だから会話に意味がある。
ちゃんとシーンになってる。
あと地味に良いのが
ソニアが即ゴブリンを切ったこと。
ここ。
ソニア、 ちゃんとリーダーしてる。
エマは多分、
「困ってるなら助けたい」
側。
でもソニアは、
「生きて帰る」
を優先してる。
このバランスかなり良い。
そしてヴェルも
「エマには悪いけど無しだと思う」
になってる。
つまり、
“現実を見る側”
に寄ってきてる。
これ成長なんですよね。
個人的に好きなのここ
「ゲームとは違うんだな。」
これ。
かなり自然な転生者反応。
しかも説明くさくない。
総評
かなり良い“次章導入”です。
特に、
世界の仕組み
冒険者の現実
パーティの判断
ヴェルの成長
全部入ってる。
しかもちゃんと、
「次はヒポグリフ討伐だ!」
で読者を前へ進ませてる。
だから回り道というより、
“旅の空気を作れてる”
感じですね。




