表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

第6話

最後まで短い

来たる開戦日。皮鎧を身につけ剣を手にした私は遊撃隊。散々に敵の動きを翻弄する役だ。ニコルも同じく。

開戦と同時に大将の首をとった。ニコルも敵の物資に火をつけて大混乱に陥れている。

何度も増援される兵も物資も軽々と潰せたが、どこか変だと思い始める。兵の忠誠心が高すぎる。こんな戦争だなんて危ないこと、内心は「嫌だなあ…」と思うのが普通だ。だが兵士たちは戦意も高く何度も突撃してくる。


「なんか変じゃないっすか?」


ニコルも首を傾げている。


「悪魔の気配がする。」


私はそう言った。悪魔は人間の「絶望」「痛い」「苦しい」「憎い」「妬ましい」などの負の感情を食料としている。基本は平和的に地獄の亡者の痛苦を食べて生きている生き物なのだが、時折人間界にやってきて人間と契約して望みをかなえる代わりに食料を要求したりする。勿論これは犯罪で、『永久とわの牢獄』と言う、空腹は感じない代わりに何も見えず、何も聞こえず、何も匂わない、誰もいない牢獄に入れられる刑に処される。時と場合によっては情状酌量もある。


「悪魔が関与してるっすか?」

「その可能性は高いと思う。」

「例の王子っすか?」

「多分な。」


私は正規兵たちに告げた。


「ちょっくら私とニコルでオルトア王子…王?どっちでもいいが、そいつの息の根止めてくる。」

「なっ!敵の本拠地に単身でだと!?死ぬつもりか?」

「その予定は今のところないな。まあ、見てろ。お前たちは出来るだけ互いの国民に死者を出さないように持ちこたえてくれ。」


騎士団長は渋々頷いてくれた。私とニコルは王都へと駆けた。道は元住民であった私が熟知している。疾風のように早い私たちを、誰も止められない。城の中の住人も出合い頭に昏倒させて進む。

そして玉座。


「お久しぶりですね。オルトア様。」

「なっ!?お前はアレクシア!死んだはずでは!?」

「蘇ったんですよ。」


久しぶりに会うオルトア様のカルマ値は見るも無残なことになっていた。魂も色んな色が混じり合って茶色っぽく汚い。


「オルトア様は悪魔と契約なさいましたでしょう?」


オルトア様には悪魔と契約した者に現れる独特な黒い糸が伸びている。


「ふはは。そうさ!僕は悪魔と契約した。悪魔の力は素晴らしい。強靭な体に、決して裏切らない兵。僕は世界を手に入れるんだ。」


何を言ってるんだか。この幼稚な狂人は。世界など手に入れたところで、こいつが統治できないのは目に見えている。


「悪魔、この気配はトルクだな?貴様の悪行は既に露見した。素直に自首するなら『永久の牢獄』の収監期間に情状酌量が加えられると思うが、どうするつもりだ?」


享楽を好む悪魔にとって退屈で死にそうだけど死ぬことなど許されない『永久の牢獄』は何より重い罰である。

しゅわしゅわしゅわっと黒い人影が現れた。


「こんなところに獄卒が現れるなんてついてない。誰にも知られず甘い蜜だけ適当に吸って帰る予定だったのに。情状酌量頼みましたよ?オルトア王子。貴方の負の感情は中々美味しかったが、諸事情によって契約を打ち切らせていただきます。」

「な、なんだと!?」

「では、御機嫌よう。」


悪魔は去って行った。これから裁きを受けるのだろう。自首したから情状酌量はつくはず。


「オルトア王子。貴方の命運は尽きた。地獄でカルマを洗い流し、綺麗な魂になって来い。」

「地獄は辛いですが、苦しみの後の喜びは大きなものですよ。貴方もいつかきっとそれを感じ取れるはずです。」


ニコルが慈愛に満ちた微笑みを向けて、オルトア王子の首を刎ねた。

悪魔の契約が切れたのでサザンスエルの兵士たちは戦意喪失。寧ろ自分が何故戦っていたのかわからない状態。王も王子もいないので、即座に降伏した。私とニコルはオルトア王子の首を持って帰ってきた。



***

ウォーレン王にそっとことの顛末…悪魔との契約の話を告げた。悪魔は気まぐれに契約を打ち切って去って行ったと伝えたが、その点は少し不審に思っているようだった。

サザンスエル国はスノウエレン国に合併したが、その土地を治めているのは元のサザンスエルの貴族たち。トップだけがすげ変わったような状態だ。私の両親も無事で、エマーシャ領を治めている。私とニコルは暁銀星章を受章した。言うまでもなく武勲に対する勲章だ。そして私は伯爵に陞爵した。

ニコルはエマーシャの両親に「お嬢さんを僕にください!!」という謎の儀式を行って、両親には大変気に入られた。

そして宣言通り私の肖像画をプレゼントしてくれたので屋敷に飾っておいた。ふんわりとした美少女だがどこか意志の強さを感じさせる…ニコルには私がこういう風に見えているのか…と思うと思わずドキドキしてしまう絵だ。


「先輩。もう婚約したし、子作りしても良いと思うんっすよ。」


ニコルがじりじりと近付いてきた。


「馬鹿を言うな、お前には3万年早い!」

「殆どの人間は100年も生きないっすよ!!?」



***

私は結婚まで処女を守った。新婚初夜の奴のハッスルぶりはちょっとないと思う。嫁になったことを少し後悔するレベルだ。

とはいえ私たちは、子を残し、共に長生きして、幸せに人間としての生を終えた。

獄卒に戻ったが獄卒としても婚姻届けは出して、夫婦の獄卒だ。


「ニコル!書類が間違ってるぞ!!」

「す、すいませんっ!」


奴のウッカリ癖は全然抜けなかったが。まあ、幸せである。


最後までお付き合いいただき、どうも有り難うございました。

わんこ×ツンデレ萌えです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ