Delighting World Epilogue. ~未来のメッセージ~
かつて世界は7つの世界に分かれていた。
不安定な世界は破壊と再生を繰り返し、やがて長き葛藤と戦いの果て、世界は調和を取り戻し世界は7人の神により統合された。
神々は世界の闇を封じ込め、今も世界の何処かで、その闇が溢れないように見守っているという。
7つの世界を統合したこの世界は"シンセライズ"と呼ばれ、まだ未開拓の地が多く残された世界である。
果ても分からないこの世界に住む人々には複数の種族が存在している。
速さ・力に長けた種族、獣人。
力と知識に長けた種族、竜人。
そして全ての種族の中で最も知識に長けた種族、人間。
更には知・速・力…全ての能力に長けた種族、ドラゴン。
他にも魔物と呼ばれる生物や、混血と呼ばれる混ざり物の種族。
これらの種族が存在するこのシンセライズと呼ばれる世界の人々は時に争うこともあるが、それぞれがそれぞれの生き方でこの世界を生きている。
――
そんな世界で起こったイビルライズを巡る大きな大きな事件。
世界は滅亡の危機に陥ったが、それに立ち向かい、向き合った英雄たちと、そして抑止力たち。
世界は滅びの道から外れ、世界は再び平和を取り戻した。
そんな大きな、大きな事件から―――6か月の時間が流れました。
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Delighting World
Epilogue.
~未来のメッセージ~
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「お兄ちゃん~」
「ん~……」
「…お兄ちゃんってば!わーーーっ!!」
「わわっ!?」
ベッドで眠るビライトに大声を出して無理矢理目覚めさせたキッカに驚きビライトはベッドから転げ落ちた。
「いてて…おはよう…キッカ…」
「おはよう、お兄ちゃん!」
キッカはそれだけ言い、支度を進めていた。
「あれ…これ前にも似たようなこと無かったっけ…?」
ビライトは起き上がり頭をボリボリと掻きながらリビングへと歩く。
「ねぇ!これ見て!」
「ん?なんだそれ…機械…?」
「これ、ロクオンキっていうんだって。ここを押すと記録した声が聴けるらしいんだけど…」
キッカは同封されていた説明書を読みながら話す。
「へぇ…って、それどうしたんだ?」
「さっきドラゴン便で宅配が来たんだよ。レジェリーからだって!」
「レジェリーから?何が記録されているんだろう…?」
ビライトとキッカはテーブルに座り、ロクオンキを置き、再生ボタンを押した―――
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「―――あー…あー…元気ですか?…これ本当に記録されてるの?」
「ウム、そのはずだ。あと畏まらずとも自然に話した方が良い。」
集合住宅の一室。
2階の窓からは小さな小鳥たちがバサバサ飛ぶ。温かい気候に包まれ、そよ風が窓から入り込む。
「じゃ、えっと…はーい!キッカちゃん!ビライト!元気にしてる?あたしよ。レジェリー!」
「カタストロフだ。」
「ヒューシュタットのホウ様から頂いたロクオンキ?っていうのを試してるの!手紙の音声版ってカンジ!あたしたちが今喋っている音声を記録していつでも聞くことが出来るんだって!これで2人にあたしたちのことやカタストロフから聞いたみんなのこと、知らせてあげよっかなって思ったの!」
「我がこの時のために皆のことを調べておいた。あれから6か月、皆それぞれ違う道を進んでいるぞ。」
「あたしも祝式のあと一旦アーデンに帰ってお父さんとお母さんとじっくり話をしたのよ。カタストロフも紹介して一緒に過ごすことを許可してくれたわ!まぁ…相手が魔王カタストロフだから流石に驚いていたし、カタストロフのメンツもあるから断れなかっただろうけど…」
「そ、それだと我が無理矢理認めさせたように聞こえるのだが…」
「やだ、そんなことないってば~!って、えっと!あたしとカタストロフは今、ドラゴニアで家を借りて暮らしてるよ!」
―――
「これを…よっと…」
「おう!精が出るな!」
「あぁ、ボルドー様!お疲れ様です。えぇ、もう一息です!」
「よぉし、俺様も手伝うぜッ。」
「えっ、忙しいのでは?」
「身体動かしている方が楽なんだよ。王になってからずーーーっと座って作業作業…身体訛っちまうんだよ。」
「ボルドー様?無理はいけませんよ。」
「良いじゃねぇかクルト。頼むよ!」
「やれやれ…仕方ありません。少しだけですよ?」
「やったぜ!へへっ。」
ドラゴニアはあれからすぐに復興作業が進んで、ワービルトやヒューシュタットの協力もあって元の姿に近づきつつあるわ。というか、もうちょっとで何も変わらないドラゴニアが戻ってくるってカンジ。
ボルドー様の采配が良いのかしら。凄い速度で復興が進んでね。ボルドー様もよく街に顔を出して復興のお手伝いをしたり、困っている人たちのお手伝いを積極的にしているわ。
あんたたちがコルバレーに帰ったのが祝式が終わって1か月後ぐらいだったっけ?それから5ヵ月で見間違えるようになったわよ。いつでも遊びにきなさいよね!
あっ、そうそう!ボルドー様ってば足が動かなかったじゃない?1年ぐらいはずっとそのままだって言われてたけど…流石ボルドー様ね!まだぎこちないところはあるらしいけど、もう歩けるぐらいまで回復したらしいわよ!
―――
「かなた!かなた!!」
「っと、ちょっと暴れないでよブランク~…」
「きゃっ、きゃっ。」
「ウフフ、カナタってばすっかりブランクのお姉ちゃんみたいね。」
「笑ってないで助けてよお母さん…ほら、ナチュラルも手伝って?」
「はぁ~い。」
カナタちゃんはボルドー様たちと城で暮らしてる。
メルシィ様もとっても元気そうで、ブランクもすくすく成長しているわ。
カナタちゃん、ブランクのお世話を手伝っているんだけどブランクってば元気いっぱいでね!苦戦してるらしいわ。
カナタにとってはメルシィ様がお母さんで、ボルドー様がお父さん。
結婚式を機に、ボルドー様を“お父さん”、メルシィ様を“お母さん”って呼んでるんだって。素敵よね!種族も血も違うけど、それでも家族になれるんだ。
あと、時々ナチュラルが顔を見せに来るみたいなんだけど、あたしが遊びに来た時にはいないことが多いんだよねぇ~…タイミングが悪いっていうか。
―――
カランカラン。扉が開き、鐘が鳴る。
「おう!いらっしゃい!」
「こんにちは!ヴァゴウさん!」
「喫茶店なら空いてるぜ。」
「えへへ、分かる?暇だから来ちゃった!」
「邪魔するぞ。」
「おーう、カタストロフも元気そうだな!レジェリーちゃんはよく顔見せに来るけどお前はあんまり見ないからな!」
「ム…すまん…まだ町を歩くのが苦手でな…」
「ガハハ!ま、ゆっくりしていけよッ。」
ヴァゴウさんはビライトたちと一緒にコルバレーに帰ったんだけど、すぐに移店の準備を進めてドラゴニアに引っ越してきた。
「あら、いらっしゃい。」
「サーシャさんこんにちは!」
「いつものでいいかしら?」
「はーい!」
サーシャさんはヴァゴウさんの武具屋と併設で小さな喫茶店を開いたのよ。
まだまだ認知度は低いって言ってるけどあたし知ってるんだ。結構色んなお客さんが来てて結構密かに人気なんだよ。
「よーっす。」
「おうゲキ!店はどうした?」
「休憩だ休憩!サーシャ、いつもの。」
「ゲキさんいらっしゃい、はい、いつものね。」
ゲキさんもサーシャさんの小さな喫茶店がお気に入り。
なんだか2人共愛想よくなっててさ。もしかして……2人ってそういうこと?…なんてね。
ヴァゴウさんの武具屋とゲキさんの武具屋はご近所同士。
ライバル店としてお互いに切磋琢磨しあってるわ。まぁライバル店って言ってるけど別に争ってるわけじゃなさそうよ。ヴァゴウさんが作った武具がゲキさんの店に並んでたり、その逆も然り、ってカンジだし!
仲良くやってるみたいね。
あたしも喫茶店の常連になっちゃってね~
ビライトもキッカちゃんもドラゴニアに寄ったら是非寄ってあげてね!
ドラゴニア名産のハーブを使ったハーブティーがあたしのオススメよ!
一緒に行こうね!
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「おお、ヴァゴウ殿。奇遇ですな。」
「おお、ホウじゃねぇか。ここに用事か?」
「えぇ、時々孤児院の様子を見に来ているのですよ。ここに居る子供たちは皆ガジュールの被害者ですから…」
「あっ、おじさん!ホウ様も一緒だ!」
「よぉイルネ!元気かッ!」
「元気かい?」
「うん、元気だよ。」
「そーかそーか!ホレ、お土産だぞ!」
「わっ、ありがとう!」
「あら、ごめんなさいねヴァゴウさん、それにホウ様も。いつもありがとうございます。」
「いえいえ。私たちに出来ることがあればと思い来ているだけですので。」
「おじさん、遊ぼ!」
「ヴァゴウおじさん遊んで~」
「遊んで~」
「おう!みんなで遊ぼうぜ!」
ヒューシュタットではガジュールに操られていた人たちもようやく元に戻れたらしいわ。
現実を受け入れきれない人たちもいるみたいだけど、ヒューシュタットが国を挙げてサポートしているらしいわ。
ヴァゴウさんは時々ヒューシュタットの孤児院に顔を出しているらしいわよ。
ほら、覚えてる?あの時出会った女の子。あの子、イルネちゃんって言うんだけどね。会いに行ってるんだって。あたしも今度ついていってみようかなぁ。
ホウ様もそれが落ち着いたら王を引退して新しい王に引き継ごうと考えているらしいわよ。
その後はベルガ様とゆっくり落ち着いて余生を過ごしたいんだって。
それに、ヒューシュタットの図書館にはアリエラさんも居るし!
アリエラさんはずっと本の虫ってカンジらしいけど…何かあった時にはちゃんと動いてくれているみたいよ。
時々アトメントがからかいに来るらしいけどすぐ追い払ってるみたいね…
アトメントってアリエラさんのこと好きなのかな?なんて、そんなわけないか!
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「フム…フム…あい分かった。ではそのように手配しよう。ではな。」
「使いこなしていますね。ヒューシュタットの電話。」
「フフ、これはとても便利なのでな。王間で連絡を取り合う時なんかは特にな。ドラゴニアに携帯させるのは苦労したが…まぁ、他文化を受け入れるのに警戒的なのは分かる気がするがな。」
「そうですね…」
「おい、訓練終わったぞ~次はなんだ?」
「終わったかバルーサ。では次はこちらの仕事だ。」
「おう、承った。」
「…よく、残る気になりましたね。」
「ウム、まぁ奴も先日の戦いのときに色々思う部分があったのだろうよ。私としては戦力が増えたのだから嬉しい限りだがな。ワハハハハ!」
「ヴォロッド様、物資を届けにドラゴニアまで行ってまいります。」
「ウム、気を付けていくのだぞ。」
「かしこまりました。」
「あぁそうだ、そなた、ザイロン殿とはちゃんと会っておるか?」
「はい。兄様とはよく会っております。時間が取れず短時間ではありますが…」
「フム、そうか。では近いうちに休暇を取らせよう。兄弟水入らずでゆっくり過ごすがよい。」
「…!ありがとうございます!我が主よ。」
「ウム、では物資の運搬頼むぞ。」
「かしこまりました…!」
ヴォロッド様はヒューシュタットの機械を使いこなして国をもっと強く発展させるために頑張っているわ。
ドラゴニアとヒューシュタットの援助もしっかり行っているみたいで、これからは三国が皆力を合わせてそれぞれの形で国を育てていく方針なんでしょうね。
アルーラもそれについて回っているらしいけど…前よりは高い頻度で師匠のところに帰っているらしいわ…でも、師匠のところで何してるんだろう?
まぁでもアルーラのことだからきっと世話焼いているんだろうなぁ。
あっ、そうだ。ファルトさんがこの間お仕事ついでに顔を見せに来てくれたんだ。
ザイロンさんも一緒だったよ。
ファルトさんはワービルトのドラゴン便として大忙しなんだけど、ザイロンさんと会うことだけは欠かさないみたい。
兄弟揃ってとっても仲良しで微笑ましいわ。
ザイロンさんたちドラゴンの集落の皆も三大国家に協力したり、中には自由気ままに生きているドラゴンたちと様々なんだって。
でもハッキリ言えるのは、みんな幸せそうだってことね。ふふっ!やっぱりみんな外に出たかったんだね!
レミヘゾルとの境界も無くなったからこれからは自由にレミヘゾルにも行けるようになったし、あたしたちが今まで頑張ってたのなんだったんだろうねって思うわ。
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神々の領域ではエテルネル、ヴァジャス、ガディアルの3人が居て、シヤンが居なくなった影響で世界のバランスが傾いちゃってるからそれを治すために頑張ってるんだって。
今はあまり誰かに構っても居られなくて無防備らしいんだけど…まぁでもガディアルが守っているから何があっても安心よね。
ガディアルは世界が平和になったことでまた力を奮えなくなっちゃって少し暇そうらしいわ。
よっぽど戦うことが大好きなのね~…あたしには分かんないかも。
あんたも時々会いに行ってあげたら?暇そうにしてるみたいだし。
ルフもトーキョー・ライブラリに戻って復興と発展を頑張っているみたい。ね?カタストロフ。
ウム。ルフの発展に少しでも力添えをしたく、三大国家に我からお願いをしてみたのだが…大きな助力は難しいものの支援をしてもらえることになった。
特にヒューシュタットはトーキョー・ライブラリから派生して産まれた国が故に、特に力を入れているようだ。
トーキョー・ライブラリにしかない技術もあるらしいが故、それを流用することを協力する条件として交渉し、同意したようだぞ。
そういえば、ルフとクルト様って知り合いだったのよね。不思議~
ルフはトーキョー・ライブラリから出たことなかったって言ってたのにどうしてクルト様のこと知ってたのかしら?
ウ、ウム…それはだな…と、ところでだレジェリー。トーキョー・ライブラリに奴の姿が目撃されたという話をだな。
あっ、そうね!えっと…実はトーキョー・ライブラリにレオンの姿を見たっていう証言があるのよ…!
あたしたちにもう何もしてこないとは思うけど…また面白いことでも探しているのかしら。何もなければいいんだけどね…抑止力たちも警戒しているみたいだから、あんたたちも気を付けなさいよね!
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「今日の依頼はこれだけだ。」
「おーおー…これだけの依頼をよくもまぁ見つけてくるもんだぜ。」
「情報屋を舐めるな…と、言いたいが…どうにも俺の名が世界中に伝わってしまったせいで依頼が増えてしまったのだ。」
「良いことじゃねぇか。」
「俺1人じゃ捌けないが故、お前にも手伝ってもらっているが…暇になることは当面ないな。嬉しいだろ?」
「ケッ、嬉しいわけねぇだろッ。」
クライドはアーデンの実家を建て直してそこを拠点として情報屋を続けてる。
世界中に名が知れたせいでクライドの情報屋は依頼が殺到してるんだって。
本人としては今回のあたしたちの旅での依頼や国からの報酬金もあってお金には困っていないみたいなんだけど、クライドはクライドで情報屋を続けたい意味があるみたいだし、それがアイツの生きる意味なのかもね。
師匠はそれを手伝う形で居るみたいだけど、なんかもうすっかりクライドの相棒ってカンジなのよね。
あたしの師匠でもありクライドとカタストロフの相棒でもあり魔王でもあり抑止力でもある…師匠ってば引っ張りだこね!
デーガは面倒そうにしているが…我には少し嬉しそうに見える。
カタストロフが言うならそうなんだろうね!あーあ、また師匠に会いたくなっちゃった。
クライドは宣言通りあたしだけじゃなくてみんなにも時々依頼ついでに顔を見せに来るけど師匠ったら近くで依頼があっても絶対寄らないんだもん!
…でも、元気そうだから良かった。あたしのお父さんとお母さんの様子も見てくれているみたいだし、アーデンの皆とも寄りを戻してるみたい。
時々アーデンでギターライブを開催してるんだとか。あたしも師匠のギターまた聴きたいなぁ。
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そしてカタストロフ。
ウム、我はレジェリーと共にこのドラゴニアで暮らしている。
抑止力として世界を見て回る仕事もあるが、主にこのドラゴニアを拠点とし、神々と連携を取りながら過ごしている。
少しずつ人々の生活にも慣れてきたが…未だやはり我は目立つが故…外を歩くのはあまり得意ではない…だが、レジェリーと暮らしていくためには克服せねばならぬことだ。
まだまだ世間の常識というものも分からぬことばかりで苦労しているが…少しずつ学んでいっているぞ。レジェリーも手伝ってくれるしな…
カタストロフ、ドラゴニアではウルストから国を守り、世界を救ったことも合わさってさ、あたしたちよりも大英雄みたいな扱いになってるから驚きよね!みんながカタストロフを見ると深く頭を下げたり、感謝してくれたりするし、子供からも何故か人気だしでさ!
ムム…我はこう見ても魔王なのだが…か、貫禄が何も無い…ッ…
あはは、でも可愛いじゃん!それぐらい愛されてるほうが嬉しいでしょ?
ウ、ウム…そう、だな…
そしてあたし。
あたしはなんと!!じゃじゃーん!ドラゴニア魔法学園の推薦を受けて特待生として入学することが決定したわっ!!
でも復興がまだ終わっていないから入学はもうちょっと先!今はドラゴニアの復興のお手伝いをしながらカタストロフと一緒にのんびり暮らしてるわ!
ついに夢が叶ったけどさ!でもあたしの次の夢はまだまだ先にある!あたしの夢は世界一素敵な魔法使いになることだから!
祝式の時に師匠から髪飾りは没収されて禁断魔法も封印されちゃったからもう禁断魔法は使えないけど…でもあたしだけそんなの使えたらフェアじゃないもんね!あたしはあたしの実力で魔法学園で素敵な魔法使い目指して頑張るわ!
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――最後に。
カタストロフから聞いたけど、ビライト。キッカちゃん。メギラと一緒に3人でそろそろ旅に出るって聞いたわ。
いよいよあんたたちも夢への一歩を踏み出すのね。
旅の話とか聞かせなさいよね。近くを通ったら必ず寄りなさいよ!あたしもヴァゴウさんたちもボルドー様たちも待ってるんだからね!
…あたしね、皆で旅したこと、一生忘れない。
辛いことも悲しいこともあったけど、戦いだって多かった。だけどね、この旅であたしは本当に多くのものを手に入れることが出来た。
それはヴァゴウさんもクライドも、ビライトもキッカちゃんも同じ。師匠やカタストロフもそう。
みんなが色々な素晴らしい者を得ることができた、最高に楽しい旅だった。
…だからね、またいつか…またいつか…もう一度って、願っちゃうんだ。
でも、それはきっともう叶わない。だから、あたしたちが旅してきた思い出は絶対に忘れない。だからあんたたちも忘れないで。
あたしたちの旅は終わったけど、それはかけがえのないものだったんだからね。
―――
――
―
ビライト、キッカちゃん。それとメギラへ。
楽しんで、気を付けて行ってきてね。あたしたちはあんたたちの新しい思い出を聞けることを楽しみにしているから。
それにビライト。あんたにはイビルライズと共生するっていう使命が残っているんだから。
大変だと思うけど負けるんじゃないわよ。何かあったら絶対にあたしたちを頼りなさいよね。
キッカちゃんを…あたしの友達を泣かせたら許さないんだから!
それじゃ、行ってらっしゃい!!
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カチッという音で録音が止まる。
フゥとため息をつくレジェリーは外を見つめた。
「レジェリー、これをドラゴン便でコルバレーに送ってもら…どうした?」
レジェリーは寂しそうな表情を浮かべる。
「…ううん、なんだか寂しくてね。あたしたち…もうみんなと一緒に旅できないんだって思うとさ…」
「…レジェリー、決め付けは良くない、まだ分からぬだろう。信じればいつか……いや、レジェリーよ。それでは駄目だ。信じるだけでは何も変わらぬ。」
「えっ…?」
カタストロフはレジェリーに伝える。
「我は昔の知り合いから教わったことがある。“信じるだけでは何も変わらない、実現せぬならば行動で実現させろ、何も無ければ自分で生み出せ”…と。レジェリー、お前が望むことは…本当に不可能だと思うか?」
「…カタストロフ…」
「我はレジェリーの望みを全て受け止め、ついて行くつもりだ。だから…お前が思ったことをすれば良い。」
「…そうね、あなたの言う通りだわ。」
レジェリーは立ち上がり、前を向く。
(そうだ、どんなに短い時間でも良い。あたしは…もっとみんなと居たい!そのためには…!)
レジェリーは壁に飾ってあったカレンダーを見る。
魔法学園の入学式は魔法学園の復興次第だが、概ね半年後程度だとクルトから聞かされており、それをカレンダーに記入していたレジェリーは微笑んだ。
「カタストロフ!これはあなたにしか出来ないわ!お願いがあるの!」
「ウム、何でも言うがいい。我がお前の願いを全て叶えてやろう。」
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―――
「…ってことで、アイツら行っちまったんだ。」
「そうですか――実は一緒に行きたかったのでは?」
「そりゃな…俺様だって一緒に行きたかったさ。けどよ、俺様には俺様にしか出来ないことが沢山ある。だから、お預けだ。」
ドラゴニア王に伝わる一つのお知らせを受け、窓の外を見つめる。
(楽しんで来いよ。旅の話聞けるの待ってるぜ…皆。)
今日は、快晴だ。
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「…ありがと、レジェリー。」
「みんな元気そうだな…」
「おはよ、ビライト、キッカ、何してる?」
奥で寝ていて起き上がったメギラがビライトたちに声をかける。
「レジェリーからみんなのこと教えてもらっていたの。」
「そっかぁ、みんな元気?」
「うん。元気だったよ。」
メギラはビライトの家に居候という形で暮らしている。
ビライトよりも少し大きい体つきで怪力の持ち主であることもあってか鉱業や武具業が発達しているコルバレーの人々にも可愛がられており、お手伝いもしているため今やコルバレーのマスコットキャラクターのような立場になっている。
「さて、お兄ちゃん!今日はついに…!」
「あぁ、俺たちの出発の日だ。」
「しゅっぱつだ!」
ビライトたちはこの半年間、再出発のために準備を進めてきた。
記憶を取り戻したコルバレーの人々は最初、ビライトとキッカが生きていたことに混乱していたが、事情を説明したら簡単に受け入れてもらうことができた。
それからヴァゴウがしばらくしてドラゴニアに引っ越していき、新たに酒場の仕事を紹介してもらったビライトは働いて資金を稼いだ。
世界を救った英雄として三大国家から多額の資金が贈られたのだが、ビライトとキッカは断った。
その資金は復興に充てるべきだと言ったのだが、国側としてもメンツがあるとかで、少しだけ頂くことにはなったのだが…
キッカとメギラは旅に役に立ちそうなものを探したり、働くビライトを支えて生活した。
そしてついに彼らは今日――旅に出る。
終わりはないけど、いつでも帰って来れる。いつでもお休みできるゆるやかな長い、長い旅。
「マスターに挨拶はした?」
「あぁ、しばらく旅に出るって伝えてあるよ。」
「気楽な旅だよね、いつでも帰って来れるし、終わりも無い…私たちの新しい旅。」
「そうだな…いつかクロが目覚めたとき、世界中の景色をすぐに見せられるようにしたい。そして…俺たちにとっても最高に忘れられない思い出を作る。」
「私たちが望む、世界の全てを見たいという夢のために!」
魔蔵庫に道具や食料を詰めこんで準備は万端だ。
「そういえば今日旅に出るって抑止力の誰かに伝えてるの?」
「あぁ、アトメントが1週間ほど前に酒場に客として来たんだよ。その時に今日の朝出発するって伝えてるよ。」
「あはは、アトメントさんお客さんとして来たんだ!」
高確率でアトメントなのだが、抑止力たちは時々ビライトたちの様子を見に来ている。
イビルライズを眠らせているビライトの監視は抑止力が行う使命の一つ。これは最後の戦いの後、約束したことだ。
しかしビライトたちも抑止力たちも今はそこにあまり重きを置いていないのか、かなりゆるやかな監視体制となっている。
しかし、会うたびにビライトは細かい変化を訊ねられたりするため、やることはしっかり行っているようだ。手遅れにならないために、抑止力は抑止力なりにのんびりと過ごしつつ、やるべきこともしっかりメリハリをつけてやっているらしい。
「ビライト、キッカ。まずはどこいく?」
メギラは楽しそうにビライトたちに尋ねる。
「決まってないんだ。でも、前の旅とは違う道を通りたい。前の旅は三大国家だけを目指していたけどさ、世界にはまだまだ小さいものから大きなものまで町や村がたくさんある。旅の資金や道具が無くなったらしばらく滞在してもいい。そんな感じの旅にしたいなって思ってるんだ。」
「知らない場所に行くの楽しみだね。」
「おでも楽しみ!」
全ての支度を終え、扉に手を置く。
「行くぞ、キッカ!メギラ!俺たちの新しい旅の始まりだ!」
「うん!」
「おー!」
ガチャッと扉を開けると旅を歓迎するかのように眩しい日差しと美しい青空が迎えてくれる。
そして…
「えっ!?」
「おっそーい!ずっと外で待ってたのよっ!!」
ビライトたちの家の前に待ち人が居た。
それはレジェリーだった。
「レ、レジェリー!?どうしてここに!?」
驚くビライトにレジェリーは笑う。
「あたしだけじゃないわよ!」
家の裏から、庭の樹の裏から人影が現れる。
「よっ!ビライト!」
「元気そうだな。」
「クライド!オッサンまで!!」
クライドとヴァゴウだ。
「どういうことなんだ?これ…!」
「ごめんねお兄ちゃん。実は私たち知ってたんだ。少し前にカタストロフさんが来てね。このことを知らせてくれたんだけど、お兄ちゃんを驚かせたいから内緒って言われてね!」
「なんだよそれ~…」
「えへへ、内緒にしておくの大変だったんだよ?」
「えへへ~」
キッカとメギラは見つめ合い笑う。
「みんなもう一度旅がしたいらしい。カタストロフが皆を集めてくれたんだよ。」
空からデーガとカタストロフが現れ、ビライトは唖然としていた。
「ビライト、お前の新しい旅の思い出として…我らも連れていって欲しい。何よりレジェリーが望んだことだから。」
「レジェリーが…」
「うん…あたしね、やっぱりまだ旅したいんだって、あなたたちに送った音声を録音していた時に思ったんだ。どんなに短い期間でも良い。あの旅とは違う、楽しくて面白い旅がしたい!この胸の高鳴りが止まらないの。でも、最初はあたしだけかなって思ってた。でもカタストロフがみんなに聞いてきてくれた時…みんなが同じ気持ちを持ってた!」
「武具屋は一旦閉めてきた!それにうちにはサーシャが居るからなッ。快く送り出してくれたぜ!」
ヴァゴウはサーシャに家を任せ、短期間だが旅をすることに賛成した。
「俺とデーガはどちみち世界を回っている。道中で依頼をこなすことも出来るからな。」
「そーいうこった。成り行きだからな。勘違いすんじゃねぇぞ。」
「素直じゃない奴だな。嬉しいくせに。」
「うるせっ!」
クライドとデーガは依頼ついでだが、内心はまた皆と旅が出来ることに喜びを感じているようだ。
「我はレジェリーが行く場所には何処だってついて行く。」
「と、いうことだからさ…ビライト。あたしは魔法学園の入学があるから半年間ぐらいになるんだけどさ…どんなに短くても良い!みんなで旅をもう一度したいの!楽しくて、明るくて、世界の危機なんて考えなくてもいい緩やかで、穏やかな旅がしたいの!お願い!」
レジェリーはビライトに頭を下げてお願いする。
ビライトは唖然としたままだが…下を向いて身体を震わせる。
「お兄ちゃん?」
「どうしたの~?」
「…ッ…俺も…俺も同じ気持ちに決まってるだろ!?」
ビライトは涙を浮かべながら顔を上げる。
「俺もッ!俺もみんなともう一度旅がしたかった!当たり前じゃないかッ!!」
ビライトのうれし泣きに一行は笑いあう。
「よっしゃ!そうと決まれば出発だなッ!!ワシが居る間は毎回の飯は期待してろよッ!!」
「っしゃァ!ヴァゴウ飯だッ!」
「デーガ…お前テンション上がり過ぎだろ…お前もしやそれが目当てか…?」
「飯!?飯か!?おでも食べるーー!!」
「あたしもあたしもー!」
「ウム、ウム。楽しそうで何より。」
テンションが盛り上がっていく一行を見て、ビライトは胸の高鳴りを感じる。
「…俺たち、本当に幸せ者だよな。」
「うん。最高の仲間だね!」
盛り上がりながら歩いていく一行の後ろを手を繋いで歩くビライトとキッカ。
―――「「行ってらっしゃい」」
「…!」
家の庭…両親の墓がある方から声が聞こえた気がした。
「…どうしたの?」
「…ううん。なんでも。」
首をかしげるキッカの頭を優しく撫で、ビライトは家を背に再び歩き出す。
(―――行ってきます。)
ビライトは歩く。未来へと歩き出す為に。
―――
「あぁ、今日はいい天気だ…絶好の旅立ち日和だ。お前もそう思うだろ?クロ。」
(…そうだネ。ビライト。)
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この世界は悲しいですか?
この世界は辛いですか?
この世界は醜いですか?
この世界は――汚いですか?
そう。この世界は不安定で、汚れている。理不尽も、絶望も、悲しみも…負の感情が溢れている。
これら全ても、この世界のカタチだね。
だけど、君たちは知っている。
この世界にはそれに負けない強い希望が…光があることを。
転びそうになっても前を向いて歩ける力がある。
どんな理不尽にも恐怖にも抗える勇気がある。
だから僕たちは君たちのことを信じることが出来る。見守ることが出来る。
君の背負うものは重く、大変なものだけど、不思議と心配していないんだ。だって、君ならきっと…そんな重いものでも軽くすることが出来そうだからね。
だって、君にはこんなにもたくさんの仲間がついているんだから。
創生神・エテルネルから君へ
――どうか、君たちの未来が暖かくて、楽しくありますように――
―あぁ――もう時間だね。
さぁ、行っておいで。
僕たちの
Delighting Worldへ
―――THE END―――
あとがきと、今後のことについて大切なお知らせ。
ここまでの閲覧をしていただいた方へ。
非常に長い物語でしたが、ここまでお付き合いいただけたこと、とても嬉しく思います。
本当にありがとうございました。
約175万字というとんでもない文字数を5年間で書ききったのは我ながらやるなぁって感じです。
でも、これでやっと筆を…置けないんですよね。ということで今後のことについてお話をさせて頂ければと思います。
今後について
まず、今後についてですが、予定してるものは以下の通りです。
1.Delighting Worldの後日談【Delighting World Vacation】の連載
こちらは私が創作人生15年間で最も書きたかった場所になります。後日談のために今まで書いていたと言っても過言じゃないと思います。
私はこれまでの作品は“一度始めたものだから必ず終わらせる”という所謂【義務感】で行っていました。
しかし、今回の完結で私はこの義務感から解き放たれましたので、これからは自分の好きなように自由にはっちゃけてしまおうかなって思っています。
笑いあり、涙あり?シリアスもコミカルもありのビライトたちの平和で穏やかな旅や日常を描く後日談をお楽しみに。
更新頻度は【完全不定期】です。義務感から解放されたので具体的に最低更新ノルマなどは定めません。
なので、気が向く時に気ままに書きますので気長にお待ちください。
2.Delighting World 創伝 Brave Heartsの連載再開
Delighting World本編に集中するためにサイレントで連載を止めていた本作の連載を再開します。
ただ、こちらも更新は【完全不定期】です。
こちらも気ままにお待ちください。
本編であまり掘り下げられなかったデーガとカタストロフの過去の物語です。
・更にその後のこと
上記2作品以外の連載を行う予定はありませんし、私自身上記2作品が終わったら小説の方は引退します。
絵の方はpixivで描くと思うので、小説が全て終わった後はpixivの方へ是非遊びに来てくれたら嬉しいです。
後日談、Delighting World Vacationはこことは別の作品として独立させるつもりなので本作はここで完結となります。
プロトタイプと合わせれば15年。
この本編の連載は5年にわたる長い時間かかりましたが、プロトタイプと打ち切ってしまった前世作の集大成としてリブートさせたこのDelighting Worldを終わらせることが出来て良かったなぁって思います。
もし、まだ彼らの物語の未来へ興味があるようであれば、是非、Vacationの方もよろしくお願いします。
連載がスタートしたらXでも告知しますので是非。
もう一つ義務創作を終わらせたかった理由としては仕事がこれから忙しくなるかも。というのもありまして。
2026年4月から5年の下積みを終えて正社員になりましたのでお仕事の方が忙しくてノルマを決めて創作をしている余裕が無くなるかもしれないということもあります。
なので私はこれからはノルマを決めずにやりたいときにやらせて頂きます。
それでは、改めてここまで見てくだった方々、ありがとうございました。
また何処かでお会いしましょう。
2026.4.30 ゼル




