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子犬が夜中に兄の瞼に口付ける話
子犬は時々、こっそりと兄の寝顔見ている。いつも自分ばかり寝顔を見られているから、おあいこだと子犬は思っている。育ち盛りの子犬の方が良く寝るだから、兄に寝顔を見られる羽目になるのは仕方ない。ただ夜に先に眠りに落ちるのはともかく、朝は兄に起こされたくて、おはようと言われるまで待っているせいだけど。寝顔を見られて嫌な訳では全くないけれど、偶には子犬も見る側になりたい。もっとも子犬が隣で起き出せば、どんな夜中でも兄はすぐに気付いて覚醒してしまう。でも兄は子犬の事情を知っているので、そんな時は笑いを堪えて寝たふりをしている。
室内を照らすのは窓からの星灯りだけ。暗さに目が慣れて、隣に眠る兄の姿が薄らと見える。子犬は頬杖して、声を立てないよう含み笑いをしながら兄の寝顔を堪能する。誰もが見惚れる整った顔。静かに微笑む口元。漆黒の髪と、同じ漆黒の睫毛に縁取られた瞼。この瞼の下にあの深い色をした、いつも自分を愛おしく見つめる目がある。子犬はそっと体を乗り出して真上から顔を覗き込む。ほんの少し息を止め、兄の瞼に唇で触れた。




