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子犬が兄を寝かしつけてみた話
いつもの夜と同じように子犬は兄に丁寧に愛撫され、同じ布団に体を横たえる。それからひとつ寝物語をしてもらう事もあるし、もう眠くて堪らない時もある。けれどどんな夜も、兄の子守歌を聞くまでは子犬は眠ろうとしなかった。いつものように兄が子犬を寝かしつけようとすると、子犬がとろんとした目で兄を見て言った。
「今夜は、俺が兄いに歌ってあげる」
「うん。聞かせておくれ」
子犬は布団の中でめいっぱいに兄に寄り添って、腕を伸ばして兄の胸元に置く。兄の顔を見上げると、優しい目と目が合う。子犬は夜毎、兄に歌ってもらうのと同じ歌を、そっくり同じ拍子で歌い出す。それに合わせて兄の胸元を、いつもしてもらうのと同じようにとんとんと軽く叩く。一節歌った子犬の手が止まり、瞼がゆっくり閉じる。次に子犬の口から聞こえたのは穏やかな寝息。兄は目と口元だけで笑って、自分の胸元に置かれた子犬の手に手を重ねる。しばらくそのまま子犬の満足そうな寝顔を見つめ、ゆっくりと子犬の肩まで布団を掛け直してやった。




