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新年を迎える支度の話

「厄除けの枝を採りに行こうよ」

子犬が兄と友達と一緒にかまくらを作っている時の事。同い年で声の大きな少年にそう誘われた。

本格的な冬になり、家畜を連れて遠くの放牧地を回る集団は旅立った。残った家畜と人々は小さな谷の町の中で冬籠りに入っていた。城壁近くでの放牧も暖かくなるまで休止なので、子犬は兄と一緒に屋敷の仕事を色々と手伝う事になった。今日は屋敷の雪かきをしていたら町の子供達がやって来たので、かまくら作りや雪遊びが始まったところだった。

「知ってたっけ?新年を迎えるのに家に飾るんだよ」

「俺も採りに行くよ、厄除けの枝」

誘われた子犬が少し驚いて答える。

「屋敷に飾るのを今度採りに行くから、力仕事だから兄いや厩番達と行って来いって言われてる」

「じゃあ一緒だ」

声の大きな少年は歯を見せて笑う。

「雪が積もると子供だけで林に行っちゃ駄目だけど、枝を採りに行く時は屋敷の人と一緒に行けるんだ」

少年が子犬に向かって手を上げる。子犬も笑って手を上げて手のひらを叩き合った。


枝を採りに行く日の朝、子供達が屋敷の前に集まった。その子達を連れて子犬と兄と屋敷の若い衆は谷の斜面にある常緑樹の林に向かう。林に着くと子供達は思い思いの枝を選んで手斧を振るう。枝に背が届かない子は兄や年上の子供が手伝い、ここに来ていない家の分は若い衆が代わりに採って、全部の家々に飾る枝が集められる。屋敷に飾るのは特に大きく立派な枝で、子犬も一緒にその枝を選んだ。


新年を迎える前日にはどこの家でも料理を多く作って菓子を焼く。屋敷の台所も大忙しでとても良い匂いがして、子犬は兄と何度も覗きに行った。掃除をして綺麗に清めた玄関に厄除けの枝を飾る。その枝を見た屋敷の人達に「いい枝振りだね」と言われて、子犬は少し胸を張った。


その年最後の日が沈むと一際明るい一つ星が空に掛かる。子犬もその星の名前を知っていた。暖炉前で語られる物語の英雄の名前を冠した星だった。

その夜は誰もがそれぞれの家で静かに過ごす。いつもは町の人が集まる屋敷の広間も、この夜は屋敷の者とそこで働く者達だけで、いつもより少し遅くまで静かに過ごす。子犬と兄もその輪の中で語り部の語る物語に耳を傾けていた。夜が更けると屋敷の長が声を掛け、みんな挨拶を交わしてそれぞれの部屋へと戻る。子犬も兄と二人の部屋に戻る。兄は寒くないようにと子犬をひとつの布団に包んで笑って言った。

「明日は賑やかになるよ」

夜が明ければ子犬がこの国で迎える初めての新年だった。

2020.12.31 一部追記修正

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