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兄が子犬の頭を撫でる事
兄は子犬をよく撫でる。自由気ままに跳ねる赤い髪をわしゃわしゃとされて嬉しそうに笑う子犬を見るのが嬉しい。
子犬も兄に撫でられると嬉しい。ただいつ何処ででも、とはいかなかった。例えば他の人がいる前では気恥ずかしさが先に立ってしまう。
「小さな子供じゃないんだから」
そう言って口をへの字に曲げてしまう。そんな時は兄は笑って手を止めて、後で撫で直す事にする。
まだ寒かった頃。兄が子犬の頭を撫でると、子犬は嫌がる訳ではないけれど困ったような戸惑ったような顔をした。兄が理由を問うと、口をへの字に曲げて眉間にぎゅっとしわを寄せる。
「もう、小さな子供じゃないし」
そう言う顔は今にも泣き出しそうだった。きっと、子犬の本心は撫でて欲しいのだろう。けれど小さな子供じゃないと言う自負もまた本心で、二つの本心の間でこんな顔になってしまうらしい。
「そうだね、お前は小さな子じゃない。でも俺はお前を撫でたいんだけど、良いかな」
そう言って兄が子犬に触れると、もう言い返したりはせず、少し俯きながらもされるままになっていた。
そのうち、また子犬の反応は変わるかも知れないけれど、兄は子犬を撫で続けたいと思っていた。
2021.06.20 一部修正




