仲の良い馬との話
子犬は兄と一緒に城壁の見回りをする。その合間にも兄は子犬に様々な事を教えていた。
その日見回る箇所を回り終わって子犬と兄は放牧地へやって来た。子犬はまだ羊に食べられずに残っている小さな花を摘みながら歩く。少し行くと、遠くで黒鹿毛の馬が気ままに駆け回る姿が見えた。兄と仲の良い馬だった。子犬が馬の扱いを練習する為に連れて来て、見回りの間ここで遊ばせていた所だった。
子犬が兄に教わった通りに口笛を吹く。澄んだ音が響き、遠くを駆けていた黒鹿毛が向きを変え真っ直ぐ子犬の所へ駆けて来た。よしよし、と子犬が持っていた花を差し出すとぺろりと平らげる。すっかり慣れたな、と一人と一頭を見て兄が笑う。子犬も笑って頷いて黒鹿毛の首に抱き付くと、黒鹿毛も嬉しそうに鼻を鳴らす。
初めて会ったのは子犬が兄に拾われた日だった。その時、黒鹿毛は子犬をとても警戒していた。兄の言う事を聞いて子犬を乗せてはくれたけれど、自分から子犬に近付こうとはしなかった。
子犬もあの頃はお腹が空いていて何でも食べ物に見えていたから、この賢い生き物になかなか懐いてもらえなかったのも仕方ないと思う。
「お前も速いけど、俺も負けないよ」
黒いたてがみを撫でながら子犬が不敵に笑うと、こっちも負けませんよ、と言うように前足で地面を蹴って見せる。
「じゃあ競争しよっか」
子犬が楽しそうに言う。
「それなら俺はお前と組むか」
兄が黒鹿毛に話し掛けると、黒鹿毛の方も早く乗るよう兄を促す。
「じゃあ、あの道標の木まで」
並んで草地を蹴って駆け出した。




