重さで重ねる
いつものように隣り合って横になり、子犬は兄の胸に頭を擦り寄せて心音を聞いていた。徐に起き上がると覆い被さるようにして兄を見下ろして、少し頬を赤くして悪戯っぽく聞いた。
「乗っていい?」
「いいよ」
快諾されて子犬は嬉しそうに笑う。兄に跨ると体の上に寝そべった。出会った頃より成長したと言っても胴回りなどまだ兄の半分程しか無い。それでも子犬の全身の重さを掛ければいつもよりぴたりとくっ付いて、服越しの体温も伝わってくる。照れ笑いをして兄を見ると、兄も笑顔を返して子犬の背中に腕を回す。両腕の重さを感じて子犬は満足そうに兄の胸に頭を乗せ、規則正しい心音を聞く。寝心地の点で言えば良くは無い。でも子犬は兄の体の上で膝を曲げて爪先を宙で遊ばせたり、顔を上げて視線を合わせたりして、とても楽しい気持ちになる。兄は笑顔でそんな子犬の頭を撫でていた。
そうする内に子犬の様子が変わってくる。目元が潤んで吐息が熱くなる。照れ笑いから困惑した表情になり、兄の胸にうつ伏せてしまう。うつ伏せのまま密着した体を少しずつずらし、兄と自分を重ねた。重なる子犬の熱が伝わってくる。兄が子犬の頰に触れて顔を見ようとすると、兄の胸に顔を埋めたまま握った両手で顔の脇を塞いでしまった。兄は子犬の頭撫でながら優しい声で名前を呼び掛ける。子犬がそっと上目遣いに見るといつもと変わらない笑顔。子犬は堪らなくてぎゅっと目を閉じて胸元にしがみ付いた。
背中に回した手を腰に伸ばし、尾骨の辺りを軽く叩くとそれに合わせて小さく喘ぐ。重なっている子犬の状態を言葉にして語り掛けると、びっくりして涙に濡れた顔を上げた。兄の声でひとつひとつ言葉にされて、いやでも意識がそこに集中する。言葉と頭や背中を撫でる手と身動ぎするわずかな摩擦で子犬は重なった部分と、涙で兄の胸元を濡らす。兄は子犬を愛しげに撫で続けた。




