前へ目次 次へ 32/87 眠ってしまいたくない話 おやすみ、と言い交わした子犬の瞼が少しずつ閉じて、またふと開く。兄がいて暖かくてとても心地良い。このまま眠りに落ちそうだけど、子犬はまだ意識を手放したくなかった。うとうとと微睡むこの感覚がもっと続くといいな。そう感じて目を閉じてしまえない。そんな子犬の胸の辺りを撫でるように軽く叩いて、兄は低い声で子守歌を歌う。いくつもある子守歌の中で初めて子犬に歌った歌。うっすら開いていた子犬の瞼がゆっくり閉じる。やがて寝息が聞こえてきた。