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城壁の見回り
小さな谷にあるこの町は皆が城壁と呼ぶ古い石積みの塀に囲まれていた。ずっと昔、この国の一番の年寄りの祖父母が生まれるよりもっと前に、家畜を追っていた人々がこの谷と城壁を見つけたと言う。それから人々はここで暮らすようになり、人と家畜を増やし、小さな国を作った。
この国が出来てから城壁が果たした役割と言えば、小屋から脱走した子羊が遠くへ行かない様にする事くらい。それでも手入れは常に怠らず、脆くなった部分は積み直され、石の隙間にも雑草ひとつ生えていなかった。
子犬は新しい事を覚える為に兄と城壁の見回りをしていた。見回りの手順だけでなく城壁にまつわる話など、兄は子犬に話して聞かせた。城壁沿いの道端、石積みの下に小さな野草が花を咲かせていた。そんな小さな花の名前も兄は知っていた。
「その昔、この谷を見つけたばかりの頃は丘一面に咲いていたそうだよ。今は羊が食べてしまうから疎らにしか咲かないけど」
子犬は花の横に屈んだ。城壁に生えた雑草は根が石積みを崩さないように全部抜かなければならないけれど。
「これも抜くの?」
「それはそのままで良いよ」
子犬は花の匂いを少し嗅いで、また兄と歩き出した。




