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視線の先にあるもの
何も無い空を眺めている兄に子犬は駆け寄って尋ねる。
「何見てるの?」
「星を見ていたよ」
ほし?と子犬は聞き返す。今は太陽が空に輝く真昼間だ。子犬は天頂に向かって濃くなる青空を見上げる。その一番青の濃い所に光る星が見える様な気がしたけれど、それだけだった。
「やっぱり兄いは目が良いんだね」
子犬は嬉しそうに言った。兄は子犬の頭を撫でると後ろに立って肩を抱き、同じ方角を向いて尋ねた。
「お前には何が見える?」
問われて子犬は遠くを見る。谷から広がる放牧地、その先の丘陵地を眺めた。そしてその向こう側。見えるものを兄に話そうとして言葉を見失ってしまう。無言のまま視線を彷徨わせて自分の肩を抱く腕に手を添える。兄の顔を見上げると、兄も子犬を見下ろした。視線が合って少し口角を上げて笑う。兄も同じように笑う。
「何が見えた?」
子犬はふふふ、と笑ってじっと兄の顔を見る。
兄いが見える、と満面の笑顔で答えた。
2020.04.27 一部修正
2020.05.06 一部修正




