おさがりの服の話
子犬はよく食べてよく駆け回ってすくすくと育つ。着ていたおさがりの服も丈が合わなくなってきた。新しく仕立ててもらおうか、と兄が言う。子犬は嬉しくもあるけれど少し首を傾げる。
「でも、特別な理由って無いし」
「大きくなっておめでとうと言うのは?」
「そのまんまだよ」
二人で笑う。
「まだいいよ。すぐに着れなくなるから」
「それは楽しみだ」
子犬は得意げにそう言っては見たものの、兄より大きくなるのを期待されるのはちょっとどうかと思う。兄は子供の頃から他の同年代の子より頭ひとつ背が高かったと言うし、未だ小柄な自分は不利ではないだろうか。
兄は新しい服を作ってやりたかったし、子犬は折角なら特別な時が良かった。なのでお祭りに合わせて誂えようと決めた。いつも着ている兄の服も袖が短くなってきたので直してもらう事にした。
幼馴染に子犬の衣服の事を頼みに行くと、喜んで引き受けてくれた。二人を屋敷の裁縫部屋へ連れて行く。明るい窓際ではお針子が仕立てや繕い物をしていた。彼女らと少し言葉を交わして、まずは子犬の普段着を探す。部屋の隅にお古をしまう衣装入れがあった。幼馴染は横に置いてある椅子に座って中を探す。
「そう言えばこの前、いとこの子供のをもらったな」
そう言って幼馴染が出したのは白くて袖や胸元に刺繍がしてある、裾がふわりと広がる女の子の服。
兄はそれを子犬に当ててみて、
「大きさは良さそうだね」
「大きさはね」
そのまま幼馴染に返して、どんなのがあるかな、と聞く。幼馴染は、この辺どうかな、と子犬が普段着ている様な服を何枚か見繕って並べる。
子犬は、あんまり真顔でからかわないで欲しいと二人に対して思う。




