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鳴いてしまった話
兄が読書をする間、子犬は肩にもたれて撫でられている。子犬は時々は本を眺めてもいるけれど、撫でられるのを楽しんでいるだけだった。途中で眠くなった時は先に布団で休んでいたり、後で運んでもらったりすれば良かった。
けれど今日はもっと触れて欲しくなって兄を見上げ、あとどの位、と聞いてみた。兄は本から子犬に目を移して笑いかけ、終わりにするよ、と 本を閉じようとする。子犬はその手を止める。読書の邪魔をしたかったのでない。待てるし、と少し拗ねたように言う。
そうか、と言う兄に子犬は返事をしようとして、まるで犬が主人を恋しがるように、きゅん、と小さく鳴いてしまった。自分でもどこからそんな声が出たかと驚いて顔が赤くなる。慌ててうん、と言い直す。今の鳴き声に兄が気付かない訳は無い。けれど気にしないで欲しい。そっぽを向いた子犬に兄は何も聞かなかったかのように頭を撫で、ここまでだよ、と本を指した。
読書に区切りが付いて。
よく待てたねといつものように丁寧に愛撫される。けれど耳元で名前を呼んでくれる兄の声がいつもより深く響く。やっぱり気に掛けていたんだと恥ずかしさと嬉しさで子犬は全身が熱くなる。




