冬の始めの話
子犬がこの町に来て初めての冬の事。
冬の間、家畜の大半は遠い放牧地を回るので町へは長期間戻れない。国境の見張りも兼ねるので男達が集団を作って行く。去年までは兄もその一員だった。けれど今年は子犬がいるので町に残る事にした。その代わり行き先を決める話し合いに参加した。そこには子犬がこの町に着いた時に城壁の側で会ったあの老人もいた。兄はその話し合いで自分が見聞きし知った事、それに基く意見を述べた。子犬は兄の隣でそれを聞いていた。
兄が町に残ると知って喜んだのは町の子供達だ。長い冬の夜は寒くて退屈だ。屋敷は広間を開放するので町の人は憩いを求めて集まる。井戸端ならぬ炉端で話を弾ませたり歌や演奏の得意な者がそれを披露したり。年寄りのおとぎ話や遠出する者達の異国の話もよく語られた。兄はたくさんの事を知っていて子供達にも面白おかしく話してくれた。
仕事の合間にもよく相手をしてくれるので子供達ははしゃぐ。ちょっと危なっかしい事も付き合ってくれる。手をつないで振り回したり厩に使う寝わらの山に放り投げたり。力があるのでそこそこ大きな子でも投げ飛ばした。子供達は宙を舞って歓声を上げた。
それでね、と子犬に背丈のそれほど変わらない子が話しかける。
「前にそれで寝わらの山を崩しちゃって。厩番にすごく叱られたんだよ」
「兄いも?」
「そうだよ」
けらけらと笑う。子犬も一緒に笑う。
「見たかったな、それ」
「同じ失敗はしないからな」
その会話を聞いていた兄が言う。
割とすぐに子犬はそれを見る事が出来た。もちろん子犬も他の子達と一緒に叱られながら。




