18.2人での生活
朝、胸の重さで目を覚ますとハクが私の胸の上で寝息を立てていた。
「…」
私はハクを一旦マイルームに収納しベッドから立ち上がって私のいたところにハクを取り出す。
起こしてないな、完璧。
私はいつものルーティーンを静かにこなしながらハクが起きるのを待つ。
少しするとハクが目を覚ます。
「おはよう。」
「…おはよ。」
挨拶が返ってくる。これは昨日の話し合いの成果だな。
ハクの全身を魔法できれいにしてふと思いついたので提案してみる。
「ハク、これから朝起きたら魔力循環をやってみないか?。最初は真似だけでいいんだけど、どうかな?」
「…うん、やってみる。」
よし、いい子だ。
「それじゃあ目を瞑って自分の体の中に意識を集中してみようか。体の中にあったかいものだったり違和感がないか探してみよう。」
ハクは私に従いベッドに座って目を瞑る。
少しの間静寂が部屋を包んだがぐぅというお腹の音が魔力循環の時間に速攻で終わりを告げる。
「…朝ご飯にしようか。」
私の言葉にハクは頷く。
まぁ最初だしね、急いては事を仕損じるってやつよ。
ハクと自分のマントを取り出し2人とも身に着ける。
部屋をきれいにしてから後にし、朝から玄関を掃除しているおばちゃんに挨拶する。
「おはようございます。」
私の挨拶で気づいたおばちゃんは笑顔で返してくれる。
「おはよう、よく眠れたかい?」
「ええ、変わらずきれいな部屋でゆっくり体を休めることが出来ました。」
「そりゃあよかったよ、掃除くらいしかやることがないからねぇ。またいつでも来なよ。」
おばちゃんに部屋の鍵を返しお礼を言って宿を出る。宿を出るときも一応透過魔法をかけておく。
さて、これからギルドで連絡の有無の確認や伝言、依頼受注などの用事を済ませたいところだが朝からお腹を鳴らしたハクに聞いておく。
「ハク、私はこれから冒険者ギルドに行って色々な用事を済ませたいと思っているんだがハクはどうしたい?。広場の屋台で食べ物を買ってもいいし前に買った魚サンドもまだあるからそれで済ませてもいい。」
「魚サンド!」
私の質問にハクは即座に答える。
うむ、これは魚サンドに反応したと見せかけて私の都合に合わせてくれたな。気遣いのできる賢い子、それがハクだ。
「ありがとね、それじゃあギルドに向かおうか。」
私はハクに魚サンドを渡して一緒にギルドに向かう。
ハクは笑顔を魚サンドに齧り付いている。
人の笑顔を見ると心が安らぐ。
ギルドに着くと朝の時間帯で人が多いのでハクに伝える。
「ハク、人が多いから私から離れないようにね。何かあれば大きな声を出すんだよ。」
ハクは頷き私の服の裾をしっかりと握る。
よし、まずは掲示板と依頼ボードをチェックする。
掲示板に目ぼしい情報はない。もちろん迷子の白狼についてなど掲示されていないのでギルドは個人情報の大切さを分かっている組織として私の中の信用度が上がった。
続いて依頼、報酬金額の高いものを探す。…が、所詮自分はEランク。そんな都合よく高報酬の依頼があるわけ…、ないんだなこれが。
気を取り直して真面目に考える。
街を長期間離れる依頼は除外、日帰りで達成可能なものと考えると…、この”グレーウルフの毛皮の納品”かな。街の外ならハクも体を動かせるし丁度いいだろう。
依頼書を手に取り窓口の列に並ぶと少しして私の順番となる。
ギルドカードと依頼書を職員さんに渡しながら話しかける。
「おはようございます、依頼の受注と他冒険者に伝言をお願いします。」
「おはようございます、はい、依頼の受注と他冒険者様にご伝言ですね。まずこちらの依頼はギルドへの納品で毛皮の状態によって報酬が変化しますのでご注意ください。また数はあるだけ買い取るとのことですので無理のない範囲で納品ください。…はい、依頼の受注手続きは完了です。続いて伝言ですね。相手様の都合によっては伝言の受け取り拒否もあり得ますので返信がなくともギルドへの苦情はおやめください。はい、それでは相手様と伝言内容をどうぞ。」
淡々としているが個人的にはこの方がありがたい。
「相手は冒険者パーティー、アパシオナーダのリーダーのアローザさんで、伝言は都合が合う時に会って話しがしたい。この伝言から一時は以前食事をご一緒した熊猫亭で夕飯を取りますのでもし立ち寄ることがあればお声がけください。…でお願いします。」
「かしこまりました。相手の方が高ランク冒険者様となりますと返信に時間がかかったり、そもそも返信がないことも多々ありますのでその点はご注意ください。…はい、それでは伝言を承りました。ご用件は以上でよろしかったですか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございました。」
私はお礼を言って受付から離れる。
確かアローザさんはBランクとかなんとか言ってたし忙しいだろう。気長に待つかね。そういえば私への伝言がないか聞いていなかったがアンシーの町では聞かなくても教えてくれたので多分なかったのだろう。多分ね。
ギルドを後にして街の外に向かう。グレーウルフは森での目撃が多いと情報にあったので門から街の外に出て森を目指す。
道中はハクとお話ししながら歩く。毎日仕事をしてお金を稼ぐ必要があること、昨日のように訓練するが遊ぶ時間は少なくなること、私が戦っている間ハクには隠れていてほしいことなど私の考えを伝えてハクが頷くという形だ。
一通り話した後ハクに尋ねる。
「と、まぁ色々言ったけどあくまでこれは私の意見だ。ハクの意見を聞いてそのうえでお互いが納得するようにしたと思っている。私の話を聞いてハクはどうしたいと思った?」
私の問いにハクは少し考えて答える。
「…毎日やることがあるのは分かる、群れが生き残るためにやらないといけないことが色々あるんだってお父さんが言ってたから。訓練も隠れるのも分かる。遊ぶ時間は…、今までなかったから少しでもあるのならうれしい。」
聞き分けのいい子だね。各家庭での考え方があるのだろうけど子どものころに遊べないのは不憫だな。短くても遊ぶ時間は確保しよう。うん。
ハクが納得してくれているので次の話題に移る。
「今後の事についてハクが納得してくれているのは分かった。じゃあ次に確認、今日はグレーウルフという狼の魔物の討伐に行くのだけれどハクは狼人族として嫌だと思ったり可哀そうだと思ったりしない?」
私の質問に意味が分からないと言うような顔だが一応考えてくれるハク。
この世界の人はそこらへん認識が違うのかね。それとも姿が似ていると思っているのは私だけで魔物はまったく違う生き物なのか?。うーん、分からん。分からんがハクが嫌がらなければいいか。
「ごめん、変なことを聞いたね。ハクが嫌な思いをしないならそれでいいんだ。」
ハクはいつもの顔に戻り頷く。
「よし、さっき私が戦っている間はハクに隠れていてほしいと言ったけど敵がハクを襲うこともあると思うんだ。その時は敵の攻撃を避けて私を呼んでほしい。出来るかい?」
更に頷くハク。
昨日のハクの動きを思えばそこら辺の魔物やチンピラに後れを取ることはないと思うので少しずつ様子を見ていこう。
話したいことは一通り話せたので森を目指す。森まではまだ距離があるのでハクに走るか聞くと嬉しそうに頷いたので走って森の近くまで行くことにする。
2人で走ってもあっという間に森に到着した。ハクは楽しそうだが今から見通しの悪い森の中を進むので気を引き締めて行こうと伝えて森を進む。
目的はグレーウルフだがどこにいるかは皆目見当もつかないので適当に奥に進む。もしかしたらハクの方が周りの気配に敏感かもしれないのでお願いしておく。
「ハク、周りに魔物や人の気配があれば教えてくれないか。」
私の言葉に頷くハク。
警戒しながら森を進むとハクが私の服の裾を引っ張り奥にある茂みを指差す。
私は足を止め茂みを注意深く観察すると微かだが揺れていることに気づく。
さすがハクさん、気配察知は敵わねぇや。
ハクに小さくありがとうとお礼を伝えた後、懐から魔法で作った石を取り出して茂みに軽く投げる。石が投げ入れられると茂みから唸り声を上げる灰色の狼が飛び出てきた。
あれはグレーウルフか、幸先がいいんじゃないか。
グレーウルフとはまだ距離があるので様子を見る。するとグレーウルフは頭を上にあげ遠吠えをする。
遠吠えが辺りに響くとどこからか他のグレーウルフが現れ私達は囲まれていた。
これだけの数の毛皮を納品すればなかなかのお金になるんじゃないかと考えているとグレーウルフの視線が私に向いていないことに気づく。グレーウルフ達は皆ハクを見て唸り声を上げている。
おや、これはハクを脅威と感じているのか、それとも獲物として見ているのかは分からないがどちらにしても私を見てくれないなんてつれないじゃあないの。
とりあえず囲まれているのでハクに離れないように伝えて相手が襲ってくるのを待つ。もう定番の戦法だな。
待つ間暇なのでハクの様子を見る。ハクは魔物に囲まれた状況でも恐れている様子はなくいつも通りの冷静な表情だ。肝が据わっているな、本当に子どもか時々分からなくなるんだよなぁ。
そんなことを考えているとグレーウルフ達は茂みに隠れながら囲みを狭めてくる。
慎重だな、そんなに慎重なら相手の力量を見極めて撤退してもいい気がするが、まぁそれは魔物の本能とかかね。後は力量とか考えたが私も詳しくは分からないしな、完全に魔法頼りで慢心してるし。
隙を晒すためにハクの方を見て声をかける。
「大丈夫?、怖くはない?」
私の問いに頷いて返すハク。ハクはグレーウルフの一匹から目を離さない。私もそのグレーウルフに目を向けるとそいつは他の個体とは違い体が大きく毛並みもきれいな気がする。あれがリーダーってやつかな?、ハクに聞こうかと再び魔物から視線を外すと感知魔法に背後からの反応がある。
私は背後から近づくグレーウルフの首を落とし即座にアイテムボックスに収納する。出来るだけハクに血生臭いものは見せたくないからね。ちなみに背後から近づくのがグレーウルフだと分かったのは感知範囲に入った物体の形状から判断した。間違って他の生き物を殺すことはない、襲ってきた相手は殺してもいいのだが一応ね。
こんなことを考えている間にもグレーウルフが牙をむき出しにして襲い掛かってきたので首を落としては収納する。収納後は解体して魔石、肉、毛皮、その他に自動で別れるようにする。全自動グレーウルフ仕分けだな。
何匹か処理すると襲い掛かってきていたのが止む、相手も何かおかしいと気づいたのだろう。相手の次の動きを観察しているとリーダーらしき個体が短く吠えた。すると周りを囲んでいたグレーウルフ達が包囲を解き私達から離れていく。
なんだ?、もしかして逃げんのか。
私の考えとは裏腹にリーダー個体の周りに他の個体が集まりリーダーを守る陣形となった。そしてリーダー個体は体に力を込めてこちらを睨んでいる。
ん?、グレーウルフって朝のスーパー戦隊シリーズみたいな必殺技ってあるのか?。というかもう朝のスーパー戦隊シリーズってないのか?
脱線しそうな自分の考えを抑えながら情報を調べてみる。
…いや、グレーウルフの情報にそれらしいものはない。
私は気になったので自分とハクに透過魔法をかけて様子を見る。
なんだ?、何をするんだ?。リーダーが溜めて他が守るって絶対大技ですよね?。ビームか?、レーザーか?
ワクワクしながら待っているとリーダー個体の正面のグレーウルフ達が離れ私達への射線を通す。そして次の瞬間リーダー個体が口を大きく開くと爆音と共に一直線に私達に向かって衝撃波が飛んでくる。衝撃波は地面を抉り、木々をなぎ倒しながら私達に向かってくるがそれらはすり抜ける。爆音も私の魔法範囲内に入ると自動で調整されたようで私達の耳を破壊することはなかった。
これは技名をつけるとしたらソニックブラストだな。
私は一瞬でグレーウルフ達に接近して首を落としてはアイテムボックスに収納する。リーダー個体は大技の後で動きが止まっていたし他の個体は爆音で体が強張っていたので抵抗なく討伐できた。
アイテムボックスを確認してみるとグレーウルフの素材が17匹分。儲けもんだね。
グレーウルフとの戦闘が終わったのでハクに声をかける。
「大丈夫だった?」
ハクは頷き言葉を返してくれる。
「…うん、平気。」
ハクは問題なさそうなのでグレーウルフ探しを続ける。その後はハクが察知して襲ってくれば倒すという形で進めていき合計32匹のグレーウルフを討伐できた。最初のリーダー個体のように大技を使ってくる奴はいなかったのであれは珍しかったのだろう。
ハクのお昼ご飯は肉野菜炒めとパンを食べてもらった。街の外に出るならご飯のバリエーションも考えなければと自身の考える事リストに項目を追加した。
その後は日も傾いてきた頃に街に戻る。帰りもハクと走ればあっという間だ。
帰りもハクの様子を見てみるが特に不満そうな様子はなく走っている時は楽しそうだ。これなら毎日の依頼は大丈夫そうかな。
街に着くとグレーウルフの素材は全て売るつもりなのでギルド裏の作業場に向かう。もう怪しまれるのを気にするのは面倒になったので堂々と持ち込むことにする。一応鞄から取り出すようにするが何か言われたりしたらその時に対処しよう。というか気にし過ぎだったのかもしれない。世の中他人の事なんてそんなに気にしないものだよな。
搬入窓口に並び自分の順番を待つ。改めて並んでいる人達を見ると体の2倍はあるかという獲物を肩に担いでいる人もちらほらいる。私からすればあの人達の方がすごいと思うので堂々としていれば案外目立たないものだと思って行動する。
私の順番となりギルドカードを出しながら窓口の職員さんを見るとそれは以前にも対応してもらったシェーンさんだった。
「どうもこんにちは、依頼品の納品と買い取りをお願いします。」
「あいよ、依頼品も買取品もまとめて出しな。」
シェーンさんはギルドカードを受け取りながら言う。ここで言葉通りまとめて大量の素材をぶちまけて目立つなんてことはしない。
「ではまず依頼品のグレーウルフの毛皮から」
私が鞄から毛皮を取り出して窓口に置くとそれだけで視界が遮られる。
「多いね…、まだあるならちょっと待っておくれ。」
私は言われた通りに待つ。
「これはまた状態がいいね、というか全部きれいな毛皮だね。それに1つは艶が違う。…まぁいいさね。依頼品の納品は状態も良好ということで完了だよ。」
そう言って依頼品を箱に入れて片づけるシェーンさん。
「あいよ、まだあるかい?」
次は魔石を買い取ってもらう。今回のグレーウルフ分とアイテムボックスに入れていたオーク、ヒールワーム、暗馬虫、角ウサギ、アシドリの魔石をまとめて出す。要塞蜜蜂の分もあったが流石にこれは面倒ごとになる予感がしたのでやめておく。
「おや、Dランクの魔石もあるね。あんたEランクなんだからあんまり無茶はするんじゃないよ。」
これは心配してくれていると受け取ろう。
従うつもりはないのでへへっと苦笑いで流す。
シェーンさんは私の態度に呆れながら対応を続ける。
「それじゃあ魔石はFランクが6、Eランクが31、Dランクが3だね。買取品はまだあるかい?」
魔石はランクごとで魔物ごとの違いはないのか?、それとも買い取りは分かりやすくするためにランクで分けているだけなのか?
少し疑問に思ったがそういうものだとして気にしないでおく。
シェーンさんが魔石を片づけてくれたのでグレーウルフの肉を出そうとする。
「これで最後なのですがグレーウルフの肉を32匹分となりますので置くスペースが足りないです。」
シェーンさんは私の目を見つめて黙る。おっ、ケンカすっか?
「…嘘を言っている様子はないね。その鞄に入っているとは思えないけど…、あぁ、そういうことかい、ならこっちに来な。」
何かに納得して案内してくれるので素直に付いていくと衝立で区切られて周りから見られない場所に通される。
「ここなら周りから見られないから鞄から大量のものを取り出しても大丈夫だよ。それと今度から大量の持ち込みがあるときはアタシの窓口に来たらスムーズに対応するよ。」
なんとお優しい、私は親切にされるとすぐに信用してしまうから気をつけなければ。
「ありがとうございます。それではこれがグレーウルフの肉です。」
近くの台にグレーウルフの肉を山積みにする。
「あいよ、分かっていると思うけど空間魔法の付与された鞄なんて魔道具は貴重だから気をつけるんだよ。」
そうか、魔道具と思われるのか、まぁ訂正しないけど。それにしてもこの人は面倒見がいいな。最初は小言を言われて悩んだけど会話を続けてみると心配してくれているのが分かる。まぁ私の心を乱した罪は重いので慎重に見極めるけど。
私は愛想笑いで返事をする。
「…まぁいいわ、それじゃあ肉も買取ね。どれも状態がいいし内臓も処理済みと…、よし、査定が終わったよ。依頼品、買取品全部で銀貨4枚、大銅貨1枚、銅貨4枚だよ。」
問題ないのでお金を受け取る。
「ありがとうございます、またお願いします。」
私達が行こうとすると呼び止められる。
「ちょっと待ちな、その子が白狼の子だろ?」
知られている?、…まぁギルドに伝えていることは話しても大丈夫だろ。
「はい、そうです。ギルドには伝えています。」
「ああ、ギルド内でも一部の人間には共有されているよ。それでなんだけど今日白狼の子どもについて聞いてくる男がいてね。その男がこっちに聞くだけ聞いて素性を明かさないから帰ってもらったんだよ。アンタにも接触するかもしれないから伝えとくよ。」
「わざわざ教えてくださりありがとうございます、気をつけます。」
怪しいが本当にハクの関係者の可能性もある、会いに来たら話くらいは聞いてみるかな。
シェーンさんと別れてギルドを後にする。
「ハク、今日の仕事はこれで終わりだ。晩御飯を食べに熊猫亭に行こうか。」
頷くハク。
お店に向かおうとするといきなり声を掛けられる。
「おい、その子どもは白狼か?」
声をかけてきた相手はハクのフードをずらそうとする。
私はハクに伸ばしてきた相手の手を掴みアームロックをかける。私は孤独のグルメの五郎さんみたく甘くないのでそのまま腕を折る。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
男の悲鳴が周りに響く、が私の魔法範囲内なので音は外に漏れないように遮断する。
私は無礼な相手には容赦はしない。礼節は大事、坂東は英二。
「いきなり子どもに手を出すのは許されませんよ、用があるならまずは大人を通してどうぞ。」
私が腕を離すと男は睨みながら悪態をつく。
「くそっ!、いきなり腕を折るなんて頭おかしいんじゃねぇのか!?」
お、自分の行動は棚に上げて他人を非難するとは、しかも私に一番言っちゃいけない頭おかしいを言うとは許されないな。
私は気持ちを抑えながら質問する・
「それで、何の用ですか?。納得できる理由があればポーション代くらいはお支払いしますよ。」
男は腕を抑えながら答える。
「くっ、俺は白狼の子どもを探しているだけだ。」
「理由は?」
「それは…、お前には関係ねぇだろ。お前は黙って子どもの確認をさせればいいんだよ。」
「それでは子どもに近づけさせる訳にはいきませんしポーション代も渡せませんね。それと無理を通そうとするなら反対の腕も折りますので悪しからず。」
私がそう言うと男は何か言いたそうな顔をしたが渋々引き下がる。
「…覚えとけよ。」
男は私達から離れていく。
覚えとけか、残念ながら脅威には対処して忘れることにする。ここで見逃して後から面倒ごとに巻き込まれる展開はごめんだ。
「ハク、おんぶするから目を瞑っていてくれるかい?」
ハクは頷きすぐさま私の背中に飛び乗る。
説明せずともすぐに行動してくれるのは非常に助かるね。
私は人込みに紛れて男を追跡しながら自身とハクに透過魔法をかける。透過魔法を発動すればバレる心配はないので男のすぐ後ろを付いて行きながらハクに話しかける。
「ハク、さっき話しかけてきた男の人に見覚えはあるかい?」
「…ない。知らない人。」
よかった、これで知り合いだったらハクの両親探しを邪魔しただけになっちゃうよ。
しばらくは男に付いて行く。男は何度も後ろを確認しながら狭い路地を進んでいき、やがて建物が密集した中の1つに入っていく。
ハクを背負った私も後に続く。
ハクには目を瞑ってくれと頼んだが音は聞こえるので透過魔法の設定でハクだけには音が届かないようにしておく。何があるか分からないから一応ね
建物の中に明かりはないが男は迷うことなく部屋の隅の階段を下りていく。
いやー、悪党のアジトっぽいですねー。これで地下に奇麗で豪華な空間が広がっていたら敵は闇の権力者で確定なんですけどねー。
そんなことを考えていたが階段を下った先には扉があるだけだった。
男がその扉をノックすると扉に付いた覗き窓が開きすぐに扉が開かれる。
映画でしか見たことない扉だ。
扉をくぐるとそこには見張りの男、私の追って来た男、そして犬頭の男がいた。
あれは狼人族なのか?、いまだに犬なのか狼なのか分からないのでとりあえず犬頭の男としておく。
「報告は。」
犬頭が男に聞く。
「この街のEランク冒険者が怪しい。子どもを調べようとしたらいきなり腕を折られた。」
男が折れた腕を見せながら答える。
「へへっ、お前Eランクなんかにやられたのかよ。」
見張りの男があざ笑う。
「うるせぇ、油断しただけだ。」
男は睨むが見張りの男はへらへらしている。
「それで?」
犬頭に促され男が続ける。
「ギルドも情報を隠しているようだったから白狼の子どもがこの街にいるのは間違いないと思う。俺は情報を集めつつその冒険者を監視するつもりだ。」
「監視だと?、へっ、ビビッてねぇで怪しいなら攫えばいいじゃねぇか。違ってたら殺せばいいだけだしよぉ。」
見張りの男は物騒だな。
「おい、他の奴らも白狼の子どもを狙っている。目立つことは控えろ。」
犬頭の言葉に見張りの男はへいへいと従う。
犬頭がリーダーで、追って来た男が諜報、見張りの男が脳筋って感じか?。それにこいつら以外にもハクを狙っている奴がいると…、うん!、メンドイ!
とりあえずハクに犬頭の男について確認する。
「ハク、今だけ目を開けて確認してほしいんだけどあの人は知っている人?」
「…知らない。」
「ありがとう、ごめんけどまた目を瞑っておいてね。」
「…分かった。」
ハクへの確認も終わったのでさっさと済ますことにする。こちとら仕事終わりで晩飯前じゃ。
透過魔法を解いて姿を現す。
「はーい、こちらの要件を簡潔に伝えまーす。1,白狼の子どもからは手を引け、2,あんたら以外の白狼の子どもを狙っている奴らについて教えろ、3,今後悪いことはするな、以上。はい、そちらの意見をどうぞ。」
いきなり現れた私に驚いた3人だが私の追って来た男が口を開く。
「こっ、こいつだ!。俺の腕を折った怪しいEランク冒険者ってのは!」
その言葉を聞いた見張りの男がへらへらしながら近づいてくる。
「へへっ、わざわざ出向いてくれるとは手間が省けたぜ。そのガキ寄越しな。」
私の背負ったハクに手を伸ばしたので見張りの男の足元から細い土の槍を出現させて男の両足を貫く。ついでに石の球を射出して私の追って来た男の折れていない方の腕を折る。連帯責任ね。
「ぎゃっ!」「ぐっ!」
2人は短い悲鳴を上げるが倒れ込むことはしない。痛みに耐性があるのか?、悪い人っぽいし荒事には慣れているのかもしれない。
唯一無傷な犬頭の男に尋ねる。
「あなたが一番話が通じそうなのでお聞きしますが先ほど私の言った要件を聞き入れるつもりはありますか?」
私の問いに震えながら答える犬頭。
「わ、分かった、俺達は足を洗う、情報も渡す。だから命だけは助けてくれ。」
お、私が従わなければ殺すとよく分かったな。危機察知能力の高い人は高評価だぞ。まぁこの人の言葉に信用は皆無だが今のところこちらに被害はないので信じることにする。
「あ、あとこの街から出ていくことも追加で、1人でも目にしたら3人とも許しませんのでそのつもりで。では情報を。」
私の言葉に何度も頷きながら話始める犬頭。なんかこいつのビビり方嘘くせぇな、気のせいか?
「さ、最近商品だったはずの白狼の子どもがいなくなったって話が広まり始めたんだ、そんな時に見つけて連れてくれば高く買うって言う女が接触してきたんだよ。」
「その女とは?」
「顔を隠してたから分からねぇ。だが高い香水の匂いだったからそこら辺のチンピラじゃないのは確かだ。」
ふむ、今まで読んだ漫画などから色々予想できるが今は話の続きを聞いてみよう。
「それで?」
「そ、それで?。あ、あぁ、そいつはいろんな奴に声をかけているから早い者勝ちだとも言っていた。」
「受け渡しや報酬については言っていなかったか?」
「受け渡しについては特には…、報酬は…、金貨5枚だ。」
犬頭からの情報はこれくらいか。
「そっちの2人は何か知ってる?」
私の追って来た男と見張りの男は痛みを我慢しながら首を横に振る。
そうか…。ふと思ったが私の魔法で治療はできるのだろうか?。過去の悲しい出来事を思い出すが自分の出来ることと出来ないことは把握しておきたい。丁度目の前に実験た…、いや、ケガした人がいるので試してみよう。…ケガさせたのは私だが。まぁ子どもに手を出す奴が悪いってことで。
とりあえず両腕の折れた男をスキャンする。アームロックを極めた方はポッキリ折れ、石の球を当てた方は骨が粉砕されていた。痛そうだね。
骨を正常な位置に並べるのはできるとして、後はどうやってくっつけるかだな
。アイテムボックスに薬草はあるから成分を患部に浸透させるか?。うーむ…、そういえば回復魔法は使えないのだろうか。確か回復魔法は再生力を高めるとかなんとか聞いた気がする。私の魔法はイメージで何とかなるのでとりあえず試してみるか。
私は男の折れた骨の位置を正常に移動させくっつくようにイメージする。再びスキャンすると骨はくっついていたので一応薬草の成分を浸透させておく。治療自体は一瞬なので痛みはないはずだがどうだろう。
「あんた、腕は動かせるか。」
私が聞くと男は苛立った表情で返す。
「お!、お前が折ったん…、あれ?、痛みが…。それに動く…。」
大丈夫そうだな。
次は見張りの男、スキャンすると足を貫いた土の槍は骨を逸れていたため土の槍を消し、傷口をきれいにして回復させる。薬草成分もおまけで注入。
「そっちのあんたは動けるか。」
見張りの男は腕の治った男を見ていたため無言で自分の足を確認する。
こっちも大丈夫そうだな。
「それでは皆さん、私達はお暇しますが約束したことは忘れないようにお願いします。じゃ。」
私は透過魔法で姿を消す。
部屋に残された3人はしばらく無言だったが私の追って来た男が口を開く。
「な、なんだったんだ…。」
1人が口を開くと見張りの男も続いて話始める。
「おい、それより本当に手を引くのか?」
犬頭の方を見る。
「バカが、手を引くんじゃない、足を洗うんだ。従えないならここでお前を殺すぞ。お前が勝手なことをすればこっちの命も危ないんだからな。」
犬頭は鋭い目つきで見張りの男に言う。
「そ、そんなにか。」
「お前も見ただろう!、無詠唱で魔法を使うのを!。あれはEランクじゃない。しかも人を殺すことに何の躊躇いもないあれはこちら側の人間だ。死にたくなければ従え。」
こちら側って勝手に線引きしないでくれる?、失礼だぞ。
「お前もいいな、すぐにこの街を出て足を洗え。」
私の追って来た男は素直に頷く。
とりあえずは大丈夫そうかな、一応3人はスキャンして情報を記録したから追跡はできないにしても私の魔法範囲内に入れば分かるようにはしておいた。
そう、私は姿を消したが部屋を出ではいない。その後の様子を確認するのは大事だよね。
確認が終わったので部屋を出て建物からも出る。日も落ちているのでダッシュで熊猫亭の前まで移動、透過魔法を解除してようやくハクに話しかける。
「ハク、お待たせ。用事が済んだからご飯にしよう。」
「…」
ハクは名残惜しそうにしているが私の背中から降りてくれる。
店に入ると店員のマオさんより先にテーブルにいる人達の1人から声を掛けられる。
「遅い!、人を待たせておいて遅れるとは何事か!」
見ると以前も無礼な振る舞いをしたアパシオナーダのエラとかいう狐人族の人がおり、同じテーブルにはアパシオナーダの他のメンバーもいた。1日も待たずして来てくれるとはありがたや。
「アローザさん、伝言を聞いて来てくださったのならありがとうございます。ネルケさんもビスコさんもお久しぶりです。」
3人に挨拶するとにこやかに返してくれるが1人だけは騒いでいる。
「おい!、無視するな!」
無視する。
「アローザさん、ご相談したことがあるのですがお食事しながらでもいいですか?」
「ええ、大丈夫よ。私達は済ませたから気にしないでちょうだい。」
いい人だな。お言葉に甘えよう。
「それでは以前と同じでよろしければデザートはいかがですか?」
「あら、それならいただこうかしら。」
ネルケさんとビスコさんにも聞くと食べたいとのことだったのでダンさんにパンケーキを3人前注文する。
「おい!、私の分は!」
無視するとビスコさんがエラを宥めてくれる。
「ハク、今日は自分の食べたいものを注文してみようか。注文が決まったら手を上げたらあのお姉ちゃんが聞きに来てくれるよ。」
マオさんを示すとハクは頷きマオさんは手を振ってくれる。
何事も経験だね。
「アローザさん、それでご相談なのですがまずは現在の私の状況を説明させてください。」
アローザさんは頷く。
これまでの経緯とハクについて説明する。アローザさんは真剣に聞いてくれる。私の説明中にパンケーキが届いたので蜂蜜と木苺ジャムを渡す。ハクは1人で注文していた。えらいぞ。
「…経緯とこの子については以上です。それで本題のご相談とはこの子が魔法を使えるように稽古をつけてほしいのです。報酬は私が差し出せるものならなんでも差し上げます。お忙しいとは思いますがどうかお願いします。」
私は頭を下げる。
アローザさんはパンケーキに舌鼓を打ちながら答える。
「んー、私としては白狼の子どもに魔法を教える経験が出来るだけで十分なのよね。あっ、それならハクちゃんが魔法が使えるようになったら色々聞いてもいい?」
「ハクが嫌がらなければ私が言うことはありません。」
「なら契約成立ね。」
アローザさんの差し出した手を握ろうとすると割り込みが入る。
「ちょっと待った!、アローザ様はお忙しい身だぞ!。Eランク冒険者如きのお願いを聞くほど暇じゃないぞ!」
エラだ。いや、本人が納得したやん。こいつマジでうざいな。
「それにパーティーでこの街にいるんだからこちらのパーティー全員に許可を取るべきだろう!」
一理…、あるのか?
エラは援護を求めるようにネルケさんとビスコさんを見る。
「私はアローザ様の決めたことに従うわ。」
「私もよぉ。」
2人に梯子を外されムッとするエラ。ビスコさんは続ける。
「アローザ様の魔法研究の事で予定が変わることは今に始まったことじゃないわぁ。それなのにエラちゃんはカルラちゃん相手だと突っかかるのよねぇ。」
「こいつが!、生意気だからだ!」
エラが喚くとそこに料理を運んできたダンさんがやってくる。
「おい、前にも言ったが騒ぐなら叩き出すぞ。」
「…はい。」
睨まれたエラは小さく返事をした。
ハクと私の前に肉定食が並べられる。
「ハク、私の分の注文してくれたのか。ありがとうね。」
お礼を伝えると満足そうに頷く。カワイイな。
「そうだ、ダンさんにも伝えておきたかったんですが今日ハクを狙った不届き者が現れました。話を聞くとハクを金貨5枚で買うと複数に依頼しているという高い香水を付けた女がいるとのことでした。」
「分かった、覚えておく。」
情報は伝えたので本題に戻る。
「それでアローザさん、メンバーの反対意見があるようですがどうでしょうか。」
パーティーはリーダーの意見が絶対かと思っていたが別にそんなことはないか、パーティーも色々あるよな。
「んー、ちょっと待ってね。」
アローザさんはエラに近づき頭をなでる。
「エラちゃん、わがまま言っちゃダメよ。下の子には優しくするものよ。」
「はい!」
「じゃあごめんなさいできる?」
「はい!」
エラを立ち上がり私を見て言う。
「アローザ様に免じて許可してやろう!、私はお姉さんだからな!」
おい、ごめんなさいはどうした。
私は無視して肉定食を食べているともうすぐ食べ終わりそうなハクが服の裾を引っ張る。
「…私も、あれが食べたい。」
ハクが指差したのはパンケーキ。
「いいよ、あれはパンケーキ。注文してみようか。」
私の言葉に嬉しそうに注文するハク。
アローザさんがニコニコしながら向かいの席に戻ってくる。
「ふふ、それじゃあメンバーの許可も取れたから魔法の稽古について話しましょう。」
「はい、現状ハクは全く魔法が使えないようです。私の希望は自衛できるように魔法が使えるようになってほしいのと魔法の危険性について学べればと思っています。稽古をお願いしておいて恐縮なのですが私の依頼もありますので数日に1回はお休みをいただければと思います。」
「あら、ハクちゃんを預かるのかと思っていたのだけれど。」
そうしたいのは山々なんですがね。
「ハク、このお姉さんが魔法を教えてくれるのだけれども私から離れて教わることはできるかい?」
首を横に振るハク。
「すみません、この子は私から離れたくないようですのでお手数をおかけしますが私も一緒となります。」
「そうなのね、それはそれで構わないわよ。」
話の分かる人で助かるわ。
アローザさんと話しているとハクの分のパンケーキが運ばれてくる。
私は蜂蜜と木苺ジャム、そしてコムの実を出す。
「ハク、パンケーキはこれらと一緒に食べると美味しいよ。好みもあるだろうから少しずつ試してみてね。」
並べられたデザートを前に嬉しそうに頷くハク。
ハクはさっそくパンケーキを切り分けるとまずは蜂蜜をかけて一口頬張る。すると満面の笑顔となる。次に木苺ジャムをかけて一口、これまた笑顔だ。コムの実もお気に召したようで食べ進めていき、あっという間にパンケーキを平らげた。満足いただけたようで何よりだ。
ハクが食べ終わったタイミングでアローザさんが口を開く。この人もハクの笑顔にやられていたか。
「それじゃあ明日の朝の鐘にギルドで待ち合わせしましょ。稽古は街の外でするからそのつもりでね。」
「分かりました、よろしくお願いします。」
アローザさんと他3人はテーブルを立つ。アローザさんとビスコさんは手を振り、ネルケさんは会釈。エラはふんと鼻を鳴らして店から去っていった。
とりあえずハクの魔法の師匠は見つかったかな。何なら私も教えてもらいたいし引き受けてもらえてよかった。
安堵しているとダンさんが近づいてくる。
「おう、話は終わったみたいだな。」
「ええ、そういえばこのお店を待ち合わせに使ってすみません。」
「そんなもん好きにしろ。騒がないのなら客が増えるだけありがたいからな。」
渋いなぁ、絶対人族だったら神室町で堂島の龍とか呼ばれてたよ。
そんなことを考えているとダンさんは急に小声になる。
「ちょっと相談なんだが。」
どうしました?、12万円貸しましょうか?
「この前お土産としてくれた生の魚なんだが、あれを定期的に仕入れられないか。」
なんだ、そんなことか。別にアンシーの町まで走ればすぐだしアイテムボックスに入れておけば期限も考えなくていいから全然いいけど。…いや、待てよ。セイさんがこの街に来てとんとん拍子にポルカノさんの商会で活躍していけば生の魚は流通するのでは?。うん、その可能性も考慮しよう。
「いいですが条件として今後この街の商会で生の魚が取り扱うようになればそちらからの購入を検討してください。もちろん料理に使えないような魚なら私からの購入で構いません。」
「あぁ、分かった。」
まぁセイさんが雇われるかやポルカノさんの商会が生の魚を扱うかは分からないからね。一応だよ、一応。
「じゃあ今から何匹かお渡ししましょうか?」
「あぁ、それじゃあ10匹ほど頼む。ここじゃあなんだから保管庫に来てくれ。」
ハクにすぐ戻ると伝えたが当然のように付いてくるので2人でダンさんに付いて行く。案内されたのは厨房奥の地下室でひんやりとしており多くの食材が並んでいる。
「この箱に頼む。悪いが前より多めに氷を入れてくれると助かる。」
お安い御用でさぁ兄貴。
私は指定された大きな箱に氷を敷き詰め魚、氷、魚と並べて層を作っていく。保存方法として正しいかは不明。ノリと気分の行動だ。
「これでいいですか?」
「あぁ、助かる。それで値段はいくらだ?」
「以前の蜂蜜と同じようにダンさんが決めてください。」
「そうか…、じゃあ1匹大銅貨1枚でどうだ?」
高ぁー!。
「高すぎて恐れ多いです、1匹銅貨2枚にしましょう。」
「いや、それは安すぎないか。」
ダンさんは引いているが転売ヤーは嫌われるからね。手間賃入れても仕入れ値の倍くらいでいいでしょ。
「買ったときは1匹銅貨1枚なんで十分儲けですよ。それより仕入れ間隔と数量が分かれば準備しやすいのですが決まっていますか?」
「いや、今は料理を試している段階でな。店に出すようになれば決めれると思うから少し待ってもらえるか。」
そうなのか。
「分かりました。私の手持ちの銅鮭はあと20匹ほどですのでそれ以上の数が必要なら早めに言ってくださいね。」
「すまんな、助かる。」
魚を渡したので元の部屋の戻る。食事も終わっているのでそろそろ私達もお暇しよう。
「ご馳走様でした。おいくらですか?」
「大銅貨1枚と銅貨4枚だな。」
おや?
「あれ?、一緒にいた人達のパンケーキ代って入ってますか?」
「あの人達ならまとめて払っていったぞ。」
マジか、待ってもらってたからご馳走する気だったのだがな。
「そうですか、では魚代と差し引いてもらってもいいですか?」
「おう、じゃあ銅貨6枚のお返しだ。」
お金を受け取りダンさん家族に見送られて店を後にする。
透過魔法をかけて宿屋に向かう。
「ハク、今日はどうだった?。楽しかったとかもっとこうしてほしいとかあるかな?」
ハクは少し考え恐る恐るといった感じで口を開く。
「…さっきの耳の尖ったお姉さんがやってたことをしてほしい。」
?、もっとヒントをくれ。耳の尖ったというのはエルフのアローザさんか?。あとさっきじゃなくて今日1日の依頼中の時とかのことについて聞きたかったんだが…。
悩んでいるとハクは私の手を掴み自分の頭にのせる。
「…これ。」
…あぁ、アローザさんがエラにしていた頭をなでるやつね。他人の体に触れるのは抵抗があるのだが望みとあらばしょうがない。
私はハクの頭をなでながら伝える。
「今日もよく頑張ったね、えらいぞ。」
ハクは目を細め嬉しそうな顔をしている。前世の柴犬を思い出すな。
「ハク、明日はさっきの耳の尖ったお姉さん、アローザさんって言うんだけど、そのアローザお姉さんに魔法について教えてもらうからね。私も一緒だからお姉さんの言うことを聞いて勉強しよう。」
ハクは頷く。いい子だね。
宿に向かいながら考える。
これからの事は1つずつこなしていくしかない。不届き者は対処するとして基本は待つしかないからな。ハクの安全、健康、成長を考えないといけないがあんまり考えすぎると私の方が参ってしまうのでほどほどでいく。子どもも人間だが大人も人間であることを忘れてはいけない。限度があるけどね。以前子を持つ親のあり方について考えたが子どもと接するとやはり難しいと実感する。ハクはすでに大きいし手のかからない部類だとも思うからまだ私でも一緒に行動出来ているがこれが意思疎通ができなかったりわがままだったらおそらくお別れしていただろう。まぁお互い運がよかったということで。とりあえず私の目標はハクを無事に親元に帰すだ。
目標を再認識したところで宿に辿り着く。ハクはすでに眠そうだ。
宿に入り半分寝ているおばちゃんの前で透過魔法を解除する。
「こんばんは、泊まりに来ました。」
私の声におばちゃんはすぐに目を覚ます。
「ふぁ、はいはい泊りだね。おやあんた達かい、毎日来てくれてうれしいねぇ。部屋は同じところだよ。」
おばちゃんは鍵を取り出し私はお金を渡す。
「何か必要なものがあれば言っておくれよ、それじゃあおやすみね。」
「ありがとうございます、おやすみなさい」
ハクは眠たそうにしておりお休みは言わないがおばちゃんに手を振っていた。
おばちゃんに最初に会ったときはおしゃべりだと思ったが最近は話しかけられないな。知らないうちに話しかけるなオーラが出ていたか?。まぁそれならそれでいいか、快適だし。
部屋に入りマントを脱がせて全身をキレイにしてからハクをベッドに寝かせる。ハクはベッドに横になるとすぐに寝息をたて始める。
疲れていたんだな。これからはもっと早めに寝かせた方がいいか?。うん、そうしよう。依頼の切り上げ時間を日が落ちる前にしてハクが眠くなる前には宿についているようにしよう。…今日のように邪魔が入らなければだが。
私も自分のベッドで横になり考える。
明日はギルドで待ち合わせだがその前にハクの昼ご飯の材料を買っておかねば、もしくは屋台で買いだめしておくか。…どっちもだな。後は早めにギルドに行ってハクが稽古をつけてもらっている間に片手間で出来る依頼があれば受けておくか、お金は稼げるときに稼いでおかないといけないからな。あとは…、警戒とセイさんからのれんらくを…。
私の意識はそこで途切れ眠りに落ちた。




