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とりあえず異世界転生  作者: とりてん


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14.遠出

今日も目が覚め一日が始まる。

いつものルーティーンを済ませて外に出る。

空には日が昇り始め人々は活動を始めている。

依頼をこなしてお金を稼ごう。今日も頑張ろう。

やんわりと気合を入れてギルドに向かう。

そういえばEランクに上がったんだったな。どのような依頼があるか確認せねば。

ギルドに着くと多くの冒険者で賑わっていた。

私は人の間をすり抜け依頼ボードの前に辿り着く。

さて、Eランクの依頼はと、

依頼ボードには様々な依頼が貼られており、だいたいはランクごとにまとめられている。Eランクの依頼は「近隣の村への荷物の配達」や「指定植物の採取及び納品」、「配送馬車に同乗しての荷運び(護衛別)」などが見られた。

Eランクという一番下のランクから毛が生えた程度だと難しそうなものはないな。活動範囲が広がったくらいだ。

少し考えて近隣の村への荷物の配達依頼を手に取る。

この街以外も知っておきたかったしお出かけしよう。

窓口で依頼を受ける。依頼の説明では、まずは街で荷物と納品書及び受領書を受け取る。道中荷物の破損に注意して村まで配達する。配達したら納品書を渡して荷物を確認してもらい問題なければ受領書にサインを貰う。街に戻ったら受領書を渡して依頼は完了となるとのこと。

まぁ初めてなのでとりあえずやってみよう精神でいく。Eランク依頼だし人数の指定も見当たらなかったので何とかなるだろう。

ギルドを出て商業地区の指定の場所に荷物を受け取りに行く。

指定の場所は商店のようで数人が忙しそうにしていた。

「すみませーん、ギルドから依頼で来ました。」

声をかけると近くにいた犬の顔のおばちゃんが対応してくれる。

「はーい、冒険者の方ですね。まずはギルドカードをお願いします。」

ギルドカードを渡すとすぐに返ってくる。

「はい、ありがとうございます。それじゃああちらの荷物をボザイ村の村長までお願いします。こちらが納品書と受領書、あとは簡易的ですが地図もお渡しします。」

荷物は箱二つをロープでまとめて背負えるようにしたもので、地図はこの街と

配達先の村と方角だけが描かれた簡単なもの。

「納品書は必ず渡して受領書にはサインを貰ってくださいね。配達は3日以内ですが、報告は10日以内であればいつでも大丈夫ですからね。」

「分かりました、それでは配達いたします。」

荷物を背負い書類はマントの下でアイテムボックスに仕舞う。

一応荷物をスキャンして中身と納品書の記載が正しいことを確認する。

…大丈夫そうだな。

商店を後にする。地図からすると南門から出るのが近いようなのでそちらから出る。レアルカリアミナミモン↑とよく分からない事を考えながら街道を歩き、人目がなくなったところで荷物をアイテムボックスに収納する。

よし、走るか。

貰った地図では何となくの場所しか分からないので足を使って探す。

透過魔法をかけて走る。地図では街から南に進んで分かれ道を右に行くとあると描かれているが距離や目印は何も描かれていない。とりあえずは地図を信じてまっすぐ進んで分かれ道があれば右に行く。ただそれだけ。

今回は道中の魔物や薬草は無視するのでひたすら走る。

かなりのスピードでしばらく走っていると道の先に立っている棒のようなものが見えた。程なくしてその棒のようなものに辿り着くと街道はそのまままっすぐ続いていたが、右には細い道があり、棒のようだと思っていたものは立て札で、「この先、村あり」と書かれていた。

ここが右への分かれ道か?、村はあるようだから最悪間違っていても聞いてみればいいか。

街道から外れて細い道を進む。またしばらく走ると木の柵に囲まれた建物群が見えてきた。アイテムボックスから荷物を取り出し背負うと透過魔法を解除して歩いて建物群に向かう。

ある程度近づいたところで遠くから声をかけられる。

「そこで止まれ。」

言われた通り止まる。

「この村に何か用か。」

どうやら村の見張りの人みたいだ。

「こちらボザイ村で合ってますでしょうか?」

まずは確認。

「そうだ。」

「オツサの街から荷物の配達依頼で来ました冒険者です。」

沈黙が続く。

ここから見るに誰かと話しているようだ。

「こちらへ。」

呼ばれたので見張りの人の方に近づく。

見張りの人はおじさんという感じだが体はがっしりとしている。

「遠くからご苦労様、ギルドカードを確認するよ。」

ギルドカードを渡す。

口調が変わったので警戒は解いてくれたようだ。

「はい、ありがとう。それじゃ荷物はあの大きな家に運んでくれ。」

「分かりました。」

ギルドカードを返してもらい教えてもらった家に向かう。

到着した家は他のと比べて少しだけ大きい。

これが村長の家かと思いながら扉をノックする。

「すみません、オツサの街から配達依頼で来ました。村長はいらっしゃいますか。」

扉が開き白い髪と髭のこれまたガタイのいいおじいさんが顔を出した。

「どうもどうも、わざわざこのような村までありがとうございます。私が村長のボザイです。」

村長の名前が村の名前なのか、村長が変わったらどうなるんだろ。

挨拶をして荷物を降ろす。

「それではこちらが納品書になります。荷物の中身と納品書の記載に間違いがないか確認をお願いします。」

ボザイさんは納品書を受け取り確認を始める。1つずつ確認しているので待っていると声をかけられる

「はい、確認が終わりました。問題ないようですね。」

「それでは受領書にサインをお願いします。」

受領書を渡しサインを貰う。

「これにて配達は完了ですね、ありがとうございました。」

「こちらこそありがとうございました。ちなみに冒険者さんはこの後はどうされますかな?」

この後か、あんまり早く帰っても怪しまれるしせっかく遠出したのだから何かするか。

「特に考えていませんでした、この周辺に冒険者に人気なものとかってありますか?」

「人気、とは違いますがここから南西の方にしばらく進んだところの森でオークを見たと村の者が言っておりました。見たのがその者だけですしその後も見たものはいなかったのでギルドには依頼を出していないのですが腕に自信があるのでしたら探してみてはいかがでしょうか。」

オークか、これまたRPGでよく聞くモンスターの名前だ。

情報を調べてみると該当するものがあった。

オーク、豚の頭部に人の体を持った二足歩行の魔物。体長は人間の二倍ほどでたるんだ体に見えるが身体能力は高く、怪力、突進、耐久力には注意が必要。単体のランクはDだが群れや集落を作ることも確認されているため、その場合はギルドに報告すること。肉は美味。

最後に少しだけだが味の情報があった。これは重要だ、それだけでやる気が出てくる。

「ありがとうございます、ではそちらの森に行ってみます。」

「お気をつけて、もし本日の泊まる場所をお探しでしたら用意しますがいかがですかな?」

親切だな、それとも社交辞令か?、まぁ素直に受け取るとして気持ちはありがたいが魔法空間のマイルームがあるから別にいいかな。

「お心遣いに感謝します。しかし野宿にも慣れておりますので大丈夫です。」

「そうですか、さすが冒険者ですな。」

安全な寝床を蹴って外で夜を明かすのはアホな選択な気がするがボザイさんも何も言わないしな。まぁ冒険者にも色々いるってことでええやろ。

ボザイさんに別れの挨拶をして村を出る。

さて、オークを探しに行きますか。

ボザイさんに教えてもらった南西の方に進んでいく。正確な方角はもちろん分からないのでオツサの街とボザイの村の位置から大雑把に方向を決めて進む。

自分の歩いたところくらい魔法でスキャンして地図を作ってもよかったなと今更ながら思うが、本当に今更なのでやめておく。

時間を潰したいのもあるので透過魔法はかけずに感知魔法だけを発動して歩く。頭の中はオークのことを考える。

だぁれかが言ったぁー、凶暴な魔物ながら美味なる肉を持った”オーク”がいるとぉー。(ねっとり)

気分は美食屋。ダブルツインマークツーセカンド釘パンチ。2がいっぱーい!!!!。やっぱりジャンプは少年の味方だぜ。

妄想しながら進んでいると森に着く。

オツサの街の北東にある鬱蒼とした森とは違って光が差し込むきれいな森だ。魔物がいなければ森林浴でもしたいと思うほどだ。

周りを警戒しながら森を進む。

しばらく進んだが生き物の鳴き声などは聞こえない。こうなると冒険者には人気はないな、果実や薬草も見当たらないし。おっと、冒険者の考えに染まっていた、危険がないのはいいことじゃないか。…しかしそうなるとオークがいたというのはなぜだろう。村人の見間違い?、でも情報では人の二倍の大きさらしいので見間違えないだろうしな…。他に考えられるとしたら…。

色々思いつくがどれも想像の域を出ない。考えても仕方ないので行動あるのみということで森の中をどんどん進む。

またしばらく進み、もう透過魔法をかけて走り回って探すかと考え始めた頃、森の中にけたたましい叫びが響く。

「ピギィィィィッ!!!!」

叫びが聞こえた方にこっそりと近づくとそこにはのた打ち回る大きな豚頭がいた。

あれがオークか。

静かに観察すると近くにはこん棒が落ちており、背中には塞がっているが新しめの大きな傷がある。そしてオークは苦しみながら絶えず地面をのた打ち回っている。

よく分からんがチャンスか?

飛び出そうとすると先に向こうがこちらに気づく。

オークは落ちているこん棒を拾いこちらに向かって乱暴に投げる。

こん棒は私の隣を飛んでいき、直撃した木をへし折る。

力はすごいようだが投げるときに見えた目は焦点が合っていないようだった。

意識がはっきりしていないのか?、理由は分からないが襲ってくるのなら容赦はしない。オークが突進してきたので首を落とし即座に横に避ける。

オークは絶命したまま後ろの木にぶつかる。

勝った!勝った!夕飯はドン勝だ!!

アイテムボックスに収納するかとオーク方を見ると死体がピクピクと動いていた。その動きは次第に大きくなりオークの背中にある塞がっている傷から何かが這い出てくる。それはミミズのようだが先端に口があり細い手足が無数に生えていた。

キッッッッッッッモ!!

私は土の槍を射出してそのキモイ生物を木に磔にする。

その生物はくねくねと藻掻いたがすぐに動かなくなった。

きもかった…、めっちゃゾクッとした…。

情報を調べてみると該当するものが出てくる。

ヒールワーム、傷口に当てると治癒効果のある分泌物を出す。しかし傷口から体内に入ると寄生し宿主の肉を食う、治癒するを繰り返し成長する。宿主が満足に食事が出来ず栄養が不足すると治癒を止め宿主を食べ始める。人間への使用は禁止。知能の低い魔物の使用例が報告されている。

あのオークは体の中から食われてたから暴れてたのか。

オークとヒールワームを一度アイテムボックスに収納し魔石だけ取り出す。オークの肉は食べる気が失せたのでどちらも取り出して地面に置く。

森の栄養になるかスライムが処理してくれるだろう。

無駄足だったなと思いながら来た道を戻り森を出る。空は夕暮れ、森の中で差し込む光を感じた時はまだ明るかったので結構な時間を森で彷徨っていたようだ。

そのままボザイ村を通り過ぎ分かれ道まで戻る。まだ報告の期日まで余裕があるのでこのまま街道を進んで見ようと思う。これぞ冒険。透過魔法をかけるので陽が落ちても安全安心。

街道を進んでいると完全に日が落ちる。

そういえば街の外で夜を迎えるのは初めてか、いや、討伐の時も夜だったな。あの時は照明弾で明るかったから印象はないけど。うーん、夜というのもワクワクするもんだ。空には月が出ており真っ暗で見えないということはない。

夜に歩いていると前世の子どものころを思い出す。初めて夜に家を抜け出して

歩いた道はいつもの道なのに夜だというだけで違って見えた。あれは青春の一つだな。

思い出に浸りながら歩いていると視界の端に明かりが見える。

目を凝らしてみると街道を外れた先に揺らぐ光、おそらく焚火が見えた。

野営の人かな?

先ほどの森ではオーク以外の魔物は見かけなかった、もしかするとこの周辺は魔物が少ないのかもしれない。

そのようなことを考えているといきなり明かりが消える。

就寝かと思ったがここは異世界、そうでなくても危険な生物がいる場合は火は絶やさないはずだ。お節介かもしれないが一応様子を見に行く。

焚火のあった場所に近づくと闇に溶けそうな色のフードとマントの2人がそれぞれ鎧姿とローブ姿の女性を押さえつけており、近くには同じフードとマントの人物が1人立っていた。

これはどういう状況だ?。パッと見では女性達が襲われているよう見えるが女性達が悪人で捕まった可能性もある。

色々な可能性を考慮しもう少し様子を見る。すると鎧の女性を押さえつけていた人物が立っている人物に声をかける。

「おい、こいつは力が強い。お前も手伝え。」

「へっ、いつも楽しむのはお前からじゃねぇか。今回譲るってんなら手伝ってやるよ。」

声からしてフードとマントの奴は男のようだ。そして話の内容がゲスい。これは男達の方が悪人っぽいな。

男達は会話を続ける。

「わかったわかった、譲ってやるからこいつの足の腱を切れ。」

「へへっ、そうこなくっちゃな。」

立っていた男が腰からナイフを抜き鎧の女性に近づく。女性は激しく抵抗しているが抜け出せる様子はない。

私は透過状態で近づきナイフを収納する。

「あれ?、ナイフが…」

男は間抜けな声を出す。

続いて女性2人も収納。安全確保と私の存在がバレるのを防ぐためだ。

押さえつけていた相手が急にいなくなり驚く2人。

「なっ、なんだ!?、一体どうなってやがる!」

困惑している3人から少し距離を取って姿を現す。そして問いかける。

「お聞きしたいのですが、なぜ人を襲うような悪いことをするのですか?」

急に現れた私に3人は驚きながらも武器を抜き構える。

「お前の仕業か?、大人しく獲物を返せば命だけは勘弁してやるよ。」

絶対嘘やん。

「質問に答えてもらってもいいですか?、なぜこのようなことをするのですか?」

私の態度に苛立ちながら男の1人が答える。

「理由なんかねぇよ、欲しいものは奪う、ただそれだけよ。」

「それだと本能のままに生きる動物と同じではないですか?、理性を持つ生き物として悪い行いはしないべきではないですか?。」

「ガキがっ、世の中を知らねぇくせにわかったような口を利きやがって。」

男がナイフを持つ手に力を籠めこちらに向かってくる。

まぁこの人の事情は知らんが悪いことにはリスクが伴う。それを分かってやっているんなら邪魔されることも考えておいてほしいものだ。

話していた男が向かってくると同時に残りの2人も動き出す。私がナイフを没収した男が掴もうとしてきたが避ける。残りの2人は急所を狙ってナイフを刺してきたがこれも避ける。

私は攻撃を避けながら話を続ける。

「先ほどの女性達は冒険者に見えました、その人達を押さえつけることができ、今もナイフを巧みに操っています。その戦闘力を活かして人から奪うのではなく冒険者として活躍しようとは思いませんか?」

「はっ、冒険者なんて馬鹿のすることだ。そんなことをしなくても他人から奪えばいいだけだ。」

うーん、根本的に考え方が違うな。うんうん、皆違って皆いい。だが他人を傷つけるのはダメだ。考えるのは自由だが行動に移すなら私も行動することに躊躇いがなくなる。

「最後にお聞きします。他人から奪うことは悪いことです、それらを嫌だと思う人がいるとは考えませんか?」

私は他人の立場になって考えろというのは嫌いだ。なぜなら自分というフィルターを通すので結局他人の立場に立った自分の考えだからだ。なので自分の考えとは異なる考えの人がいて、その人と共存するための妥協点を考えるのがいいと思っている。もちろんこれも個人の考えだけどね。

「知らねぇよ!、奪われるのが嫌なら力を持つしかねぇ。弱い奴こそ悪だ!」

そうか、悪とは思わないが確かに前世でも弱者は奪われてたわ。

…なんか考えるのも面倒になって来た。そもそも他人を襲うやつが悪いじゃん。なんか悪いことした方の事も考えろとかアホなこと言うやつがいたがしっかり罰して後に続く奴を減らした方がいいと思うんだけどな。まぁどうでもいいか。

私は話していない2人の首を落とす。

「じゃあ弱い奴が悪いってことで。」

「なっ!?」

最後に残った男は驚いた表情のまま首を落とされる。

初めて自分の意志で人を殺したが案外心は動かないものだ。身近な人の死で心が麻痺したのかそれとも悪人だったからなのかは分からないが自分の意志での行動だ。この選択をしたことは覚えておこう。

3つの死体はアイテムボックスに収納して私は透過魔法で姿を消す。その後に女性2人を元の位置に取り出す。

女性達は何が起きたのかわからず困惑していたが危険が去っていることを確認して次第に落ち着いてくる。

乗り掛かった船なので周囲を走って人や魔物がいないか確認する。問題なさそうだったので離れて寝ることにする。

完全に自己満足だな。だがそれでいい。自分のやりたいことをする、自分を保つのにも大切なことだ。

自身にそう言い聞かせてマイルームに入り全身をキレイにしてベッドに入る。


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鎧の女性が呟く。

「すまない、私が迂闊だった。」

ローブの女性はまだ小さく震えており何も答えない。

「私はこのまま警戒しておく。空が明るくなってきたら移動しよう。」

鎧の女性は立って周りを警戒し、ローブの女性は座ったまま俯き動かなくなる。

この2人は同じ村出身の新米パーティー。出稼ぎとして村から出て冒険者となるが自分達の認識の甘さを身をもって知る。この経験から片方は闘志を燃やし、もう片方は心折れるが、それもまた冒険者。今後どうなるか、未来は誰にも分からない。

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目が覚める。

体を伸ばし自身の状態を確かめる。

体に異常なし、気分の落ち込みもなし。

よし、今日も1日頑張るぞ。

いつものルーティーンをこなしマイルームから出ると女性達の姿はなかった。

移動したのだろう、私はそう思い気にせずに街道に戻る。

依頼の報告期日まであと9日。

あれ?、配達3日プラス報告10日だっけ?。確認してなかったな。まぁこういう時は短い方に合わせるから残り9日でいいか。となると後3日は進んで同じ日数で帰るとして2日は予備だな。予定は変わるもんだが大体の予想はこんなもんかな。

予定も決まったので街道を進み始める。

そういえば今更だがこの世界の犯罪者はどう罰せられるのだろう?、以前ギルドで奴隷落ちになったとか何とか聞いたがそれは罰として重いのか軽いのか、うーん、まぁ機会があれば聞いてみよう。昨日の事に関しては刃物持って襲って来たしな。話が通じない襲ってくる相手は魔物と同じで対処するしかないということでヨシッ!

街道を歩き続けると遠くの方に湖が見えてくる。

そこには自然の緑の中に輝く水面、そこに映りこむ澄んだ空というまさに絶景が広がっており、端に見える町がいい味を出している。

こんな感じの光景を前世のディスカバリーチャンネルで見た気がする。

せっかくなので町を目指す。

ここから見える町はオツサの街より小さくボザイ村より大きい。壁に囲まれており、湖に面したところには桟橋と船が見えた。

雰囲気が素晴らしい。この景色を見れただけでも歩いてきた甲斐があると思えるほどだ。

景色に心を癒されながら歩くと町に着く。

門でギルドカードを見せると問題なく通してもらえる。

町に入るとすぐに広場となっており多くの人で賑わっていた。

広場には市場や屋台があり色々な物が売られている。私はその場所ならではのものがないかと回ってみることにする。

市場には野菜や果物が並んでいたが、それ以上に多くの魚介が並んでいることに目を引かれた。おそらく湖で取れた新鮮なものなのだろう。見たことあるものからないものまで色々な種類の魚介が並んでいるが特に目についたのは形は鮭によく似ているが鱗がくすんだ茶色の魚、その魚が多くを占めていた。

気になったので店員さんに聞いてみる。

「この魚は何なのですか?」

「あんた銅鮭を知らないなんて遠くから来たのかい?、こいつはこの辺でよく獲れる魚だよ。味が知りたいなら屋台で調理されたのが色々売ってるからそっちに行ってみな。」

店員さんはそう言うと大きなかごを持ったお客さんの対応に移った。

どうやら町の住人が主な客層の店のようだ。

教えてもらった通り屋台の方を見てみる。そこでは確かに魚介系の料理が多く売られていた。

やはり屋台はワクワクする。ついつい財布の紐が緩むのは仕方のないことだ。まぁ情報収集も兼ねればオールOKってことで。

まずは先ほど見た銅鮭が一匹丸ごと串に刺さって焼かれている屋台に声をかける。

「すみません、一本いくらですか?」

「いらっしゃい、一本銅貨4枚だよ。」

オツサの街の肉串の倍か、まぁあっちは食材の調達から自分でしていると言っていたのでこっちの値段が普通なのかもしれない。

「では一本下さい。」

「毎度あり。」

お金を渡すとすぐに焼き銅鮭が出てくる。

それでは、実食。

焼き銅鮭にかぶりつくと皮がパリッと裂けてぎっしりとした身と脂が口いっぱいに感じられる。美味い。味付けは塩だけなのが逆にいい。そういえば異世界での初めての魚だ。それがこんなに美味しいとは、感動だね。

あっという間に平らげて残った骨と串をゴミ箱に捨てて店主に話しかける。

「とても美味しかったです。この町は初めてなのですがおすすめの場所などはありますか?」

「まいど!、おすすめの場所かぁ、それならこの道をまっすぐ行ったところにある市場かな。この町を支える場所だから一番大きいし加工場も兼ねているから加工品も売っているよ。あとは町の外になるけど湖の船着場だな。運が良ければそこで魚とかを獲ってるのが見れるよ。」

市場と船着場か、この町は湖での漁業を中心としているみたいだな。

「ありがとうございます、それとこの町に冒険者ギルドはありますか?」

「ああ、冒険者ギルドなら市場への道の途中にあるよ。」

重ねてお礼を言って次の屋台へ向かう。次は大きな鍋から湯気が立ち上る屋台、値段は銅貨3枚とのこと。注文すると木のお椀に並々入ったスープが手渡される。具は魚のあらとぶつ切りの身、どうやらあら汁のようだ。

まずはスープを一口。うーん、美味い。臭みなどは一切なく魚の旨味がはっきりと感じられる。個人的には味噌が欲しくなるがなくても十分美味い。身の方も口に入れるとほろほろと崩れる。様々な種類の魚の身が入っているようで口に入れるたびに味の変化を楽しめる。

大満足で食べ終え店主に話しかける。

「美味しかったです。よければ教えてほしいのですかこの町で気をつけたほうがいいことはありますか?」

「ありがとね。そうねぇ、魚介類は変な臭いがしたら食べちゃダメよ。時々裏路地とかで古くなったものを調理して売ってる人がいるからそういうところで食べるのはやめた方がいいわ。」

それは気をつけよう。

お礼を言って最後の屋台へ。その屋台では焼いた魚をソースと葉野菜と一緒にパンで挟んだものが売っており、値段は銅貨5枚とのこと。

そう考えると熊猫亭の肉定食が銅貨6枚なのはだいぶ価格がバグっているな。大学近くの学生応援価格みたいなものか?。オツサの街に戻ったらお金を落とさねば。

お世話になっていることを認識しつつ魚サンドを注文する。

すぐに出てきたので受け取って一口頬張る。パンは硬いが厚さが丁度良く、口の中でソースと絡み合い噛むほどに美味い。ソースは酸味が効いており魚の脂ともよく合っている。うましっ!

小腹がすいた時用にもう一つ注文し懐に仕舞う。

食事が終わったので店主に話を聞く。

「美味しかったです。お聞きしたいのですがこの町は魔物の被害はある方ですか?」

「魔物の被害?、湖の魔物はラック商会の冒険者達が対処してくれるからなぁ。あっ、ラック商会ってのはこの町の一番大きい市場をやってる商会なんだよ。湖以外も他の冒険者がいるからここ最近は町には被害はないかな。」

へー、基本町の中は安全ってことね。

お礼を言って離れる。

情報も集まったのでギルドに寄ってその後市場を見てみよう。

行き先が決まったので歩いて向かう。

町には冒険者ではなさそうだががっちりした体の人が目立つ。

あれは漁業関係者とかかな?

なんとなく雰囲気的にそう感じた。

そんな風に人や町並みを眺めながら歩いているとギルドに着く。看板はオツサの街と同じなので統一されているのだろう。分かりやすくて助かる。

中に入るとオツサの街のギルドと細かいところは違うが作りはほぼ同じとなっていた。

頭に思い浮かぶのは前世のチェーン店、まぁ各町にギルドがあるのなら作りを同じにしてくれた方が立ち寄った冒険者にはありがたい。利用者目線に立てるとは創設者は素晴らしい人なのかもしれない。

少し感動しながら掲示板に向かい眺める。そこには色々な掲示があるがひときわ目立つ掲示には「水及び風魔法使い随時募集中、詳しくはラック商会まで。」とあった。

ラック商会は湖の魔物に対処していると屋台の人が言っていたな。それに市場や加工場もやっているとも言っていた。…魔物の討伐だけではなく漁業や食材の処理まで魔法使いが活躍している?。だとしたらすごいな、魔法使い限定だが冒険者の引退後や転職の受け入れ先となるんじゃないか。働く冒険者の未来は明るいぞ!

…いや、夢見すぎか。もしかしたらブラック企業かもしれないしな。

他の掲示に目をやると「夜の野盗に注意」というのが目に付いた。内容を読んでみると「最近日が落ちてから町の外で活動していたと見られる冒険者や商人が行方不明になったという報告が相次いでいた。ギルドが調査中だったが野営中に襲われたという冒険者の情報があり、その冒険者曰く闇に紛れるようなフードとマントという恰好で明かりを破壊して不意打ちしてきたという。ギルドは犯行の規模から組織的なものとみて調査を続けていくが、各々夜間の活動には十分注意してください。」と書かれてた。

私が倒したのは野盗だったのか、魔物という分かりやすい驚異的な存在がいるのに同じ人間を襲うとは愚かだね。

人間の愚かさに飽き飽きしながら掲示板を眺めたが他には気になるものはなかったのでギルドを離れて次は市場を目指すことにする。

町中は活気があり多くの人が忙しそうにしている。

平和なのはいいことだね。

のんびり歩いて市場に着く。屋台の人が言っていた通り周りの建物と比べても一際大きな建物だ。中が見える開けた入り口から入り働いている人の邪魔にならないように見学していく。市場というだけあって魚介類がずらりと並んでおり商人らしき人が店員と話している。ふとその隣を見ると箱に魚が入れられ近くにいた商人とも店員とも違う格好の人が何かつぶやくと一瞬で箱が凍る。

ああやって冷凍して遠くに運ぶのか。

感心してその氷魔法使いの人をなんとなく目で追いかける。その人は忙しそうに呼ばれた先で次々と箱を凍らせている。

氷魔法使いはあの人しかいないのか?、だとしたら大変じゃね?

見た目は若い男性。20代前半くらいか?、は真面目そうな顔つきで黙々と仕事をしていた。

まぁ他人の事なんて分からないもんだ。あれで内心仕事が楽しくて仕方ないと考えているかもしれない。勝手に悪く考えるのは野暮ってやつだね。

市場に入ってすぐは鮮魚が買える広いスペースのようだ。

一通り見れたので奥に向かってみる。

奥に行くと区切りをはさんで加工品の販売所があった。

塩漬け、干物、燻製など前世でも見たことがある物が並び、こちらでも商人姿の人が店員と話し複数の箱を購入して別の人に運ばせていた。

うーん、魚介類の数はかなりのものだ。この町だけで消費するとは思えないし冷凍や保存の利く加工品があるということは他所に出荷、もしくは他所から買い付けに来ているということか。

1人で納得しながら更に奥に進む。先には加工場があるみたいだが関係者以外が勝手に入るのはよろしくないので自己判断で引き返す。

別に工場見学に興味はないしな。

だいたいは見終えたので次は船着場にでも行くかと来た道を戻ると鮮魚売り場で騒がしい声が聞こえる。

野次馬根性丸出しで騒ぎの方に近づくと先ほどの氷魔法使いの男性が床に倒れていた。

周りがざわざわとしていると店員姿の男性が近づき氷魔法使いを起こして小瓶の中身を飲ませる。氷魔法使いがせき込みながらも飲み干しふらふらと立ち上がると店員姿の男性が周りに声をかける。

「お騒がせして誠に申し訳ございません。足がもつれて倒れただけですので皆様はどうかお気になさらずお買い物を続けてください。」

店員姿の人と氷魔法使いの人が頭を下げて奥に移動していく。

私は気になったが余計なことに首を突っ込むのは面倒なのでスルーする。実はあの氷魔法使いが馬車馬の如く働かされているかもしれないが、人間他人の事は二の次、三の次ってね。そんな他人の心の叫びに手を差し伸べて助けるなんて物語の中の主人公だけだよな。

ということで気にしないで船着場に向かう。市場をぐるっと回りそのまま進むと門があった。門の向こうには湖が見えたので市場と船着場を繋ぐ裏口的なものだろうと考え、いつもと同じように門番にギルドカードを見せて外に出る。

町の外に出ると船着場が見えるが複数の柵も見える。湖からの魔物対策としては心許ない気もするが素人には分からない機能や考えがあるのだろう。それらを通り過ぎて船着場に向かう。

いざ着いた船着場だが結構広く石で舗装されていて木の桟橋がいくつも作られていた。

これだけの広さがあれば水揚げも楽々出来るだろうと思いながら周りを見て回る。どうやら朝の漁も終わり片付けと荷物の運搬の最中のようだ。

まぁ今は昼頃だろうししょうがないね。

見ていて面白いものはなさそうなのでのんびり湖を眺めているとふと思いつく。私の透過魔法は水場ではどう使えるだろう?。

気になったので早速試してみる。

まずは人目に付かないところで透過魔法をかけて姿を消す。

最初は浅瀬で足だけ水に浸かってみる。うん、水底に足がつくが濡れている感覚はない。水だけ透過したようだ。次に壁や地面と同じように水に当たり判定をつける。水に入っている足を上げて再度下ろすと今度は水面に立つことができた。

やった。これで片足が沈み切る前にもう片足を前に出す力技で水の上を走る事を試さなくていいんだ。ありがとう列海王、問題はなかったよ。

心の中の師匠に感謝を告げて検証に戻る。

当たり判定の切り替えは可能ということは分かったので次は水中での検証に移る。水中に向かうにあたり空気はどうするかだが、アイテムボックスに意識して空気を収納してみる。すると表示に「空気」が追加された。

…数の表示がないのは私の知識がないからか?。うーん、これでは水中での活動中に空気がなくなると死ぬな。…いや、これも試せばいいか。

私は自身のコピー君がアイテムボックス内の空気でどれだけ活動できるか試す。静かに過ごした場合や激しい運動をした場合などいろいろ試して平均を取る。

その結果アイテムボックスの表示に「空気×24時間分」と記された。

上々だ。常に空気はストックしておくように設定して、ついでに10日分くらいに上限を増やして完了。これで安心して水中に行ける。

早速水深の深い方に歩いていく。頭の先まで沈むところまで来たので検証を開始する。と思ったが何から試そう。…考えてみれば水の中だというのに何の抵抗もなく動けている。これは私の魔法範囲の境界で水が透過しているから実質地上と同じということか?、例えるなら逆スノードームみたいな?。となるとせっかくの水の中なら自由に泳ぎたい。どうしたものか。

少し考える。

私の魔法範囲の境界に当たり判定をつけて浮力の影響も受けるようにするか?

試してみると体が浮き始める。

おー。と感心して手足を動かすが体は移動しない。

まぁそうか、今はボールの中で宙づりみたいなもんか。

浮上し体の半分ほどが水面から出たところでまた考える。

私の魔法範囲は2メートル。当たり判定の境界を1メートルくらいにして私の後方から風魔法を出せば移動するか?

試してみると私の体は前に進む。

いける!、いけるぞ!

その後練習を重ね、風を出す位置や風力を調整し水中を自由に動けるまでになった。

うーむ、こうもあっさりとやりたいことが実現できると自分の力以外を疑ってしまうな。…ま、いっか。深くは考えない。それが私。

それにしても水中だけでも自由に動けるとはいい気分だ。ゆくゆくは空も自由に飛びたいな。ドラえもーん。

上機嫌で水中を移動しまくる。そんなことをしていると空は暗くなってくる。

やはり集中すると時間を忘れてしまうな。だがそれでいい!。充実した一日だった。

湖から船着場に戻る。

最後に料理の美味しいお店に出会えたら最高だなと考えながら町に戻ろうとすると桟橋に誰かいるのが見える。辺りは暗くなり始め作業している人も見当たらないので近づいて挨拶する。

「こんばんわ、もう暗いですが作業中でしたか?」

近づいて見ると市場で見た氷魔法使いの男性だった。その男性はビクッとした後に私を見て沈んだ顔で答える。

「…あぁ、どうも。ただ湖を見ていただけですので気にしないでください。」

弱々しい声だ。この状況、考えすぎかもしれないが死ぬんじゃないか?

首を突っ込むのはいやだが声をかけてしまったので踏み込んでみる。

「午前に市場で倒れていた方ですよね?、体調が優れないようでしたら町まで送りますが。」

「…見られてたんですね、お恥ずかしい。いえ、体は何ともないので大丈夫です。お気遣い感謝します。」

”体は”何ともないねぇ、それはつまり…。

「初対面で不躾かもしれませんが仕事に悩んでいませんか?」

男性は少し驚いて力なく笑う。

なんか私、喪黒福造みたい。

「…分かりやすいですかね、僕。こんなだから上司に嫌われるんですかね…。」

「話すとスッキリすることもありますよ、よろしければお聞きします。あっ、私は来たばかりの冒険者ですのでこの町に吹聴する知り合いはいません。」

訳)どしたん?、話聞こか?。自分口は固いで。

男性は少し考えて話し始める。

「僕は、元々冒険者だったんだけど、パーティーメンバーから気が利かないだの臆病だの言われてクビになって。そんな僕でも氷魔法は使えたからラック商会の噂を聞いてこの町に来たんだ。町の中での仕事だから魔物と戦わないと思ってね。それで、真面目に、ミスのないように、迷惑をかけないように頑張ったんだ。…でもね、頑張れば頑張るほど、考えれば考えるほどミスをするようになって、それで上司に怒られるようになって、今じゃあ毎日怒鳴られてる。…なんで、なんで僕はこんなに出来ないんだ。僕は…。」

最後の方は絞り出すようなかすれた声だった。

うーん、これは失敗が続いて自信が無くなり元の性格も相まって負の連鎖に陥っているな。

「あなたはどうしたいと思っていますか?」

「…僕は、普通の人間になりたい。仕事でミスしないで怒られない人間に…。」

若いな。

「普通の人はミスもするし怒られますよ、完璧な人間はむしろ特別な方だと思います。それはいいとしてあなたにはラック商会しかないんですか?、その上司しかいないんですか?」

「いや、そんなことはないけどこんな僕を雇ってくれた商会だし、上司は最初は優しかったし…。」

「正直言ってどこの商会でも氷魔法使いは需要があると思いますよ。あなたは他の氷魔法使いと比べましたか?」

「…いや、でも、上司が僕の代わりはいくらでもいるって…。」

「それは嘘ですね。あなたほどの氷魔法使いがそこら辺にいたら冒険者は魔法使い一強ですよ。」

市場で見た氷魔法は一瞬で箱を凍らせていた。あれは一般的ではないと素人の私でもわかる。それに氷魔法が一般的なら日常で目にするはずだ。氷は戦闘より日々の生活での利用の方が多い気がするし。

「そう言ってもらえるのはうれしいけど…。」

「それに上司の行動も間違っています。怒鳴って動くなら人を使うのに苦労はしません、それに一度怒るといざ他の方法を勧めても反発や恐怖で素直に受け入れられないのが人間というものです。」

「それは、僕が言われたことができてないから…」

「いやいや、貴重な人材を現在進行形で潰しているのはその上司ですからね。それに同じ方法を続けて相手が変わるのを待つなんて教育することを放棄しているだけです。」

「そ、そうかな?」

おっ、否定をやめたな。

「そうです!。まぁここまで言いましたが結局自分がどうするかは自分でしか決めれません。ですがラック商会を辞めても死ぬわけでもありません。あなたの人生、選択肢はいくつでもあります。何なら小さい商会ですがオツサの街に知り合いがいますので紹介もできますし、珍しい魔法使いに話を聞きたがっているBランク冒険者も紹介できます。それがあなたに合わなくてもその紹介した人の紹介と出来ることは色々あります。人に頼るのも選択肢の一つです。」

男性は私の話を聞いて考えている様子。

「そうか…、怒られることを怖がって周りが見えなくなっていたかもしれない。…うん、死ぬわけじゃないしね。」

まだ若干声に元気はないが顔には笑顔があった。

「僕、もう少し頑張ってみるよ。仕事を辞めるのはいつでもできるからね。」

うーん、出来上がってしまった悪い環境は早々に脱出した方がいいのだが、まぁ本人の希望だし否定はしたくないな。

「そうですか、ご自身で決めたのなら何も言うことはありません。ですがもし助けが必要でしたら冒険者ギルドにて私、カルラ宛てに伝言を下さればこちらに参ります。」

「カルラさん…、初対面なのにこんなに親身に話しをしてもらってありがとうございます。そういえば名乗ってませんでいた、僕はセイって言います。」

自分の若い頃を思い出して踏み込みすぎたか。反省せねば。

「いえ、差し出がましいことをしました。しかしセイさんの気分が少しでも晴れたのなら幸いです。」

セイさんの顔を見る限りでは話してよかったと思う。

でもこのアドバイスのせいで明日上司を血祭りに上げたらどうしよう。…まぁそれも選択肢の一つか。

「もう暗いですし町に戻りましょう。」

私の言葉にセイさんは頷く。

町に戻った後はすぐに解散した。一瞬飲みにでも誘うかと思ったが先ほどの事が薄まるのはよくないし、1人で考える時間が必要という意味でも解散することにした。

その後私はいつも通り人目に付かないところでマイルームに入りベッドで横になる。

今日はトータルで考えるといい一日だった。最後に人と関りを持ってしまったが、まぁ悪いことにはならなかったしええやろ。検証もできたし美味しいものも食べれた。うんうん、こんな日が続けば最高なんだがな…。

ウトウトしながら考えていると意識がなくなり私は眠りにつく。


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