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とりあえず異世界転生  作者: とりてん


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12/16

12.討伐の終わり

救助のために即席チームと共に森の中を進む。

チームの人達とは軽く挨拶しただけだ。連携などを確認する時間はなかったので守るべきことはシンプルに互いをカバー、安全第一で認識を合わせている。

救助部隊リーダーのチームを中心に逆V字の形で進んでおり、私のチームは右の一番後ろだ。

私は戦略や戦術にまったく明るくないのでこの陣形がどのような効果があるかなどは知らない。こういう時は黙って付いて行く。

しばらく森を進むと照明魔法弾が背後で上がり周りを明るく照らしてくれる。もうすぐ夜だと思ったが一瞬で昼間ほどの明るさだ。

更に進むと戦闘の跡が見え始め、その奥の方に灰色の見るからに硬そうな巣が見え始めた。

前世で見た丸い蜂の巣を想像していたが見えているのは聳え立つ巨大な壁。

手前に見えるのは防護壁や櫓のような高台。これらを見て納得してしまった。

まさに要塞。堅牢であり攻めてくる敵を迎え撃つために作られたものだ。

感心していると救助部隊リーダーが全員に声をかける。

「救助対象を確認、蜂兵の蜜に捕らえられているようだ。敵の姿は見えないので今のうちに救い出せ。」

リーダーのチームを除き一斉に救助に動き出す。

私とは別のチームの一人が一番近い捕らえられた冒険者に近づくと突然足元が崩れ短い叫び声とともに姿が消える。

チームの仲間が姿の消えた先を覗き込むとそこには蜜のプールに落ち、藻掻けども浮上できない冒険者の姿があった。

「おいっ、掴まれ!」

覗き込んだ方が手を伸ばし蜜に手を入れるがその蜜はすでに固まり始めており

全身が浸かり蜜の中で息のできない仲間を救い出すことはできなかった。

「わっ、罠だぁー!」

冒険者が叫ぶ。

即座にリーダーが指示を出す。

「救助は一旦中止、救助者から距離を取れ。奴らは捕らえた冒険者を餌にしている。」

一瞬でそこまでわかるとはさすがリーダー。

しかしそんなリーダーにも緊張が走る。

リーダーの言葉を理解しているのかそれとも罠が見破られたのを察知したのかは分からないが先ほどまで姿の見えなかった蜂兵が木の後ろや巣の影からゾロゾロと現れ、あっという間に大群が救助部隊を包囲した。

救助部隊の全チームはすぐさま集まり背中を預けた防御陣形を作る。

冒険者の誰かが叫ぶ。

「リーダー!、どうするんですかっ。これじゃ救助どころではないですよ。」

それを聞いたリーダーは即座に決断する。

「全員撤退、防御陣形を崩さずに下がるぞ。飛んでくる敵の蜜には注意しろ、武器や盾で受けてすぐに捨てろ。いいな。」

周りの冒険者たちは返事をして防御陣形のまま移動し始める。

それを見ていた蜂兵たちは攻撃してくるでもなくあざ笑うかのように顎をギチギチと鳴らし一定の距離から蜜の弾を口から飛ばしてくる。

「くそっ、何なんだあいつらは。舐めてんのか!」

冒険者の一人が悪態をつくとリーダーが宥める。

「落ち着け、この要塞蜜蜂は異常だ。罠もそうだが行動がやけに狡猾だ。侮ってくれているなら好都合、情報をギルドに持ち帰り作戦を立てるぞ。」

飛んでくる蜜の弾に対処しながら後退しているとどこからかけたたましい羽音が聞こえてくる。

皆が警戒していると誰かが叫ぶ。

「上だっ!」

見上げるとそこには冒険者の武器や盾、鎧の破片を蜜で固めた球体を複数の蜂兵が空から運んできたのが見えた。

頭上の蜂兵は私を含む防御陣形の冒険者達に向かって蜜球を落とす。

「回避!!」

リーダーが叫ぶと全員がバラバラに避ける。

「全員防衛線まで走れ!、誰か一人でも情報を持ち帰るんだ!。」

リーダーの言葉に冒険者たちは走り始める。

しかし蜂兵達もそれが合図かのように襲い始める。

一人、また一人と冒険者が嬲り殺されていく。これは魔物による狩り、もしくは虐殺。

逃げる人間に追う巨大蜂、これだけ聞くとB級ホラーだが実際に目の前で起こるとただただグロい。

というか流れに身を任せると碌なことにならんな。人のやること全部裏目に出ている。これで人間滅んでないのが不思議だよ。

混乱に乗じて透過魔法をかける。次に大量の土の槍を準備。この土の槍作成はアイテムボックス内でやるので現実時間では一瞬だ。そして槍を飛ばすのだが私のアイテムボックスは状態を保存できる。なのでアイテムボックス内で私の体のコピー君が土の槍を全力で投げる。その状態を保存して実体の私がアイテムボックスから土の槍を取り出すと射出されるという寸法だ。原理を説明するとダサいかもしれないが傍から見れば土の槍を連射する魔法使いだからいいのいいの。電卓だって中にそろばん持った小さいおっさんが入ってようが回路が入ってようが正しい計算結果が表示されれば万事OKだよ。

とりあえず逃げる冒険者を狙う蜂兵を優先して攻撃していく。

確か虫は脳以外にも神経の塊が体のどこかにあって頭を潰しても体は動くと聞いたことがある。なので土の槍で木に磔にして動きを封じる。

蜂兵は何もないところから飛んでくる土の槍に混乱して冒険者への追撃を中止する。その後は周りを警戒しながらも巣の方に飛んで行った。

ぺっ、雑魚が。

今日は今まで先輩やら何やらに従って来たのでこれからは自由に動く。どいつもこいつも舐めやがって。自我を出さないと下に見るやつばっかだぜ。トカゲ兄みたいなヤンキーがチヤホヤされて結果この体たらく。冒険者はアホの集団なんかマジで。

悪態をつきながら破壊部隊がやられたところに戻る。

また情緒が不安定になってきているな、落ち着かねば。

巣の近くに戻ると一か所だけ蜂兵の集まっている場所があった。

こっそり近づくとそこには身動きの取れない妹を守るために体の半分以上を蜜に固められながらも槍を振るうトカゲ兄、セデクの姿があった。

蜂兵たちはおもちゃで遊ぶかのように動きの鈍いセデクを傷つけては代わる代わる顎を鳴らしている。

蜂兵たちは即斬首、からの収納して終わり。

急に消えた蜂兵たちにセデクは驚く。

「だれか…、いるのか…。」

セデクは呟く。

さてどうするか。まぁここで見捨てるほど私の心は強くないので透過魔法を解除して姿を現す。

「おまえは…」

私を認識してセデクは絞り出すように言葉を続ける。

「たのむ…、妹を…、ルトラだけでも、助けてくれ…。」

「じゃあこの仕事が終わったら一つだけ言うことを聞いてもらってもいい?」

大変な状況だが丁度いい機会だ。

「なんでもする…、だから…。」

口約束で十分十分。破ったら破ったで対処するし。

では早速、セデクとルトラに纏わり付いている蜜をアイテムボックスに収納。汚れもキレイにして傷口に持っている薬草をほぐして貼り付ける。包帯はないのでセデクのシャツを剥ぎ取り再度魔法できれいにしたうえで細長く切って包帯代わりに巻きつける。スキャンして体の異常をチェック。全身切り傷だらけだが骨は折れていない。毒もなし。妹は気絶しているが二人とも大丈夫そうだな。

素人の処置だからどうなるか分からんがやることはやった。

一通り終わるとセデクが口を開く。

「すまねぇ…、俺は…」

「安静に、お礼は約束を守ってくれればそれでいいから。」

トカゲ兄を黙らせて他の冒険者を探すことにする。

感知魔法を発動して罠を避ける。蜜の溜まった落とし穴だけでなく木のスパイクなども見つけた。ゲリラ戦法かな。

生存者を探していると突然声をかけられる。

「おい、おいっ!、ここだ。助けてくれ。」

声のする方を探してみるとそこにはズタズタにされ蜜に固められた死体があり、声はその下から聞こえていた。

とりあえず蜜を除去して死体を丁寧に退けると出てきたのは血と泥で汚れた犬獣人の人。最初の防衛線拡張の時に見た気がする。

「助かった、お前は…、」

聞かれるのは面倒くさいので言葉を遮る。

「救助部隊です。訳あって本隊とはぐれたのであなたにも救助活動の参加をお願いします。」

「はぁ?、いつ奴らが戻ってくるか分からないのに他人を助けてる場合かよ。俺はすぐにこの場を離れる。他人を踏み台にしてでも生き延びる。」

犬獣人の目線はズタズタの死体に向く。

えっ、盾にしたの?、その後死体の下に隠れたってこと?。

私が唖然としていると犬獣人はすさまじいスピードで森の中を駆けていった。

まぁ死んだら終わりだしね、あの人の考えも分からんでもない。

気を取り直して生存者の捜索に戻る。

大きな倒木があり耳を澄ませると微かに呻き声が聞こえる。

急いで近づき周りを探すと倒木の横に見覚えのある赤鎧とローブが見えた。

赤鎧のリーダーとリサさんだ。

赤鎧のリーダーは動きがなくリサさんは意識が朦朧としているのか小さく呻くだけだ。

まずは状態確認、魔法でスキャンする。

赤鎧のリーダーはすでに息がない。

リサさんは、

…、スキャンの結果、腹から下がなく傷口を蜜で固められて延命している状態だった。

私は全速力でセデクの下の走る。

「セデク、教えてくれ。この世界に人を生き返らせる魔法はあるか、なくなった下半身を再生させる魔法はあるか。」

いきなり質問する私に驚きながらもセデクは答えてくれる。

「そんな魔法は聞いたことねぇよ…、命に関しては論外だし、回復魔法は人の再生力を高める魔法だ。腕をくっつけるならまだしもなくなった部位はどうしようもねぇ…。しかも…」

そうか、ないのか。

「そっか…。わかった。」

「おい…、大丈夫か?」

セデクの問いに答えずリサさんの下に戻る。

私はリサさんの喉を切って楽にする。

涙が出る。

頭では考えられる。

表情筋を動かして笑顔も作れる。

でも心は痛い。

涙が止まらない。




結局いい人か悪い人か分からないままだったな…

心が乱れたということは私は好感を持っていたんだろう。

ふぅー、と大きく息を吐く。

これだから人と関わるのは嫌なんだよな。

前世でも嫌だったのに異世界じゃ死が身近だからこういうことが度々起こるんだろ。心が壊れちゃうよ。

涙を服の袖で拭いて気持ちを落ち着かせる。

よし、魔物ぶっ殺そう。

こうして人類と魔物の争いが続いていくんだろうな。うんうん。

おっと敵の巣に突撃する前に救助活動を終わらせなければ。

一通り探して息のある冒険者を数名蜜から救助した。

さてこの人達はどうするか、応急処置はしたが自力で動けそうなのは少しだけ。ここは罠もあるので置いておくのは問題がある。

一旦運ぶか。

私のアイテムボックスは人も入れる。私が生活するマイルームは時間経過を現実と同じにしているが止めることもできる。なのでケガ人を収容して運んでも収容された人は一瞬で場所を移動したと思うはずだ。

救助の時に顔を見られたのはセデクと犬獣人の人のみ、バレてもいいけどまぁ

バレないでしょ。ちゃちゃっと運びましょ。

透過魔法をかけてケガ人数名とセデク、ルトラをアイテムボックスに収納。

ダッシュで防衛線の開けたところまで移動する。

森との境目で全員を取り出し待機している人達に声をかける。

透過魔法の設定で音は聞こえるよう変更。今だけね。

「おーい、ケガ人がいるぞー。」

待機部隊が気づいてケガ人を回収するのを見届けたので安心して次の行動に移る。

レッツゴートゥー蜂退治だバカヤローコノヤロー。

脳内麻薬が分泌されておかしくなってきた。まぁいつもの事か。

全速力で巣に向かう。

巣の前に辿り着くが私の歩みは止まらない。透過魔法で透過できない壁はアイテムボックスで収納。私の魔法有効範囲に入った相手は首を落として収納後即解体で魔石を取り出す。

目的は親玉の排除。なんか女王とかいんだろ。とりあえずそいつ殺すわ。

ずんずん進み壁を通り過ぎると見たことのあるデコボコとした丸い半球状の巣が地面から姿を現した。

今まで巣だと思っていたのは外壁で本体はあれか。あれ地球防衛軍で見たことあるわ。

ゲームで見た記憶を思い出しながら考える。

バカデカい巣だが親玉はどこにいるんだ?、天辺か、最下層か。

うーん、考えても答えは出そうにないので巣の入り口から入ってみる。壁を貫通しながらだと場所がわからなくなるので蜂の作ったであろう道に従って進んでみることにする。

巣の中はなぜか明るい、外の光でも入ってきているのか?。原理はわからないが今は助かるので気にしないでおく。

感知魔法で通った道をスキャン、記録して3Dマップを作る。これで迷わず探索できる。

入り口から進んでいくと大きな部屋に辿り着く。その部屋は更に道が分かれており蜂の巣というより蟻の巣という感じがする。部屋の中には蜂兵が何匹がいたが透過魔法をかけているのでスルー。別に手当たり次第殺戮はしない。敵討ちというのもない。今はこの騒ぎをさっさと終わらせたいという気持ちで満ちているので道を進んでいく。マッピングしているので勘で進む道を選ぶ。別に行き止まりに宝箱があるわけでもないだろうし気楽に行く。ゲームなら隅々まで調べるけどね。

道を進んでいると登り坂となる。進めない程ではないのでどんどん進む。

再び大きな部屋に辿り着くとそこには壁一面に六角形の区切りがあり、その中には溢れんばかりの輝く蜜が入っていた。部屋中には甘い匂いが充満しており蜂兵とは違う丸い小さな姿の蜂がせっせと蜜を運んでいた。

ここの蜜は他の蜜と明らかに異なり食べてみたいという衝動に駆られる

私は衝動を抑えて蜜をアイテムボックスに収納して調べてみる。

…、美味!。上品、濃厚、すっきり、まろやか、いろいろな味が口の中に広がる。こんな蜂蜜は食べたことがない!

と、いうのがアイテムボックス内の私のコピー君の評価だ。

情報を与えただけでこんなにはしゃげるのはすごいな。その内自我に目覚めそうだ。…てか食べてないかこれ。

とりあえず食用ということはわかったので手当たり次第に収納していく。

蜜を運んでいた蜂が大事な蜜が消えていくのを見て訳も分からず焦っている。

…なんか可哀そうになってくるな。でも冒険者が巣を破壊したら蜜も台無しになるしな。うーむ。

迷った末半分は返すことにした。自己満足だが誰も見ていないしいいだろ。

蜂は蜜が元に戻ったことに安堵してまた運搬作業に戻っていった。

半分でも大量の蜂蜜を手に入れた。なんだかパンケーキ食べたくなってきたぞ。

この蜂蜜部屋には私の半分くらいの生き物が通れる穴はあるが私が進めそうな道はなさそうだ。早々に来た道を戻る。

分かれ道の部屋に戻って来たので次の通路を進む。

次の部屋に出るとそこの壁には幼虫が所狭しと並んでおり運ばれてくる餌をせっせと口に入れていた。

うーん、グロい。

横に通路があったのでそそくさと退散する。長い時間直視はできないな。

通路を進むと部屋に出たがそこは分かれ道の部屋だった。

繋がっているのなら好都合、分かれ道を一つ潰せたと考えよう。

蜂達を見てわかったが基本は部屋や通路で見かけた小さな穴を移動に使っているようだ。となると私の通っている道は何用なんだ?

疑問に思いながらも次の通路を進んでいく。今度は下り道だ。

しばらく下っていくと開けた空間に辿り着く。

今までの部屋とは異なり巣の中ということを忘れるくらい広い空間だ。

その空間には蜂兵が多くおり、中には姿の違う個体も見えた。そして一番奥には高くなった場所がありそこに大きな体の蜂が鎮座していた。

あれが女王か?、あの配置的にボスだと思うが。

まぁ考えても仕方ない、とりあえず討伐する。

ここで透過魔法を解除するなんてことはしない。見せ場なんてものはない。

ただやるべきことをやるだけである。

私は女王らしき蜂に近づき首をはねる。

その大きな体に不釣り合いな小さな頭は静かに床に落ちる。

少し間があって異常に気付いた近くの蜂兵が口から音を出す。その音は警告だったのか周りの蜂兵達が一斉に動き出す。

しかし警戒すべき相手が見つからずこの広い空間の中を行ったり来たりしている。

蜂兵達はしばらく捜索した後部屋から出ていった。

残ったのは先ほど出ていった蜂兵とは姿の異なる個体数匹。

あれも倒しておくかと考えていると見たことのない蜂が一匹部屋に入ってくる。

私を様子を見るために壁の方に移動する。

見たことのない蜂は女王の亡骸に近づくと静かに立っている。

長年のゲームで培った知識が頭を過る。姿の違う数匹は強化個体、見たことのない蜂は特殊個体だと。まぁ知らんけど。

なんにせよ倒しとくか、特殊個体の方は女王を見て悲しんでいるのかもしれないが、すまんな、これが戦争ってやつよ。

首を落とすためにいつものように近づく。

が、私の魔法有効範囲に触れた瞬間特殊個体は後ろに飛ぶ。そして強化個体が特殊個体の周りを囲む。

おぉー、気づくのか。透過魔法は万能かと思っていたがそうでもないんだな。

特殊個体と強化個体は警戒したまま動かない。

話が脱線するが特殊個体と強化個体って言いづらいな。キングと強化兵と名付けよう。キングは女王を見ていたからだ。プリンスだったらごめんね。

話を戻す。キングには気づかれたが強化兵はどうだろう。側面から回り込んで強化兵の一匹に近づいて見る。

私の魔法有効範囲に触れると強化兵は反応を見せこちらに向かって4つの腕を振り下ろす。蜂の腕の先端には鋭い爪があり当たれば骨まで切り裂かれそうだ。

しかし私の存在に気づき攻撃したところで透過するので当たることはない。

…多分、…一応避けとくか。

強化兵の攻撃を避け、最後の攻撃を腕が加速する前に当たってみる。

…無事透過した。

よかったー。魔法無効化とかあったらどうしようかと思ったわ。

おそらくだが魔力感知が優れているとかだろう。

強化兵には肉薄できたので首を落とす。強化兵は残り7匹。

強化兵が一匹倒されたことでキングは更に警戒したのか口から音を出したかと思うと強化兵が呼応する。

どうやら指示を出したようだ。

先ほどと同じように側面から強化兵に近づいたがキングと一緒に距離を取られてしまった。そういう指示ね。

うーむ、面倒だが相手の攻撃を誘うしか思いつかない。

私は透過魔法を解除し姿を現す。

キングは私の姿を確認すると再び強化兵に指示を出す。すると強化兵はキングから離れ私とも距離を取った。

おそらくキングと私の一騎打ちだから離れていろって感じかな。

魔物もいろいろあるんだね。

キングと向き合い戦いが始まるその時、ふと思う、対話してみるか?

女王を殺しておいて今更だが相手も冒険者殺しているからな、お互い痛み分けってことで一旦落ち着かないかな。人類と魔物の争いじゃーとか息巻いたが基本スタンスを忘れてはいけないし。

相手を怒らせるかもしれないが試してみる。

「すみません、言葉はわかりますか?」

こちらに攻撃の意思がないことを感じ取ったのかキングも動きを止める。

私は続ける。

「もし言葉が通じるのなら争い以外の解決策を考えてみませんか。お互い失った命もあり収まりがつかないとは思いますがそこを抑えてどうか。」

私の言葉に顎を鳴らしながら首を回すキング。

「そもそもそちらの要求をお聞かせいただけますでしょうか。人類側は危険がなければ共存の考えを持つ者も多いので互いに納得のできる道を探すのはいかがでしょう。」

キングの様子を見る限り伝わっていない。ダメそうだな。

キングが口から音を出すと待機していた強化兵が一斉に私に襲い掛かる。

一騎打ちするほどの相手ではないと思われたみたいだ。

…しまった。ここで透過や魔法での瞬殺を見せると攻略法がないと思われてキングが逃げてしまうのでは?、ほどほどに戦える相手であることを見せなければならない。一騎打ちしておけば…、無念。

気を取り直して今まさに向かってくる無数の腕を避ける。強化兵は2本の足で立ち、4本の腕?、足?、腕にしておこう。で攻撃してくる。腕は多いが人間のように柔軟な動きではなく振り下ろす単調な動きなので避けることはできている。が、さすがに4本の腕が7匹もいると鬱陶しい。広い空間を使って大きく避ける。早急に数を減らす攻撃手段を考えなければ。

考えながら避け続ける。キングはその様子を観察するかのように見ている。

うーん、思いつかないな。こういう時バトル漫画なら瞬時に閃くんだろうが所詮は私。異世界で目覚めただけの一般人ですからね。

そして私は面倒なことが嫌いである。相手の事を考えて行動するとか前世だけで十分だ。

私は強化兵7匹全ての魔石の位置をスキャンで把握する。そして今までの大きな動きの回避から最小限の回避に切り替えてすれ違い様に胸に手刀を刺し入れて魔石を抜く。

強化兵全ての魔石をアイテムボックスに収納し距離を取る。

どうだ?

強化兵の動きに変化はなく再び飛び掛かってくる。

魔物は魔石が弱点だと勝手に思っていたがそうでもないのか?

次の手を考えるかと攻撃を避けようとすると強化兵の変化に気づく。

明らかに私の手前で腕を振り下ろしそのまま見境なく腕を振り回している。

他の強化兵も同様で味方に当たるのもお構いなしだ。

やっぱり魔石は弱点だったか?

その後強化兵達はただ体が動いているだけかのようにその場で暴れ続けたが程なくして床に崩れてピクピクとしか動かなくなった。

あれかな?、虫の死んでも体が動き続けるの魔物バージョンかな?

とりあえず強化兵は倒せたのでいよいよキングだ。私の戦いを見ていたがどうなることやら。

キングを見るとあちらも私を見ている。

相手のことは分からないのでじっと待つ。こちらから動くと警戒されそうだからだ。近づけさえすれば私の勝ちなんだがな。

そのまま互いを見る時間が続くかと思ったがキングの触角が微かに動く。

するとその直後轟音と共に巣全体が揺れる。

何事かと思ったが戦っている場合ではないことは明白だ。

その証拠にキングはどこかに飛んで行った。あの野郎。

私は女王と強化兵の死体をアイテムボックスに収納して急いで来た道を戻る。

巣の出口に向かって走っていると再び轟音がする。

うるさっ、何の音なんだ?

マッピングのお陰で迷うことはなかったがそれなりの時間がかかり出口に辿り着く。

外に出ると辺り一面は炎で包まれており私の出てきた巣は半分以上が崩れていた。最終戦争かな?

頭上では蜂兵達が飛んでいるがどこからか魔法が飛んできて次々に撃ち落され

ている。

再び轟音が鳴り後ろの巣から特大の火柱が上がる。

轟音の正体はあれね、これはさっさと離れよう。

とりあえず防衛線の場所に向かう。

防衛線の開けた場所に着くとそこにはローブを来た数名が横に並び魔法を飛ばしていた。

その人達以外だと中央付近に天幕が見えたのでそちらに足を運ぶ。

私の運んだ人達が無事だったかとセデクがいれば現状を聞きたかったからだ。

天幕には何人ものケガ人が横になっており、その中に寝ている妹の横に座っているセデクを見つけた。

透過魔法を周りに見られないように解除してから話しかける。

「いきなりで申し訳ないんだけど現状を教えてもらってもいい?」

「…あぁ、お前か。俺も詳しくは知らないが魔法使いのパーティーが来たみたいで最初の包囲、破壊作戦が失敗したから魔法での殲滅作戦に変わったんだと。」

そうなのか、ってかいつもの威勢がないな自分。

「そうなんだ、あと助けた人達は大丈夫だったか知ってる?」

「あぁ、重傷の奴は街に運ばれたが妹も含めて命は助かったそうだ。」

それはよかった。

「よかった。じゃあ言うこと聞いてもらうって話だけど。」

助けたときに約束したやつね。

「妹を助けてもらったからな、出来ることならなんでもする。」

「オッケー、では今後は二人とも私に関りを持たないでくれ。別に積極的に避けなくてもいいけど今回みたいにギルドから組めと言われても断ってほしいし話しかけたりしないでくれ。私もそちらの存在を忘れるので妹さんにも言っといてね。それじゃこれが今回助けた報酬ということでよろしく。」

セデクは何か言おうとしたが一度口をつぐみ、その後落ち着いて口を開く。

「わかった、妹にも言っておく。だが助けてもらった礼は言わせてくれ。…助けてくれて感謝する。」

「どういたしまして。それじゃ。」

極力私の心を乱す相手は遠ざけておかないとな。せっかくの報酬だが優先すべきは自分自身。死ぬなら私の知らないところで頼む。

私は天幕を後にする。

そういえば奴も最後は素直だったな。セデク、デレる。週七木の実ナナ。セーイ。…全然韻を踏めてないな。

天幕を離れると声をかけられる。

「お前っ、無事だったか!」

見ると声をかけてきたのは救助部隊のリーダーの人。

「そちらもご無事で何よりです。私は嵌まった罠が運よくただの落とし穴で無事でした。」

さらっと嘘を吐く。

「無事ならそれでいい、よかった。やられた奴もいるが俺を含め大体の奴は蜂兵の追撃から逃れることができてな、その後はギルドに報告を飛ばしたら殲滅作戦の指示が来て、あとはこの通り魔法使いによる長距離攻撃という状況だ。」

ふーん、そうなんだ。

「これも運良くアパシオナーダの人達が街の近くにいてくれたおかげでな。」

誰だよ。

「無知ですみません、有名な方々なんですか?」

「え、知らない?。魔法使いだけのパーティーで全員とんでもない炎魔法を使うとか聞いたことない?」

この世界の有名人なのだろう。

私の心当たりのない顔で察したのか救助部隊リーダーは話を切り上げる。

「ま、まぁとにかく、その有名な魔法使いパーティーが他の魔法使いも連れて殲滅作戦に当たってくれているから終わるのも時間の問題だよ。俺は仕事があるからもう行くよ。じゃ。」

救助部隊リーダーと別れる

やることなくなったな。勝手に帰ったらダメそうだし大人しく待つか。

魔法使いの人達を観察する。すると後ろから声をかけられる。

「おい、お前、暇なら防衛本部から物資を取ってこい。」

振り向くと厳ついおっさんがいた。

「わかりました。防衛本部の場所と取ってくる物資の詳細を教えてください。」

質問すると厳ついおっさんの顔が険しくなる。

「そんなことも知らねぇのかよ、防衛本部はこの防衛線の最初の方にある石の建物だよ。」

防衛線の最初の方ってなんだよ、わかりづれぇな。とりあえず石の建物ね。

「んで取ってくる物資は医療物資とマナポーションだ。取ってきたら俺に渡せよ。いいな!、俺にだぞ!」

えらい強調するな。

そういわれると疑うタイプなので絶対にこの人には渡さないと心に誓う。

まぁただ待っているよりかは仕事をした方が楽なのでおっさんに従うことにする。

「わかりました、行ってきます。」

私は走り出し人目が付かなくなったところで透過魔法をかけて全力疾走に切り替える。

走っていると途中でローブの集団が巣の方に魔法を放っているのが目に入る。

あれが魔法使いの人達か。

後ろを走り抜けようとするとその中の一人、眼鏡をかけた人がこちらを見た気がした。

気のせいか?、いや、キングや強化兵に察知されたからな。わかる人もいるのかもしれない。

こちらを見たと思った人はすでに巣の方に視線を戻していたのであまり気にしないで防衛本部に向かう。

更に走っていると再びローブの集団が目に入る。

…いや、ローブの集団の中に頭一つ飛び出た派手な服装の奴がおり、嫌でも目に入ってくる。

あれも魔法使いなのか?

気になって横目で見ているとその人もこちらを見てきた。

マジか、透過魔法掛けてるよな?

不安になったが周りの他の人は私に気づいているような動きはない。

うーむ、気になるがとりあえず今は仕事に集中する。暇な時にでも考えよう。

更に走り続けると灰色の建物らしきものが見えてきた。

あれが防衛本部か。

近づいてみると石で出来ており簡単な作りながら丈夫であることが見て取れた。

ここで物資を受け取るのか?、防衛本部と聞くと作戦を決めたり偉い人がいるイメージだが物資が置いてあるのか?

迷っていると声が聞こえる。

「面白いわね、魔力の反応はあるのに何も見当たらない。もしかして誰かいるのかしら。」

声の方を向くと尖った耳の奇麗な女性が立っており明らかにこちらを見ている。

これで3度目だ、やはり分かる人には分かるのだろう。透過魔法も考えものか。しらばっくれてもいいが…隠さなくてもいいか。物資の場所も聞きたいし

透過魔法を解除して聞いてみる。

「どうして分かったんですか?」

「あら、本当にいた。んー、どうして分かったかは感覚的なものなのよね。魔法をいっぱい使っているとなんとなーく分かるというか。」

おっとりとしたしゃべり方の人だ。この人の言うことが本当なら魔法使いは感覚で察知できると。うーむ、魔法使い…、魔力…、そういえば透過魔法を最初に発動したとき光や音、物理的な接触など前世の世界で思いつくものを設定したが魔力は思いついていなかった。早速設定に取り入れよう。外部の魔力はそのまま透過して内部、すなわち自分の魔力は外に出ないように設定。これでどうだ。

透過魔法を発動する。

「あらー、今度はわからないわ。」

成功か。この人は嘘を言っているようには見えないので信じていいだろう。まぁ嘘だったら信じた自分が悪いということで。

透過魔法を解除して姿を現す。

「ありがとうございます、自分では気づけないことでした。」

「どういたしまして。それよりも気になったんだけどあなたって詠唱しないの?」

やっべ。

「しないっすね、ぶっちゃけ。」

もうどうにでもなれの精神でいく。

「そうなの、あなたってやっぱり面白いわね。」

どうやらウケたみたいだ。

そうしているとどこからか人を探す声が聞こえる。

「アローザ様ー、どちらですかー?」

「あら、呼ばれてるみたい。」

この人はアローザさんと言うのか。

「またお話がしたいのだけれど名前を聞いてもいいかしら?」

「カルラと申します。」

「カルラちゃんね、また逢いましょう。」

アローザさんは微笑むと呼ばれた方に歩いて行った。

あかーん、また心が傷つく爆弾を抱えてしまったー。せっかくトカゲ兄妹とお別れしたのに新しい人と面識を持ってしまうとはー。私はなんと浅はかな…。

あと物資の場所を聞きそびれた。

まぁやっちまったもんはしょうがねぇ、切り替えてこ。

周りに暇そうな人が見当たらなかったので防衛本部の中に入る。

中の人に聞いた方が早いだろ。

防衛本部の中には中央に大きなテーブルがありそこで2人の男女が書類を処理していた。

「すみません、物資を取りに来たんですが。」

気づいた男性の方が対応してくれる。

「はい、ギルドカードを確認いたします。」

素直に渡すと男性はテーブルに置いてある板のようなものでギルドカードを読み取る。

「確認いたしました、カルラさんですね。必要な物資はなんでしょうか。」

「必要なのは医療物資とマナポーションです。」

「少々お待ちください。」

男性は部屋の奥に向かうと地面にある階段を下りて行った。

地下があったのか。

少しすると箱を4つ持って男性が戻って来た。

「こちらが医療物資とマナポーションで2箱ずつとなっております。これらは必ず部隊のリーダーへお渡しください。それではお気をつけて。」

お礼を言って箱を受け取る。

よし戻るか。

防衛本部の陰で透過魔法をかけて物資をアイテムボックスに収納する。

後は来た道を全力で走る。

なんだかんだで今日はいっぱい働いている気がする。これはご褒美があってもいいんじゃないか。しかしこの世界でご褒美と言ったらなんだろう。…うーん、キンキンに冷えたビールとかないかな…、ないな。また熊猫亭で美味しいものでも食べようかな。

そんなことを考えていると元の防衛線の場所に辿り着く。

あっという間だったな。

人目に付かないところで物資を取り出して透過魔法を解除する。

手頃な人がいないか探すと丁度救助部隊のリーダーがいたので聞いてみる。

「すみません、今この部隊のリーダーはどなたになるんですか?」

「あぁ、そういえば言ってなかったな。殲滅作戦も引き続き俺が指揮しているから俺がリーダーだな。その箱はどうしたんだ?」

知ってる人とはラッキーだ。

「物資を取ってくるよう厳つい顔のおっさんに言われたんですが物資は部隊のリーダーに渡すよう防衛本部の人に言われたのでリーダーを探してました。」

救助部隊リーダー改め殲滅部隊リーダーは声を荒げる。

「はぁ?、お前は救助部隊だったから雑用から外したのにあの野郎。」

いいぞリーダー、あのおっさんに罰を与えてやってくれ。

「すまなかったな、そいつの事はギルドに報告しとく。後は俺から全体の指示があるまで待機しておいてくれ。」

「この箱を運ぶところまでやりますよ?」

乗り掛かった船ってやつだ。

「そうか?、助かる。マナポーションは魔法使いの人達に配って医療物資はケガ人のいる天幕に運んでくれ。余ったマナポーションは医療物資の隣に置いておいてくれ。」

「承知しました。」

返事をして天幕向かう。

ケガ人を優先した方がいいだろ。

医療物資を運び治療をしている人に伝える。どうやら物資が少なくなっていたらしく喜んでもらえた。

いやぁ、いいことするって素晴らしいね。

次にマナポーション。

ローブの集団に配っていく。

「お疲れ様です、マナポーションが必要な方はいますか?」

こちらも必要なものだったらしく皆受け取っては一気に飲み干している。

が、味は悪いらしく渋い顔だ。それでも最後には感謝の言葉をくれた。

久しく忘れていた感謝される気持ちを思い出す。やっぱいいもんですねぇ。

マナポーションが必要な人には配り終わったが何本か余った。

言われた通り天幕に運ぶ途中で声をかけられる。

「おい、てめぇ、物資は俺に渡せって言ったよな!。なに配ってんだよ。」

はぁ、喜びの気持ちが台無しだよ。

「リーダーの指示に従いました。文句があるならリーダーにどうぞ。」

アホの相手はするだけ無駄だ。前世でも言葉の通じない見た目だけ人間の化け物がいたからな。

私は無視して行こうとするとおっさんは掴みかかろうとしてきた。

はぁ、なんで死んでほしくない人は簡単に死んでどうでもいいクズが生き残るんだろ。理不尽だよな。

殺して収納するかと考えたところでおっさんが宙づりになる。

「あらん、ケンカはダメよぉ。敵は魔物なんだから人間同士仲良くねぇん。」

おっさんを片手で持ち上げているのは確か防衛本部に向かう途中で透過魔法中の私に気づいた背の高いマッチョ。改めて近くで見るといろいろとすごい。

艶やかな金髪、ばっちり化粧を決めて煌びやかなドレスを来たゴリゴリのマッチョ。

私が観察しているとおっさんが騒ぎ出す。

「なんだてめぇは、気持ちわりぃな!。放しやがれブス野郎!」

おっさんの言葉を聞いてマッチョさんは鬼の形相となる。

「テメェもういっぺん言ってみろやゴラァァッ!!!」

マッチョさんが叫ぶと同時にドレスが弾け飛び体から炎が噴き出す。

「ひぃぃぃぃっ」

おっさんは涙と小便を漏らすがその水分は一瞬で蒸発する。

すごいな。何がすごいってドレスの下にめっちゃ際どいビキニを着けてることがだ。ビキニは上下で必要最小限の部分だけしか隠していない。燃えたり破れたりしてないけど特注かな?

「人を見た目で判断するんじゃねぇぇぇ!、…あら?、気絶しちゃったの?」

おっさんはぐったりしておりマッチョさんの体の炎はいつの間にか消えていた。

残ったのは際どいビキニのマッチョ。

「すみません、予備の服はお持ちですか?」

さすがに目のやり場に困る。

「心配してくれるのぉん、でも大丈夫よ。あたしお色直しをよくするからドレスはいくつもあるわぁ。」

お色直しなんて結婚式でしか聞かないが異世界では日常的なのか?

「そうですか、人も集まってきましたし作戦に支障が出ても問題です。どうぞ着替えてください。」

「あなた冷静ねぇ、名前を教えてもらってもいいかしらぁん。」

「いいえ、どうぞ、お引き取り下さい。」

「冷たいのねぇ、でもあたし温めるのは得意なのよぉん。」

炎ギャグか?、私はボーボボの”マグロだけに真っ黒になってくー”くらいじゃないと笑わないぞ。切り身ギャグ持って出直してこい。

マッチョさんは他の冒険者達に連れられていく。

二度と檻から出すな。

そういえばマッチョさんは元々他の防衛線の場所にいたはずだ。なんでいるんだ?

疑問に思ったが頭の中にマッチョを置いておきたくないので忘れる。

マナポーションを運ぶ途中だった。これが終わったら目立たないように待機しとこ。

マナポーションを置いた後は透過魔法をかけて隅っこの方でただ待つ。

轟音は聞こえなくなったが魔法が放たれる音は定期的に聞こえる。

照明魔法弾の効果が切れて周りが暗くなるたびに再び打ち上げられてまた明るくなる。それが何度か繰り返されると魔法の放たれる音も止む。

殲滅部隊のリーダーが周りに聞こえるように話し始める。

「皆、聞いてくれ。魔法による殲滅作戦で要塞蜜蜂の姿がなくなった。巣があった場所を調査部隊が確認したところ殲滅が確認された。よって、これにて作戦の完了を告げる。皆!、お疲れ様!!」

一斉に歓声が上がる。あるものは肩を組み、あるものは涙を流す。

これが冒険者の仕事かと思うと胸に来るものがある。

リーダーが続ける。

「皆、喜ぶのはいいが撤収作業が残っているぞ。自然物は森に返るがその他は全て街に持って帰る。荷物を運ぶ奴とケガ人を運ぶ奴、後はそいつらの護衛。帰りに魔物にやられたら意味ないからな。」

リーダーの言葉に冒険者達は動き始める。

地面に刺さった丸太を引き抜いて森に捨てる人。

武器や盾を箱に詰める人。

ケガ人を荷車に乗せて運ぶ人。

さて私は何をしようか。まぁ無難に荷物を運びましょうかね。

荷物はまとめて積まれているのでそこから2箱ほど取り移動の人達と一緒に進む。周りの人達は晴れやかな顔をしており笑顔がそこらじゅうで咲いている。

…、

…、

…、

…、この中にリサさんはいないんだよな。




街に着く頃には空は明るくなり始めており徹夜明けの目に朝日が沁みる。

街の入り口ではギルド職員が冒険者達に告げている。

「お疲れ様です、今回の要塞蜜蜂討伐に参加いただいた方々の報酬のお渡しは記録されているのでいつでも大丈夫です。体を休めてからでも今からギルドにお越しいただいてもお渡しの用意がございます。どうぞお好きな時にご来訪ください。繰り返します。」

いつでもいいのか。お店でご飯食べようかと思ったけどこんな朝早くじゃ開いてないしな、今日は寝よう。

街に入り人目に付かない裏路地でマイルームに入るとすぐにベッドに横になる。

疲れたー。さすがに丸一日動くと疲れるな。

ベッドで頭を空っぽにすると脳内麻薬が切れたのか一気にブルーになる。

知り合いが死んだんだよな…。

少し話した程度だが気にかけてくれていた人だ。

思い出すと胸が痛む。

忘れればいいのか?、慣れればいいのか?

考えても答えには辿り着かない。

答えのない問いについて考えているといつの間にか眠りについていた。


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