10.依頼が終わって
街を出て街道を歩きながら今からどうするか考える。草原や森で魔物を探すぐらいしか思いつかないが前とは違うこともしたい。まぁのんびり考えよう、何かに追われている訳でもないし。
そういえば以前森の中で見つけた果実がアイテムボックスに入っている、赤黒く硬い外皮のやつだ。資料に情報がないか知らべてみよう。
調べて出てきた情報にはコムの実とあり、素手で剥くのは困難なほど硬い外皮だが中には白くて甘い果肉が詰まっているとあった。
丁度いいので昼ごはんとして食べてみる。皮が硬かろうが魔法を使えば一発だ。皮をむくと白い果肉が出てくる。見た目はミカンの一切れ?、一房?を大きくして一つずつがくっついていない感じ。前世の世界に似たものがあったかもしれないが如何せん果物に詳しい人生ではなかったので仕方ない。
そんなことはさておき果肉の一切れを口に運ぶ。歯を入れると果汁が口の中に広がり人工ではない自然の甘みを感じる。果物なんて久しぶりに食べたがいいものだな。味を楽しみつつ実家で出される果物のありがたみを思い出す。親は偉大だね。
思いのほか美味しかったので栽培空間で育てることにする。果物は健康にいいと思うので定期的に食べていこう。
ついでなのでアイテムボックスに入れて忘れているものはないかと確認したが特にはなかった。数種類の魔物の肉と薬草とくらいだ。その内アイテムボックス内の物を見て思い出に耽るのもいいな。ゲームでもアイテムは売らずに持っておきたい派な私だ。
歩きながらやることもなくなったのでどうするか、そういえば街から出るのに同じ道しか使っていないことに気づく。今後のために周辺を探索しよう。今は街が遠くに見えるくらいの距離なので街を中心に周れば丁度いいだろう。そう思い街道を外れて草原を進む。草原は街を囲むように広がっているが結構丘や窪地が見られる。草がもっと短ければピクニックに来たいくらいだと考えながら草をかき分けてどんどん進む。
しばらくすると街道に出る。私が出てきた門は確か東門だったのでそれから時計回りに街を回って来たとなるとこの街道は南門からの道かな?如何せん目印もなければ方向感覚もいい方ではないので何となくで覚えておこう。こちらの南の街道は東の街道と変わらず草原に囲まれていて奥には森が見える。
特に目ぼしいものはないので周辺探索の続きに戻る。
また草原を進むと奥の草むらが騒がしい。まだ距離があるので目を凝らしてみるとどうやらアシドリが2匹争っているようだ。今まで襲われることはあったが魔物同士で争っているのは初めて見た。魔物にも縄張り争いとかあるのか?生態はわからないが生き物なんだから喧嘩ぐらいするか。
そんなことを考えながら観察していると決着がついた。片方のアシドリがもう片方を頭上から踏みつけてそのまま動かなくなるまで踏み続けた。その後は啄み始めたので同じ魔物でも喰うか喰われるかの世界なのだろう。この世界の食物連鎖を垣間見れた気がした。
アシドリは一通り食べ終わると草の奥に消えていった。私の進みたい方向でもないし襲われないのであれば倒さなくてもいいだろう。
引き続き草原を進みしばらくすると感知魔法に横からの反応がある。
反応からして角ウサギとわかったので体をずらして避けると後ろからも反応を感知した。こちらも角ウサギの反応だ。どうやら2匹による連携攻撃のようだが問題なく避ける。奇襲を避けられて次にどうするか考えているのか2匹は一定の距離で唸っている。襲われたが以前のシカのように絶え間なく攻撃を浴びせられているわけではないので一応いつも通り声をかけてみる。が結果は変わらず様子を伺っていた2匹は結局攻撃を続けてきたので討伐した。
その後進んでいくとまた街道に出る。今度は西側かな?。
街道の先、北西には大きな岩山が見えたが草原は続いているので大分遠くにある山のようだ。いつかは行ってみようかな。
また草原探索を再開すると角ウサギ、アシドリに数回襲われたので討伐した。今日はなんだか魔物が多い気がする。冒険者活動をして数日なので実際に多いかはわからないが個人的にそう感じた。
その後北側の街道も過ぎ草原を進んでしばらくすると草むらに獣が横になっているのを発見する。体が草むらに覆われていたので5メートルほどの距離まで近づいてやっと気づいた。獣は猫っぽい見た目で体色は緑に黒の斑模様、体長は1メートルをほどだ。動きがないのでよく観察してみると体はボロボロで傷ついており虚ろな目でこちらを見ている。
どうしようか少し考えてアイテムボックスからポルカノさんに貰ったポーションを取り出す。近づくのはお互いに危険と考えて土魔法で作った棒に蓋を開けたポーションを取り付けて距離を保ったまま振りかける。魔物にポーションが効くかはわからないがそれも経験ということで。
ポーションを振りかけると傷は塞がっていく。どうやら効果はあるようだ。
しかし魔物に動きはない、傷が塞がったからといってすぐに動けるものでもないのだろう。そう思いこの魔物の情報が資料にあるか調べようと視線を外した瞬間感知魔法に反応が出る。
速い、角ウサギとは比べ物にならない速度だ。しかも反応に違和感がある。うまく言い表せないが反応が二重というかブレているというか。
そんな考えは頭から追い出し大きく後ろに飛ぶ。すると私のいたところに鋭い爪が振り降ろされ草がバラバラに散る。危なっ。
相手は低い姿勢で静かに睨みつけておりこちらを狩るつもりだということが感じ取れた。
はぁー、前世で見た海外の動画では動物を助けたら懐いてくれていたんだけどな…。まぁあれも助けた相手に傷つけられたら動画にならんか。動物でも魔物でも何があっても自己責任ってね。
そんなことを考えていると再び魔物が襲ってくる。一瞬で距離を詰め両前足を振り下ろしてくる。感知魔法の違和感と初遭遇の魔物ということもあり安全を取って大きめに避けそのまま距離を取る。先ほどは気づかなかったが振り下ろされた前足よりも前方の草が切り裂かれたことに気づく。うーむ、違和感の正体はあれか?見えている足とは別の攻撃?魔法?。
疑問が湧いてくるがそれは後で調べよう。今は目の前の問題に対処する。
この猫型の魔物は2度も攻撃を避けられたことで警戒したのか様子を見ている。…と思ったのも束の間、草むらに入り一瞬で姿を消した。
逃げたか?。…いや、私を見る目は獲物を見るそれだった。死角からの攻撃と考えた方がいいだろう。
ふと気になったが魔物の体色は緑に黒の模様、確かトラの黄色はジャングルで目立つようで獲物の草食動物には見えない保護色となっていると聞いたことがある。となるとあの緑は誰に対しての迷彩効果かと考える、人を狩るための生物だとかそのために進化したと考えるとちょっと怖い。…まぁこの世界の動物は前世の動物と違うから多分この考えも違うだろうけど。
また考えが脱線してしまったが完全に意識を外したのに攻撃はない。私の逃げてないという考えは外れだったのか?。だとしたら恥ずかしいな。
まぁそれならそれでいい。ポーションは勉強代だ。
気持ちを切り替えて移動を再開する。…が背後から攻撃の反応がある。
こちらも警戒していたので今度は迎え撃つ。相手は音もなく移動し奇襲するスピードタイプ。動き回られるのは面倒だしさっさと片をつける。
私は一瞬で振り向き相手の両前足が振り下ろされる前に土の槍をアイテムボックスから出現させる。シカとの戦いから土の槍を常にいくつかはストックするようにしていたのが役に立った。
相手の両前足を貫き空中に固定するとすぐさま首を落とす。吹き出す血は透過魔法で対処する。
終わってみるとあっけないが接近してくるタイプで助かったな。
戦いが終わり少しすると冷静になれたので資料の情報を探す。
えーと、なになに…、魔物の名称はコウガル。森の中で音もなく忍び寄り獲物を狩る。風魔法らしきものを用いた攻撃は非常に危険で回避したと思ったら当たっており鋼鉄の防具が切り裂かれたなどの報告がある。
資料の情報には森の中の魔物とある。出会ったのが草原で助かったのかもしれない。それに傷を治したとはいえ手負いだった。勝てたことに感謝だな。
コウガルの死体をアイテムボックスに収納して移動することにする。毛皮はダメそうだが爪や牙、それに魔石は売れるだろう。肉は…ちょっと食べる気にはなれないな。私は猫が好きなので…。
殺しておいて何言うてんねんと思われるかもしれないがそれはそう。言語化は難しいがいやなものはいや、私がそう思ったのでそういうことだ。なんでも言語化して説明できるものではないしな。
自問自答しながら移動し街道に出る。ここは東の街道だろうから一周してきたことになる。時間を考えながら探索したので空は丁度夕暮れだ。帰ろ。
街に戻りギルドに向かう。コウガルのランクは知らないが持ち込んで疑われても正直にいこうと決めたので臆せずいく。
まずはギルド裏の作業場の搬入口にて以前に対応してもらった猫耳の女性がいたのでそちらに並ぶと程なくして私の番となる。
「こんにちは、買い取りをお願いします。」
背負ったコウガルを降ろす。両手が塞がっているのでので他の素材は出さないでおく。
「あんた…、この魔物はどこにいたんだい。」
確かシェーンさんだったか、は真面目な顔で訊ねてくる。
「北東の草原です。」
「…そうかい、この魔物は本来森の奥にいるはずなんだよ。今日はおかしな持ち込みが多いから受付の方でも報告しておくれ。それと買い取り価格は大銅貨2枚だよ。」
お金を受け取る。持ち込みを怪しまれるかと思ったがどうやら今日は似たようなことがあったようだ。少し構えていたが追及がなくて安心した。
今度は表の受付に向かう。依頼の完了報告もあるのでその時に魔物についても報告するかな。
受付の方に移動し順番の列に並ぶ。昨日と比べると列の流れが遅い気がするがまぁそんな日もあると思うので気長に待つ。
しばらくして私の番となったのでギルドカードを出す。
「依頼の完了と北東の草原にコウガルという魔物がいたので報告に来ました。」
「承知しました。コウガルについてですがどのような状態でしたか?」
「瀕死の状態でこちらが近づいても反応はありませんでした。」
「それで倒したということですね、わかりました。」
厳密には違うがあえて言わなくてもいいだろう。
職員の人が納得してくれたので肯定して話を進める。
「ご報告ありがとうございます。本日は北東方面の草原や森にて普段では見られない魔物の報告が相次いでおります。掲示板の方にて周知も致しますが状況がはっきりするまでそちらの方には近づかれないことをおすすめします。」
「わかりました、気をつけます。」
忠告は聞いておいた方がいいだろう。そもそも私に英雄願望はないので危険なところには近づかないぜ。
ギルドでの用事は終わったので建物を出る。
空は暗くなり始めている、お金もあるし今日はパーッとしますかな。
以前に連れて行ってもらったお店に向かう。
確か店の名前は熊猫亭だったか、ただ焼いた肉でも十分に美味いが今日は料理が食べたい気分。その内調理器具や調味料が揃えて自分でも作りたいので調査も兼ねてということで。
店に着くと以前と同じでお客さんの入りは少ないようだ。個人的には他のお客さんがいないのは心休まるがお店的にはどうなんだろう?
とりあえず店に入る。お客さんは少ないが元気な声で迎えられる。
「いらっしゃいませー!あっ、カルラさんだ、こんばんは!」
小熊の女の子に声をかけられる。来店は2度目だがもう名前を覚えられたようだ。対して私は人の名前を覚えるのが苦手なのでアイテムボックスに情報をメモとして保存しておいたものを確認する。…この店の主の娘でマオさんね、思い出した思い出した。
「どうもこんばんは、食事はできますか?」
「はい!、こちらの席へどうぞ。」
ニコニコと元気な娘さんだ。
厨房の見えるカウンター席に案内されると調理している店主のイケメン熊に声をかけられる。
「おう、よく来たな。今日は何にする。」
変わらずかっこいいな。
挨拶して料理について考える。前回来たときは肉の定食だったが今日は他のものが食べたい。なんならこの世界で野菜を食べていないことに気が付くと無性に野菜が食べたくなった。
「すみません、野菜を使った料理はありますか?」
「アシドリと野菜のスープになら多く入っているな。パンがついて銅貨8枚だがそれでいいか?」
「はい、お願いします。」
スープか、汁物もいいね。
料理が来るまで暇なので調理工程を眺める。厨房の見える席ならではだがスープは事前に作られた物のようで皿によそうだけだった。
そりゃそうか、煮込む料理を今から作るわけないな。
「お待たせしましたー。」
料理が目の前に運ばれる。
そのスープは茶色で刺激的な香りを漂わせており、大きな鳥の足と具だくさんの野菜が入ったいわゆるスープカレーのようだった。
この世界にもカレーはあるのかと思いを巡らせつつ料理を観察する。
鳥の足は見るからに軟らかく煮込まれており口に入れることを想像して涎が溢れる。そして野菜はジャガイモ、ニンジン、ピーマン、パプリカのようで色鮮やかにスープに浸っている。
「いただきます。」
まずはスープを一口。しっかりカレー味だが辛いタイプではなくまろやかでバターやタマネギの甘さを感じる。次に鳥の足、スプーンを入れるとほろりと崩れ口に運ぶと鳥の旨味が広がる。
美味い。カレーと合わさることでもっと食べたいと思わせる料理となっている。
最後は目当てであった野菜。ジャガイモは形がしっかりしていて食べ応えがありニンジンは柔らかくほんのり甘い、ピーマンは苦みがアクセントとなっていてパプリカはさっぱりとしておりどれもカレーに見事に調和している。
いやー、やはり料理っていいものですね。
その後はパンをスープに浸したり具材を挟んだりと食べ方を変えて楽しみ至福の一時を堪能した。
食事の余韻に浸っていると店主のダンさんが話しかけてくる。
「どうだ、美味かったか?」
「とても美味しかったです。肉も野菜もですがスープにいろいろ溶け込んでいる感じがして最高でした。」
語彙力はない。でも美味いもんは美味い。
「そりゃよかった。材料は特別なものは使ってないが調理法は結構考えたからな。肉の定食の方が注文されるがこっちも自信があるんだよ。」
ダンさんと話していると人が二人来店してくる。
「こんばんはー、おっ、カルラじゃねぇか。ダンさん肉定食とエールね!」
店に入って来たのはカイルさんとレイさん。二人はカウンターの私の横の席に座る。
「元気してたか、冒険者生活はどうよ?」
「おかげさまでこうして食事できるくらいには順調ですね。お二人も元気そうで何よりです。」
カイルさんは以前と変わらず溌溂としている。レイさんはクールだが目で挨拶してくれた。
「今日は調査も兼ねて森に行ってたんだが浅いところで魔物がわんさかいてな。それを討伐して納品してを繰り返して懐が温かいってわけだ。」
カイルさんは嬉しそうだ。
「森の様子が普段と違うし出会う魔物も見慣れないのが多かったがな。」
「わかってるよ。ちゃんとギルドには報告したんだから大丈夫だよ。」
二人のやり取りを聞いていると料理を運んできたダンさんが声をかける。
「それは北東の方か?、だったら他の客からも話が出てたが要塞蜜蜂の目撃情報もそっちだったろ。用心した方がいいな。」
「要塞蜜蜂?、さすがに森に影響を与えるほどの巣が出来ていたら報告が上がってると思うんだけどな。まぁとりあえず今日も無事に生きていることに乾杯だ。」
カイルさんとレイさんは食事を始める。
「魔物なんて未知の存在だ、俺らの知らない生態や行動もあるからな。まぁお前らは大丈夫か。カルラは自分で判断できない内はギルドや先輩の言うことは聞いておいたほうがいいぞ。」
ダンさんの忠告に素直に返事をして話に出た要塞蜜蜂の情報を調べてみる。
要塞蜜蜂は単体であればEランクの魔物であり大して脅威ではない。だが群れとなるとその中から女王が生まれて巣を作り始める。巣は大きくなる毎に堅牢な要塞となり、巣の規模によって蜂兵が生まれ脅威度が上がっていく。蜂兵は粘性の強い蜜を口から飛ばし動き封じてくるものから硬質化した蜜を上空から落としてくるなど多くの種類が報告されている。ギルドでは早期の討伐を徹底しているが食用の蜜を確保するために敢えて巣を大きくさせる冒険者も発見される。それらの冒険者は罰則の対象となるのでそちらも見つけ次第報告すること。
情報はこんなところか。どこの世界でも利益の為に周りを危険にする輩はいるもんだね。
「でも本当に要塞蜜蜂で巣もデカければダンさんも討伐に参加するでしょ。シオンさんもマオちゃんも蜂蜜好きですからねー。」
カイルさんが肉を頬張りながら言う。
「飲み込んでから話せ。…まぁ否定はしない。蜂蜜はいろいろと使えるからな。それに巣が大きければギルドから招集がかかるだろうな。」
レイさんが補足してくれる。
「ギルドからの招集ってのは対処に人手が必要な時にかかる。要塞蜜蜂は巣が大きくなるとそれだけ堅牢になり攻撃してくる蜂兵も増えるから攻略には人手がいる。長期戦にもなるから物資の補給などでカルラのランクでも呼び出されるだろう。」
「まっ、そこまでデカい巣ならとっくに見つかって何かしら騒がれてるから大丈夫だよ。そんなこと滅多にないし。」
「確かにそうだな。」
カイルさんとレイさんは以前と変わらない。
普段はどっしりと構えて事が起きたら対処する。これが冒険者の在り方なのかね。冒険者でなくとも見習うべき姿勢だな。
その後は他愛のない会話をしてお開きとなった。
二人とも別れて当てもなく街を歩く。これからどうするか考えてパーッとする延長で以前値段を聞いた宿に泊まることを思いつく。現在のマイルームにあるベッドにはマットレスや毛布がない。寝れないことはないがあるとないとでは睡眠の質が段違いだ。今後手に入れるためにも参考として宿のベッドを体験しよう。お金を貯めて出直すとも言ったしね。
そうと決まれば宿に向かう。のんびり空を見ながら歩くと星の輝きが広がっている。夜でも寒くなくきれいな夜空を楽しめる。幸せだなとしみじみ思う。異世界良いとこ一度はおいでときたもんだ。美味しいものを食べると気分もよくなるもので上機嫌で歩いていると宿に到着した。
中に入ると以前と同じようにおばちゃんが受付でウトウトしていた。
「こんばんは。」
驚かせないように声をかける。
「…ん、いらっしゃい。泊まりなら銅貨5枚だよ。…あら?あんたは前にも来てくれたねぇ、マントを着ちゃって少しは冒険者っぽくなったわね。あっ、悪い意味じゃないのよ、成長を感じれておばちゃんうれしくなったのよ。そうそう今日のね…」
相変わらずおしゃべりな人だ。話が途切れそうにないので口をはさむ。
「すみません、一泊したいのですがよろしいですか?」
「そうよね、宿泊だったわね。あんたなら銅貨3枚でいいよ。」
「いえ、ちゃんとお金を貯めてきましたので通常の値段をお支払いします。」
「あらそう?まぁ男の子だもんね、じゃあこれが部屋の鍵、部屋は階段上ってすぐ左ね。」
お金を払い鍵を受け取る。その後体を拭くためのお湯やタオルを勧められたが丁重にお断りして部屋に入る。如何せん悪い人ではなさそうなのだが苦手だ。
部屋の中を見回すと窓にベッド、小さなテーブルに椅子とシンプルなものだったが部屋は埃一つなくピカピカだ。家具や建物は年季が入っているが掃除は隅々まで行き届いておりおばちゃんへの好感度が少し上がった。
マントと鞄はアイテムボックスに収納し体と歯を魔法でキレイにしてからベッドに横になる。
程よい沈み込みのマットレスで枕も同じ感じだ。スキャンしてみると加工されたアシドリの羽が詰まっているみたいだ。素材は手に入るが加工は無理だ。カバーの素材もわからないし寝具は大人しくお店で揃えよう。
これまで魔法を使ってきたが私の魔法はなんでも作れるものではないみたいだ。条件は知識なのか核心なのかわからないがまぁ便利なので良しとしよう。
仰向けになり天井を見ながら明日のことを考える。
一番安全なのは街中での依頼だが今日の感じだと相手に気を遣って面倒くさい。あと単純に面白くない。次にカイルさんの話だと北東方面の森で普段見慣れない魔物を狩ってウッハウハみたいだが何度も往復したと言っていたのでもう話は広まっているだろう。うーん、いっそのこと森の奥にいってみるか?、森が騒がしい理由がわかるかもしれないし、…いや、ダメだな。私は低ランクだし、そもそもカイルさんが調査とも言っていたので素人が考えることは他の冒険者やギルドがとっくに考えているだろう。森に行っても邪魔になるだけだな、やめとこ。
まぁいいや、のんびりいこう。前世みたいに生きているだけでお金がかかる訳でもないし、面白くなくても1日1回は依頼をこなして冒険者ランク上げをして後は食べれる魔物を狩ってでいいかな。幸い私の戦闘スタイルでは装備の損傷とかないからな。毎日利益が出ていると考えればOKだ。
結論が出ると眠くなってきた。いつもの眼球運動をするとすぐに眠りにつく。




