閑話12 王女の戦い 後編
歓迎の宴の時も王女は若い彼、マサトと名乗った男に眼を奪われていた。
彼は物静かに料理を楽しみ、周りの者と歓談していた。
ヨウコは王女の視線がマサトに集まってるのに気づき苦笑気味にしながら教えてくれた。
彼の周りにいる女性、亜由美、美奈、美月は彼女であり、さらに式神のはつゆきたちとも
深い関係だと。
そこに割り込むのはかなり困難だとヨウコは教えたつもりであったが、
王女にはそのような障害は気にならなかった。
欲しければ自ら動き手に入れる、彼女はこれまでそうしてきたし、
これからもそうするつもりだからだ、ライバルが多かろうが関係は無いのである。
それを知ったヨウコはやれやれといった感じで首をすくめた、
自分も彼を狙っていて、ライバルがこれ以上増えないようにしたかったのだが、
仕方がないというところである。
ところが、その想いはあるアクシデントが奪う事になる。
勇者一行付きになったメイドの一人が獣人であることがバレ、スパイとして追われた。
彼女は偶然マサトの部屋に逃げ込み、マサトを巻き添えに転移してしまったのだ。
彼は遙か彼方の獣王国へ行ってしまった。
後日、彼から連絡があり、テレーゼがスパイでないことが判ったが、
マサトが帰るのは困難を極めていた。
王女はテレーゼに乱暴しようとして反撃され、その時に獣人である事を知りスパイ呼ばわりした
貴族を処罰する事にした。
所が、横槍が入る、またもブロサール公爵である。
その貴族が彼の甥にあたったからである。
だが今回ばかりは王女も引くわけに行かない、何とか登城停止と謹慎に持ち込んだ。
ヨウコたち勇者一行は訓練をかねて行った魔獣の駆逐作戦で多大な戦果を挙げた。
民衆たちは勇者をたたえ、彼らを召還した王女も讃えた。
この頃から勇者に懐疑的だった貴族たちも彼らを認める事になったが、
その目的は主に女性たちに対してだった、
亜由美たちはこちらの世界でも魅力的な女性なので、
貴族たちはこぞって自分の物にしようとしたのだ。
しかし、彼女たちは自分はマサトの婚約者であると宣言して断った。
木ノ花は若林の妻であると宣言した。
そのため、現在こちらにいないマサトは貴族たちの憎悪の的となった。
そのマサトであるが、その後の連絡で魔法で獣人に変身して何とか獣王国の王都までたどり着いていた。
そこで、獣王暗殺計画を未然に防いだ功で勇者とか英雄とか呼ばれるようになった。
マサトとしてではなく変身したグリーゼとしてである。
そのマサトから、暗殺計画は魔獣を操る魔族が仕掛けてきたものだと連絡があり、
そちらも注意するようにと付け加えられていた。
王女も王にその懸念を伝えては居たが貴族たちには通じなかったようだ。
ブロサール公爵たちも忠告を無視した。
マサトの活躍もあり獣王国も連合軍に参加する事になり、コリントで会議が開かれる事になったとき、
王女はやっとマサトに会えると喜んでいた。
「彼がこちらに来たらすぐに会ってお話したいですわ。」
「姫様、せめて会議が終ってからにしてください。」
ブリジットも呆れ顔である。
ところが、その前にコリントに魔獣の攻撃が始まった、総勢十万以上の魔獣が押し寄せたのだ。
彼女はヨウコたちと戦いに望んで死を覚悟した、マサトは獣王国で魔獣と戦っている、
こちらに間に合わないかもしれない、昼夜続く猛攻に心が折れそうになった。
ヨウコやブリジットが支えてくれなければ倒れていたかもしれない。
頑強に護っていた守備隊だったが、ついに力尽き城壁内に侵入を許してしまった。
戦い続けた勇者たちも魔獣に包囲され風前の灯火だ。
「もはや、これまでですか・・・」
そこに、突如光の豪雨が降り注ぎ魔獣を倒していった。
最初何が起こったかわからなかった彼女もヨウコから教えてもらって始めて知った。
マサトが帰ってきたと。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そこからの戦いは一方的な物になった、光の豪雨は寸分の狂いも無く魔獣を倒して行く、
そして天空に巨大な魔法陣が現れ中から飛び出してきた物にマサトが乗っているという。
召還された艦隊が魔獣を駆逐していきついには指揮していた魔将を降伏させたのだ。
臨時の陣地で彼女は久しぶりに彼を見た、戦闘用スーツを装着した彼はりりしく、
彼女は抱きつきたくなるのを自制するのに苦労した。
ここでの活躍はマサトではなく獣王国の勇者グリーゼがやった事になった、
それは、各国の思惑とパワーバランスにあった、これまで獣王国が連合に参加しなかったのは、
ルアン王国に人族以外を蔑み低く見る勢力があり、両国の関係がこじれていた事があった。
また、ルアン王国とその他の国家とも関係は良くない、同じ理由である。
そのため、戦後行われた予備会談はルアン側の人族至上主義者の発言で会議そのものが、
物別れに終わりそうになるなど、危険な状態になっていた。
王女は主義者を抑えたかったが、うまくいかず心労だけがたまっていった。
そして、凶報が届いた、王国の朝議で乱心した貴族が王妃を切り殺し、王に深手を負わせた。
周りの貴族たちも巻き添えになった。
そして、犯行を犯したのは、ブロサール公爵の息子であった。
王女は直ちに帰還した、母親の枕頭で泣き、何も手が打てなかったのを悔やんだ。
深手を負った王の下に行き、彼女は王に迫った。
「父上、私が政務を代行いたします、よろしいですね。」
王女の迫力に王は彼女を摂政に任ずるのに同意した。
ここで、彼女はやっと国政を掌握する事に成功した、多大な犠牲はあったが。
直ちに王妃の喪を発し、葬儀を執り行う、非常時なので服喪は大幅に省略された。
王女はそれらをものすごい勢いで処理していった。
まだまだせねばならぬことが山のようにあった、
魔族の仕掛けに乗せられた貴族たちの処罰である、
王国の改革には彼らは非常に邪魔な存在で千載一遇のチャンスと言えた。
そこに、コリントからヨウコたちが帰還してきた、戦後処理を一応して帰ってきたのだ。
それとロケットの打ち上げも急がれた、森林同盟への援軍を送るにもあれが有ると無いとでは
全然違うからだ。
帰還した当日王女はヨウコの訪問を受けていた。
「だいぶ憔悴してるみたいね。」
「やる事は山のように有りますからね。」
「でも、ここらで息抜きしないと壊れちゃうよ?」
「・・・・・・」
そこで、ヨウコが提案した息抜きとは・・・
「身代わり夜這い事件」として極々少数の関係者の黒歴史となった事件である。
王国の公式記録には決してのこらないであろうそれを彼女がそそのかされたとはいえ、
やってしまったのは、マサトへの想いと、自分を取り巻く現状に対する逃避だったのかもしれない。
それと、彼の周りに着々と集まる女性たちへのあせりも。
ヨウコが用意した{変身リング}で亜由美に変身した彼女は、
疑われる事なく、マサトに抱かれた、初めての痛みよりも喜びのほうが勝った。
しかし、翌朝目覚めてからの現実は彼女を蒼ざめさせた。
このことが公になれば、折角王国を立て直すチャンスどころか、
国が分裂する危機だったと知ったのだ。
だが、ヨウコたちの仲間はこれを秘密にすることにしてくれた。
本来は非難すべきであろう、マサトからも身代わりにされた彼女たちからも優しくされた彼女は
涙を流し感謝するしかなかった。
それからの彼女はまたものすごい勢いで国政に携わった。
魔獣をコリントに魔族が集めたため、放棄されたエリアの魔獣がいなくなったので、
重要拠点から奪還していき、国力の回復を急がせる。
今回の事件を利用して、人族至上主義者の貴族たちを失脚させていく、
特にその重鎮で中心人物のブロサール公爵は、身内より実行犯を出したと言うことで、
大逆罪で捕らえ取り潰しにすることにした、それらに協力していたものたちも摘発し、
大幅にその力をそいでいった。
そして、森林同盟に援軍を送るにあたってマサトたちにも一緒に行ってもらう事にした。
「マサトさん、無事に戻ってきてくださいね。」
「そちらも、無理しないようにな、急な改革でまだ不安定なんだ、揺り返しもあるかもしれない。」
語らっているのはベッドの上、場所は絶対に見つからない逢瀬用の場所である。
結局、臨時の女子会(議)が行われて、めでたくお仲間入りが決まったが、
彼女の立場等の事もあり、交際しているのは秘密とされている。
今後は、徐々にその解禁を目指していく事になる。
取り巻く状況は厳しく、問題は山積している。
だが、彼女は立ち止まることはしない、突き進むのみだ。
「彼がいてくれる、私はまだ戦える。」
隣にいる彼の暖かさを感じて、彼女は心の内でつぶやいた。
誤字・脱字などありましたらお知らせください。




