閑話11 王女の戦い 前編
主人公視点ではありません
ルーダ・アウグステ・アレクセーエヴナ ルアン王国第一王女にして王位継承一位の彼女は、
「姫将軍」 「宰相いらず」「ルアンの希望」などという称号を民衆からつけられている。
本人はその称号は不本意なようだ、つまるところ自分が持ち上げられるのは、
現政権を担う王たちへの不満の表れであろうと言うのが理由だ。
父である王は善人であるが、王としては失格だな、と言うのがルーダ王女の評である。
彼は、有力貴族を押さえるすべを知らず、彼らの跳梁を許しているのがもどかしいのだ。
そして、そのつけは彼女に降りかかってくるのだから。
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「では、この予算の執行はできぬとのことか?」
王女は眉間にしわを寄せながら相手を睨む。
「はい、国難のおりこのような遊興につぎ込む予算などありはしません。」
にべも無く言い放つのは、アンドレ・クリストフ・ブロサール公爵。
王女にとって最大級の障害になる有力貴族だ。
「何より今は被害を受けたものたちへの支援こそが一番の課題かと。」
聞きようによってはもっともなことを言っているようだが、
結局は領地を失った貴族を助けろといっているに過ぎない、
その原因が守りを怠ったと言う貴族自身の失策には全く触れていないのは、
意識してそうしているのか、それで当たり前と思っているのか、
恐らく後者だなと王女は推測する。
今、話されているのは、ある筋から上がった提案を研究・実行するための予算についてである。
王女は非常に有意義な事だと思っている、我が国だけでなく、世界中がその恩恵を受けれるのだ。
なのに、である。
彼らにはその価値が全くわからないようだった。
王は何も言葉を発しない、発言して有力貴族に反駁されるのを恐れているのね、
王女はそう断じている。
王女の味方になってくれそうなのはこの会議の席では片手で数えるくらいしかいない。
その一人が発言する。
「王女様の提案は某からみて非常に有意義なものと思われます、研究の価値はあるかと。」
宰相を務める オディロン・クストーが援護してくれた。
それに対して喧々諤々と話が行われ、結局予算は希望額の十分の一まで削られた。
後幾つかの許可は取れたが、成果と呼べるものは無いように思われる。
「うまくいったわね。」
そう言って微笑むのは王女の前で優雅に茶を飲む女性だ。
「予算は無いに等しいのに成功ですか?」
眼を瞬かせるのは、王女の側近を勤めるブリジットだ。
「ああ、正直予算はいくらでも良かったんだ、欲しかったのは許可の方さ。」
そう言って笑うのはヨーコ・カミシロ 女神ヨウコである。
「これで、大手を振って研究が出来るからな。」
「ふふ、相変わらずお人が悪い・・・」
そう言って王女と女神は笑いあうのであった。
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それから数年、ついに研究の成果であるロケットが打ち上げられることになる。
予算の方はある方法でヨウコが確保していたので問題にならなかった、
むしろ潤沢なほどだが、先の決定があり口を挟めるものはいない。
その前に、ヨウコが異世界の仲間を連れてくる事になった。
本来ならもうすぐ先だったのだが、急に決まったものらしい。
急いで受け入れ態勢を整える必要があり王女は東奔西走する事となった。
彼女の動かせる手駒が少ないからである。
「勇者様方のお世話をするメイドが不足しております。」
内宮の人事担当が報告に来た。
「増員は間に合いませんか?」
「内宮にふさわしい礼儀作法が出来る者がなかなかおりません、商業ギルドにも打診しましたが、
急には集まらないようです。」
「困りましたね。」
「外宮のメイドから礼儀作法が出来るものを選抜してはいかがでしょうか?」
ブリジットが助け舟を出す。
「なるほど、外宮の不足はギルドや口入屋からでも補えます、それでやってみます。」
問題が一つ解決し主従は安堵した。
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「内宮勤務ですか?」
テレーゼは担当者から転属を告げられていた。
「そうそう、礼儀作法の出来ている娘から十名選抜でね、君は良くやってくれるからね、
給金も上がるし、いい話だよ。」
「私も一緒に選ばれました、やりましたね。」
寮の同室のリィリィもうれしそうだ。
「判りました、明日からですね。」
「うん、頼むよ。」
この決定が後に問題となったのだがこの時点では知る由もない。
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「召還魔法陣の準備はできてますか?」
ミルナ神官が報告する。
「明日昼天時に来られると連絡がありました。」
「そうですか、いよいよですね。」
「勇者様たちはどのような方でしょうか?」
ミルナはヨウコとは面識があるが連れてくる者たちの情報はもらっていない。
「大半は女性のようだな、女神様の連れてこられる方々だからか?あと男性は二人だそうだ。」
ブリジットがミルナに説明する。
それを聞きながらルーダ王女は、その男性たちに思いをはせていた、
勇者の物語で勇者が王女と恋仲に落ちて結ばれるという結末ははいて捨てるほどある。
正直、周りにいる男性に失望気味な彼女はまだ見ぬ勇者にあこがれる乙女と言うところだろうか。
「現実ばかり見ていても・・・たまには夢くらい見させて欲しいわね。」
誰にも聞こえないように小さな独り言をつぶやくのであった。
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勇者の到着を控えて会議が開かれていた、
王女は彼らの到着後連合軍による反攻作戦を提案していたが、
これに異議を唱える者たちがいた、
ブロサール公爵たちである。
「勇者と言っても実力の知れないものたちにこの国の防衛は任せられるものではありません。」
などと立派な事を言っているが、彼らの成果ははかばかしいものではない、
数年前の会議より予算をつぎ込んで軍の強化をしたのだが、
魔獣に奪われた土地の奪還作戦は失敗つづきであった、
出兵しては、反撃を受け損害を出して撤退という事を繰り返している。
それどころか、防衛もままならず、多くの村や町が放棄された。
その多くは貴族が主導して行った作戦だが、貴族たちは戦況が不利になると逃げ出し、
国軍がその尻拭いをするということが続いていた、
まして敗戦の責任を軍の幹部に擦り付けるなどしたため、
多くの優秀な軍人が野に下ってしまった。
その繰り返しで、ルアン王国はかなり弱体化している。
王女は自分の力の及ぶ限り動き、野に下ったものたちを自分の直轄地の守備隊に入れたり、
鉄鋼王国と連携して魔導兵器の開発をしていた、
勇者たちも、女神の使わした使者であるとして、自分の直轄にしている。
予算もないが、神殿とヨウコの策で資金に不足はない。
「それでしたら、彼らには連合軍に我が国の部隊として参加してもらいましょう。」
これも王女の計算のうちだとは貴族たちは思わない、こうして貴族の干渉を受けずにヨウコたちの部隊は
動ける事になった。
そうして、召還の日、
召還用の魔法陣を設置した広間に光が溢れ「彼ら」がやって来た。
王女はヨウコと挨拶を交わしながら彼らを見回した、女性、しかも若く美しい彼女たち、
その中の男性は、一人は精悍な中年男性でもう一人は若い男だ、
彼女は若い男の方に視線を合わせると胸の高まりを感じていた。
(私の好みの方ですわ、どうしましょう!いざと言う時に何も思いつかないなんて。)
周囲の喧騒も気にならず彼女はひたすら彼に視線を釘付けにしていたのだった。
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次回投稿は7月12日18時予定です。




