閑話8 カチヤの想い 前編
主人公視点ではありません
獣王都の城外にある難民キャンプ、
そこにある一軒の小さな仮設の住宅にグリーゼの両親は住んでいる。
その住宅には一人の同居人がいる、
彼女の名前はカチヤ・アウラートゥス
紅い瞳を持つ彼女は、
橙色の髪をツインテールに纏めている、
グリーゼより二歳年下の幼馴染である。
彼女は一人であった。
上の姉二人は嫁いでおり、母親は早くに亡くしていた、
父親は、里が魔獣に襲われた時に戦い戦死した。
難民キャンプにたどり着いた時に、彼女はグリーゼの両親に引き取られた、
グリーゼ本人は知らされてなかったが、
彼女と一緒にさせるという話が水面下で行われていたのだ。
里長が従士長であるグリーゼの父親と従士のカチヤの父親に相談して決めていたのだ。
テレーゼの行方が知れず、それをずっと待ち続けているグリーゼを見かねてのことであった。
話が来た時カチヤは夢ではないかと思った、
いつの頃からかグリーゼは「お兄ちゃん」ではなく、
素敵な人だと想っていたからだ。
しかし、すでに婚約者としてテレーゼがいたためその想いは秘めていたのだ。
もっとも、周りからはお見通しであったようだが。
それと、里のある深刻な事情も絡んでいるのであった。
それは若い男女の構成比が女性過多になっているのである。
それは、この世界が抱える問題が絡んできている。
ここ数年魔獣の発生が異常に多くなり、それとの戦いが激しさを増していたのだ、
獣王国連合も例外ではなく領土を侵食され放棄した里や町も出ているくらいである。
討伐のために国軍や、里の防衛隊も出ているがその度に戦死する者が出てくる。
そのために男性特に若いものの数が減っているのだ。
そのため、複数の妻を娶る事が推奨されているというか、
そうしないと人口がさらに減ってしまうのだ。
元々、この世界は複数の妻を迎える事は禁止されていない、
宗教上の縛りがないのもあるが、百年以上前の戦乱の時代にそうなったと言われている。
当時も同じ事情だったのだろう。
増してグリーゼは里一番の戦士に成長していた、
里の武術の師範役をしていたカチヤの父アルノーによれば
国軍にもこれほどの使い手はいないとの事で、
実際に国軍から勧誘が来るほどである。
それほどの大丈夫が未だ独身とは周りが納得しないのはもちろんであり、
婚約者でありながら里を飛び出したテレーゼに対する批判はもちろん存在する、
もっとも同情的な意見もあり、里を飛び出す前に、口論する二人を見ている里人も多い。
カチヤも見ていた一人だ、テレーゼは好奇心が強い女性で、
色々見聞を深めに王都などに行きたがっていたが、
グリーゼが婚約者であると言って止めていたのである。
「テレーゼ姉さまも、グリーゼ様も譲らないから・・・」
カチヤはそう思っている、二人は決して仲が悪いわけではない。
むしろ自分がうらやましくなるほど想いあっていると感じていた。
そこに自分が割ってはいる、縁談はうれしかったが、グリーゼがなんと答えるか怖かった。
でも聞かなければならない、そう思って行動に移すことにした。
彼の両親や里長から話が来るまでに・・・
見回りから帰った彼を呼び止め、都合を聞き空いているのを確認して大樹の下に誘う。
最初は世間話をして、本題に入る。
彼の顔つきが変わった、触れて欲しくない話だからだ、
でも、こちらも引けない、畳み掛けるように話をして、
気持ちを伝えた、回りに人がいなければ胸に飛び込んでいたかもしれない。
彼は彼らしくない弱弱しい声で考える事を約束してくれた。
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言いたい事を言えたので少し気持ちが軽くなったようにカチヤは感じた。
「どうしたの?なんかいい事でもあった?」
「ううん、なんでもないよ。」
そう言っていると鐘の音がした、緊急の知らせ!
門のところに走っていくと、従士たちが集まり門を閉めていく、
みんな武装して「魔獣の襲来だ!」と言っている。
カチヤは門に向っていると、向こうから板の上に載せられている人が来た。
「ヨハンさん!」血まみれでうめいているのは幼馴染でグリーゼの親友ヨハンだ。
里長の屋敷に向うそれを見送り、カチヤは探す、門の前に彼はいた。
「グリーゼ様!」
声をかけると、グリーゼはこちらを向いて、「心配はいらない、ヨハンの傷の手当てをしてやってくれ。」
最初険しかった顔が最後少し柔らかくカチヤには見えた。
「判りました、気をつけて。」
カチヤはそういうと里長の屋敷に向う、途中父のアルノーがこちらに向ってきているのに気が付いた。
「父様」
「カチヤ、グリーゼのことは任せておけ。」
言葉少ないいつもの父の精一杯の言葉にカチヤは頷いた。
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次回投稿は7月8日18時予定です




