閑話7 コリントでの買い物
主人公視点ではありません
※ 遅くなってしまい申し訳ございません。
コリントの戦いが終って住人が普段の生活に戻り始めた頃、
グリーゼ(正人)は自治領主 ゲオルギィ・ヴォローニン に面会を求めていた。
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町の大通りを一台の黒塗りの車が走る。
自治領主の持っている賓客用の魔動リムジンだ。
リムジンはある一軒の店に向っている、
そうしてその店の表ではなく横の門よりリムジンごと中に入っていく。
入って庭園の中を抜けリムジンは車止めのある入り口の前に止まる。
そのリムジンより降り立ったのは、グリーゼたちであった。
彼らはコリントでは有名すぎ、うかつに表を歩けないので、
自治領主に頼んでお忍びで行ける店を紹介してもらったのだ。
「すごい店だな、さすがに自治領主の一押しだけはあるか。」
「王都の御用商人の店にもこのようなところはないですわ。」
「すごいですね、初めてなんで緊張します。」
「・・・・・・(こくこく)」
グリーゼ、ミリヤム、テレーゼ、リアンナは各自の感想を述べながら、
リムジンより降りて、店内に案内されるのであった。
「ようこそ、勇者様にお越しいただき、ルーセンス商会一同光栄であります。」
入ってすぐ、この店の主より丁寧な挨拶を受けるグリーゼたち。
「私、ルーセンス商会の代表を務めます、ユーリー・ルーセンスと申します。」
グリーゼたちも自己紹介をして、店内を案内される。
「自治領主様よりお話はお聞きしております、まずはこちらで、
商品の方をお持ちいたします。」
豪華な応接セットに案内され、しばらく待つと、ケースを掲げた店員が、
うやうやしくグリーゼたちの前にそれを置いていく。
そのケースには磨かれ光り輝く宝石がいくつも並べてあるのだった。
「すごい・・・」
このつぶやきは誰が発したのか、しばしそれを見つめるグリーゼ一行。
そのうち、グリーゼがその中より一つの石に釘付けになる。
「これは?」
「それに着目なされましたか、それは非常に珍しい逸品です。」
店主の説明するその石は以前グリーゼがテレーゼに贈ったチョーカーに付いている、
獣眼石と同じ大きさをしている、
眼を引くのはその色と輝きであろうか?
真っ紅な下地に光が入るとまるで焔が燃え盛るような輝きを放つのだ。
「焔貴石と申しまして、焔が燃え立つような輝きを放つ石でございます、
焔姫様にお似合いの一品かと。」
流石に自治領主が推薦する商人である、こちらの求めているものを読んでいたようだ。
ミリヤムはその石に見惚れたかじっと見ている。
結局、その石を購うこととなった。
「お嬢様にはこちらはいかがでしょうか?」
店主がリアンナに勧めるのは、彼女の銀髪を髣髴とさせる一品だ、
銀色の輝きを放つそれにリアンナは「すごい・・・綺麗です。」
完全に魅了されたようである。
この世界の北天にひときわ明るく輝く星「北天の蒼星」にちなんで、
蒼神石と呼ばれた石を彼女は選ぶ事になった。
(流石、一流商人はこちらのことを良く知っている。)
正人は内心舌を巻く思いだった。
恐らくは自治領主よりこちらが来訪する事を聞き、
彼の連れの女性のことも調べて商品を厳選したに違いない。
「見事な物をお勧めいただきありがとうございます、おかげで助かりました、
実は、もう一人贈る者がいるのですがよろしいですか?」
グリーゼの切り出した「もう一人」とはカチヤのことである。
先日里長より連絡を受け、彼女がグリーゼとの婚約を受ける旨を教えてもらったのだった。
「そうでしたか、ではこちらをごらんになってはいかがでしょう?」
店主が別のケースを手渡す、受け取ったグリーゼはその中の一つで眼が止まった。
オレンジの中に星が輝くような光を持つ石である、
その石を見るとカチヤの姿が重なって見えた。
「この石は?」
店主は、グリーゼ(正人)の問いに、
正解を見つけた教師のような顔を一瞬見せ、笑顔で答える。
「これは橙鳴石と言いまして、この石に関してはある物語のある石でございます。」
店主の語った、その物語とは・・・
昔、ある所で戦に赴く戦士がその恋人にこの石を渡し、必ず帰ってくることを誓ったと言う。
しかし、彼は戦が終っても帰ってこず、討ち死にしたところを見たというものも居た。
恋人は渡された石を胸に抱き天に祈り続けた。
ある日、彼女の前に死んだはずの彼が現れた。
瀕死の傷を負い生死の境をさまよっていた時に、帰ってきてという声が聞こえ、命をつないだと言う。
「それ以来この石のことは(命帰石)とも言われ、
贈られた女性はこの石に祈りを捧げれば贈った男性を石が守護してくれると言います。」
この話を聞き、グリーゼ(正人)は内心驚愕していた。
(カチヤのことは何も語っていないのに!)
この商人の底知れない凄さに舌を巻いたグリーゼは石の購入を決めるのであった。
「店主のおかげで、良い買い物をさせていただいた、ありがとうございます。」
「いえいえ、こちらこそ良い縁を結ぶ事が出来感謝いたします。」
購入した石は証の品にふさわしく装飾されてから受け取る事として、
帰路に着く一行、
「流石は自治領主の紹介だけのことはあったな・・・」
「はい、まるで心を読んでいるみたいな感じでしたね。」
テレーゼが言う、彼女はもう証の石は持っているので別の装飾品を買って貰っていた。
その品物もまるで彼女の好みが判るかのようなタイミングの良さだったのだ。
「流石ですわね、今後王国も御用達にしてもいいですわね。」
ミリヤムも同意見だった、彼女も別に買ってもらった髪留めに手を当てながら、
うれしそうにしている。
「あんな店初めてだった・・・」
リアンナも買ってもらったイヤリングを確かめるようにしながら答える、
グリーゼにはリアンナとギリルどちらの感想なのか、あるいは両方なのか判らなかった。
(まあ、何にせよいい買い物が出来た事は間違いないな。)
カチヤに贈るアクセサリーの包みを持ちながら、
彼は車窓からコリントの町並みを眺めるのであった。
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