閑話6 導きの星
主人公視点ではありません
ルアン王国、王都郊外
王都から離れた平原に巨大な構造物が出来上がっていた、
この世界には似合わないデザインのそれは、ロケットの発射台と、ロケットそのものである。
これはヨウコが向こうの世界で作らせて、こちらで組み立てていたものである。
打ち上げるのは、通信衛星を兼ねたGPS 衛星である。
これを打ち上げる事により、各国家の連絡を容易にすることが出来るし、
この衛星をリレーして正人と式神たちのパスがつながるようになるはずである。
そして位置情報を得られるGPSはいろんな意味で役に立つだろう。
もっともGPS衛星は1台では意味が無い、たくさん飛ばせば飛ばすほど精度が上がっていくのだ。
そのため最初の段階で続けざまに打ち上げなければならない。
そのため傍の格納庫には二番機以降のロケットが組み立てられている。
ちなみに動力はすべて魔力で動くようになっている、人工衛星は魔素を吸収し魔力石に
蓄えることが出来るようになっているので故障しない限り無限に動かす事が出来る。
この世界のロケットエンジンは魔力を動力にしており、その魔力の充填に正人が必要とされているのだ。
流石に重力に逆らってそれなりの物を大気圏外まで送るには大量の魔力が必要で、
それをまかなうには巨大な魔力を持つものに充填してもらったほうが都合が良い。
こちらの世界ではGPS衛星と言う呼び名は使われず、「導きの星」と呼ばれている。
発射台から数キロはなれたところにある、管制塔にはヨウコたちスタッフとルーダ王女、
正人たちが詰めている。
ここのロケットの打ち上げ管制システムはきりしまが担当している。
「ロケット発射まで六十秒、各部署異常なし、エンジン始動準備」
「緊張してきたね。」
亜由美が正人に言う。
「ほんとだな、直接こういうの見るのは初めてだし。」
正人もそう答える。
「あの塔のような物が空のかなたまで飛ぶのですか?」
テレーゼが信じられないと言う顔で見ている。
「俺たちの居た世界ではもっと遠くまで飛ばしていたよ。」
月を始めとして、もっと遠くの惑星まで行っていた話しをしたが、
にわかには信じられないのも無理はないのである。
ルーダ王女は、「これがうまくいけば各国とも連絡がとりやすくなりますね。」
感慨深いようだ。
この世界は魔法が科学に置き換わった世界なので大概の物はそろっているのだが、
なぜか、空や宇宙に行く技術は進んでおらず、天文学なども遅れているようだ。
そこはヨウコが技術導入しているのでそのうち追いつくだろうが。
すでに魔力発動機による飛行機は試験飛行中であり、
大陸と大陸を結ぶ航空航路が出来る日は近い。
そんな事を話しているとカウントダウンが近づいてくる。
「五、四、三、二、一、エンジン始動、テイクオフ!」
ロケットの一番下のノズルから粒子を伴った光の奔流が起き、
ロケットはゆっくりと上昇していく、やがて、空の一角に小さな光となって消えていった。
「すごい・・・」
テレーゼたちこちらの者は始めてのロケットに声も出ない。
「割と静かだったな・・・」
「もっと衝撃波が来るかと思ったよぅ。」
地球のロケットを知るものたちからは、物足りなく思われたらしい。
魔力を使った動力装置は、地球の化石燃料やロケット用燃料を使ったものよりも、
静かで、クリーンなので飛んでいく迫力の割りに音がしない感じがするのだ。
その辺が異世界と言う事なのだろうが。
「一段目切り離し完了、二段目エンジン起動成功です。」
観客がやいのやいの言っている間にもきりしまからは状況をしらせるメッセージが読み上げられている。
そうこうしているうちに、無事予定軌道まで到達し、格納庫より衛星が分離されていく。
「導きの星、軌道投入完了、星のシステム起動も成功しました。」
「電波受信成功!成功です!」
無事に打ち上げ、衛星の起動成功に管制室は沸いた。
ちなみにこのロケットは静止軌道上に8tほどの衛星が送れるので、今回衛星は五機搭載されている。
それらは順次予定位置に配置されて行く事になる。
ちなみに最低四機の衛星からの電波を受信できればかなり正確な位置が特定できるので、
この打ち上げだけである程度地域は限定されるが運用は可能になった。
通信も、ルアンから獣王国、森林同盟、鉄鋼王国同士の通信が可能になるはずである。
(主様、・・・主様聞こえますか?)
早速、獣王国の王都にいるいずもからパスを使って通信が入った。
(どうやら、成功したみたいだな、そちらはどうだ?)
(すこし途切れたりしますが大丈夫です・・・こちらは異常無しです。)
正人が皆に獣王都のいずもと通信が成功したと告げると、再び喜ぶ声が溢れた。
はつゆきたちもGPSが使えるようになったのを確認して喜んでいる。
これから森大陸へ行くのに心強いことだろう。
引きこもり状態から急にやる気をだしてここまで成し遂げたヨウコはスタッフに囲まれて祝福を受けていた。
これから、立て続けに打ち上げをしていく事になるが、この成功は大いに自信をつけただろう。
お祝いを言おうと正人が近づくと向こうも気が付いて近づいてくる、
喜びのあまり、抱きついてキスでもしてきかねないので、指向性の思考会話を送り自重を促す。
そのため、握手でなんとか抑えられたようだ。
「これで、第一段階のめどがたったよ、後は各国を回って問題の解決に当たれる。」
ヨウコは口ではそのような他人行儀なセリフを言っているが、
思考会話では、欲望駄々漏れの話をしており、とてもこの場では披露できない。
正人は表情には出さず、普通のお祝いの言葉を口にしていたけど、
思考会話での話がたとえ他に聞こえないものだとしても気になってしまうのだった。
ふと見ると、横ではつゆきがジトッとした目でみており。
(聞こえてますけど)と一言パスで言った。
その一言で、隠し事が出来ない事を悟り、
きっと言われてないけど結界内でのこともすべてばれてるなと思って冷や汗をかくのであった。
(すまない、この案件は何とか早めに片付けたかったんだ。)
(いいの、王女と神の件は正人に迷惑がかからなければ気にしないから。)
どうやらお許しが出たらしい、いまさらなかったことには出来ないし、
ならば正人が困らないようにしようと考えてくれていることに、
正人は感謝と彼女の自分への愛情を感じてすこしくすぐったい気持ちになるのであった。
打ち上げが成功したら、森大陸への出発準備である。
さらに忙しくなるなと、空を見上げるのであった。
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次回投稿は7月2日18時の予定です。




