ローレン編 〜017〜
九月上旬の東京は、午前十時を過ぎてもまだ夏の名残を引きずっていた。
ローレン・ブルックスは、小さな輸入食品店の棚を眺めながら、いつものように買い物をしていた。日本へ移ってから、生活そのものに困ることはない。金銭的には、仕事をしなくても当面は何の問題もなかった。
それでも、何もしない生活にはどうにも慣れない。
若い頃からずっと働き続けてきた。前の雇い主についていた頃など、社長付き秘書という肩書きだけでは足りないほど何でもやっていた。護衛、運転、予定管理、簡単な経理、身の回りの世話。仕事がない今は、時間だけが妙に余る。
そんなことを考えていたとき、店の入口から配送員が入ってきた。
平たい段ボール箱を抱えている。店員が応対したが、ほどなくして二人の間に戸惑った空気が流れ始めた。
「え……これ、うちの荷物じゃないですよ」
配送先の住所は合っているらしい。けれど店には覚えがない。
その直後だった。
箱の底が抜けた。
鈍い音を立て、古い携帯電話が床へ落ちる。泥で汚れた、ずいぶん昔の型の携帯だった。
次の瞬間、携帯が鳴り始めた。
古びた電子音が店内に響く。
ローレンも反射的にそちらへ目をやったが、わざわざ近寄りはしなかった。
――まあ、誰も欲しくないでしょうね。あんな汚い携帯。
それ以上気にせず、買い物を続ける。
結局、配送員と店員が困った顔で処理を相談している横を通り過ぎ、ローレンは必要なものだけ購入して店を出た。
そのときは、それで終わる話だと思っていた。
自宅へ戻り、買ってきたものを片づけてから、ローレンはしばらくのんびり過ごした。
すると、スマートフォンが鳴った。
知らない番号だった。
少し画面を見つめる。
営業か、間違い電話か。
そう思いながら応答する。
「はい、ローレンです」
しばらく雑音しか聞こえなかった。
遠くで何かが擦れるような音。
それから、かすかな女性の声。
『……ローレン……さん?』
ローレンの眉がわずかに動いた。
「はい。そうですけど」
相手の声は若い女性だった。だが、ひどく不安そうで、回線も安定していない。
『……助けて、ください』
その言葉と同時に、通話の向こうで古びた着信音が鳴った。
ローレンは黙る。
今朝、輸入食品店で聞いたものと似ている。
いや。
かなり近い。
『ローレンさん……?』
「聞こえてますよ」
通話はひどく不安定だった。
雑音が増え、声が途切れる。
ローレンは一度通話を切った。
しばらくスマートフォンを見ていたが、すぐにもう一度着信が入る。
同じ番号だった。
今度は先ほどよりずっと鮮明だった。
「はい」
『……ローレンさん』
若い女性の声が、今度ははっきり聞こえる。
「さっきより聞こえますね」
『はい……』
「まず、落ち着いてください。今どこにいます?」
沈黙。
『……分からないんです』
「住所は?」
『分かりません』
「建物の名前とか、外の景色とか」
『外が……見えないんです』
話を聞いていくうちに、状況はますます奇妙になった。
女性は白い壁と灰色の床の部屋にいる。
天井には二つの照明。
ベッド、机、椅子、小さな冷蔵庫。
冷蔵庫には水が六本。
食べ物は簡素なパンのようなものだけ。
窓はない。
鏡も時計もテレビもない。
コンセントはある。
部屋の扉は金属製で、内側へ引く形らしい。
取っ手は動く。
しかし開かない。
鍵穴は見当たらない。
そして扉の下の方には、小さく数字が書かれている。
『……017です』
「017?」
『はい』
ローレンは椅子へ腰を下ろした。
「あなたの名前は?」
また沈黙。
『……分からないんです』
「年齢は?」
『それも……』
「自分の電話番号は?」
『分かりません』
「写真は?」
『何もないです』
連絡先を確認してもらう。
登録されていたのは、ローレン・ブルックスただ一人。
通話履歴もメッセージも同じ。
「私のこと、知ってるんですか?」
『……分かりません』
「でも名前は知ってたんですよね」
『はい』
「どうして私に電話したんです?」
女性は少し迷った。
『あなたなら……出してくれると思ったんです』
ローレンは黙った。
「……誰から聞いたんですか?」
『分かりません』
本人にも理由が分からないらしい。
それでも、その言葉自体は本人の意思から出ているようだった。
ローレンはため息をつく。
「まあ……分かりました」
『え?』
「助けられるかどうかは、まだ分かりませんけど。できることはやりますよ」
通話の向こうで、女性が小さく息を吐いた。
そこでローレンは少し考えてから続けた。
「ただし」
『はい』
「助けられたら、何かしてほしいことが思いついたときに、私の手足になって働いてくださいね」
『……え?』
「お金持ってないんでしょう?」
『たぶん……』
「じゃあ、仕事で返してもらえばいいので」
少し間があった。
やがて女性が、小さく笑うように息を漏らした。
『……分かりました』
「はい。契約成立ですね」
奇妙な救助依頼は、そうして始まった。
まず、女性のいる部屋について徹底的に確認した。
部屋の中では、常に低い機械音のようなものが聞こえているらしい。
空調や冷蔵庫とは違う。
もっと空間全体の奥から響くような音。
そして、たまに扉の外から金属音のようなものがする。
ローレンは女性に、耳を澄ませてもらった。
しばらくして。
『……足音、みたいなのが』
「どんな?」
『コツ……コツ……って』
遠い。
規則的ではない。
何者かが歩いているようにも聞こえる。
ローレンは、扉を無理に開けようとする前に、反応条件を調べることにした。
まず軽く壁や扉を叩いてもらう。
少し時間が経つと、遠くで一度、返すような「コツ」という音がした。
次に扉の取っ手を動かしてもらった。
明確な反応はない。
普通の声で話してもらう。
足音に大きな変化はない。
しかし。
「じゃあ、小さい声で話してみてもらえます?」
『……こんな感じですか?』
その直後。
『……あ』
「どうしました?」
『足音……』
先ほどより早い。
距離も近づいているように聞こえる。
「普通の声に戻してください」
『はい』
足音の速度は、しばらくすると落ち着いた。
ローレンは眉を寄せる。
「……囁かない方がよさそうですね」
『分かりました』
「怖いと思いますけど、声は普通に出しててください」
弱く、孤立したような音に反応している可能性がある。
少なくとも、女性には囁き声を使わせない方がいい。
ローレンは通話を維持したまま、パソコンで過去の類似事件を調べ始めた。
奇妙な監禁。
記憶喪失。
番号の付いた部屋。
古い着信音。
単語を変えながら検索を続ける。
やがて、一つの記録へたどり着いた。
二〇〇七年。
「004」と呼ばれる部屋にいた女性の記録。
細部は不明瞭だが、共通点が多い。
記憶を失った女性。
外へ出られない部屋。
そして。
『あなたなら出してくれると思った』
ほぼ同じ言葉。
さらに別の記録では、外部の救助者側が後になって古い着信音を聞いたという。
記録の最後には。
「昨日より近い」
という趣旨の記述まであった。
ローレンは画面を見ながら考える。
これは単純な監禁場所を探す話ではない。
住所。
建物。
部屋番号。
そういう考え方そのものが、ずれているのではないか。
「ちょっと、実験してみてもいいですか?」
『はい』
まず通話を切断し、もう一度つなぎ直してみる。
再接続。
今回は安定している。
最初の電話で聞こえた古い着信音は鳴らない。
回線も崩れない。
つまり、単純な接続のたびに最初の状態へ戻るわけではない。
次にローレンは音楽を使った。
スマートフォンから明るいボーカル曲を流す。
女性には普通に聞こえる。
足音に変化はない。
古い着信音も鳴らない。
次に静かなインストゥルメンタル。
こちらも同じ。
音楽そのものが何かを呼び寄せるわけではなさそうだった。
それどころか、この実験中は例の足音そのものがほとんど聞こえなかった。
ローレンは椅子の背にもたれた。
場所を探す。
相手を呼ぶ。
扉を壊す。
その前に、もっと重要なものがある。
こちらと向こうが、どうつながっているのか。
そう考えた。
「同じことをやってみません?」
『同じこと?』
「机でも床でもいいです。三回叩いてください。私も同じようにやります」
『分かりました』
「せーのでいきますよ」
二人が同時に叩く。
コン。
コン。
コン。
最初は何も起こらない。
もう一度。
さらにもう一度。
最初は交互に真似するようにも試した。
しかし、大きな変化はない。
そこで、できるだけ同じタイミングで、同じ間隔で繰り返した。
コン。
コン。
コン。
コン。
コン。
コン。
十数分。
単調な音が両方の空間で重なる。
やがて。
『……ローレンさん』
「はい」
『音が……』
女性の部屋で鳴り続けていた低い機械音。
それが、わずかに変わっている。
ローレンの側でも、どこからともなく小さな電子音が混じった。
さらに続ける。
そして。
あの古びた着信音が鳴った。
ローレンは手を止める。
今度は、スマートフォンからではない。
部屋のどこか。
いや。
玄関側。
耳を澄ませる。
明確だった。
同じ着信音が、女性の側でも鳴っている。
『聞こえます……』
「こっちでも鳴ってます」
ローレンはスマートフォンを持って立ち上がった。
スピーカー通話にはせず、そのまま耳に当てる。
そして女性と同じ三回の音を繰り返しながら、着信音の方向へ進んだ。
廊下。
玄関付近。
さらに耳を澄ませる。
音は、一枚の扉の方向からしていた。
ごく普通の、普段からそこにある扉。
ローレンはそれを見つめる。
「……これですかね」
扉を開ける。
最初に見えたのは、いつもの空間だった。
何もおかしくない。
しかし。
境界部分から、古い着信音が聞こえる。
ローレンは目を細めた。
扉の低い位置。
そこに、ほんのわずかに数字が見える。
017。
さっきまではなかった。
さらに女性と同期を続ける。
三回。
三回。
三回。
数字が濃くなる。
そして、扉の向こうの景色が揺れた。
見慣れた空間へ、別の景色が重なる。
白い壁。
灰色の床。
短い、知らない廊下。
『ローレンさん……!』
「どうしました?」
『扉の外で、音がしました』
女性の部屋側でも変化が起きている。
古い着信音は、両方から聞こえていた。
ローレンは試しに、手元にあった包み紙付きの飴を一つ、境界の向こうへ投げた。
小さな飴が向こう側へ飛んでいく。
『……何か、落ちました』
「見えます?」
『音はしました。でも……』
女性の部屋の中まで物体が完全に移動したとは確認できない。
それでも、音だけは届いている。
さらに同期を続けることにした。
五分。
十分。
十五分。
やがて、叩くのを止めても異常な廊下はすぐには消えなくなった。
そしてその先。
短い廊下の奥に、金属製の扉が見える。
低い位置に。
017。
『ローレンさん』
「見えてますよ」
女性の声が震える。
『外から……叩く音が聞こえます』
同期の音が、電話越しだけではなく、扉の外側から直接聞こえている。
つながっている。
ローレンはそこで、大きめの声を出した。
「聞こえますかー!」
少し間があって。
『……聞こえます!』
電話から。
そして直接、扉の向こうから。
二重に同じ声が返る。
そのとき。
遠くで。
コツ。
コツ。
あの足音が聞こえた。
しばらく鳴っていなかったものだ。
だが、ローレンが大きな声を出したことで急激に近づいてくる様子はない。
ゆっくり。
遠い。
何かがこちらへ向かっている。
ローレンは異常な廊下へ一歩入った。
さらにもう一歩。
床は固い。
普通に踏める。
後ろを見れば、現実の入口もまだ見える。
耳を澄ませる。
廊下そのものは単純だった。
余計な扉も窓もない。
通気口もない。
何かが隠れている気配もない。
古い着信音は017の方向。
足音は、017とは別のさらに奥。
見えない深い場所から近づいている。
ローレンは017の扉へ近づいた。
女性が説明したものと一致する。
金属製。
外側には普通の取っ手。
カードリーダーもない。
暗証番号もない。
鍵穴さえない。
ただ。
外からなら普通に開けられそうだった。
ローレンは取っ手へ手を掛ける。
そして。
開けた。
扉の向こう。
白い壁。
灰色の床。
ベッド。
机。
椅子。
小さな冷蔵庫。
そして。
若い女性が立っていた。
目を大きく見開き、こちらを見ている。
『……ローレンさん?』
スマートフォンからも、目の前からも同じ声がする。
ローレンは017の中へは入らなかった。
扉の外に立ったまま、女性を見る。
「こっちへ来れますか?」
女性が恐る恐る歩き始める。
一歩。
もう一歩。
境界に何か見えない壁がある様子はない。
ローレンは手を伸ばした。
ただし、自分の身体は017の外に残したまま。
「大丈夫ですよ。怖がらないで」
女性はその手を見る。
「ゆっくりでいいですから。こっちへ来てください」
やがて。
女性の手が、ローレンの手を握った。
温かい。
生きている人間の手。
ローレンはその手を引き、女性を完全に部屋の外へ出した。
「じゃあ、行きましょうか」
二人は手をつないだまま、現実側の入口へ向かう。
遠くで足音が続いていた。
コツ。
コツ。
しかし、まだ遠い。
ローレンたちはそのまま境界を越えた。
二人の身体が完全に現実側へ戻る。
その瞬間。
古い着信音が止まった。
白い壁が薄れる。
灰色の床が消えていく。
017の扉も。
異常な廊下も。
まるで最初から存在しなかったように、現実の景色へ溶けた。
最後に。
コツ。
という足音が一度だけ途切れ。
何も聞こえなくなった。
女性だけが残った。
ローレンの手を握ったまま。
温かい。
呼吸している。
現実にいる。
ローレンは彼女を自宅へ入れた。
まだスマートフォン同士の通話はつながったままだった。
近くに二台あるため、少し音が回りかける。
ローレンは通話を終了した。
何も起こらない。
女性のスマートフォンも消えなかった。
救出した後も、その手の中に残っている。
連絡先は相変わらずローレンだけ。
履歴も同じ。
写真はない。
自分の番号も分からない。
ただ、先ほどまでより普通の携帯電話らしく動いているように見えた。
「さて」
ローレンはパソコンを開いた。
「今度は、あなたが誰なのか調べましょうか」
女性が小さく頷く。
行方不明者情報。
年齢。
性別。
東京都内。
期間。
条件を変えながら調べる。
そして。
一枚の写真が目に留まった。
宮原美咲。
二十三歳。
東京都内在住。
会社員。
数日前から行方不明。
家族が公開した捜索情報。
ローレンは画面と目の前の女性を見比べた。
よく似ている。
というより。
ほぼ本人だった。
「これ、あなたじゃないですか?」
女性が画面を見る。
長い沈黙。
『……私……?』
「似てますね」
『宮原……美咲』
名前を口にする。
だが、すぐには自分の名前という感覚にならないらしい。
『なんか……他人の名前みたいです』
「まあ、急がなくていいですよ」
記憶が戻っていないのなら、無理に思い出させる必要はない。
ローレンは家族が公開している連絡先へ電話した。
事情は必要な範囲だけ説明した。
宮原美咲と思われる女性を保護していること。
身体的には大きな問題はなさそうなこと。
ただし、記憶を失っていること。
電話の向こうの母親は、最初こそ信じられない様子だった。
やがて声が震え始める。
ローレンは美咲へスマートフォンを渡した。
『……もしもし』
電話の向こうから女性の声。
『美咲……お母さんよ』
美咲は黙った。
分からない。
声そのものに記憶はない。
それでも。
その声を聞いた瞬間。
何かが緩んだようだった。
表情が少し崩れる。
『……分からないんです。でも……なんか、安心します』
電話の向こうで、母親が泣いた。
その後。
ローレンは自分が車で美咲を送り届けることにした。
住所を聞き、準備を整える。
移動中、美咲は窓の外を眺めていた。
街を見ても、大きな記憶は戻らない。
それでも完全な無反応ではない。
見覚えがあるような、ないような。
そんな微妙な表情を何度か見せた。
途中。
美咲がふとローレンを見る。
『あの……』
「はい?」
『私、ほんとにローレンさんのところで働くんですか?』
ローレンは一瞬きょとんとしたあと、笑った。
「契約しましたよね?」
『しましたけど……』
「ちゃんと覚えてるじゃないですか」
017で交わした約束。
そこは記憶として残っているらしい。
美咲も少し笑った。
やがて車は、家族の住む家へ到着した。
玄関前には、すでに何人かが待っていた。
その中から一人の女性が前へ出る。
美咲の母親だった。
美咲は立ち止まる。
母親も。
すぐには駆け寄らなかった。
記憶がないと聞いているからだろう。
少し距離を残したまま、震える声で言った。
「……おかえり、美咲」
美咲の顔が歪んだ。
覚えていない。
顔も。
声も。
それでも。
涙が落ちた。
本人にも理由は分からないのだろう。
美咲は一歩、母親へ近づいた。
母親も一歩。
そして、美咲が拒まないことを確認してから。
そっと抱きしめた。
美咲はしばらく固まっていた。
やがて。
ゆっくり腕を回した。
ローレンは少し離れたところから、それを見ていた。
しばらくして。
一通り落ち着いたところで、ローレンは母親へ例の約束について説明した。
ただし。
「まあ、契約って言っても、無理に働かせるつもりはありませんよ」
美咲を見る。
「嫌なら断っていいですし、お母さんにも相談してください」
『はい』
「記憶が戻って、生活も落ち着いて。それでも私のところで働きたいって思ったら、そのとき連絡してください」
美咲は少し驚いたように見た。
「本当に働いてもらうなら、その前に何ができるかも確認しますから」
『……分かりました』
「まあ、私が個人的に雇うことになったら、そこそこ生活には困らなくなると思いますけど」
冗談めかして言うと、美咲が小さく笑う。
家族も、ようやく少しだけ表情を緩めた。
ローレンは時計を確認した。
「じゃあ、そろそろご家族の時間をお邪魔しちゃいけませんね」
帰る準備をする。
玄関先。
ローレンは最後に美咲を見る。
「じゃあ、もし本当に働きたいと思ったら、連絡してください」
『はい』
「――次は、ご自身の携帯電話でお願いしますよ?」
美咲は一瞬目を丸くしたあと、笑った。
『はい。今度は自分で電話します』
ローレンも笑う。
「じゃあ」
軽く手を振った。
「バイ」
美咲も手を振る。
『……バイ、ローレンさん』
ローレンは車へ戻った。
エンジンをかける。
買い物に出ただけだったはずなのに、知らない女性から電話がかかってきて。
住所も分からない。
場所も分からない。
名前すら分からない。
それでも最後には、扉を見つけて、開けて、手を取って――家族のところまで送り届けた。
あとは、美咲自身が戻っていく時間だ。
そしていつか、本当に彼女自身の意思で電話がかかってきたなら。
そのとき初めて、あの妙な「契約」の続きを考えればいい。
ローレンの車は、いつもの東京の街へと戻っていった。
――017編 END「次は、ご自身の携帯電話で」――




