第41話 ミッドナイト・クルーザー.Ⅲ
話の内容が思い出せない方へ…
こちらを振り返って見ては…?
*特にこちら。
*ニアの能力、ルナ・マフィア→第8、9、10話参照
*ラオンの財産→第38話参照
「次は〜 スイレンステーション〜
スイレンステーション〜 」
バスにアナウンスが鳴り響き、ラオン達は窓から外を眺めた。
そうして巨大な建物が視界に入ると、ラオンは2人に話した。
「やっと着いたね。
ここから、僕らの旅を再開しよう…!」
ースイレンステーションー
1日の平均乗降客数は15000人。
これはスート:♡のエリアの中では、トップ10に入るくらいの量だ。
駅舎はお客さんに「ちょうどいい」と感じてもらうために、わざと小さめに作られているらしい。
ラオン達はバス停から入口をくぐると、その景色に目を丸くした。
コンコースに立ち並ぶのはギフトショップや飲食店。
そこに多くの観光客が訪れている。
天井は吹き抜けになっているが、2階、3階が複雑な設計になっていて、上を見ると吸い込まれそうだと感じるほどだった。
東改札は普通の電車を乗る際に使用する改札なので、ラオンは切符を3人分買った後、"夢之庭列車"乗り場に繋がる西改札を通った。
"夢之庭列車"は全12車両からなる列車で、旅の目的地に着くまでの時間を楽しんで貰えるように設計されている。
そのため列車内部は、自然の美しさと人間の芸術を融合させた独自のデザインが施されている。
4〜8両目が一般車両で、9、10両目はスイートルームとなっていて、この車両は一般車両と違い、普通のホテルのような客室が数個並んでいる車両である。
ラオン達は、休みながら移動するためにこの列車に乗るので、もちろんこのスイートルームの乗車券を購入したのだ。
ニアとアストロの分も勿論ラオンが全額払った。
それは父のロジャーのおかげで、財産が実質無限だからだ。
終着駅のヘリアンサス駅までの所要時間は、およそ10時間。
平均時速は180km/hなので、"夢之庭列車"は全長約1800kmの長さを走行することになる。
季節ごとに内装は変化していて、今は10月なので紅葉やイチョウなどをモチーフに装飾されている。
ラオン達は緑幻洞で一緒に泊まったからか、なんの抵抗もなしに同じ客室の乗車券を買ったため、ラオンは10両目にある3人1部屋の客室のドアを開けた。
「やば……」
最初にそう言ったのは、ドアを開けたラオンだった。
ニアやアストロも続けて、その内装を視界にとらえて驚く。
丸い大理石のテーブルを囲むように、広いソファが設置されていて、その横に豪華そうな寝台が3つ。
取り付けられた窓は、今はホームだから分からないが、そのうち綺麗な星空と街の夜景が見えるような設計だった。
室内は穏やかな光に包まれていて、細部までこだわり抜かれた装飾がその光を反射し、キラキラと光っていた。
ラオンはそんなニアとアストロを先に部屋に入れ、その後ドアを閉めて自分も中に入り、驚きが一段落した後で2人に話した。
「にしても、ほんとに凄い装飾だね。
あ、そういえば、この列車は20:30発だから、
後15分くらいしたら出発すると思うよ。
とりあえず今日はお疲れ様!」
ニアもアストロも笑みを浮かべて軽く返答する。
そうしてすこし時間が経ったあと、ゴォンという鈍い音と共に列車が発車した。
ーPM 8:30ー
ラオン、アストロは窓の外を眺めている。
列車がホームを離れ、やがて夜景と星空が見えてくると、「おぉーー」と驚きながら目をキラキラ輝かせている。
もちろん私も感動していたけど、気持ちはそれどころではなかった。
戦争のこと。ラオンの心情。私の今後。その全てが曖昧かつ不明瞭で、私はどうも落ち着かなかった。
最後尾の車両にある、展望デッキで夜風を浴びながら考え事をしたり、先頭車両にあるラウンジで悩みを聞いてもらったり、そうしたことは1人ではできない。
何故なら、いつ敵と会って戦闘することになるか分からないから。
だから私は、こうやって1人で悶々としてる他ない。
今思うと私は小さい頃から隠し事が苦手だった。
だから、"ルナ・マフィア"に攫われた時も、怪しいと分かりながら私の超能力を教えてしまった。
なのに今、私はラオンとアストロに隠し事をしてしまっている。
ただでさえ言いづらかったのに、尚更言いづらくなってしまった。
アストロにはバラしてしまってもいいかもしれない。
いや、そんな事をしたら、アストロにも気を使わせてしまう。
私はこれから、隠し通してやっていけるのかしら…
そんなことを思っているニアの様子に、最初違和感を覚えたのはアストロだった。
そこでアストロは気を利かせて、ラオンとニアに提案した。
「さっきパンフレット貰ってきたんだけど、
この列車いろいろあるらしいよ。
例えばラウンジ、展望デッキ、キッズスペース…
どれも面白そうだからさ、リフレッシュするためにちょっと見て回らない?」
「そんなのあるの!?
凄いなこの列車は。
王族だと、こういう列車乗らせて貰えないんだ…
だから、ただでさえ乗れたことに興奮してたのに!
更にいい事あるなんて聞いてないよ!」
ラオンが、あまりにも食い気味に乗っかってきたことに対して若干戸惑いつつも、アストロはニアの方を見て言った。
「ニアも一緒に来るかい?
どうも興奮王子は1人じゃ手に負えなさそうで…」
「全く本当に世話焼き王子様だわ。
もちろん私も同行するわよ…」
そう言った後、ニアはラオンとアストロの腕を掴んで自分の側へ引っ張って、少しイジワルに言った。
「いつ列車に敵が襲撃してくるか分からない。
だからレディが1人じゃ危険でしょ。
ということで、2人は私の護衛をしなさい。」
ラオンとアストロはその言葉を聞いて、顔を見合せて笑った後、ニアに「はい、お嬢様」と言って客室に鍵をかけて出ていった。
[私の秘密は、もう少し隠しててもいいかな…]
ニアは笑顔で口笛を吹きながら、ラオンとアストロと先頭車両へと向かった。




