第38話 失われた眺望(Lost Spectacle)
話の内容が思い出せない方へ…
こちらを振り返って見ては…?
*特にこちら。
*シュネルカイザー家の家族構成→プロローグ
アルカトラズとの戦いに勝利したラオンは、"ラスト・ストリート"を通り馬を預けた"ブラッド・ラスト広場"へと向かった。
ラオンの心は空と同じように晴れている訳もなく、曇天の灰色であった。
それはもちろん、こんな現状になった原因である戦争にシュネルカイザー家が関わっているからだ。
鬱々した気分で預けていた馬を引き取り、
『オーバーロック/♡-9』へと駆けていった。
ここに来る前に、ラオン、ニア、アストロの3人は"緑幻洞"近くにある"雪渓夜街"で携帯を買っていた。
今後二手に別れたりする可能性を見越して、念には念を入れて買っておいたのである。
ラオンの財布は父のロジャーによって魔法が掛けられていて…
必ず使った金額が貯えられるようになっていて、資金は実質無限にあるために、高価なものもすんなり買えるのである。
その携帯でチャットグループを作っていたため、そこでやり取りをしていた。
ラオン対戦中に、『アインザット/♡-Q』の刻印や観光地云々。
同じく『ローゼンサンドラ/♡-J』の刻印や観光地などのメッセージや写真が来ていたので、
ラオンは安堵した。
アルカトラズに襲われた時からずっと、
[もしかしたら、僕と同じようにニアたちも狙われてるかもしれない…]
その不安がずっと拭えなかったからである。
だからラオンは、平和的なメッセージが来ていたことに安心したのである。
そうしてラオンはそれに返信しつつ、次のエリアへ進むために『オーバーロック/♡-9』で合流する旨を伝えた。
馬の背中は頼りないが、鬱々としたラオンよりも力強く大地を蹴り進んでいく。
そうして馬に身を任せながら、『オーバーロック/♡-9』との国境付近の"ロスドラグーン地区"へたどり着いた。
この地区から、合流地点の"ホープフルシティ"がある"クラッシュフォール台地"までのエリアは、最も戦争の被害を受けた場所であり、ラオンにとっては1番心が痛むエリアだった。
流石にラオンは言葉を失ってしまって、馬の呼吸だけが耳を貫いた。
そうして、この戦争の事を改めて思い出した。
ライカルル-スチームチムニー間の戦争。
通称『Love Bomb』は、長い間行われた戦争である。
事の発端は、オーバーロックで見つかった鉱石「エヴァーステイル」。
スチームチムニーでは、新型蒸気機関が誕生して間もない頃だったため、新しい燃料となる鉱石を探していた。
ライカルルの方は、魔物や敵に対抗するために魔術や武器を生み出せる鉱石を探していた。
スチームチムニーは、ヴィクトリア大陸のあらゆる所へ派遣し、鉱石を探し続けた。
丁度同時刻らへんに、ライカルルもスート♡のエリア各地に派遣して地面を掘り進めた。
なんの偶然かは分からない。ただ、たまたま同じタイミングで「エヴァーステイル鉱石」を発見したことは事実だった。
スチームチムニーもライカルルも直ぐに許可をとって、採掘を始めたのだが…
この時、両国ともに採掘をしている事をどちらも理解していなかった。
そうして数週間経ったとき、両国の坑道が奇跡的に繋がった。
もちろんどっちも採掘していることを知らなかったため、直ちに問題となったのだ。
両国がその権利を巡り、交渉を始めたのは5年前のこと。
スチームチムニーの代表"ヴァルカス家"は、ライカルルの代表"シュネルカイザー家"と何度も会談をしたが、両国の交渉は平行線を辿っていた。
当時のオーバーロックはというと、ライカルルの支援側とスチームチムニーの支援側で別れていたため、やがて小競り合いが頻発するようになった。
それが「Love Bomb」の火種となってしまった。
戦争が行われたのは、「エヴァーステイル鉱石」があったオーバーロックの周辺。
民間での小競り合いにライカルル、スチームチムニー双方が援助していたが、それがやがて国家同士の争いになったのは言うまでもない。
様々な蒸気兵器を使うスチームチムニーと、強力な魔法武器を使うライカルルが衝突したせいで、街の大半は瓦礫に包まれ、地形も大破した。
その地形破壊のせいで、『サンセットエリア/♡-10』『オーバーロック/♡-9』『ストレイアフェス/♡-8』の国境を塞ぐような湖が形成されたのだ。
元々、オーバーロックは経済成長が乏しい国だったため、鉱石のおかげでその経済成長が著しくなると考えて、それを祝うための祭りが計画されていた。
その祭りの最後、綺麗な♡型の花火をたくさん打ち上げて、ライカルルやスチームチムニーにお礼を示そうとしていたのだ。
しかし、戦争によりその計画は没になったが…
その花火を見つけたライカルルやスチームチムニーは、それを戦争に使用してしまったのだ。
殺傷能力は銃や普通の爆弾よりも強かったため、わざわざ兵器として生産されたほどだ。
その花火の名前が『Love Bomb』。
だからこの戦争はそう呼ばれている。
結局この戦争を止めたのは、当時幼かった"ローズ・E・シュネルカイザー"である。
彼女はその両目に涙を浮かべて、戦争の前線に立った。
そうして口を開いて、必死に演説をしたらしい。
ラオンは、何故かその時は体調不良により数週間寝込んでいたらしいので記憶が無いらしいが。
そのローズの演説に心打たれた戦士たちが、戦争を放棄したため結果として終戦となったのだ。
便宜上はそうなっている。
本当の理由はこれの他にもうひとつあるのだが…
その事をラオンはいずれ知ることになるだろう。
ラオンは馬上で握り拳を作り、かつての緑豊かな景色を思い出そうとしたが、それはすでに遠い記憶だった。
戦争のせいでこうなったことは、もう戻れない暗い過去なのだ。
しかし、その時ふとラオンの心にニアとアストロの顔が浮かんだ。
[きっと戦争の傷跡は残り続けるのだろう。
そうして僕の心の罪悪感もそれと一緒に。
ただ、今僕がやるべきことは…
ニアとアストロと合流し旅を続ける。
そうして、このような被害をさらに起こす可能性のある魔王を倒す。
ただそれだけだ。
生きる理由は未来にしかないんだ…!]
手綱をしっかりにぎり、馬のスピードを上げて、石畳の上を駆けていく。
ラオンたちの物語は、荒廃した地から新たな希望を見出そうとする旅へと続いていく。




