第37話 BREAK STUFF(ブレイク・スタッフ).Ⅲ
話の内容が思い出せない方へ…
こちらを振り返って見ては…?
*特にこちら。
*core、ローズの手紙→第34話
建物内部は、剥がれた壁や穴の空いた天井の影響で、所々が日光に照らされている。
ラオンは眩しそうな素振りをしながら、アルカトラズを真っ直ぐ見つめた。
そうして考えを巡らせた。
[アルカトラズのアンチアビリティ…
それが破壊する能力なのは分かる。
問題は"引き金"だ。
僕の見間違いかもしれないが、おそらく…
やつは虫を飛ばして、それによって破壊を起こしている。
つまりその虫さえ何とかなれば…
絶対勝てる…!]
そう確信したラオンは、アルカトラズに言った。
「お前の能力、完全に理解したぞ! かかってこい!」
それを聞いたアルカトラズはニヒルな笑みを浮かべてこう言った。
「残念だが"完全"とは程遠いと思うぞ。」
ラオンはすぐに剣を構えて、切りつけようとした。
しかし"虫"を視界に捉えたため、すぐに身をかわしてしまった。
[触ったらもしかすると、僕が"破壊"されるかも…!]
そう咄嗟に判断したから避けたのだ。
ただ、この判断が良くなかった。
なんと、避けたはずの虫がラオンの方に向かってきているのだ。
「な、なんでっ!」
そう思わず叫んだラオンは、咄嗟に"時空衝撃盾"で虫を追い払おうとする。
「バキッ」
虫が盾に止まった瞬間だった。
「はっ… 嘘だろ……」
ラオンはすぐに自分の行動を反省した。
この"時空衝撃盾"にヒビを入れてしまったことを。
そして同時に、この能力の全貌が明らかになった。
[この虫、こいつが自由に操ることができるのか…
そしてこの虫が"接触"した対象を破壊する
それがこいつの能力。単純だが強力。
剣で虫を殺そうとしたら、この盾同様ヒビが入る。
避けてアルカトラズを攻撃しようとすると、虫が防げないで僕の体が破壊される。
この状況、厳しい…!]
内心絶望しかけていたが…
ふとニアとアストロの顔が思い浮かんだラオンは
無理やり希望に変えて、打開策を考えた。
とりあえずすぐに立ち上がり、1歩引き下がった。
アルカトラズはそんな状況を見て、嘲笑うように問いかけた。
「どうした王子様? もう降参しなよ?
俺にはどうせ勝てないんだからや。」
ラオンは日光を手で遮りながら、暗い日陰に立つアルカトラズの方を見て言った。
「こんなんで絶望できるかよ。
困難は何回も経験してきた。
シュネルカイザー家に恥をかかせられないっ!」
心底不服そうな顔をしたアルカトラズはため息をつき、再び虫を飛ばした。
虫は一直線にラオンの方へ向かってきた。
日陰にある大黒柱を避け、柱も数本避けてラオンに向かってくる。
[…っ、あ! もしかして…]
その時、絶望を隠しきれないラオンに、一筋の光が射し込む。
その光を信じきったラオンは、咄嗟にある方向へ走り出した。
そして、床に落ちてるガラス片を拾いアルカトラズの方へ投げた。
が、飛距離が出ずに、アルカトラズの足元周辺に落ちる。
「急に走り出したと思ったら、ガラス投げてきて…
お前はほんとに"雑魚王子"だな…」
呆れきったアルカトラズをラオンは無視して、ガラス片をもうひとつ拾った。
虫は以前こっちに向かってきているのに…
ーゴゴゴゴォー
ーバギィィンー
「はっ、おいお前ぇ!何したんだよ!!!」
なんとそのとき、ラオンを追っていた虫が突然アルカトラズの足元の方へ飛んでいき…
アルカトラズの立っていた床を"破壊"したのだ。
アルカトラズはそう叫んで、ラオンを睨みつけた。
床に完全にハマり、身動き取れないアルカトラズは、床のガラス片を拾い上げラオンの方へ投げたが…
その頑張り虚しく、ラオンの足元付近に落下した。
ラオンは安堵しつつ、無様なアルカトラズに近づいてこう言った。
「"雑魚敵"さん、残念でしたね。僕が馬鹿だったら勝ってたのに…
あいにく、頭は悪くないので。」
「お前ぇぇぇ!!!!」
アルカトラズは、ラオンの挑発に乗ってそう叫んだが
ラオンはすぐさま相手のcoreと呼ばれるものを体から引き出して、アルカトラズを無力化した。
これはローズの手紙に手順が書いていたため、比較的簡単に出来た。
脅威でなくなったアルカトラズは放置し、
「ニアとアストロの所へ早く向かおう…!
あっちにも敵がいるかもしれない」
そう言って刻印を集めたラオンはその場を後にした。
こうしてアルカトラズ戦は幕を閉じた。
ここで疑問が一つ
何故ラオンは勝てたのだろうか。
それはある一つの法則にラオンが気がついたからだ。
外での対戦の時、虫を操れるのになぜラオンを直接狙わなかったのか。
なぜわざわざ、建物を大破できる大黒柱や柱を避けてまで、ラオンを狙ってきたのか。
この二つのことから、ラオンは一つの事実を見つけた。
この虫を完全に操れている訳では無いという事実に。
もっと詳しくいえば、この虫は温度によって左右されるという事実に。
外で対戦した時は、日光によって温度がバラバラだったため、ラオンを直接狙えず付近の建物に吸い寄せられた。
建物内での対戦の時も、柱は全て日陰にあったため、日向の方が温度が高く、結果として日向の方にいたラオンに虫が向かってきたのだ。
だからラオンは咄嗟に走り出しガラス片を手に入れた。
アルカトラズは、ラオンはガラス片を投げて攻撃しようとしたと捉えていたが…
実際はそうではない。
ラオンはあの位置にガラス片を落としたかったのだ。
その後にラオンはもう一度ガラス片を拾った。
アルカトラズはその時気づいていなかったようだが
ラオンはそのガラスを使って、投げたガラス片の所まで日光を反射させていたのだ。
そして落としたガラス片に日光を当て、虫眼鏡のように光が集まり、日陰だったはずのアルカトラズの立っていた地面を少し燃やしたのだ。
そのため虫が温度の高い炎に向かって吸い寄せられ、床が破壊されたためアルカトラズは見事にそこにハマり、結果ラオンが勝利したのだ。
完璧な勝利。窮状からの脱出。全て王子の気品と頭脳のおかげである。
能力名ーBREAK STUFF
能力者ーアルカトラズ・ライカーズ
ーー能力ーー
飛ぶ方向をある程度操作できる虫を飛ばして、建物や人体、物体を"破壊"する。
この虫の移動速度はそこらの虫と同じで、この虫自体に脅威はない。
この虫は温度によって左右され、温度が低いところより高いところへ吸い寄せられる性質があるため、完全にアルカトラズが操作できる訳ではない。
破壊の強さは、その物体の硬度に影響するようで、金属でできた盾にはヒビを入れるくらいしかできないが、レンガでできた建物は全て破壊できる。
ーー評価ーー
存続力 3 パワー 6 創造性 5 総合 A
ーー引き金ーー
虫のような生物と接触する




