第27話 ザ・ウェイ・アイ・アー. Ⅲ
今回、このシリーズで一番長い物語です。
話の内容が思い出せない方へ…
こちらを振り返って見ては…?
*特にこちら。
*アストロ、右腕の傷→第26話
*ニアの能力、ルナ・マフィア→第8、9、10話
*西誄網、百絡段→第21話
枕とアストロを乗せた馬車は、コールマンから離れるように走り去っていく。
どこを目指しているのか、あるいはどこで止まるのか…
それは、アストロにも明確には分かっていなかった。
未来予知はできるが、ニアみたいに“触っただけで情報がわかる“みたいな能力は持っていない。
その為アストロは、この馬車に身を任せるしか無かった。
しかし、アストロは明確に分かっていないだけで、なんとなく見当がついていた。
なぜならアストロは、この国に幼い頃からいるからだ。
この国はアストロの故郷であり、幼い頃からここに住んでいたからこの国のことは詳しい。
だから、この馬車がどこに行くのか見当がついているのだ。
数分間経っても、馬車は止まる気配がない。
でも、アストロには停車する位置の予測はついていたので、特に気にした様子もなく…
幸いなことに、馬車の運転手はアストロが乗っていることに気づいていない。
[少しだけ寝ようかな…
そうでもしないと、この傷は回復しないしな…]
傷ついた右腕を見ながら、そんなことを考えるアストロはどこか疲れた様子をしていた。
それは当たり前のことだ。
だってアストロは、今までコールマンとずっと戦っていた。
そのせいで、怪我を負ったのだが…
そして、怪我を負えば当然疲労が増す。
そのうえ、ラオンたちの仲間になったのも今日であるため…
アストロはキャパオーバー状態だった。
「少しだけ寝よう…
きっと馬車が目的地に着くまでに起きれるはずだ…
それに、コールマンはニアを探し出すのに時間だかかるだろう。
だって、”西誄網“には大勢の人がいるから…」
アストロはそう呟くと、疲労回復のために眠りに入った…
枕の上にいるため、寝心地が良かったのだろうか?
アストロは1分もせずに、夢へと飲み込まれていった…
その頃ラオン達は…
ラオンはニアの手を繋いだまま、西誄網を駆け抜ける。
コールマンはアストロと対戦した後だったため、百絡段を登っている最中だった…
だから、ラオン達に追いつくことはない。
それを知ってか、それとも疲れたからなのか?
ラオンはニアの方を振り返って、走るのをやめた。
「ここまでくれば安心だよね…」
「多分、安心だと思うけど…」
ラオンとニアは息を切らしながら、そう話をした。
ここまで休憩なしで走ってきたのだから、ラオン達は当然疲れていた…
だから、コールマンが追ってきていないことを知ると、息を落ち着かせて休んでいた。
しかしラオンは気づいていなかった。とあることに…
それは重要なことだった。でも、ラオン達はコールマンから逃げることに夢中だったため…
そのことに気づけなかったのだ。
[何か忘れている…
何となく安心できないのはそのせいだわ。]
ラオンより早く、その事に気づいたのはニアだった。
そう考えたニアは、すぐに後ろを振り返る。
そこで、忘れていた”何か”を思い出し… 恐る恐る、ラオンに尋ねた…
「アストロは何処へ?
コールマンから逃げていたから、気づかなかった…!
彼はコールマンにやられたの…?
だって、百絡段で置いていってしまったのだから…」
急いでそう喋ったニアは、どこか怯えているような顔をしながらも、決して恐怖を口には出さなかった。
しかし、落ち着いてはいなかった。かなり焦っていたようだった。
ニアのお陰で、ラオンもハッとした。確かにアストロがいない…
けれど… 死んではいない。それは確実だった…
だから、そんなニアを落ち着かせる意味も込めて、状況を整理した。
「アストロから離れたのは、百絡段。そうだよね?
だから、アストロはコールマンと戦ったのかも…
そして負傷して敗北。死にいたる致命傷を負ったかも…?
ニアはそんな心配をしているんじゃない?そりゃ気が気じゃないよね…
でもニア。安心していいよ。
コールマンは死んではないけど。アストロも死んではいない。
これは確たる事実なんだ…」
ラオンはそう言ったが、ニアは落ち着けなかった…
確たる事実と言われても、証拠がなければ事実は証明されない。
アストロは生きている…それが証明されるまでは安心できない。
[ラオンは何で安心できるの…?私には考えられないわ…]
ニアはラオンの話を聞いても、そんな考えが頭をよぎり…
とにかく落ち着けなかった。
その為、ニアは焦りを隠せずにいた。アストロの安否が気掛かりだったからだ。
対照的にラオンは、冷静で状況を的確に判断した。そし次にすべき最適な行動を考えていた…
[アストロと合流するのは、コールマンを倒した後でかな…?
とりあえず、ニアを守ることが1番だ。]
その時だ。ニアが百絡段に向かって走って行こうとしたのは…
急に後ろを振り返り、そっちの方に走ろうとする。
それまで冷静にしていたラオンも、
[待って…!ニア!そっちはマズい!]
それどころではない事に気づいて…
ニアの手を掴んで、ニアのことを止めようとする。
百絡段の方にはコールマンがいる。それに奴はまだ生きているから…
逃げるべき方角は逆だ。それに、アストロを助けるにも順序があるはずだ。
だから、ラオンは行動をしなかった。
コールマンをこの人混みでやり過ごそうと思っていたからだ。
それなのに、ニアは深く考えもせずに来た道を引き返そうとする…
「痛いぃ…! 両足がぁ…負傷したわっ…!
ラオンっ…! 敵が近くにいるっ!」
ニアが走ろうとして、片足を踏み出してもう片方の足で地面を蹴った時だった…
アストロが右腕を怪我をした時と同様に、ニアも両足を負傷した。
傷はそこまで深いわけではない。だが、痛みを感じるし、出血もする。
引っ掻かれたように両足を傷つけられたニアは、アストロと同じようにそう叫んだ。
そのせいで周りが騒ぎ出してしまう。
[どういうことだ…!?
なぜ、何にも触れてないのに怪我をしたっ…!?]
ラオンとニアは似たようなことを考えた後、すぐにこの状況がマズい事に気づく。
ニアが怪我をしたから、安静に行動しなければいけない。
しかし周りの人たちが騒いだ為、この場所を移動しなければコールマンに居場所を特定されてしまう。
そのせいで、最初に考えていたラオンのプランであった、“この場でやり過ごす”が封印された。
負の連鎖が重なってしまった。
「ニア、マズい!
このままじゃ、コールマンに気づかれて始末されるっ…
ここからとにかく離れるんだ。両足の傷のことやアストロの事は逃げながら考えよう。
とにかく、移動を開始するぞ…!」
ラオンは“とにかくここにいるのはマズい!“と考え、ニアにそう言ったが…
その直後、すぐに自分の発言が無責任であることに気づいた。
何故なら、ニアは両足を怪我しているからだ。
両足は人間や動物には欠かせないものだ。そこで動物は移動をしたり、ものを蹴ったりする。
しかし、ニアは先ほど両足を、原因不明の“何か“に攻撃されて負傷していた。
両足が傷ついていれば、移動も、何かを蹴ったりするのも困難になるだろう。
「ラオン…!コールマンが10m以内にいる…!
“フィール・インテリジェンス“でその情報を得たの…
はぁ… けれど、私は両足を負傷しているっ…
移動はできないぃっ…!」
ニアはラオンに向かって、そう叫ぶ。
そして死を覚悟したニアは、ラオンに向かってもう一度叫んだ。
「ラオンだけでもいい…!とにかくこの場から逃げてっ…!」
ニアはもう諦めていた。どっちみち、この“宇宙海賊段“からは逃げられないのだと…
「ニア。君の気持ちは嬉しいよ…
でもさぁ、諦めないで欲しいんだ…
僕は、ニアとアストロと旅を続けたいっ…!
諦めなきゃ、奇跡は起こるんだ!」
ー“西誄網・東端“ー
すなわち、百絡段との合流地点付近。
今、コールマンとラオン達がいるところだ。
ここの大通りは、多くの人で賑わいいつも混雑している。
しかしこの通りは、度々馬車が通るらしい。
その理由は、“西誄網・西端“に枕工場があるからだ…
だからこの道は、その工場に枕を届けたりするために、この道を通る馬車が多いのだ。
アストロが乗った馬車も、その馬車と同じような馬車だった…
だから、アストロは到着場所の見当がついていたのだ。
ラオンはニアにそう返答したが…
自信はなかった… 本当に来るのだろうか…
でも、信じるしかなかった。それしか方法は… 無い!
「ニア、ごめん。ちょっとだけ僕に身を任せてくれ…
お姫様抱っこするけど… 気にしないで欲しい。」
そう言うやいなや、ラオンは両足を負傷したニアを抱きかかえる。
そして、しばらくその状態でいると…
何かを決心し、硬直状態のニアに話しかけた。
「ごめんね… 急で強引だったよね…
でも今、コールマンから逃げるにはこれしか無いんだ。
我慢してくれないか…?」
ニアは硬直したまま、頷くしかなかった…
その直後に、何とコールマンがニアを見つけてしまう。
そして、ニアと目が合ったコールマンは…
ダッシュでニアを抱えているラオンへと向かってきた。
しかも一直線で… 猪かよ…w
「ラオン。どうするの!?って言いたいところだけど…
何か作戦はあるんでしょうね…!?」
ニアは一瞬心配になったが、ラオンの決意しきった表情を見て… 少し安心してそう尋ねる。
「任せてくれ… ニアは僕に掴まっててね…
来たぞ。コールマンじゃなく、待っていたものが…」
ラオンはそう言った瞬間、こっちに向かってくるコールマンに脇目も振らずに、待っていたものに近づいていく…
「おい…!
ニアとそこのクソガキ…!テメェらを捕まえに来たぜぇ…」
ラオンそれを無視し、ニアを抱いたまま走る。コールマンはそんな様子を見て叫ぶ。
そんなカオスな状況のせいで、さらに周りの人々は騒ぎ出す。
しかし、ラオンにはそんなこと気にしている時間はなかった…
[ここのチャンスを逃したら、終わるっ…!]
「ニア、行くよ!掴まってっ!」
ラオンはそう叫び、ニアはラオンの肩に手を回す…
次の瞬間!何とラオンは、助走をつけてジャンプした!
それは、敵であるコールマンが言葉を失うほど、意外で衝撃的な行動だった。
そして、ラオンはただジャンプしたのではなく、待っていたものに向かってジャンプしたのだ!
その、待っていたものというのが…
枕を積んでいる馬車だった…
つまり、ラオンは今、ニアを抱きかかえたまま馬車に飛び乗ったのだ…!
ジャンプしたラオン達は、枕に衝撃を吸収されて安全に着地する。
お姫様抱っこされていたニアも、さすがに言葉を失った。
肝心のラオンも、ただただ驚いていた。
きっと自分でも成功するとは思っていなかったのだろう。
枕を積んだ馬車は、西誄網・西端に向かっていくため…
コールマンから距離を離していく…
「自分でもできると思わなかったけど…
成功したから、OKだよね…?
ニア。もう安心していいよ…
とりあえず、コールマンから逃げられたから…
にしても、そろそろ日が沈むな…
コールマンは今日のうちに確実にやっておかなければ…
日が沈んてからは危険すぎる。
そして、さっきの行動は…
あの運任せで、寿命を削るようなジャンプ…
もう、2度とやらないぞ。あんな行動…!」
次回予告!
VS.コールマン(final phase)
コールマンの能力とは?




